今回は幻想御手と禁書目録編への接続ということで、かなり短めです。
「暇だな……」
腕時計の針が指すのは既に正午。ゆっくり座ってられる時間もないくらい忙しい日もあるのに、今日だけは何の予定もなかった。
忙しい人間が急に時間が空くと、なにをすればいいのかわからなくなる。
家にいても暇だし、かといってウィンドウショッピングなんて暑くてできっこないし、ファミレスで時間を潰していた。
ドリンクバーでかなり粘っていたのだが、混んできたので流石に悪いなと思い始めた頃、グループがこっちにやってきた。
「相席、大丈夫ですか?」
「いや、もう出るよ……ってあれ。昨日の風紀委員と佐天涙子さん……だっけ」
「あっ、上条さん」
昨日のゴタゴタで世話になったツインテールの風紀委員と、上条が能力開発を手伝うことになっていた佐天涙子。
それに見たこともない花飾りの少女と、それから茶髪の常盤台の生徒。それに、白衣を着た女性。
茶髪の生徒と、白衣の女性には心当たりがあった。
(超電磁砲に……木山春生? どういうメンツだ?)
「黒子、佐天さん。この人と知り合い?」
「なんでも研究者だそうです。今度、私の能力開発を見てもらうんです」
「そうなんだ」
御坂美琴は、多少訝しげな視線を上条にぶつける。
見知らぬ自称研究者が能力開発を見ると言って、信用する人間はそういないだろうから当然だ。
むしろこの佐天涙子が純真すぎて将来が心配になる。
スッ、と御坂は右手を差し出し、にっこり笑顔を作って、
「御坂美琴です。……えっと、上条さん?」
「上条当麻だ。よろしく」
「相席させてもらいますね」
「いや、俺はもう出るから大丈夫だよ」
相席というのもかなり気まずいので、出ることにする。
研究員の大人としか会話する機会がなかった上条にとって、同世代の女の子というのは珍しい存在だ。
どうやって対応すればいいのか、よくわからなかったりする。
『アイテム』でも麦野は昔馴染みだが、絹旗やフレンダ、滝壺とはどう関わればいいかわからないときがある。
慣れなのか才能なのか、上条は少し悩みながらファミレスを後にした。
外に出れば照り付けるような日がさんさんと降り注ぐので、あまり出歩きたくはない。
五分ほど店前で熟考した後、結局家に戻ることにする。
*
家に戻ったのは、夕方を過ぎた頃だった。
不運にも火災事故が各地で発生して、交通機関が一部麻痺していたようで、帰るに帰れなかった。
歩いて帰れるような距離ならいいのだが、『アイテム』の隠れ家は第一一学区にあるため、歩いて行くには少し遠い。
『アイテム』は今日、学園都市に侵入した外国のテロ組織とやらを騒ぎにならない程度に始末する任務に出ている。
本来のアイテムの仕事からは若干逸脱しているが、統括理事会の仕事のためかやはり報酬金が桁違いだったから引き受けたそうだ。
能力者でもない敵を相手取るのは不向きな上条は、今回はお留守番だ。
「あいつらだけでやれんのかな?」
心配なのは麦野沈利である。
昨日から妙にピリピリしていた。石織慧里の見舞いに行ったころからだ。
おおかた、あのカエル顔の医者に何か言われたんだろう。ああいうときの麦野はわりとやらかしたりすることがおおい。
キレて『原子崩し』乱射して退路を断ったり、ガス欠になったり。まあ、そういうところがあるから放っておけないのだが。
心配しながらもどうにかやるだろうと思って少しして、隠れ家のドアが開いた。
「随分早いな……」
しかし帰ってきたのは傷だらけになった絹旗最愛だけであった。
「上条! 麦野が、麦野が……ッ!」
「どうしたんだ絹旗!?」
「長身の、女に……一撃で! もともと超おかしかったんです、シスターを抱えてるなんておかしいに決まって……!」
絹旗は混乱しているようだ。落ち着かせて状況を聞くに、ターゲットは二人。
一人は神父のような格好で、あらゆる場所に何かの記号が書かれた用紙が貼られていて、そこにおびき寄せられた途端、大きな炎の巨人が出現した。
炎の巨人は滝壺でも感知できず、いわくAIM拡散力場を持っていない。
それに、麦野の『原子崩し』をなんども受けても再生し、きりがない。
ようやく記号が書かれた用紙が関係していることに気づき、用紙を一つ一つ焼いていると、次ぐに長身の女が現れたという。
気がつけば、麦野もフレンダも滝壺も倒れこんで、『窒素装甲』を纏っていた絹旗だけが辛うじて意識を保っていられたらしい。
(AIM拡散力場を発していない炎の巨人? 一瞬の間に麦野たちがやられた?)
どうやらただのテロ組織ではなさそうである。
麦野たちが全滅したのであれば、上条が助けに行かなければならない。
しかしそんな奴らに『幻想殺し』が通用するとも思えない。
……『幻想殺し』は捨てて、『木原』になるしかない。
簡単にオン・オフできるような代物ではないが、ある程度傾倒させておけば、勝手に性質は変わっていく。
上条は自室から、武器になりそうな試作品を何個か持ちだして、絹旗の示したポイントまで急ぐ。
幸いにもそれほど遠くない地点での戦闘だったらしく、そこから二十分程度走ればついた。
しかしそこに、麦野たちの姿はどこにもない。あったのは、地面に腰掛けてタバコを吸う神父の姿だけだった。
「おい。あいつらはどこにいった」
「……彼女たちかい? それなら神裂が連れて行ったよ。……まったく、統括理事会とやらも意思統一ぐらいやっといて欲しいもんだね」
「そっか……。なら―――テメェはぶっ飛ばす」
「野蛮だね、この街の住人は……」