とある木原の幻想殺し   作:TinaTora

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今回はバトル一色です!



6th_Battle_『Frame_of_Titan』_(7/20)

上条はそう啖呵を切ったのはいいが、神父服を纏う明らかにオカシイ男がどんな力を使うのかも把握していない。

絹旗から聞いた『長身の女』とか『炎の巨人』とかいう話はあまり要領を得ないし、それが能力なのかどうかもハッキリしない。

いくら『木原』として性質を開放したとはいえ、相手の操る力の正体を掴まなければ、結果は生まれない。

前提を理解するのが、科学の絶対条件であるからだ。

ならば――

 

「こないのかい?」

 

「わかってるさ」

 

上条をどこか馬鹿にしているのか、何も考えていないのか、タバコを地面へと捨ててポケットからもう一本のタバコを取り出した。

闇雲に突っ込んで、あの近くが罠だらけだった場合、状況は敗戦一色になることは目に見える。

やはり仕掛けさせるのが一番いいのだが、相手は仕掛けてくる様子もない。

このまま我慢比べをしたいところだが、麦野たちが連れ去られている以上そんな余裕もない。

ならば、どうするべきか。

 

「……少し待ってくれよ」

 

「いくらでも待つよ。こっちは時間はたっぷりとあるんでね」

 

スパーっとタバコを吸う様に少し苛立ちを覚えるが仕方がない。

ポケットから携帯電話を取り出して、あることを思いついた。

 

「それで助けでも呼ぶのかい?」

 

ケタケタと神父服の男は嗤う。上条もまた、にやりと不敵な笑みを浮かべる。

上条が握っている携帯電話は、上条の妹分である木原円周がイタズラで作った『赤外線探知機』である。

赤外線通信機能が取り付けられた携帯の赤外線量を数百倍に引き上げ、赤外線の反射で目に見えない物質の把握に使用するものだ。

実際にはイタズラマシンなので精度は低いしすぐ電池は切れるしで到底実戦では使えないのだが、これにはこういう使い方がある。

上条は左腕の袖を引きちぎり、何度が握ったり開いたりを繰り返しながら、

 

「Starting/Operation『Ver.AutoCouture』」

 

神父服の男にとっては暗号か、呪文のように聞こえただろう。

しかしこの言葉こそが、彼の研究の集大成である『カートリッジ式AIM即時能力装置』の始動を意味するものである。

左手が妙な機械音で包まれると、ガチャガチャと音を立てては腕から数本のパイプのようなものが突出する。

人工皮膚に包まれた腕はミチミチと引き裂かれ、冷たい金属が姿を現す。

『カートリッジ式AIM即時能力装置』は、AIM拡散力場の情報を保存したカートリッジを差し込むことで、その能力を一定時間だけ使用できるものだ。

昨日戦った『赤外熱量(インフラレッド)』のAIM拡散力場情報をカートリッジに差し込み、そして赤外線探知機を神父に向けて、一気に放つ。

赤外線探知機は探知するために赤外線をわざと拡散させて放つため、『赤外熱量』によって熱量を得た赤外線は神父の体を一気に溶かす――。

筈だった。しかし、

 

「甘いね。流石にあれが来た瞬間、ヒヤッとはしたけど」

 

「……?」

 

どうやら神父のもとへと向かった赤外線は、神父の眼前で何かに遮断されたようだ。

しかし、あの男が何かした様子もなかった。

となれば、あの周辺に何か仕掛けがあるに違いない。

炎の巨人が神父の出したものであるなら、神父の力は近・中距離型のものである可能性が高くなってきた。

上条はポケットからカートリッジを取り出して、『赤外熱量』のカートリッジと入れ替える。

 

「Starting/Program『連射光線(ガトリングレーザー)』」

 

連射光線。その名の通り、熱量を持つ光線をガトリングガンのように放つ能力である。

彼は左手から光線を放ち続け、煙で辺りが覆われた辺りで再びカートリッジを入れ替え――

 

