Fate/reverse alternative   作:アンドリュースプーン

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第27話  切り開かれたインウィディア

「あっ――――はぁ……ぁあ」

 

 地獄の底から響いてくるような呻き声。

 聞いただけで苦痛が乗り移りそうな呪詛の言葉を吐きながら、雁夜はふらふらと夜の道を歩いていた。

 いや、もはや歩くというよりは引きずると言った方が良い。

 言峰綺礼の治癒は一時雁夜を死の淵から生還させたが、それは所詮延命であって救命ではない。

 数分だった寿命を数日に伸ばしただけ。

 そんな雁夜にとって魔術の行使とは命の消費にも等しい行為である。使えば使う程に数日の寿命を削っていく。

 だというのに雁夜は遠坂時臣を殺すために魔術を行使した。更には時臣の炎の魔術すら受けた。

 それでもこうして曲りなりにも生存しているのは奇跡にも等しい。その奇跡を起こして見せたのは間桐雁夜の素養か精神か、それとも偶然か。

 だが奇跡にも限界はある。

 奇跡は間桐雁夜の命を限界のところで世に留めてくれてはいるが、雁夜にとって多少寿命が延びる伸びないなど意味のないことだ。

 寿命が延びても『目的』を果たせなければ意味がない。

 その目的とは間桐桜を救うことであり、遠坂葵を幸せにすることであり、遠坂時臣を殺す事だ。

 

「桜ちゃんを助けないと……どこだ、桜ちゃんは……葵さん、俺は助けるから。時臣を殺して……」

 

 もはや正常な思考すら出来ていないだろう。

 呂律の回らぬ言葉を漏らしながら雁夜は歩く。目指す場所は――――教会だ。

 思考が殆ど回っていない雁夜だが、生物としての生存本能のなせる業なのか"あと一度でも魔術を使えば死ぬ"ということだけは直感的に理解できていた。

 そして僅かに残った理性がそんな状態では目的を果たすことなど到底不可能だとも教えてくれていた。 

 故に雁夜は足を引きずって進む。教会へ。神の家へ。

 自分にも救いがあるのかもしれないという、ありもしない『奇跡』に縋って。

 教会の敷地に足を踏み入れた。

 重厚な木の扉を開けて体を押し入れる。

 空気の一欠けらに至るまで澄み切っていて、どことなく歪んでいる雰囲気が間桐雁夜を歓待した。

 

「こんな夜更けに来客かと思えば――――そうか、お前か。間桐雁夜、最初の脱落者にして二番目の脱落者よ」

 

 カソックを着た黒髪黒目の男は言峰綺礼。監督役の息子にして聖杯戦争に参加するマスターであり、そして仇敵・時臣の協力者でもある男だ。

 本来なら教会にいる者は監督役とサーヴァントを失ったマスターのみ。

 その観点でいえば未だサーヴァントを失っていないこの男がこの場所にいるのはルール違反ということになるのだろう。

 しかし雁夜はそのことに不思議と思い至ることはなかった。余りにもこの教会がこの男に適していたからなのかもしれない。

 まるで元々が同じものだったように言峰綺礼という人間は教会の中に溶け込んでいる。

 

「だが歓迎はしよう。神の門は常に開かれている。その様子だと遠坂時臣に惨めに敗北し、すごすごと逃げ帰って来たというところか」

 

「……!」

 

 人の心を抉るかのような糾弾。

 怒りという熱情が雁夜の意識をはっきりと覚醒させた。

 

「違うっ! 逃げて来たんじゃない! 俺はあいつを殺すために戻って来たんだ!」

 

「成程。つまりこういう事かな。間桐雁夜、貴様は私に施しを受けた身で我が師へと挑み、為す術なく敗北した。それでも命を保っていたお前はこうして再び施しを受けるために教会の門を叩いたと? お前がなによりも恨み嫉妬する遠坂時臣の協力者である私に?」

 

「ッ!」

 

 否定したい。が、否定できない。

 言峰綺礼の言葉は紛れもなく真実であり、どうしようもなく核心を突いていたのだから。

 

