Dio……冷静でさえいられたら………
プールの騒動から数日………世間は夏休みで長期休暇に入り各々家族サービスしたり、旅行に行ったり、部活をしたり、バイトしたり、遊んだり、勉強したり、はたまた休みがなかったりと過ごしていた。そして、隼達はこの夏休みに二泊三日の旅行に行くことを予定していた。
今回はそんな隼達の旅行へ向かう前日のお話……………
Side実乃梨
夏休み………………学生たちにとってこの響きは実に魅力的なものだろう……家でゆっくりしたり、友達と遊んだりして思い出を作ったり………当然夏休みになれば喫茶店に来る人も増えるだろう………つまり私が何を言いたいかと言うと………………
「すみませーん、注文いいですかー?」
「はい、ただいまーーー!!!!」
絶賛、客の波を捌いているのだよ!!! おらおらおらーーーー!!!! 来たぜ地獄のランチタイムが!!! タバコはお吸いになりますか? 喫煙席ならすぐに用意できます。 申し訳ありません、こちらのメニューは今の時間からはやっておりません。 スリーサイズですか? 一回出直せこの野郎。 む!!! あの野郎!!!! ただいまよりランチドリンクのタダ飲み警戒態勢に入る!!!
「ねぇ、こっちのランチまだ―!?」
うおおおぉぉぉぉぉおおおおおおお!!!!!!!!!!!!!!!!
SideOut
Side隼
「そういや明日だったな」
俺は目印のついたカレンダーの日付を見て笑みを浮かべる。夏休み前に初めてこの話が出た時は『おいおい………』と思ったがいざその日がやってくると思うと心の底から楽しみになる。俺がそんなことを考えていると携帯が鳴りだした。どうやらメールのようだ。
「亜美からか。内容はっ……と」
『おはよ。もう旅行の準備は出来た? こっちは仕事のスケジュールが詰まってて一杯一杯よ(泣) 始発の電車でそっちに向かうつもりだけど間に合うかどうか………』
「はは……、亜美の奴大変そうだな…。ま、といあえず『がんばっ!!』……と」
内容が短すぎる気がするだろうけど基本俺は仲のいい奴とメールでやり取りする時、お互いに一言で返事をして終わることが多い。どうでもいい会話を交わす時しかお互いにメールを使わないからだ。大事なことなら直接会って話すか電話をしてくるはずだから亜美にとってもこの話題はどうでもいい内容なんだろう。
「さて……今日は何をしましょうかね~…」
亜美にメールを送った後、今日の方針を考える。竜児の所に行くか……いや、あいつは多分、大河といる感じがするからそっとしとこう。なら、散歩か? でもな~…暑いんだよな~……外…。暇をつぶせて尚且つ涼しい場所か~……………
「…………あ!!」
ちょうどいいとこがあるじゃねーか!!!
SideOut
Side竜児
夏休みも中盤を過ぎ明日は川嶋が企画した川嶋のもつ別荘に男五人、女五人という大所帯で行くことになる。最初は俺と隼と北村が川嶋に誘われていたが大河が「私はコイツの主人だからついて行かなくっちゃね」と言い、春田と能登が『俺達も行きたい!! いや、連れて行ってください!!!』と土下座で懇願し、木原さんと香椎さんも『私達も行きたい』と話しに乗っかって来た。追記しておくが土下座する能登を見た時の木原さんの目は虫を見るような目だった。まぁ、騒がしくなるとは思うが個人的にはかなり楽しみだ。今までの夏休みではなかった楽しみが俺を待っている気がした………そう楽しみにしていた俺だったが…………
「…………なんつう夢見てんだ俺は…………」
俺が犬で犬の妻が虎で虎の子が犬で………とにかく、最悪な悪夢だった。このあと、大河も俺と同じ夢を見たことをこの時の俺は夢にも思わなかった。
あれから俺と大河は俺の部屋で明日の旅行について話していた。
「だからあれは警告夢だと思うのよ。恐らく今度の旅行でどうにかしなきゃこうなるぞっていうね…、あんたもあんな未来は嫌でしょ?」
「あぁ…………あんな未来、冗談じゃねぇ…」
「自分から土下座しといて生意気な……。そういうわけだから今回の旅行はどちらか徹底的にアシストする形でいきましょ。そのほうが確実だし共倒れよりもまし。」
おお……。まさかあのドジな大河がこんな賢いことを思いつくなんて……
「というわけであんたアシストよろしく。」
………あぁ、そうだった。そういうやつだったよなお前は……。
「…………あぁ、わかったよ。やってやるよ。」
俺はそうため息をつきながら答えた。ふと、大河の方を向くと大河は驚いたような表情をしていた。
「……あんたらしくないわね。なんか変なもんでも食べた?」
「どういう意味だ!!!」
「いや、あんたのことだから『なんで俺が強制的にアシスト役なんだよ。お前がアシスト役でもいいだろ!!!』的な感じで反論して来るかと思ったんだけど」
………………………………あれ?『…………あぁ、わかったよ。やってやるよ。』なんで俺はあんなことを言ったんだ? 確かに大河の言うとおりいつもの俺なら『なんで俺が強制的にアシスト役なんだよ。お前がアシスト役でもいいだろ!!!』そういうはずだ。俺だって櫛枝と付き合いた…………
「べ、別にいいだろ!! 今回はお前の補助に回りたくなったんだよ!! 勘違いすんなよな!!」
背中に氷を入れられたような気がした…………………俺は本当に櫛枝 実乃梨が好きなのか?