「Starting/Program『音響破壊(ハウリングアウト)』」

 

畳み掛けるかのように、左手から超振動の音波が放出され、音響兵器顔負けの破壊力で辺りを粉々に砕いていく。

しかし、神父の男には傷ひとつついていない。それどころか、タバコを吸っていられるほどの余裕をもっている。

やはり男はなにか隠し球を持っているようだ。

ようやく煙が晴れだすと、神父の男の左手に一枚の小さな用紙が握られていることに気付く。

あれが絹旗の言っていたやつなのだろうか。

神父の男はいつのまえにか瓦礫の至る所に同じような紙を貼り付け、そうしてブツブツと何かをつぶやいていた。

 

「――吸血殺しの、紅十字ッッ!!」

 

ゴオッッ、と空気が大量の炎によって押し出される。

大能力者もくだらないほどの火力が、無防備な上条に襲いかかる――。

とっさに右手を差し出すと、コンクリートが熱でへしゃげるほどの大火力が、一瞬にして霧散する。

これは、やはり『異能』の力。幻想殺しを持っていなければ、今頃コンクリートに肉の焦げた破片がへばりついていただろう。

 

「どうやって消したかはわからないけど……まぁ。消えないものを作ればいいんだけどね」

 

「やらせるか」

 

冷静に判断を下し、そして勝機が見えてきた。

相手は単純な『熱系能力』。それが超能力にしろ、フォーマットの違う『異能』にしろ、ただそれだけのものだ。

 

カートリッジ式AIM即時能力装置(こんなもの)まで持ちださなくても、勝てただろう。

麦野たちの安否も心配だし、これ以上あの男の能力の披露を付き合うわけにはいかない。

 

上条はギュッと右手拳を握り、再び何かを呟いている神父の男への距離を詰める。

そして顔面めがけて腕を振り上げたところで、上条と神父の間から何かが生み出された。

爆発的に広がったそれは空気ごと上条を押し飛ばし、まるで怪物の雄叫びのような声を学園都市の夕空に響かせる。

これが絹旗の言っていた、『炎の巨人』。

 

「『魔女狩りの王(イノケンティウス)』、よく憶えてくれよ? あの世でこいつの強さを広めてほしいからね」

 

「……なめやがって。邪魔だ」

 

右手を一振りして、『魔女狩りの王』はどこかから鳴り響く破壊音とともに、空気に散りゆく。

『幻想殺し』のまえでは、そんなデカブツは木偶の坊で、ハリボテのようなものだ。

しかし、しばらくして、気付けば背後に消えたはずの『魔女狩りの王』が悠然と立ち誇っていた。

絹旗が再生するといっていたのはこういうことか。幻想殺しで全て破壊しても、全て元通りで復元されるようだ。

 

「チッ……」

 

そう舌打ちをしたときだった。自分たち以外だれもいない筈のその場所で、ケタケタと笑う若い女の声があった。

ぐるんぐるん、と妙な杖を振り回しながら闇から現れたのは、中学生……あるいは小学生ほどの小さな女の子。

しかも日本人ではなく、西洋人。顔立ちはインディアンやヒスパニックのようなアメリカ系ではなく、ゲルマンやイングランドの西欧人。

後ろには執事のような格好の男が立っており、あきらかに一般人からは逸脱した雰囲気を持っていた。

 

学園都市(こんなところ)まで出しゃばってくるのかい? 魔術結社(きみたち)は。何か探しものでも?」

 

学園都市(こんな片田舎)まで出てきたのも、お前たちイギリス清教のせいだと言いたいがな」

 

「……なるほど」

 

杖を振り回しながら、唖然とする上条のもとまでやってきて、歳には不相応な笑みを浮かべ、

 

「『幻想殺し(イマジンブレイカー)』だな? どうやら科学に染まりきってしまったらしいが、『幻想殺し』としての性質が変質してなければそのへんはどうでもいい」

 

「……誰だお前は?」

 

「私はレイヴィニア=バードウェイ。禁書目録(悲劇のヒロイン)を取り返すために、こんなところまではるばる足を運んできた」

 