「ククッ。それもまた良かろう。遠坂時臣を恨みながら、その恨む相手の協力者に頼るという矛盾。それもまた『人間』というものだ。矛盾なき人間などはなく、矛盾あるからこその人間ともいえる。常に行動に一つの芯が通った者など英雄を見渡そうと一握りだ。故に間桐雁夜、お前は誰よりも人間として正しい。私は無論のこと、遠坂時臣よりも」

 

「……なにが言いたいんだ。お前は」

 

「難しいことではない。私には聖杯に託す祈りなどない。ただこれから生まれ出でる者には祝福を与えねばならん。監督役の父の代行として聖杯を得るに相応しいマスターを選別する義務もある。そして今私の手には令呪があり、サーヴァントが健在だ。間桐雁夜、お前の聖杯へと託す願いを言うがいい。貴様にまだ戦う意思がり、その祈りが聖杯に託すに足るものであるのなら貴様に今一度戦う力を授けよう」

 

「お前、時臣の協力者なんじゃ」

 

「何を今更。もし遠坂時臣の協力者として正しくあろうとするのなら今頃お前の首は胴と離れている。いいやお前を見つけたその時に貴様を殺している。そのお前が生きてこうしていることが、私が遠坂時臣の協力者として正しくない者という証左だ」

 

「…………」

 

 言峰の提案は願ってもない。バーサーカーを失いキャスターを失い、間桐雁夜は一人だ。聖杯を手に入れるにはサーヴァントが必要。そしてサーヴァントを倒すのにもサーヴァントが必要。

 今のままでは仮に全開にまで回復しても勝算はゼロだ。だが言峰綺礼のアサシンがあれば……セイバーのサーヴァントと互角に戦うほどの力があれば、遠坂時臣にも及ぶことができるかもしれない。

 雁夜に選択肢はなかった。

 

「俺は桜ちゃんを助けるために聖杯が欲しい」

 

 一言いうとダムが決壊したように理由が溢れる。

 

「俺が間桐から逃げ出したせいで桜ちゃんが間桐の地獄に堕ちた! あの野郎、時臣のせいで……! あいつが葵さんと桜ちゃんを泣かせたんだ。だから俺がやらなきゃならないんだ! 俺が逃げたせいで桜ちゃんが。だから俺が桜ちゃんを助ける! 桜ちゃんを助けて、葵さんや凛ちゃんを笑顔にするんだ。そして――――――」

 

 魂を込めた叫び。雁夜の想いをなんの装飾も施さずに吐き出した言葉だった。

 だというのに、

 

「――――違うだろう。間桐雁夜」

 

 教会の長たる聖職者はその祈りを否定した。

 

「な、に?」

 

「お前の願いは間桐桜の救済ではないし、断じて遠坂葵と遠坂凛の幸福でもない。お前の抱く願いとは他者ではなく己へと還るものだ。何故それを拒絶する?」

 

「……意味が分からない。俺には自分の望みなんて……ない。だって俺は桜ちゃんのために……」

 

「間桐桜を言い訳に使うのか? 理解らぬようなら何度でも言おう。お前はお前自身のためにその身を間桐の翁へと捧げ、自らの寿命を削ってきた」

 

「……っ」

 

 駄目だ。これ以上、この男の言う事を聞いてはいけない。聞いたら間桐雁夜の総てが壊れてしまう。

 音を閉ざそうと耳を塞ぎ――――そこで思い出した。雁夜には片腕がない。片方の耳を塞げても、もう片方の耳を塞ぐことは出来ない。

 男の声からは逃れられないのだ。

 

「お前は間桐桜を救いたかったのではない。ただ間桐桜を救い出した自分を遠坂葵の笑顔で迎え入れて欲しかっただけだ」

 

「違う! 俺は!!」

 

