自分の自分による自分の為の物語   作:悪役好き

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珍道中の二人は先駆者なのか古代の遺物なのか……

「あ、クルクエの新作出てる。買ってこ」

 場所はとあるデパート店の電気屋。玩具フロア。

「クルクエ?」

 時刻はまだ昼になったばかり。

「うん、クルーエル・クエスト。Z指定の激グロRPGの新作」

 平日とはいえ、そこそこ人も多く集まっており、店内では店員たちが所狭しと走り回って、各々の業務を遂行している。

「Z指定……ああ、ひょっとしてあの血がドバドバ出たり、不自然に体が欠損したり、村一つの住民全部皆殺しに出来たりする奴か」

 ゲームソフト売り場は比較的充実しており、覗き込んでいる子供や男性もおおかった。

「そうそう。お、すごい。今度は自分で国作って王様になって悪政の限りをつくす事もできるって! そういうのを求めてたんだよね!」

 何やら物騒な話をしているが、あくまでゲームソフトの中身の話である。

「何だ、クルーエルという割にはそういうのなかったのか」

 少しがっかりしたような男の声がした。

「ないない。今まではどんなに悪いことしても結局魔王を勇者として倒すか、魔王の配下になるかだったし。今度は魔王に第三勢力として真っ向から喧嘩売ったり出来るみたい。へー、魔界も支配できるんだ! いいなぁ!」

 二人の男がゲーム売り場で一本のソフトを覗き込んでいた。片やまだ年若い、緑なす黒髪をさらさらとヘアバンドをカチューシャのようにしてまとめた体のやや小さい少年。片や筋骨たくましく、純金を溶かして作ったかのような、襟足の長い髪と青いサファイアをはめこんだような瞳の男だった。

「お、ザ・ファイティングも出てるや。あと……工房シリーズも出てたよなそういえば……今回はどこだろ。森山海と来て……洞窟!? 洞窟でどうやって錬金術するんだろっ? 買いだ買い!」

 次から次へとソフトをカゴにドサドサと詰め込んでいく少年に対し、特にゲームソフトに興味を示すことなく金髪の男はぼーっとしていた。

「えーとあと……あ、呪いシリーズも新作出てる。今度はもう少し操作性がいいといいなぁ」

「……グレイタス、一体何本ソフトを買うつもりなんだ?」

「え、ダメ?」

 グレイタスと呼ばれた少年は、かくっと首をかしげた。何がダメなのか、とかこれだけ買って遊ぶ時間はあるのか、などということには一切頭が回っていないようだった。

「……私は本を見ているから、終わったら連絡を寄越してくれ」

「うん!」

 すでにこちらを見ずに、並ぶゲームのパッケージをしげしげと眺め続けているグレイタスを残して、金髪の男はため息をついた。

 

 

 それからしばらくして、夕方にまだギリギリならない頃に、二人は大きいキャリーケースをガラガラと引きながら道を歩いていた。片やゲームソフトの大量に入った手提げ、片や大量の本が入った紙袋を手に下げながら、袋の重量をまったく感じさせないかのように歩いていた。

「今日はどこのホテルー?」

「駅前のあれ、チェーン店のホテルだ」

「ええー安いとこー? どうせなら超高級ホテルのスイートとか泊まろうよ!」

 そうグレイタスが言うが早いか、金髪の男は軽くグレイタスの頭をはたいた。その時、手に下げていた本もずしっと頭にのしかかった。

「痛っ重っ。なんでだよー」

「無駄遣いは控えろ。最高級スイートなんて泊まらなくても死なないだろう」

「えー」

「それにもう予約してあるんだから文句言うんじゃない」

 抑えるところは抑えるが、趣味に使う金に糸目はつけない。それが常々金髪の男の言う持論だった。

「だってオズー! スイートなら大画面でゲーム出来るしベッドはふかふかだしさぁ!」

「口答えするならお前だけ他所で泊まるか? 金は渡さないが」

 そう言うと、グレイタスはぷぅーっとほっぺたを膨らませて無言の抗議に切り替えた。オズと呼ばれた金髪の男は再びため息をついた。

 エレベーターに乗り、フロントへと足を運ぶ。先ほどグレイタスは安いホテルは嫌だとこぼしていたが、なかなかどうして全国展開しているだけはあるのか、足元のカーペットは底の厚い靴でもよく分かるほどにふかふかで、受付の女性もまた上品なほほ笑みを浮かべていた。安いからと言って、サービスを怠るような国ではないと、オズはよく知っていた。

「いらっしゃいませ」

「予約していたオズですが」

「オズ様ですね、少々お待ち下さいませ」

 そう言うと、女性は手早くパソコンに何やら入力し、いくつかの手続きを済ませた後に二人は部屋へと案内された。

 中に入ると、比較的狭めだが普通のホテルなら標準クラスであろうという部屋であった。ベッドが2つ、小さめの冷蔵庫が一つ。机とランプスタンド、椅子が1つずつで、窓はやや小さく、ユニットバス式の洗面所。よくあるホテルの部屋、といった風であった。