                  *

 

 

姉であるレイヴィニアが上条に接触している頃、学園都市への進学を夢見ていた妹のパトリシア=バードウェイは第七学区を散策していた。

というのも、今回学園都市に来れたのは日頃からの行いと、姉へ好物を献上しまくった成果である。

いずれは進学を認めてもらうとして、今回はやりたいことがあってここまできた。

大覇星祭などでは見たことがあるが、超能力というものを生で見てみたい。

というわけで、大覇星祭の優勝校の常連である常盤台中学や長点上機学園の制服を着ている人を見つけたら、頼み込んでみることにする。

しかしなかなか見かけないわけで、更に暗くなってきたのでもう諦めようと思っていた頃、偶然にもセブンスミストと呼ばれる服屋の中で見つけた。

 

「あ、あの」

 

「はい?」

 

「私、イギリスから来たんですけど。本物の『超能力』というものを見てみたくて」

 

「えっ……いいけど。ここで?」

 

「おねがいします!」

 

常盤台中学の制服を着た、茶髪の少女はそんなパトリシアの頼みを断ることができず、手のひらで電気を発生させた。

それでも超能力をハッキリと見たことないパトリシアからすれば、それは人生観を変えるほどの衝撃であった。

そうして、それを見て確信する。絶対に、学園都市へと進学したい――

 

「ありがとうございました」

 

「いえ、そんな大したことじゃないわよ。じゃあね」

 

そう言って御坂が踵を返したその瞬間に、彼女の電磁センサーに突然人が現れた。

まるで空間移動したかのように、その場に忽然と。

しかし把握する限り、黒子ではない。すぐに振り返れば、日本刀を携えた長身の女性がパトリシアの眼前に立っていた。

Tシャツに片方の裾を根本まで破ったジーンズ、それにウエスタンベルトをつけた明らかに怪しい格好の女性。

 

「パトリシア=バードウェイですね? 少し来てくれませんか?」

 

「あ、あなたは誰ですか?」

 

「それは言えません。あなたのお姉さん絡みのことで、少し」

 

「……信用できません。姉からは何も聞かされていませんし」

 

「そうですか……。なら、少し眠っててもらいましょうか」

 

スッ、と右手を振り上げた瞬間に、御坂はその腕を掴み、ギロリと睨みつける。

まさにテンプレートのような誘拐文句を目の前に繰り広げられ、黙って見過ごすわけにはいかない。

長身の女性はふぅ、とため息を吐いて、御坂の手を振り払う。

 

「あなたは?」

 

「それはこっちのセリフよ誘拐犯。こんな公衆の面前で……度胸は座ってるんだろうけど」

 

「誘拐、面白いことを言いますね。……私は一般人を傷付けることはありません。すぐに立ち去ってください」

 

「馬鹿なのあなた? もしかして私をなめてるでしょ?」

 

バリバリ、と電雷を放出して長身の女性を威圧する。

しかしそんな御坂にも顔色一つ変えない長身の女性は、一言だけ、意味ありげな言葉を発した。

 

「私は『聖人』です」

 

「……?」

 

「わからなければ、それまでのこと」

 

そして、目の前から長身の女性は消える。

次の瞬間、自分の背後に現れて、人間をはるかに越えたスピードから御坂の首元めがけて手刀が放たれる。

御坂の優れたサーチ能力がなければ、今の攻撃で意識を手放していたであろう。

女の手刀は、どこからか現れた砂鉄の塊によって遮られ、ここで初めて女の顔色が変わった。

 

セブンスミストは今日も大盛況であった。しかし、そのワンフロアでは学園都市最強の『超能力者(レベル5)』と、魔術サイドでも最強クラスの『聖人』の明らかな対峙があった。

パトリシアという少女をかけた攻防戦が、この平和なセブンスミストの一角で繰り広げられる――

 

 




次回は聖人VS超電磁砲がメインです!
更に、あの超能力者が加勢するかも……
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