始業式から数日がたち、竜児も隼のおかげでクラスでは結構友好的な関係を築いていた。そんな風に順調に学園生活を満喫してた竜児だったが今日の放課後をもってそれが波乱の学園生活へと変貌することになるとは神のみぞ知る。
Side隼
あ~……眠い。本当に眠い。現在、歴史の授業中だが先生の話がつまらなすぎる……。早く終わらないだろうか…。
「おい、沖田!! 聞いているのか!!」
「ふぇ?」
どうやら呼ばれていたみたいだ。周りでは所々で笑い声が聞こえる…って、お前ら笑うんじゃねえよ!! ぶっとばすぞこの野郎!!
「『ふぇ』…じゃない!! ちゃんと聞いていたかと聞いているんだ!!」
「え? あ~はいはい、聞いてましたよ……多分」
「今、小声で多分と言わなかったか? それと、『はい』は一回でよろしい!!」
地獄耳かよ……それに『ふぇ』って真似すんじゃねえよ!! なんか恥ずかしいじゃねぇか!!
「は~い…」
「伸ばすな!!」
「はい?」
『く………くくく』
「…………………………お前は、先生をおちょくっとんのか?」
俺は笑顔を浮かべてから先生の問いに答えた。
「はい!!」
『あははははははははは!!!!!!』
「廊下に立っとけーーーーーー!!!!!!!!!!!!」
何故か授業が終わるまでバケツを持たされたまま廊下に立たせられた。…………一体、俺が何をやったというんだ? その後、授業が終わった後に何故か俺だけ他の皆より宿題が多かった気がした……というより実際に多い。これ二倍はあるな…………ま、すぐ終わるからいいか!! 俺は現在自分の机の上でグデ~ンとしている。隣にいる竜児の席のとこがなにやら騒がしいので見て見ると何やら力説している実乃梨の姿があった。
「何かあったのか? 竜児、実乃梨…」
「お、おう、隼。お疲れ様」
「お勤めごくろうさまです!!」
「俺は元犯罪者か何かか!!? ………で、何かあったのか?」
「おぅ!! 忘れるとこだったぜい!! これを見てくれたまえ!!」
俺は実乃梨から手に持っていた写真を三枚受け取った。一枚目は………なんだこれは? バケツの中に何やら黄色いスライムのようなものが………。に、二枚目は? …………ブルーシートの上にそれの中身がぶちまけられていた……。さ……三枚目は!!? …………それを実乃梨がでかいスプーンで食べている写真だった…………これ食い物!!!!?
「…………これは…食べ物なのか?」
「バケツプリンだよ!! バケツプリン!! ただ、ちょっと失敗しちゃったけど………味も変だったし。………バケツ洗いが足りなかったかな?」
ちょっとじゃねぇだろ!! そして、なんのバケツ使ったんだお前は!! 竜児は実乃梨に見惚れていてフリーズしていた…………竜児よ…お前はもしコイツと付き合えたとして……この『プリン』という名の物体Xをデザートに出されてもいいのか? その後、竜児と一緒に担任の恋ヶ窪 ゆり(こいがくぼ)に呼ばれて職員室に行くことになった。恋ヶ窪 ゆり29歳、孤独の独に身と書いて独身である。美人なんだけどなんというか………恋の話をした瞬間、ネガティブになる変な人だ。おっと、どうやら職員室についたみたいだな。
「あ、来たわね。高須君に沖田君。」
「失礼します。」
「おっす、ゆりちゃん。用件はなに?」
「もう……ちゃんと先生をつけなさい」
『めっ!!」っと言って俺の頭に軽くチョップを食らわせてきた。どうやら、俺と竜児が呼ばれた理由は進路用紙に何も書かれていなかったからのようだ……………おかしいな……俺は確かに書いたはずなんだが…。
「なぁ、ゆりちゃん。俺は確か出した記憶があるんだが?」
「……………………………あなたは『これ』を見て進路を判断できると思うの?」
そう言ってゆりちゃんが俺の進路用紙を俺の目の前に出した。そこにはやはりこう書かれていた。
『恋ヶ窪先生…………バスケが………したいです。』
「お前、本当にそのまま出したのか!!?」
「あ? なんか問題あんのかよ?」
「問題しかないでしょ!! まったく…勉強も出来て、スポーツも出来て、容姿もいいのになんで真面目に出来ないのかしら…………………でも、優良物件に違いはないわね……既成事実さえ作って後は調教すれば………」
「お~い………ゆりちゃん? 何をぶつぶつ言ってんだ?」
寒気がするのは何故だ? ゆりちゃんの呟いていた内容を知りたい気もするが知りたくない自分もいる……………うん!! 見なかったことにしよう♪ その後、ようやく話が終わったころにはもう夕方になっていた。
「もう、こんな時間か。竜児、早く帰ろうぜ」
「おう!! あっと、ちょっと待っててくれカバンを取ってくる。」
「だったら、俺も行くよ。 確か、宿題を机の中に入れっぱなしだったし。」
「……………カバンに入れとけよ」
「だってどうせ朝、学校に来てからでも終わるもん。」
他愛もない会話をしながら教室に着きドアを開けた瞬間、椅子が二つ、三つ舞っていた。それが床に落ち大音声をたてる中、俺と竜児は固まっていた。いったい何が起こったのだと。そして、先ほどロッカーに突っ込んでいった人物…………あれは…大河だよな?
