ニャンコ星人   作:ペペロンテーノ

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田中が地球に行ったときのお話。


田中と地球人

地球にある日本の住宅街の中、某建設会社が建設した新居に元気に庭を駆け回る幼児と、それから逃げるネコの姿があった。幼児の輝かんばかりの笑顔と対照的に、逃げるネコの表情は戦場の中を逃げ惑う一般市民のようだった。

 

「ねこさん!ねこさん!」

 

ダダダダダダダダッ

 

どうやら幼児にお気に召されたらしいこのネコは、偶然住宅街に迷い子んで新居の庭の中へと辿り着いたネコのようで、外見はどこにでもいる白色の猫だが、中身は違った。

 

(何アレ!?何アレ!?新手のトラップ!?)

 

田中である。

 

(非公式の視察だが、人間には警戒心MAXにしろと言われた理由はコレかァ!)

 

地球にある日本の文化を視察し、ニャンコ星人には無い人間特有の文化を研究するという重大な任務を、誰が行くかをくじで決めた結果、田中だったのだ。この状況は、追いかけられてから数十分近く経つ。

 

「ねこぉぉ!」 

 

田中の出せる走力は猫に擬態している間、50km/sのスピードを出せる。それなのにあの幼児は笑顔を絶やさずに追いついてくる。その原因は庭の植木とその狭さにある。縦横共に6mほどのこの庭、所々に植木職人の遊び心が加えられた木々が植えられているのだ。亀の形やウサギの形、某機動戦士を模った植木もある。

 

「チィ!」

 

ちょうど抜けられるほどの穴が空いた植木を潜り抜けるも、いつの間にか幼児が一人増えていたのか、真正面に幼女が迫ってきた。

 

「捕まえたああ!」

 

「フッ…」

 

勝ったとばかりにニヤつく田中。後ろの植木から先ほどの少年が出てきたが、走っている時のスピードを落とさずにいた。

 

(勝機!)

 

そのまま幼女の胸に飛び込み、ジャンプの際に丸めた足を一気に伸ばす。が、悲しいかな、田中の目論見は大きく外れ、足がツルリと滑ってただのダイブに成り下がった。ガッチリと幼女にホールドを食らう。

 

「かわいい~!」

 

ギュウ!

 

「ぐおええええぇぇぇ!」

 

「ねこさん!」

 

「ファ!?」

 

現実は非情である。固くホールドされて身動きのできない田中に少年が速度を落とさずに突っ込んだ。田中にとっては車が突っ込んでくるようなもの。結局、田中はサンドイッチにされた。

 

ドン

 

「きゃあ!?」

 

幼女もその時の衝撃に近くの植木に押し倒される形となるが、田中がクッションの役目を果たして怪我はしなかった。

 

「うわ、このねこさん凄くふわふわしてる~」

 

「もう!私が捕まえたの!このねこさんは私のぉ!」

 

「ええぇ~~」

 

押し倒された状況で、幼女は守るようにさらに田中を強く抱きしめるも、田中には逆効果。

 

「ギャオオオ!」

 

その技はプロレス技で言う「コブラツイスト」。擬態しているとはいえ、宇宙人をプロレスで拘束してここまでのダメージを与えられたのは、後にも先にもこの幼女だけである。

 

(死、死ぬ…)

 

田中は死を覚悟した。脳裏に走馬灯が浮かび、まだ購入できていないプラモやアニメのBD、その他諸々が大半である。その時、不思議なことが起こった。

 

ガチャリ

 

「あ、母さん。見てみて?このネコさん!」

 

「あら、どうしたのかしら。迷い込んだの?とにかくもうご飯よ。顔と手を洗ってらっしゃい」

 

「「は~い」」

 

引き下がらずに、あれだけ追いかけてきた幼児たちがサッと田中を離し、家の中へと入っていった。

 

(この家のリーダーか…?)

 

一瞬女神が舞い降りたような気がした田中。気が付くとすぐ目の前に女性が屈み込み、こちらを見ている。

 

「さ、早く行きなさい。これに懲りたら住宅街に入ってきちゃダメよ?」

 

そう言うと、女性は家の中へと入っていった。妙に抱擁感があったが、あれが母というものなのか。

 

(普通に怖かった…)

 

数日後、無事に田中はニャンコ星へと戻り、事の次第をニャンコ政府に報告した。政府はその後、地球の人間、特に幼児には警戒を怠るようなことはないように、田中の体験談を公表して惑星の住民たちに注意を呼びかけた。なぜこんなことになったのかというと、田中の骨が色々と逝っており、全治2年の重傷を負っていたのだ。

 

「幼児は内なるパワーと未知のエネルギーを秘めている。…怖いくらいに」

 

 

 

 

 




幼児ってどうしてあんなに元気なのだろうか…。胸の中に核融合炉でも積んでいるのではと一瞬考えてしまった…。
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