あの恐怖の合コンから数日が過ぎ亜美はクラスの女子の中心になっていた。しかし、それは偽りの自分としての評価であった。
「は~~やと君♪ 一緒にご飯食べない?」
「沖田君も一緒に食べようよ!!」
「どうかな? 『ファルコン』様?」
「……………………………パス」
隼はそう言ってから教室を出て行った。いつもの隼らしくない冷たい態度に他の連中は驚いていたが竜児だけはなんとなく納得していた。
「ハヤ君、どうしたんだろ? まぁ、あのバカチーと一緒に食べないですんだからよかったけど。」
「これはあれかな? 思春期の男の子にある「女子と一緒に食べるとか恥ずかしいじゃねぇか…」とかいうやつかな?…………はっ!? それじゃあ、私たちは女に見られてない? おのれ~隼君め!!」
「いや、そんな理由なわけないだろ!? ……多分イラついてるんだと思うぞ?」
「何によ?」
「川嶋に話しかけられた時にこめかみが動いてたからいいかげん我慢の限界が来たのかも。」
「あ~、確かにここのとこ川嶋さん、隼君によく話しかけてたね。……って、あれ? そういえば川嶋さんもいなくなってない?」
『え?』
竜児たちが話している最中に亜美は隼を追って教室を出ていたことなど誰も知る由もなかった。その頃、屋上では隼がフェンスに寄りかかって座り弁当を食べていた。そして、屋上のドアが開き隼が視線をやるとそこにいたのは亜美だった。
「亜美ちゃんのお誘いを断るなんて何様~って感じなんだけど。」
「…………はぁ~……一つ聞いていいか?」
「…………………いいよ。」
「なんで俺にばかり関わろうとするんだ?前にも言った通り俺は偽ってるお前と慣れ合う気はねぇぞ…」
「私だってバカじゃないからわかってるわよ……あんたが私のことを毛嫌いしてるってことも………でも…」
そこまで言った亜美の目には涙が浮かんでいた。次の瞬間、亜美は隼に抱きついてきた。
「しょうがないじゃない………あんたと話してると落ち着くのよ………でも…今更、素の自分を出すなんて私には出来ない!!!! 怖い…凄く怖い…自分の居場所がなくなるんじゃないかって…」
「川嶋………………お前…」
そこでチャイムがなり二人は妙な気持ちのまま教室へと戻った。その日の放課後は隼は竜児たちと一緒に帰らずにスーパーに寄っていた。
「(あ~……モヤモヤする……ったく…正直、どうでもよかったんだがな………)……困ってる奴は見逃せねえよな。………ま、今は気分を入れ替えてハーゲンダッツ♪」
そう言って、笑顔でハーゲンダッツを取ろうとするといきなり誰かに引っ張られた。その人物は亜美だった。
「ぬぁ!! 何しやがる!!?」
「お願い………友達のふりして…」
隼は亜美の必死な顔を見て只ごとじゃないことを理解した。そして、隼が亜美のやって来た方向を見るとカメラを持った男がいた。
「………なるほど…………彼氏か?」
「なんでそうなるのよバカ!!? …………多分、変なファンの一人よ。たまにああいうやつがいるのよ…」
「へぇ~……」
隼はそれを聞いて男を睨みつけた。男は隼の眼力から危険を感じたのか逃げて行った。
「行ったみたいだぞ?」
「…そう………ねぇ、少しの間でいいから家に匿ってくれない? 一人で帰るのが怖くて…」
「はぁ~……………仕方ねぇな。………あ!!」
「どうしたの?」
「いや~別に~♪」
亜美は隼の笑みに嫌な予感を覚えたが先ほどの男に付き纏われるよりはマシだろうと思ってついて行った。マンションについた隼は自分の部屋に入るのではなく大河の部屋をノックした。
「は~い………って、ハヤ君!!?…とバカチー…」
「げっ……逢坂 大河………」
「おう、大河。頼みがあるんだが…」
