二日目の朝。
全身から不機嫌オーラを漂わせるナナギにさすがに見かねた中村が、
「カルマ君や、ナナギのアレ、どうしたんかい?」
「大丈夫だよ、中村さん。今回はちょっとハードな暗殺になるだろうからちょっと緊張してるだけだよ。」
そういうカルマの頭にある悪魔の角を確認した中村は触らぬ神に祟りなしとやらでそれ以上は何も聞かなかった。
班別行動時間。
うんざりとした顔で歩くナナギにカルマは、
「ナナギ君、まだ頭の中で割り切れてないの?」
「割り切るも何も・・・」
大屈辱だぞ、と呟くナナギだが、
「でも臨時で助かるから普段使ってるお米の残りまとめて全部くれるってお店の人言ってたけど・・・」
その言葉にピクリ、と動きが止まる。
ナナギはとある事情で家賃から生活費まで全部自分で稼がなきゃならなくなっているわけで。
ナナギの頭の中で屈辱と明日のごはんが天秤にかけられる。
「おそらく一週間は食事に困らないだろうねぇ」
追い打ちをかけるカルマ。
「・・・・・・・・」
結果。明日のごはんがwinすることになり、ナナギは腹を決めざるを得ない状況となった。
「決まりだね~」
カルマが悪魔の笑みを浮かべて言った。
そして殺せんせーが合流し、向かった先は
「町娘メイド喫茶」
かわいい女の子たちが町娘のコスプレをして、ご主人様やお嬢様の相手をする、という京都名物である。
これにはさすがの殺せんせーも驚いたらしく、
「誰が考えたんですか?竹林君ならまだしも君たちにしては物凄く意外なんですが・・・?」
「ほら、僕たちいつも先生に世話になってるから、たまには恩返ししなきゃと思って」
・・・嘘は言ってない。
このセリフはカルマなどが言うと明らかに不自然なため、もちろん渚の役回りだ。
「なるほどなるほど。嬉しいです、殺せんせー。ヌルフフフフフ。」
アホでよかった・・・と全員が思った。
そんなご一行に近づいてくる町娘メイドが二人。
その一人にカルマは一瞬違和感を覚えたが、そんなわけないか、とすぐにその考えを打ち消した。
「いらっしゃいませ、ご主人様。」
ニコニコ素敵な笑顔の町娘にせんせーは早くもデレデレモードだ。そんな先生に隠れて、
「カルマ君、今の録画した?」
「オッケー、茅野ちゃん。高画質で保存成功!後でクラスのメールリンクに送信しとくよ。」
な~んて恐ろしいやり取りがなされていたことに誰も気づいていない。
そして席に案内され、それぞれがテキトーに飲み物やお菓子を注文する。
この時点でせんせーは気づいた。
最初ナナギがいなくて不思議に思ったが、誰もそのことについて触れなかった。
そして今自分に近づいているメイドの中に隠しきれていない殺気が一つ。
(なるほど、町娘メイドに変装しての暗殺ですか。でも、詰めが甘すぎますねぇ。)
だが先生は気づいていない。そもそもカルマとナナギがいる班なのに、そんなつぎはぎだらけの暗殺を考えるわけがない。
つまり、せんせーに暗殺を気づかせる事、それ自体が罠だということだ。
せんせーがマークしたであろうメイドがテーブルの下で銃を構える。
そして殺せんせーがパフェを一口食べた、その瞬間。
今!!
町娘メイドが放った弾丸にせんせーは舐めた顔で笑うとスプーンで弾をはじき、触手で町娘メイドの腕をぐるぐる巻きにして銃を撃てなくした。
「変装を使った暗殺とは珍しい。しかし、詰めが甘い。誰が見ても不自然なところが多すぎですねぇ。もう少し工夫をしてください?」
「すみません。次から気を付けます。」
いつものナナギとは違ういやに淡々としたしゃべりに先生が違和感を覚えた、その時。
背後から感じた研ぎ澄まされた殺気・・・
「にゅいやぁ!?」
まさか・・・
もらった!!
長い黒髪のかわいい、というより美人の町娘メイド。
殺せんせーがマークしたであろうメイドではない。
しかし、そのメイドは・・・
篠宮那凪であった。
ナナギマジご愁傷様。
女装だけでも屈辱なのに「いらっしゃいませ、ご主人様」とはかわいそうに・・・