休日の昼、一時過ぎ。隼達は大所帯で四階建ての駅ビルの水着売り場に来ていた。水着売り場は寂れていて人気(ひとけ)がなかったがこの一団の騒がしさでどことなく活気があるように見えた。男子陣はすでに水着を持っているので女子の水着を選ぶのを手伝う事になった………若干、邪なことを考えているのが二人ほどいるが…。こうして今日一日が始まった。
Side隼
なにやら竜児が大河と一緒に試着室に入ったように見えたんだが………………気のせい…だよな? ………よし、見なかったことにしよう♪
「どうしたんだい隼君? いきなり一人で納得して」
「………………知っちまったのさ、世の中…知らない方がいいこともあるってことを……………な。…ぷはぁ~」
「おおぅ……そんな中二臭いことを真顔で言ってチュッパチャップスを煙草のように吸う振りをする隼君がなんだかカッコよく見えるような気がするでもない」
「よせよ/// 照れるじゃねぇか///」
「や、褒めてないから」
なん……………だと?
「まぁ、正直そんなことはどうでもいいんだけどね。あっ……隼君、この水着はどうかな?」
「どうでもいいのかよ……。ん? ん~………それだったらこっちの黒の奴の方が実乃梨には似合うと思うぜ。まぁ、お前は容姿がいいからそっちの水着でも似合うっちゃ似合うけど…ってどうした顔が紅いぞ?」
「な、なんでもないよ!!/// 私、ちょっと試着してくるね///」
そう言って実乃梨は先ほど俺が進めた水着を持って試着室へと入って行った。顔が紅かったけど大丈夫なのか? 俺がそう心配しているとなにやら向こうが騒がしいことに気付いた。
「だからお前の目つきがキモいってんだよ!!!」
「誰もてめぇの水着姿なんかに興味なんてねぇよ!! 自意識過剰なんじゃねぇの?」
「ほら、二人とも~いつまでもケンカしてないで仲良くしようって」
『春田(君)は黙ってろ(て)!!!!』
………………うん、客も少ないし面倒だし見なかったことにしよう……悲しいかな、俺はいつだって傍観者よ!! 俺は自己完結して他の場所に向かおうとすると後ろから何者かに抱きつかれた。振り向くと香椎が水着姿で俺に抱きついていた。………………………は?
「どうかしたの? は・や・と・君♪」
「………………待て待て待て!!! なんで水着!!? そして、そんな格好でうろつくんじゃねぇよ!!」
「大丈夫だよ、今日は…というか客なんていつもほとんどいないから」
「いやいや、すぉういう問題じゃないくぁらね!!!?///」
「あはは♪ 今の発音なんかおかしい!!」
うるせぇよ!! つうかなんでこいつはこういうときだけ俺の名前を呼ぶんだよ!! 不覚にもドキッとしちまうじゃねぇか!! それから柔らかな物があたってるから!!! 俺の理性が大変なことになりそうだから!!! この場をどう乗り切るか…考えろ、考えろ………
『<もう一人のボク>』
『<あ…相棒!!! 教えてくれ!! 俺は一体どうしたらいいんだ!!>』
『<襲っちゃいなよYOU>』
『<………………………はい?>』
『<だ~か~ら~やっちゃいなよYOU!! その子もきっと待ってるはずだYO>』
『<いや、やれってなにを!!? てか、相棒!! 前回とキャラが違いすぎるだろ!!!>』
『<なにを?ってナニをだYO!! そりゃその子の『ピーーー(自主規制、この小説のために)』に『ピーーーー(見せられないよ)』して『ピーーーー(見せないよ)』が『ピーーーー(見せねえよ…)』で『ピーーーー(見せねえって言ってんだろ!!!)』したり…>』
『<ちょっとだまれぇぇぇぇぇえええ!!!!!! この作品を18禁小説にする気かーーー!!!>』
『<へい、もう一人のBOKU。どうしたんDA? なんで拳を振り上げてるんDA? それにメタ発言はどうかと>』
『<この世界のために死ねぇぇぇぇぇええええええ!!!!!!!!>』
『<ぶべらっ!!! ……いい拳だ。だが俺を倒しても第2、第3の俺が…………>』
「ねぇ、隼君。聞いてるの?」
「………………はっ!!」
一体、俺はさっきまで何を? と、そんなことは今はどうでもいいか。
「え~っと、なんだっけ? そして、離れろ!!」
「私の水着似合ってるかってことだよ。それと、い・や♪」