隼は大河に事情を説明すると大河は渋々ながら亜美を大河の部屋に匿うことに頷いてくれた。そして、隼が最後に大河の耳元であることを言うと初め耳元に近づいてきた隼に紅くなる大河であったがその内容を聞かされると途端に悪戯めいた笑みを作った。
「それじゃ、川嶋。また、明日な~♪」
「え!? ちょっと待って!! なんか凄い嫌な感じがするんだけど!!!」
「気のせいよ。ほらとっとと入りなさい。」
そう言って大河は亜美を強引に自分の部屋に押し込みドアを閉めた。次の日の朝、げっそりとした亜美が教室にやって来た。
「ありゃりゃ、随分お疲れみたいだな。どうかしたのか?」
「あんた…………わかってて言ってるでしょ?」
「くくく……ちなみに何をやらされたんだ?」
「…………………物まねメドレー・百五十連発…………」
どうやら大河に似るまで何度もやらされそれが深夜まで及んだらしい…しかも録画されているというおまけ付き……それを聞いた隼は声を押し殺し笑っていた。授業が一通り終わった後、昼食の時間になり竜児は隼を誘おうとするがまたもや姿が消えていた。
「隼のやつ、また居ないな。どこ行ったんだろ?」
「ねぇ………竜児。」
「ん? どうした大河…………本当にどうした? 凄い不機嫌そうな面して…」
「ハヤ君と一緒にあのバカチーがどこかに行ったんだけど。」
そう、前回と同様に隼は屋上に行きそれに亜美もついて行ったのだ。………余談だがこの後、誰かが手乗りタイガ―にやつ当たりをくらう竜児を見たとか見てないとか………。その頃、屋上では…………
「なんだ、やっぱりまた来たのか?」
「どこにいようと亜美ちゃんの勝手でしょ? それよりよかったの?」
「ん? 何が?」
「あんたいつもあのバカ虎達と飯食べてるじゃない。なのに昨日といい今日といい屋上で一人で食べてるじゃない。」
「そうでもしなきゃ疲れるだろ?」
「え?」
「だから…ずっと偽ってるのも疲れるだろ? 昨日はたまたまだけど今日はお前と話すためだよ。お前もずっと仮面をつけてるのは疲れるだろ?」
亜美は信じられなかった……自分を嫌ってると思っていた男が自分のためを思っていてくれたことに…。
「い…意味わかんねぇし!! だいたい、あんた私のこと嫌いじゃなかったのかよ!?」
「だから前にも言っただろ? 俺は偽っていないお前は嫌いじゃないって、むしろ好きだぞ。」
「~~~~~///// 言ってろバカ!!!!///」
亜美は顔を真っ赤にして屋上を出て行った。残された隼はというと……
「…………………変な奴。」
亜美の行動に理解不能でいた。そして、その日の放課後「生徒会のボランティアの参加人数が少ないので誰か参加してくれ!!」という祐作の言葉に集った戦士たちは…………
「なんで、俺まで…………」
目つきの悪さはヤクザクラス!!! 大河に無理矢理手を上げさせられた男 高須 竜児!!!
「仕方ないじゃない!! だって、ハヤ君も出るらしいし……」
「俺を巻き込むなよ!!?」
「恥ずかしいじゃない!!! 察しなさいよバカ犬!!」
意外とドジっ子!! 手乗りタイガ―こと逢坂 大河!!!
「まったく……あの馬鹿会長め……何が「お前は強制参加だから」だ!!」
「まぁ、落ち着け。頼られてるんだからいいことじゃないか!!」
最近、運のない少年!! 鈍感は罪!? 沖田 隼!!!
無駄に暑苦しい男!! まるお君こと北村 祐作!!!
「で? なんであんたがいんのよ?」
「早く学校の行事に慣れたくって♪ あ、高須君もよろしくね~♪」
「お、おう……(また厄介な……)」
最近、化けの皮が剥がれてきてるぞ? 腹黒アイドル 川島 亜美!!!!