「遠坂時臣を殺す事に固執したのはどうしてだ? 遠坂葵の心がお前でなく遠坂時臣にのみ向いていることなどお前が一番知っていただろう。遠坂葵にとって遠坂時臣はなによりも大切な生存の理由といえる。本当に間桐桜を救い、遠坂葵を幸せにすることが目的だというのなら、お前は遠坂時臣に事情を説明し協力を仰げば良かった。時臣は芯から魔術師であっても外道な卑劣漢ではない。事情を説明すれば、必ずや間桐桜を間桐家より連れ戻そうとしただろう。そう……お前はそれだけで良かった。聖杯戦争に参加する必要すらない。救われた間桐桜は無論、遠坂葵と遠坂凛。我が師すらお前に謝意を述べただろう。だがお前はそうはせず聖杯を欲した。そのことに気付かぬふりをして、間桐桜の救世主という偶像に酔い痴れながら地獄に浸っていたに過ぎない。間桐桜を救う為、遠坂葵のためにと勘違いの願いを繰り返しながら」

 

「あ、あああああああ!!」

 

 大声をだし暴れまわる。しかし教会のものが壊されていっても眉一つ動かさずに、最高の玩具を手に入れた子供のように笑いながら言峰綺礼は間桐雁夜の傷を切り開いていく。

 

「間桐雁夜。貴様は義務感や責任感、ましてや義侠心によって間桐桜を救おうなどと考えたのではない。お前は遠坂時臣を殺し、遠坂葵を独り占めにしたいが為に聖杯を求めたのだ。いいやそれだけではないな。遠坂時臣はお前の欲するものを全て持ち合わせていた。そう……お前は"遠坂時臣"になりたかったのだろう? 嫉妬、理想、憧れ、独占、愛欲――――それらがお前の願いの源泉」

 

 言峰が一歩一歩近づいてくる。

 

「その祈りを祝福しよう間桐雁夜。遠坂時臣でも私でも……ましてや衛宮切嗣でもない。聖杯はお前の手にこそ相応しい。私の手にある令呪をとり戦いへと赴くが良い。そうして遠坂時臣を殺し、他のマスター達を殺し『聖杯』を掴みとれ。そして祈るのだ。遠坂葵を自分だけのものにしたい、と。聖杯は必ずやお前の祈りを聞き届けるだろう」

 

「あああああああああああああああああああああああああああ!!!!」

 

 言峰の令呪に触れる前に雁夜は駆けだしていた。

 こんなものは夢だ。これは悪い夢だ。そうでなければ有り得ない。そうでなければおかしい。

 

「はは、はははははははははははは!!」

 

 そう。夢ならば早く覚めないと。

 頭が痛い。キリキリ痛む。この痛みがあるせいで、自分は。

 頭を教会の柱に叩きつける。鮮血のアーチが宙に描かれるが、まだ夢は覚めてくれない。

 一度で駄目ならもっと叩きつけないと。  

 何度も何度も何度も何度も何度も何度も。柱に頭を叩きつけ、

 

―――――ぷちゃ。

 

 なにかが切れた。意識が微睡へ消えていく。漸く夢から覚めることができた。

 悪い夢は終わったのだ。これから幸せが始まる。夢から覚めればきっと、みんなが――――。

 

「いいや。これは紛れもない現実だよ間桐雁夜。そしてお前は無価値に死ぬ」

 

 最後に雁夜は夢に浸るまで許されなかった。

 

「やれやれ。私はお前の祈りを歓迎していたというのに。お前ならば聖杯をくれてやっても構わないと思っていたというのに。残念だよ。しかし神聖なる神の家で自害して果てるとはな。天国には行けんぞ?」

 

 その言葉を最後に間桐雁夜は死んだ。

 間桐雁夜の行動は無価値だった。だが無意味ではあったのだろうか?