「それなんてツンデレよ……。ま、私としては好都合だからいいけどね。それじゃ、よろしくね。」
「おう!!!!!!!」
…………なにバカなこと考えてんだかな。前から好きだったんだいきなり気持ちが変わるわけがないだろ…。まぁ、今回は頷いちまったし大河のサポートに回ってやるか!!!!
俺が自分の本当の気持ちに気付くのはもう少し後になってからだった……
SideOut
Side能登
「明日は旅行~♪ 明日は旅行~♪」
「おい、春田……気持ちはわかるがそのバカみたいな歌をなんとかできないか?」
俺はこのクソ暑い日差しの下で春田と土手を歩いている。春田は明日の旅行が楽しみなようで俺の言葉がどうやらこの馬鹿には聞こえていないようだ。まぁ、確かに天下のアイドル亜美ちゃんの別荘に行けるんだ。これがファンにばれたら八つ裂きにされるだろうな。……待てよ、今回の別荘で亜美ちゃんとの距離が一気に縮まるんじゃないか? 注意(バカの妄想が始まります)『能登君って眼鏡とってもカッコいいんだね♪』『亜美ちゃんの水着姿みてると俺の股間波紋が溜まってビートを刻みBurstしそうだよ(キラン)』『やだ、能登君ったら///』『亜美ちゃん…この俺のモンスターの猛りを沈めてくれないかその発育のいいおっっぱ…』
「あ、能登君と春田君だ」
「げ…………」
俺が物思いにふけっていたら(あの妄想をただの物思いと言い捨てるコイツは
はやはり生粋の変態なのだろう)前から聞き覚えのある声が聞こえてきた。香椎さんと…木原だ…。つーか、『げ』ってなんだよ『げ』って、こっちだってお前なんかと会いたくないわ!!
「おーー!! 二人とも久しぶりー!!!」
「香椎さんこんにちは」
「うん、こんにちは」
「てか、私にはあいさつなしか能登」
「会った瞬間に『げ』と発言する奴にあいさつがいるのか?」
「はっ………器の小さいやつ」
…………殴りて~~~、女相手だが本気で殴りて~~。俺は一体こいつに何かしたんだろうか? なんでこんなにケンカ腰なんだこの女は……!!
「あいかわらず仲いいね~、もう付き合っちゃえばいいのに」
「まあまあ、二人ともそんなに睨み合わないで、ね?」
香椎さんに宥められて俺と木原は同時に目を逸らした。とりあえず春田は後で殴る!! 俺が木原のことを好きなんてそんなことあるわけ……
「痛っ!! なにすんだよ、のとっち~」
「うるさい!! お前が悪い!!!」
くそっ!! なんだこの胸のモヤモヤは!! そんなわけがないだろ……俺が木原のことを………
SideOut
Side木原
今日は奈々子ちゃんと旅行の準備に出てきたのにこんなとこで能登に会うなんて最悪………。こんなやつと会うくらいなら沖田君に会いたかったな~…。最近、奈々子ちゃんと沖田君の仲が少し深まってる気がする、名前で呼び合ってたし… う~……私一人だけ出遅れてる気分……。それに追い打ちをかけるように言った春田君の発言……なんで私がこんなヘタレメガネと付き合わなきゃいけないのよ!! コイツに恋をするなんて天地がひっくり返ってもありえないっつーの!!
「今から麻耶ちゃんと旅行の準備で買い物に行くんだけどよかったら二人も来ない?」
「俺は別にいいよ~」
「え~………コイツと行動とか………」
「ケンカ売ってんのか木原!!」
結局、春田君と器の小さい○○○(ピー)野郎と一緒に行動することになった。はぁ……なんでこんなことに……
SideOut
Side隼
「うわ~……なんつう客の量だ…」
俺は実乃梨の働く喫茶店を前にしてそう呟いた。さすがに今入るのはちょっと気が引けるな……。しかし、現在、俺は日に当てられてダウン寸前だ。と、いうわけで……
「入って来ちゃったんだが…まぁ、一人増えたとこで変わんないだろ?」
「隼君……あんた鬼だね……」
どこか引きつった浮かべる実乃梨は注文票を持って俺の前に立っている。お~、実乃梨のこんな表情は初めて見るな…。レア顔だな!!