「………………………貴様、見ているな!!?」
「……櫛枝? いきなりどうした?」
「くくく……………ば~れ~た~か~!!!」
「ハヤ君!!? どうしたのハヤ君!!? なんかすぐに現れてすぐにやられる悪役キャラみたいになってるよ!!?」
バケツでプリンより普通に作った方が絶対にうまいよね~…天然暴走少女!!! 櫛枝 実乃梨!!! 戦士達が揃い拡声器を持った生徒会長 狩野 すみれが現れた。
『よっしゃーーテメェら!!! 準備は出来たか!! 返事しろ!!』
『おーー………………』
『舐めてんのか!!!!!! 声を腹から出せ!!!! いや、足の先から出せ!!!!』
『うおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!!!!』
『うるっっっせええええええええ!!!!!!!!!!!!!!』
「なんとまぁ…相変わらずめちゃくちゃな………」
『ノルマは一人当たりゴミ袋一杯だ!!! ただし隼!!! お前はゴミ袋を三袋分一杯にしてこい!!!!』
「おいいいいいいいいいいいい!!!!!!!! そんなの無理に決まってんだろおおおお!!!!!!!!」
『では、これより一時間!! 集合時間には遅れるなよ!! それでは各自行け!!』
「無視かこらぁぁぁぁあああああ!!!!!!!!!」
こうして、掃除が始まり大河は隼と一緒に行こうとしたが隼は「三袋を一時間でとかハードすぎんだろぉおおお!!!!!」と言いながら走り去って行ってしまったので地面に手をつき項垂れていた。
それから数分がたちぽつぽつと雨が降って来た。無理と言いながらもすでに隼の腕には満タンになったゴミ袋が三つあった。隼は集合場所に向かう途中に亜美と会った。
「すごっ!!? 本当に三袋分取って来たんだ…」
「お、川嶋か。奇遇だな……他の奴らはどうした?」
「知らない。それに私に関係な…!?」
すると、川島は隼を引っ張ってしゃがませた隼は「な、何事!!?」と驚いていたが亜美の視線の方を見て眼を鋭くした。
「あいつ………昨日の奴だよな?……川嶋、アイツもしかして…」
「やっぱり気付いちゃった?…………隼君の思ったとおりアイツはストーカーだよ………。私のママも芸能人だから家の前をうろうろされたら困るって言われて親戚の家に来て、ほとぼりが冷めるまで芸能活動も休むことにしたのに………あいつのせいで……あんなやつなんかに…亜美ちゃんは怯えてるんだ…」
「……………………………………」
「…………………隼君?」
すると、隼は無言で立ち上がりそして………ストーカーの元へと走って行った。猛スピードで近づく隼に気付いたストーカーは「ひっ…」と小さく悲鳴を上げ逃げようとするも、もはや手遅れ……隼は飛び蹴りをして男を吹き飛ばした。その後、痛みに呻く男を引きずりながら亜美の元へと帰って来て亜美の足元に男の持っていたカメラを投げた。
「あ、亜美ちゃん!!? ねぇ、亜美ちゃん!! この男、何なのどうしてボクがこんな目にあわなきゃいけない『ゴスッ!!』ぐっ…」
「喋んな…………次はその頭をかち割るぞ………。さて、川嶋……お前に選択肢をやろう。これからもコイツからビクビクと隠れるか…それとも、今ここでコイツの幻想を砕いてやるか…」
「…………ふふ……決まってるよね……」
次の瞬間、亜美はストーカーの持っていたカメラを粉々に踏み砕いた。それを見たストーカーは「こ……こんなのボクの知ってる亜美ちゃんじゃな~~い!!!」と言って逃げ出して行った。その場に残っていた亜美と隼はそのストーカー野郎の有様を見て大声で笑った。
「あははははは!! まさかカメラを粉々に砕くとは思わなかったぞ!!」
「あはははは!!! でもさすがにあんたがあのストーカー野郎を引きずって帰って来た時は焦ったわよ。」
一通笑った後、亜美は急に座り込んでしまった。隼は急なことに驚き近づくと亜美は泣いていた。それはそうだ………いくら撃退できたからとはいえ何をするかもわからない変質者を相手にしたのだ。それは亜美にとってはとてつもない恐怖だっただろう。
「バカ…バカァ~…怖かった……怖かったんだから~~~……」
「……………ごめんな…」
隼は亜美が泣きやむまでずっと亜美の頭を撫でていた。それからボランティアの時間も終わりに近づき二人で集合場所に向かっていた………腰の抜けた亜美を隼が背負いながら…………
「はぁ~………腰抜かすなよ~。ゴミ袋四つ分とお前ってかなりきついぞ…」
「ふん!! あんな怖い目に合わせた罰よ。」
「わかった、わかった。………………お前、体重何キロ?」
「あ、あんた女子になんてこと聞いてんのよ!!!?」
「痛って!!? 頭を叩くな!! 重いんだから仕方ねえだろが!!」
「重いのは私じゃなくてゴミ袋でしょ!!!」
そう言いあいながら二人で帰っていると急に亜美が隼の背中に顔を埋めて一言言った………『ありがとう』と…
「ん? なんか言ったか川嶋?」
「別に~…それとその川嶋って他人行儀な言い方止めない? その……さ…私もこれからはなるべく本当の自分を出せるように努力するし…///」
紅くなりながらボソボソと言う亜美の言葉を聞いて隼は一瞬、目を丸くするもすぐに笑顔になり答えた。
「これからよろしくな亜美!!」
「よろしく………………隼♪」
こうして亜美と隼の距離は少しだが確実に近づいた。それを祝福するかのように二人が帰ってる途中の空は綺麗に晴れていた………