「……………………似合ってるよ//。そして、離れろ!!」
「ありがと///♪ だったら~……条件が一つ」
「条件って…………なんかおかしくね?」
「男の子は細かいこと気にしちゃダメだよ。えっとね、私のことを名前で呼んで欲しいな///」
「? そんなことでいいのか?」
「……駄目?」
うぉ……上目使いはなしだろ。まったく…その気もない相手にそんなことするなっての……普通の奴なら勘違いして落ちるぞ?(鈍感)
「別に駄目じゃねぇけど…………えっと、奈々子?」
「うん♪ ありがと隼君!!………計画通り…」
……気のせいかなんか見えちゃいけないものが見えた気が……名前を呼ぶと奈々子はなにやら満足したようで俺から離れて試着室へと入って行った。…………なんで奈々子も顔が紅かったんだろ? 俺が頭を捻っていると試着室から顔を出した実乃梨が俺を手招きしていた。
「どした実乃梨?」
「え~っと、ほらその……水着に着替えたんだけどちょっと変じゃないか見て欲しいんだよ///」
「別にいいけど俺の意見でいいのか? 他の奴も呼んで来るか?」
「ううん、隼君でいいよ!! ………隼君じゃなきゃ意味がないし………」
「今、なんか言ったか?」
「言ってない!!言ってない!! ………じゃあ、見せるね// 笑わないでおくれよ?」
そう言って、実乃梨は試着室のカーテンを開けた。………なんというか奈々子ほど胸はないがボリュームがあるので目に毒だ。ウェストもしまっているし二の腕から先と膝下から先は部活のせいか小麦色に焼けていた。
「どう………………かな?///」
「うぇ!? あ、あぁ…似合ってるんじゃないかな///」
「そう……かな?/// 本当だと嬉しいな// それじゃあ、私着替えるね。」
「お、おぅ。じゃあ俺、向こうに行ってんな」
はぁ~……俺じゃなくて普通こういう事は同性の誰かに頼まないか? まさか今日一日でこんなに理性を削るとは思いもしなかったぜ……。そういや、祐作と亜美の奴を見てねぇな。そこで俺は二人を探すことにしたんだが…………………見つけた…。祐作を発見したんだが…………ブーメランパンツを装着した祐作がブーメランパンツを着けたマネキンの横で同じポーズを取っていた。………………何故だろう…つっこんだら負けな気がする。……後で竜児に回収に行かせよう。うん、そうしよう!! 俺はその場を見なかったことにした………
ということは後は亜美か…………確か位置的にはこの辺だと思ったんだけど………いた。試着室を全開にして鏡の前でポーズを取ってる亜美がいた…………………見なかったことにしよう♪ そう思いその場を離れようとしたら後ろから肩をつかまれていた。
「どこへ行こうとしてんのよ隼」
「いや~…………お邪魔になりそうだったんで離れた方がいいんじゃないかなと」
「別に邪魔じゃないわよ。………それより亜美ちゃんの水着姿やばくない? もうこの可愛さといい美しさといい、これってもう犯罪じゃね?」
「ヤバいのはお前の頭の中だよ………。でも、さすがモデルだけあってスタイルは抜群だな…」
「ふふん………そう思うなら目を逸らさずにちゃんと見て欲しいな~♪」
「………別にいいだろ//」
「へ~……隼って以外に初心だったんだ。以外~……」
仕方ねぇだろ!! 女性経験とか今まで一度もなかったんだから!! ……………言ってて虚しくなってきた………ちくしょう……俺はどうせモテねぇよ…
「えっと……隼? なんで急に落ち込んでんの?」
「何でもねぇから気にしないでくれ…………。それと、早く着替えてくれ。春田や能登が見たら騒ぎだすから」
「隼は……なんとも思わないの?」
「……………………お前を見て何も思わない奴がいたらそいつは目がおかしいやつだよ」
「………もうちょっとわかりやすく言って欲しいな~//」
「…………俺は可愛いって思うよ………///// あ~~~もう!! とっとと着替えて来いよ///!!!」
「ふふ、よく出来ました♪」
亜美は満足げな顔で試着室へと入って行った。まったく………俺なんかからかって何が楽しいんだか…………。そろそろ集合場所に行くか……なんか無駄に疲れた………。
SideOut