「そんじゃ、アイス単p実乃梨「まさかこの忙しい中アイス一つ食べるために入って来たなんて言わないよね?」………ハンバーグ定食と食べ終わる頃にこのチョモランマかき氷を頼む」
「御注文ありがとうごz客C「まだデザート来てないよー!!」はい、ただいまぁあぁああーー!!!」
そう言って実乃梨は走って行った。というか俺がアイス単品で頼もうとしたら凄い形相で睨んできたな……かなりビビったぜ……。そういや実乃梨のやつ今日はバイトすぐに終わる的なこと言ってたし少し待っててようかな?
SideOut
Side実乃梨
ふぅ……だいぶ落ち着いてきたぜぃ~…。私が一休みしてるとバイト仲間の鈴木さん(19)が声をかけてきた。
バイト1「ねぇ、実乃梨……ってバイト1ってなによ!! なんで私だけついてるのよ!!!」
「うぉ!? いきなりどうしたんでぃ、鈴木の姉御!!」
バイト1「い、いいえなんでもないわ……(なんか引っかかるわね…)それよりもあそこにいる彼、実乃梨の知り合い?」
鈴木さんの指さす方を見るとそこには隼君がいた。
バイト1「あの子、実乃梨の彼氏?」
「ふぇ/// いやいやいやいや、私と隼君はまだ(…)そんな関係じゃないっす!!」
なんか凄い爆弾発言をしちまった気がするけど気にしない方向で行こう。
バイト1「ふ~…ん、『まだ』ね~。だったら、私が狙っちゃおうかな~♪」
「それは駄目!!!」
私はつい声を上げて反応してしまった。客の視線がこちらに向く、まぁ、すぐに視線は外れたけど正直凄い恥ずかしい……
バイト1「冗談よ冗談♪ でも、あんないい男なんだからぐずぐずしてると他の子に取られちゃうわよ?」
「う~/// 姉御~だからそんなんじゃないっすよ~///」
バイト1「わかったわかった、今日はもう上がっていいわよ。未来の旦那様を長く待たせたくもないでしょ?」
姉御ーー!!! 展開が速すぎるぜ!!? まずは互いに付き合ってからそのあとプロポーズされて結婚して体をまj………うん、一旦落ち着こう
SideOut
Side隼
俺がチョモランマかき氷を食べ終わるの同時に私服に着替えた実乃梨がやって来た。
「バイトもう終わりか?」
「え!? あ、う……うん/// 今日はもうあがっていいって言われちまったぜい///」
なんか顔がやけに紅い気がするが気のせいか?
「顔紅いけど風邪か実乃r「そういうお約束はいらねぇべさーーー!!!」ぶっ!!?」
俺が発言し終える瞬間に真っ赤な顔した実乃梨がくわっと顔つきを変え俺の顔面に張り手をしてきた……
「おまっ……一体何しやがる……」
「隼君、女の子は繊細なんだからもちょっと考えて発言してほしいかな……かな?」
「お、おう……すまん」
何故だろう……今ここで反論していたら惨劇が起こっていた気がしてならない……『○殺し編』とか『○流し編』とか………なんか変な電波が入ってきたな…うん、忘れよう………。
SideOut
あれから喫茶店を出た隼と実乃梨はいつの日か二人が初めて出会った河原で寝転んで夕陽を眺めていた。
「ここだったよね隼君と初めて会った場所」
「あぁ、あの頃か。懐かしいな。確か、実乃梨が試合に負けていじけてたんだっけか?」
「………性格悪いね、隼君」
悪い悪い♪ そう言ってけらけら笑いながら隼はジト目で見てくる実乃梨に微笑んだ。そんな隼の表情に実乃梨は顔を少し紅くして無言で隼の頬を引っ張った。
「おうぃ…わにひやがう………(おい、なにしやがる)」
「隼君が無自覚なのが悪い!!」
なんだそれ? と隼は呆れたように返した。二人は無言で見つめ合った後、声を上げて同時に笑いだした。そして、日が沈み始めてきた。
「そろそろ帰るか」
「そうだね」
「送って行くぜ?」
「う~ん、嬉しい誘いだけど今日はいいや。ちょっと予定もあるしね」
そっか。そう言って隼は途中の道まで実乃梨と一緒に歩いた。別れた後、帰りの道中、実乃梨が聞いてきた質問を隼は思い出していた。
『そういえば高校に入った時、隼君の雰囲気が初めて会ったときとは全然、違ってる感じがしたんだけど気のせいかな?』
隼は「気のせいだよ、気のせい」と適当に返し実乃梨と別れ道中隼は少し昔を思い出して口元に笑みを作った。
「お前がいたから今の俺がいる……………なぁ、竜児」