デスゲームに出会いを求めるのは間違っているだろうか 作:わかめ
ベルは2層の街で一泊すると、今度は3層を目指すために駈け出した。
幸いにも彼は宿に泊まる事ができ、疲れもでていない。この調子ならば今日のうちに6層までは到達できるのでは?と淡い期待を抱いているベルはフィールドでポップするモンスターを一刀のうちに倒し、3層への道を探す。
実のところ彼は2層に街がある事を想定していなかった。何故冒険者も居ないのに街が出来ているのかを疑問にも思ったがそういうものなのだと自身で納得し、回復アイテムらしきものを買い込んで散策している。
彼は更にこのゲームについて理解し始める。例えば特定のモンスターを倒すと装備が手に入るとか、この世界でのお金はコルというものだとか…
他にも様々な未知に遭遇しつつも彼は純粋に今の状況を楽しんでいる。
思えば彼が本当の意味で冒険をするのは初めてのことかもしれない。彼が普段潜っているダンジョンは言わば既に攻略されたもの。それを彼がなぞるように踏破しているのだ。しかし、今は違う。誰もしらないフィールドを自分の手で踏破する。それに彼は一種の達成感の喜びを胸に抱いていた。
それも、順調に進めばだが…
2日間、彼はこの階層を調べまわった。幾つかの街で身体を休めつつ散策する。それの繰り返しだ。
1層では働いた幸運のステイタスもなりを潜めてしまっている。
その日も特に成果も得られなかったことにため息を吐いて2層に来た時に最初に辿り着いた街に入っていった。
街では何人かの冒険者の姿を確認したベルは心底驚いた。まさかレベル1で大型モンスターをこんな短期間で倒すとは、と内心で感心していたが、実のところそれは間違いである。
街に辿り着いた彼らはある程度のマージンを確保しつつもボスの居ないボス部屋を素通りしてこの階層へと辿り着いていたのだ。
今も腕を組んで頷きつつ感心しているベルはここで町の入口にある何かが光っていることに気付いた。
門のような大きな物は青白い光を放っている。不思議に思ったベルは近くに居たフードを被った人物へと話しかけた。
「あのぉ、すみません」
「ん?なんダ?」
少し独特なイントネーションの言葉を放つ人物は声の方向、ベルへと身体を向ける。
それによって顔が見えるようになった人物。女性はベルの髪を見て少し驚いた。
もう髪の色を変えたのか、と彼女は思ったが直ぐに彼の目を見てその認識を変えた。
赤い目、白い髪、彼女はそれによって目の前の少年はアルビノなのだと自己完結し彼の返答を待った。
「あの光っているのって何ですか?」
「は?」
あり得ないものを見たというように彼女は目を見開く。何故転移門すら知らないプレイヤーが2層まで来ているのだろうか、何も知らずにプレイし始めたのなら昨日の一件で始まりの街に引きこもっているのが妥当だろうにと思ったが、目の前の少年の質問を待つ目に自分が返答していないことに気付き説明する。
「あれは転移門って言ってナ、あれを使うと階層間で移動が出来るんダヨ。まあ、階層に辿り着いて転移門を開かないと使えないけどナ」
「そうなんですか、ありがとうございます!」
そう言い頭を下げた少年に彼女は疑問を抱く。
「なあ、アンタレベルは幾つだ?」
「僕ですか?level2ですよ」
全くなんと恐れ知らずなのだろうか、このSAOでは安全なマージンはその階層プラス10以上のレベルだとされている。少なくともプラス3程度は無いと階層を上がるなどの無茶はしないものなのだ。
だが目の前の少年はまだlevel2。戦闘向けではない彼女ですらlevelは6なのだ。
何も知らない様子で転移門を眺めている少年に彼女は危うさを感じる。
ここで見殺しにしてしまうのは彼女としては非常によろしくない。主に精神的に。
出来るならば彼女の知り合いである剣士にでも任せるのがいいのかも知れないが生憎と彼は現在体術スキルを獲得するために岩を割っている最中である。
ため息を吐いて彼女はベルへと話しかけた。
「アンタ、暫くの間オレっちと行動シナ」
「はい?」
「あんまりこのゲームについてわかってないダロ?ビギナーをそのまま見殺しにしたら後味が悪くなるんダヨ」
「は、はぁ」
いまいち要領を得ていない少年に再度頭を掻きながら彼女は告げた。
「パーティ組めって言ったんダヨ。ある程度のレベルになるまでだけどな」
「level…具体的には?」
「まあ10を目標にかナ」
「ええ!?何年かけるつもりですか!?」
「何言ってんダ」
ガビーンという効果音が似合う顔で驚いている少年を見て再度ため息を吐いた彼女は、この知り合いと声がそっくりな少年の未来を考えて頭を押さえるのであった。
「で、でもそれくらい強くなれるならなりたいです!!」
「決まりダナ。オレっちはアルゴ。情報屋で鼠のアルゴって言われテル。これからよろしくナ」
「ぼ、僕はベル・クラネルです!!」
アルゴ姉さんって実は面倒見がいいと自分の中では思っています。
あと、自分の声って他人が聞いている声と違うじゃないですか?だからブラッキー先生もベルくんも声に関して触れなかったんですよ。