デスゲームに出会いを求めるのは間違っているだろうか 作:わかめ
ギルド、極夜の鼠の一員となったベルは、1層で狩りを続けていた。何故彼が3層で狩りを行わないのか。3層のモンスターが強く、倒せないからではない。寧ろ倒すのは簡単だろう。
ならば何故か…それはプレイヤーたちの平均レベルを上げる為の時間を稼ぐのと、モンスターにやられる初心者達を極力減らすためだ。
確かにベルがいれば暫くは順調にボスを倒していけるだろう。しかし、何時ベルでも通用しなくなるかはわからない。その時に平均レベルが低く、攻略組が死んでしまえばこのゲームをクリアするのはほぼ不可能になってしまう。
それを避けるためにアルゴは暫くの間のフロアボスの攻略を禁止した。時期を見て攻略すると言っていたが、ベルは内心で不満に思っていた。彼は一刻も早く自分の世界に帰りたいと思っている。確かに戦闘において仲間というのは大切だとベルは理解している。それでも早く帰りたいという気持ちは強い。ベルはそれをアルゴに伝えた。
アルゴはだからこそ待つべきだ、とベルに告げた。ちまちま攻略するのではなく、一度力を溜めてから一気に突破したほうが早いと…
ベルは何も言えなかった。自分が持つスキル、英雄願望があればもしかしたら100層までクリアできるかもしれない。相手が強ければ強いほどその威力を上げる逆転の力。今は意味が無いが、後半になればなるほど効果の出るスキル。
まあ、溜める時間が必要だというデメリットはあるが、それでもちょっとやそっとじゃ負ける気は無かった。
そこで、ふと思う。自分は何故ここまで強気になっているのかと…ほんの2ヶ月前にはミノタウロスに殺されかけるほどに弱かった自分。1ヶ月前にミノタウロスを倒すまでになれた自分。レベル3の相手を倒せた自分。確かに強くはなっている。しかし、それが今の気持ちに直結するのは果たして良いことなのだろうか…自分は慢心しているのでは?
そうベルは思い、恥ずかしくなった。何故ここまで自分の力を信じてしまっていたのか、自分は本来はまだまだ駆け出しの冒険者。何故かは分からないが成長が早い冒険者なのだ。二つ名が示す
ボアを一刀に伏せ空を見上げる。今頃2人もそれぞれの役割を果たしているのだ。自分も役目を務めないといけない。
一時とは言え大事な仲間なのだ。ヘスティア・ファミリアの危機を助けてくれた友人たちのように自分も彼らを助けなければならない。
目の前には始まりの街が見える。アルゴの情報から、未だにまだ多くのプレイヤー達がこの街に留まっていることをベルは知っている。
彼らの境遇も知っている。知らぬ内に戦いの世界に放り出された人達。覚悟を持つ時間も無かった人達。そんな人達を助けたいという気持ちもこのゲームをクリアしたいというベルの心を後押ししていた…
視界の端でキラービーに囲まれている集団が見える。あの数、少し初心者には厳しいだろう。そう判断したベルは駈け出し、牛若丸弐式を構え、突っ込む。相手が攻撃の意識を向けている証、ヘイトを示すカーソルが目の前の集団の赤い髪の男を指している。曲刀を構えた男、あの集団の中では動きが一番良い男は恐らくは大丈夫だろう。問題は少し腰が引けている人達。そちらを優先して助ける。
ベルは距離を詰め、キラービーを背後から一撃で切り捨てる。一度振るえば2,3匹を屠る。
更に三度振るう。キラービーがポリゴン体となっていく、少し離れた位置のプレイヤーに襲いかかろうとしているキラービーが見えた。
「ファイア……!」
思わず魔法で消し去ろうとしたが、昨日アルゴに言われた言葉、「魔法は使うな」という言葉を思い出し、止める。足に力を入れ、跳躍しながらキラービーを倒す。
ギリギリで間に合った。残っていたキラービーも赤髪の男が倒していた。
息を吐き牛若丸弐式を仕舞う。魔法を使ってはいけない。アルゴの話ではプレイヤー達は嫉妬深く、システム上あり得ない魔法を使うことの出来るベルの事を知れば何をしでかすかわからないとの事だった。
自分も魔法を使えなかったからわかるが、ベルの場合はいつか使えるようになる希望を持って戦ってきた。
偶然魔法の力を手に入れたが、使えない者にとっては羨ましく思うのは仕方のない事なのだとベルも納得していた。
「いやぁ、助かったぜ」
赤髪の男は曲刀を仕舞い、ベルに近付く。他のプレイヤー達は安堵したような顔を浮かべてその場に座り込んでいた。
「あの数に囲まれるのは想定外だったんだ。もしアンタが居なけりゃ俺達はどうなっていたか」
恐らくこの男だけならば助かっていただろう。まだ戦えない仲間がいたからこそ先程のように追い詰められたのだ。
その事にこの男も気付いているだろう。ベルもまた何故そのような事をするのかも理解している。
仲間を大事にする男をベルは好ましく思い、笑みを浮かべた。
「通りがかりで貴方達を助けられて良かった」
「俺はクラインだ。まだ正式に登録はしてねえけどこいつらとギルドをつくろうと思っている」
差し出された手をベルは掴む。筋力ステータスの差故にクラインの手に痛みが走るが、クラインは冷や汗を流しながら笑った。
「僕はベル・クラネル。ギルド、極夜の鼠のメンバーだよ」
「ああ、既にギルド入ってたのか、出来れば仲間になって欲しかったが仕方ないな」
正直に言うクラインに苦笑し、その手を離す。
「そういやあお前さんその髪は地毛なのか?」
「はい、そうですよ?」
「へぇ、珍しい。アルビノってやつか」
「いまいちわかりませんけど、まあ生まれた時からこの髪でしたよ」
ベルの世界では普通でもここのプレイヤー達には異常な事態も存在する。その逆も然りだが、それでも驚愕されるのは少数のベルだ。
自分がギリギリの綱を渡っている事に気付かないベルは首を傾げながらクラインを見つめる。
「ってか、あんたキリトと声そっくりだな」
「そうですか?自分ではそう思いませんけど」
「……キリトと知り合いなのかよ」
思わず漏れたようなクラインの言葉に反応してしまう。声というものは案外自分が聞いている声と他人の聞く声は違って聞こえる。だから他人からの指摘には少し疑問を持ってしまうのだ。
キリトも同じ様に思っていて、アルゴに指摘されても二人揃って首を傾げる結果に終わってしまっている。
「キリトさんも同じ極夜の鼠のメンバーですよ」
「あいつ、俺の誘い蹴っておいてギルド入ってんのかよ!」
「まあ、昨日出来たギルドですけど」
「つうことはあれか?最前線のギルドってことか?」
「3層が活動拠点ですね」
「まじかよ」
驚きを浮かべる顔のクライン達にベルは何故驚くのか疑問に思いつつ、自分の仕事を思い出しクライン達に告げる。
「じゃあ、僕はまだやることがあるので、この辺で失礼します」
「あ、ああ。俺達も今日のところは帰って休むとするよ。今日は助かったよ」
「はい。気をつけてくださいね」
走りだしたベルの背中を見つめ、クライン達は少しの間その場で突っ立っていたが、空が赤みがかってきた為、街に帰っていった。
文章書くのって難しい