ラブライブ! その旋律は誰がために   作:米津

5 / 31
#05 セカンドインパクト

 

 

海未との再会から数日が経ったある夜。

 

 

勉強していた手を一旦休め、物理の問題集から目を離すと、先日クラスメイトの太一に貰ったCDが視界に入った。同時に貰っていたDVDの方に夢中で、CDの存在をすっかり忘れていたみたいだ。

 

休憩がてらPCにCDをセットすると、インポートされたのはたった1曲だった。

 

 

どれどれ……『START:DASH!!』、か。

 

わざわざCDに1曲だけ入れて渡すなんて、よっぽど太一のオススメの曲なのだろう。

期待感に胸を膨らませながら、再生ボタンをクリックした。

 

 

 

 

――START:DASH!!

 

 

 

 

 

 

~~~

 

 

 

 

 

 

……してやられた。

 

 

なんてこった。めちゃめちゃいい曲じゃないか。

 

 

 

 

曲名の通り、始まりを予感させるようなピアノから始まるイントロ。

 

ポジティブさを前面に打ち出したAメロ、サビへの期待感を増長させるBメロ。

 

そして、力強く、それでいて切なさを孕んだサビ。

 

 

 

構成はいたってシンプル、J-POPの王道だ。

コード進行だって特別変わったことをしているわけではない。

ラスサビの転調によるドラマチックな演出も常套手段だ。

 

 

それでも、聴き終わった今、俺は心惹きつけられている。

 

 

いや、シンプルだからこそ、王道だからこそ、突き刺さるものがあるのだろう。

王道というものは、多くの人に愛されるから王道なんだ。

 

 

細かい理論理屈を抜きにしたって、本当にいい曲だと思う。

こんな曲をライブで聴いたら、泣いてしまうファンがいてもおかしくないかもしれない。

 

メンバーが踊りながらこの曲を歌う姿を想像するだけで、込み上げるものがある。

そんなポテンシャルを秘めた、曲なのではないだろうか。

 

 

 

そして、にわかに信じがたいが、この前聴いた曲も、この曲も、作ったのはμ'sのメンバーだ。

同年代、ひょっとしたら年下かもしれない女の子がこの素晴らしい曲を書いたのだ。

 

 

一体何者なんだろうか、気になって仕方がない……!

 

 

 

~~~

 

 

 

居ても立っても居られなかった俺は、急いでメッセージアプリを起動する。

 

選択した画面のトップには、この前登録したばかりの名前が表示されている。

 

 

      『こんばんは、ちょっといいかな』

 

 

こうして彼女に連絡を入れるのは初めてだ。

文字でのコミュニケーションに対する違和感のせいで打ちこむのに少し時間がかかってしまった。

 

 

しかし、本当にいい曲や物語なんかを発見した後は、いつも不思議な感覚になる。

ため息がこぼれることもあるし、自然と笑みが浮かんでくることも。後者は外でやったら不審者扱いされそうでマズイけれど。

 

 

……なんて考えていると、先ほどのメッセージに対する返信の通知が。

意外と返信早いタイプなのかな?

 

 

『園田海未:こんばんは、大丈夫ですよ』

 

      『ついさっきSTART:DASH!!聴いたよ!』

 

『園田海未:いきなり何の報告ですか……』

 

      『いや、初めて聴いたけど凄く気に入ったからこの感情を誰かに伝えたくて!』

 

『園田海未:それは、ありがとうございます』

 

      『本当にいい曲だと思う!μ'sのメンバーが作ってるんだよね?』

 

『園田海未:ええ、うちの1年生の子が作っているんですよ』

 

      『1年生なんだ!何ていう子なの?』

 

 

μ'sの作曲家は1年生なのか!まさか本当に年下だとは……

 

 

『園田海未:西木野真姫という子ですよ。……やけに食いつきますね』

 

      『西木野さんか…… そ、そんなことないぞ?』

 

『園田海未:まぁ、気にしないことにしますね。真姫がどうかしたのですか?』

 

      『実は、西木野さんに会って話をしてみたいな、って……』

 

『園田海未:悠人……何を企んでいるんですか』

 

   『海未さん!そんなことありませんよ!信じて!』

 

 

おかしい。文字しかないはずなのに海未がジト目をしているのが手に取るようにわかる。

 

でも確かに、見ず知らずの女の子に会いたいとか急に言い出すのはまずかったかな……?

 

 

 

『園田海未:まぁ、そこまで言うなら信じましょう。真姫と、会ってみたいんですね?』

 

      『うん、叶うことなら会ってみたい』

 

『園田海未:もう、仕方ないですね。ただ、ちょっとセッティングには時間がかかりそうです……』

 

      『セッティング……?』

 

『園田海未:それは聞かなくていいです!色々あるんです!』

 

      『よくわからないけどごめんm(__)m』

 

『園田海未:では、真姫の了承が取れたらまた連絡しますね』

 

      『ありがとう!海未に話してよかったよ』

 

 

メッセージの応酬が続いているうちに、西木野さんと会えることになったらしい。

海未にはギターやらバンドの話をしていたし、察してくれたのかもしれない、ありがとう。

 

セッティング……?に時間がかかるらしいけれど。思い切って頼んでよかった。

ちょっとは信頼されているってことなのかな?俄然楽しみになってきたぞ。

 

 

      『ところで、μ'sの曲の作詞は誰がやってるの?』

 

『園田海未:おやすみなさい』

 

      『ええ?!いきなりすぎるよ!ちょっと!』

 

『園田海未:その話はまた今度です!』

 

      『ええええええ』

 

 

こんな具合に初めてのメッセージのやり取りは終わってしまった。

文字になっても海未は海未で相変わらずだったけど、やっぱり結構新鮮かもしれない。

 

まだ20時だというのに、海未はお休みになられてしまったらしい。……絶対嘘じゃん。

 

今のやりとりで若干察してしまったけど、これはまた今度聞くことにしよう。

 

 

 




スタダの感想は当初1000字弱ありましたが蛇足すぎるのでお蔵入りになりました
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。