 もし間桐雁夜の叫びが一人の男に疑惑の種を植え付けていたとすれば。もしもその男が一つの決心をしたのだとすれば、決して雁夜の行いは無意味ではないだろう。

 彼の眠りの安らかならん事を。

 

 

 

 雁夜を迎え撃った後、時臣は工房にて深い思考の中にあった。

 間桐雁夜の叫びを全て鵜呑みにした訳ではない。あの叫びが雁夜の荒唐無稽なブラフや虚言だということも考えられる。

 しかし雁夜のあの表情と叫び。あれは嘘を吐く者のそれではなかった。

 そしてもし雁夜の言葉が正しいのだとすれば、

 

(……私は)

 

 桜が魔術の修練による苦痛に苦しんでいる、というだけなら時臣は看過しただろう。

 元より魔道の探求は死と隣り合わせ。苦しみは友人であり、死は隣人だ。時臣もそれらと共存してきたからこそ、今の己があるのだと自負している。

 そして先代より魔道を受け継いだものは、自分の次の後継者のために。或いは何代も先の後継者のために自らの研鑽を魔術刻印という形にして継承させていかなければならない。

 自分以外の為に先を目指すもの。自分よりも他者を顧みるもの。……そして、誰よりも自分を嫌いなもの。これが魔術師としての素質だと胸に刻んで生きて来たし、娘の凛にもそう言い聞かせ育ててきた。 

 しかし間桐雁夜の語る間桐の在り方は真逆だ。

 時臣は娘の幸福のためにと間桐へと養子に出したのであって、不幸にさせるためではない。

 間桐臓硯が本当に桜を食い物とするために養子としたのなら、遠坂時臣はそれを許すことはできない。

 そんな時、遠坂邸の固定電話に電話がかかった。

 

「なんだこんな時に」

 

 訝しながら受話器をとろうとして――――

 

「あっ」

 

 うっかり間違ったことをしたのかツーツーと電話が切れた。

 

「…………」

 

 アーチャーの視線を感じるが、時臣は努めて平静を装った。

 暫くするともう一度電話が鳴り始めた。今度は冷静に受話器をとろうとして、

 

「むっ」

 

 うっかり右足をコードに引っかけて抜いてしまった。

 

「……時臣?」

 

「な、なんでもない! 電話爆弾……そう、電話爆弾だ! 優れた魔術師なら電話越しでも魔術的な呪いを仕掛けてくる可能性がある。だから私は念のためこうして受話器をとろうとしないのだよ。こうして何度も不通になれば、呪いを仕掛けようとしている者なら企みがばれたと感じ計画を取りやめにするだろう。私の狙いはそこにあるのだよ」

 

「……いや、もっともらしく取り繕っているがね。もしかして君は――――」

 

「お、おっと。また電話がかかってきたな。今度は出ようではないか」

 

 精一杯の見栄をはってから今度こそ時臣が受話器をとることに成功した。すると驚くべき人物の声がした。

 

『呵呵呵。こうして会話するのは久しいのう。先代から継承して何年になるかの、遠坂時臣。古の盟約により儂からそちらへ行くことは出来ぬが故に電話越しで話しておる。無礼、とは思うが許してくれい』

 

「間桐臓硯……か」

 

 相手は名乗らないが、相手の出したフレーズだけで答えは一つだった。

 電話の相手はあっさり肯定する。

 疑問の渦中にいた人物のいきなりの電話。流石の時臣も驚きを隠せない。

 

『左様。頭首を鶴野めに譲って長いのだがのう。しぶとく生き長らえておるわい。さて回りくどく話していてもした致し方ない。不可侵の条約を破ってまでこうして話しておるのは桜の件じゃよ』

 

「桜が、どうかしたので?」

 

 努めて平静を装いそう返す。

 本当は桜の名前が出た途端、時臣の心臓は跳ね上がっていた。

 そのことに気付いているのか気付いていないのか。臓硯は好々爺めいた口調で。

 

『いやはや申し訳ないと言う他あるまい。不肖の倅、雁夜めが分不相応にも聖杯戦争に参加しようとし、参加するまでもなく脱落したというのは報告した通りじゃ。だがの、儂にもちと予定外のことを雁夜は仕出かした』

 

「……ほう」

 

『雁夜の奴め。どういう奇策を弄したのか、キャスターのサーヴァントと再契約すると何を血迷ったのか間桐の工房を襲い、桜をいずこかへと連れ去ったのじゃよ』

 

「そうか。なるほどアーチャーの読みは正しかったか」

 

『むっ。アーチャーとな?』

 