竜児は気付かない振りをしようとしてカバンを取りに行こうとしたのだがロッカーの中から大河が転がって来てばっちり竜児と目が合ってしまう。大河は俺にも気付いたようで…………何故か顔が真っ赤になっていた。しかし、竜児が俺の机の上に置いていたカバンを手に取った瞬間、いきなり真っ青になった。
「あ、あんたなにし、して、してん、」
「おい、大河!! 顔色が真っ青だが大丈夫か!!」
「……カバンを取りに来ただけ、だが……あ、逢坂? どうした?」
するといきなり大河は竜児のカバンを奪おうとしてきた。竜児も何が何だかわからんが奪われないようカバンを死守し、互いにひっぱりあっていた。
「そろそろ、危なくねぇかな………あ、やっぱり」
大河がくしゃみをすると同時に力が抜けてしまいお互いが後ろに吹っ飛んで行った。すると、大河は立ち上がり教室から逃げるように出て行った。
「…………何だったんだ?」
「…………さぁな、大事な物でも入ってたんじゃないか?」
「いやいや、そんなわけ…………………あった。」
「あったのかよ!!? で、それってなんだ?」
「ええっと…………!!?」
「どうした? 竜児?」
「悪い!! 俺の勘違いだった!! それじゃあ、帰ろうぜ!!」
「っておい!! ちょっと、待てよ!!」
竜児は不自然に会話を終わらせた……………何かあったのか? でも、俺が無理に見るのも気が引けるしな…。ま、困ったことがあったら相談してくれるだろう。竜児と一緒に帰った後、高須家で飯を食った後、俺は久々に自分の家で寝た。
SideOut
Side竜児
―沖田 隼さまへ。逢坂 大河より。そう書かれた封筒が俺のカバンの中に入っていた。隼にはさすがに見せてもいい気がしたが問題があった………。中身が入っていないのだ…。おそらく隼のことだから『なぁ、大河。あの封筒、中身なかったけど何が言いたかったんだ?』とストレートに聞くだろう、あの鈍感は……。これってやっぱりラブレターだよな? 明日、渡せば大丈夫だよな? 俺はそう思って眠りに着いた。
…………………誰か助けてください。現在の状況、午前二時に突然、目を覚ました俺に向かって逢坂が木刀を突きつけています。……つうか不法侵入じゃねぇか!!
「逢坂……早まるな!! 手紙は返すからここは話し合いで解決しよう!!」
「……あんたは、手紙の存在を知ってしまった……返すだけじゃ駄目よ。死ぬか、記憶を失ってちょうだい!!」
「無茶言うな!!」
「なら死ね!!」
うお!! 危ねぇ!! 俺の頭の数センチ上を木刀が通り過ぎて行った。これ以上はさすがに死ぬ!! 俺は逢坂を抑えつけてから言った。
「あの封筒の中身は空っぽだったんだ!!!!!」
その瞬間、逢坂は崩れ落ちた。腹の音を鳴らしながら………。……………仕方ない、何か作るか。俺はおもむろに台所へと足を運んだ。目覚めた逢坂は作ったチャーハンをがつがつ食べた。食べ終わった後、俺たちは向かい合って話していた。そして、逢坂が恥だの何だの嘆いていたので自分のコレクションを持ってきた。『付き合う事になって最初のクリスマスは何を買うか』といったメモやラブレターやその他に大量のコレクションなどなどだ。初めてこれを見た時の隼は俺ににっこりと笑った後、『あ、警察ですか? ここに犯罪者予備軍が…』とマジで電話をしやがった。途中で『すいません、間違いでした♪』と切ったがあれは注意しなければ本気で呼んでいた気が今でもする……。気味悪がっていた逢坂がよりにもよって一番厄介な物を発見してしまった。
「高須竜児より……櫛枝 実乃梨さま………櫛枝 実乃梨!!? うーわ……あんたってみのりんのこと…生意気な……」
「うるせえ!! お前だって隼のことが好きなんじゃねぇか!! 人のこと言えんのかよ!!」
俺はあることを思いだした。そろそろ泰子が帰ってくるのだ。なるべく他人にあの姿は見られたくない……。そして、これ以上騒いだら大家さんになんと言われるか……。俺は逢坂を帰そうとするが……この野郎、帰りやがらない…。と、言うか俺に恋愛相談を始めやがった!!
「そう言うのは今度、相談に乗ってやるし協力するから!!」
「……本当に? なんでも協力する? 犬のように、私のためになんでもしてくれる?」
「する!! しまくる!! 犬だろうがなんだろうがなんでもするから今日は帰ってください!!!」
そして、逢坂は帰って行った。……俺は何も考えずにあんな約束をしたことをこれから後悔することになることを後になって知ることとなる………
SideOut