帰りにコーヒースタンドバーに寄って行こうという実乃梨の提案に大河と竜児は乗らなかったが残りのメンバーは行くことになった。そして、隼はブラックコーヒーと死闘を繰り広げていた。
「なぁ……沖田? 飲めないなら無理してブラックにしなくてもいいんだぞ?」
「ば、バカ言うなよ能登。こんなの余裕だっつうの………………あ~すげぇ旨い」
「いや、そんなつらそうな顔で言われたって説得力ねぇから」
「沖田君って意外と子供っぽいとこあるよね」
「隼君、砂糖いる?」
「隼君!! どっちが多く飲めるか勝負しよう!!!」
「別に砂糖なんてなくても飲めるし………。あと、実乃梨…コーヒーは普通飲み比べるものj「怖いんだ~」…いい度胸だな実乃梨………上等だコラ!! 負けた方は奢りだからな!!!!」
「お、なんだか面白くなってきたな!! よし、俺も参戦するぞ!!」
「なんかよくわかんないけど俺も俺も~!!」
こうして四人で飲んだのだが、予想通り隼がビリとなりその場にいる全員の分奢ることになったのは言うまでもない……………。
Side亜美
隼以外の皆と別れ私は現在、隼の家にいる。何故、私がここにいるのかというと帰りに隼と一緒にスーパーに寄った時にインスタント食品を買おうとしていた私を見て「んな体に悪いもん買うなよ…。」と呆れられて、私が「だったら代わりにご飯作ってよ」と反論したところ「お、ナイスアイディア!! なら、家に来いよ!!」と言った。…『え、コイツなに言ってんの?』的なことを考える間もなく連れて来られたからだ……まぁ、嫌じゃないけど……
「どうだ? 口に合うか?」
「………………嫌いじゃない」
「そっか!! ならよかった!!」
ていうか料理上手すぎでしょ!! なんか肉と野菜の盛り付けが普通じゃねぇし!! これ家庭料理のレベルじゃないわよ!! てか、大抵の女子がこれ見たら嘆くっつうの!!
「…………俺、何かやったか? 睨まれる理由がわからねんだが…」
「別に何でもないわよ。それより……さっきから気になってたんだけど……………………あれ、なに?」
「へ?………あ~、あれね。ハーゲンダッツの食べ終わった後のカップだけど?」
私の目に映ったのは冷蔵庫の横に重ねられてたハーゲンダッツの空のカップだった。問題なのはその量だ…………大型の冷蔵庫と同じくらいの高さに重ねられたカップが8セットほどある…………どんだけ好きなんだよ…。冷蔵庫を見せてもらったら冷凍庫一杯一杯にハーゲンダッツがぎっしり詰め込まれていた…。その後、食器の片付けとかを手伝った後、今は二人で茶の間でテレビを見ている。番組名は『1ナノリットルの涙』という感動の人気ドラマらしいのだが…………意味がわからない……始まった瞬間にヒロインの奈緒美が小指をタンスの角にぶつけて入院するところから意味がわからない……隼は「…………深いな」とほざいていた。浅ぇよ!!!! どこに深さがあるんだよ!! まぁ、結局…泣けはしなかったが内容が全く読めないので最後まで見てしまった……まさかあそこで国広が直樹に告白をするというBL展開に入るとは思わなかった………国広・直樹・奈緒美・愛犬のベスの三角関係……次も見逃せないわね。
時間も遅くなってきたので隼は途中まで送ってくれると言うので私は今、隼と夜道を一緒に歩いている。そして、私は昨日から気になっていたことを隼に聞いた。
「ねぇ、隼。なんでプールに入らないのか聞いてもいい?」
「あ? それは昨日言った通り「嘘」………………………」
「なんでかはわからないけどそれは絶対に違うってことだけはわかる。それに嫌いだからって中学時代から一度も入ってないのは絶対おかしい。」
私がそう言うと隼は一瞬、顔を曇らせたような気がしたがすぐに無表情で私に言った。
「……さっきも言いかけたがただ嫌いなだけだ。俺は嘘なんてついちゃいねぇ。それに嘘だったとしてもお前に関係ねぇだr「関係なくなんかない!!!!」っ!!?」
「だって私は隼のことが…っ!!」
「おい、亜美?」
「……今日はありがと。それじゃ、ここまででいいからまた明日」
後ろで隼がなにやら言っていたが私は聞かずに走り出した。そして、私は先ほど自分が言いかけた言葉を思い返してようやく気がついた………………自分があのバカに本気で惚れていたという事に…………
SideOut