「いいえ。こちらの話です。それで? まさかそのことを伝える為に不可侵を破ったのではないでしょう。臓硯さん、本題を」

 

『せっかちじゃのう。その辺りは永人にも似てはいるが。ふむ、だがお主の言う事も道理。桜はの。儂にとって……いいや、衰退した間桐にとって条約を破ってまで迎え入れた大切な後継者。これを失っては儂としても、遠坂の盟友としても申し訳がたたぬ。しかし不甲斐ないことなのじゃが儂も四方八方へ手を伸ばしているのだが一向に桜の行方が知れぬ。そこでじゃ遠坂よ。間桐家は遠坂家に間桐桜の捜索を頼みたい』

 

「…………臓硯さん。貴方程の御仁に言うまでもないことですが、魔術とは等価交換。間桐家の要望は受けましょう。その対価として私の問いにも、どうか真実を答えて頂きたい」

 

『呵? 良かろう良かろう。盟友たっての望みじゃ。儂も誠意をもって答えようぞ』

 

「それでは。臓硯さん、丁度今日ですよ。我が家に件の間桐雁夜が来訪し、気になることを私に言いました。曰く、桜は貴方を生かすためだけの胎盤として扱われていると」

 

『ほほう。雁夜の奴め、そんな戯言を抜かしおったか?』

 

「戯言?」

 

『左様。なぁ遠坂の、主は魔術の深淵に恐れを無し逃げ出した様な雁夜のような半端者の言葉を信用するのかえ。いや間桐が主とする魔術は蟲の使役。遠坂の宝石と比べれば見た目は余り良くはなかろう。半端者の雁夜が間桐の修練を見て愚かな勘違いをしても仕方なきこととも言えるのう』

 

「……………」

 

『この地にき衰退したマキリにとって桜は希望なのじゃよ。マキリは儂の代から衰えの一路を辿り、鶴野の倅にはもはや魔術回路すら宿らなんだ。食い物にするなどとんでもなきことよ。魔道の修練故、蝶よ花よとはいかぬが、厳しさが桜の未来を明るいものとすると信じるからこそ儂は敢えて心を鬼にし桜を苦しめておるのじゃよ』

 

「分かりました。それでは私はこれから準備がありますので」

 

『ところで二回ほど電話したのじゃが、どうも繋がらずに切れてしまっての。あれは一体なんじゃったのかえ』

 

「なんでもありません。では」

 

 受話器を置く。すると傍でアーチャーが実体化した。

 

「今の間桐臓硯とやら、信じるのか?」

 

「いや。雁夜の言葉を鵜呑みにするつもりはないが、間桐の翁の言葉を鵜呑みにすることもないよ。あれは私よりも遥かに長い年月を生きた人間だ。嘘偽りをさも真実のように語るなどお手の物だろう。真相は私自身が確かめる」

 

「そうか」

 

「……その際は君の力を借りることになるかもしれないが構わないか?」

 

「私は君のサーヴァントだからな。君の命令にはサーヴァントとして全力を尽くさねばならんな。やれやれ。聖杯戦争に参加したサーヴァントが聖杯戦争となにも関係のない戦いに駆り出されるとはな」

 

「……すまない」

 

「謝る必要はない。私は賞賛や謝意が欲しくてこうして英霊となったのでもないし、自身になにも還らぬ戦いには慣れている」

 

「ふふふ。私のサーヴァントが君で良かった。彼の英雄王ならこうはいかなかっただろう」

 

「マスター、そういう言葉は聖杯戦争が終わったその時に言って欲しいものだな。それとマスター、間桐桜の居場所なら探すまでもない」

 

「なに?」

 

「これだ。見張りをしていたら鳥の使い魔がこれを持ってきた。君宛に――――衛宮切嗣からだ」

 

「!」

 

 アーチャーから渡されたその手紙を見る。それは正しく衛宮切嗣からの果たし状だった。

 未来において師弟ともなった衛宮士郎と遠坂凛。その親たちの激突は今まさに迫って来ていた。

 

 

 

【間桐雁夜 死亡】


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