「とりあえずこれ入れとこっと。お酒入れとくよオズ」

 早速冷蔵庫を開け、コンビニやスーパーで買ってきた食べ物や飲み物をひょいひょいと詰め込んでいった。

「そんで僕はこれ食べよっと♪」

 そういったグレイタスの手には生クリームのたっぷりと詰め込まれたプリンが握られていた。安っぽいプラスチックのスプーンも忘れられてはいなかった。

「もう少ししたら晩飯を食べにいくが?」

「う。……じゃあとっとく」

 少し残念そうに、グレイタスはプリンを戻すと、今度はコーラを取り出してごくごくと喉を鳴らして飲み始めた。

「結局甘い物は摂取するんだな」

「だってー」

 そう言いながら、キャリーケースからウキウキした表情でゲームハードを取り出し、一緒にしまってあったアダプタや端子を次々につないでいくグレイタス。どうやら一刻も早く買ってきたばかりのゲームをプレイしたいようだった。

 オズももう何も言わないことにし、ノートパソコンを取り出すと、インターネットに繋ぎ、不動産を扱うサイトを見始めた。

「ところでグレイタス。明日明後日で拠点になりそうな物件を探そうと思うが、ついて来るか?」

「えぇー、やだ。ゲームやりたいからパス」

 もうすでにゲームを起動させ、画面を凝視しているグレイタスは半分ほど上の空で、話しかけているオズの方を見ようともしていなかった。

「じゃあどんな部屋になってもいいんだな?」

「んー、あ、日当たりのいい部屋がいいな!」

 そう言うなりグレイタスは爆笑した。渾身のジョークだとでも思ったのだろう。

「……そうだな」

 つられたのか、オズもくすりと笑った。

 部屋の中は、しばらくテレビから流れるゲームのBGMだけで満たされていた。時折、パソコンのキーボードを打つ音がしたが、会話は一切なかった。

 

 

「……そういえばさぁ」

 何時間か経った時、不意にグレイタスがオズに話しかけた。オズが顔をあげてテレビ画面を見ると、恐らくグレイタスが操っているであろうキャラクターがいかにも豪華な装飾をほどこされた大きな宝箱を開け、その中身であったらしい美しく輝く宝石を手にしていた。

「石ってさ、なんか固有名詞ないのかな」

「例えば?」

 テレビ画面には、「これが伝説のパワーストーン……!」という台詞が表示されている。

「……パワーストーンとか」

「ゲームでの呼び名をそのまま持ってくるのはどうかと思うが」

 さすがにオズもこれには呆れ、苦笑したが、グレイタスはそうは思わなかったようだ。

「いいじゃん。別に」

 くるりと振り返って、オズをいたずらっぽい笑みで、グレイタスは見つめた。

「『あの子』ってゲーム好きだし」

「……そうなのか?」

 少し意外そうな顔をしてオズが聞くと、グレイタスはニヤリと残忍さを垣間見せるような笑みを浮かべた。

「だって、何百年も前からずっと殺し合いのゲームさせてるじゃん?」

「……これはそもそもゲームなのか? それと別に殺し合いは前提としてはいないと思うぞ」

 グレイタスは唇を尖らせ、「わかってるよ」と言ったが、すぐさま呟いた。

「でも、なんでこんなことしてるんだろうね。『あの子』」

「……さぁな」

 会話が途切れ、再びゲームのBGMだけが部屋に満ち始めたその時、鈍いバイブ音が断続的に響いた。オズがポケットを探ると、携帯電話が着信を告げていた。

「……もしもし」

 怪訝そうな顔で電話に出ていたオズだが、相手の話に相槌を打っている内に笑みは威厳に満ちたものに変わっていった。

「……そういうことなら喜んでご馳走になろう」

 そう言うと電話を切り、グレイタスに言った。

「グレイタス、今夜の晩飯は高級料理店の懐石に決まったぞ」

「ええー!?」

 グレイタスは必死に何やらボタンを連打しながら素っ頓狂な声をあげた。

「折角今いいとこなのに!」

「まだ迎えは来ないぞ」

「買ったばっかりなんだからやりたいのに!」

「そう言えば何と言ったか……。ハンター……なんとか? をプレイしている人がいてその人も一緒に来るそうだが」

「行く」

 グレイタスはあくまで正直者であった。

 

 

「いやいやいや! お待ちしておりましたオズ様!」

 黒塗りの高級車に迎えられ、オズとグレイタスは一流日本懐石の料理店へと連れてこられた。そこには招いた主、中途半端に禿げ散らかした頭で背が低く、脂ぎった皮膚で首が肉に埋もれてなくなってしまったかのような、小太りのおっさんがいた。

「久しぶりだな。……こんなに高級なところでご馳走になってもいいのか?」

 オズがわざとそう言うと、小太りの男は「とんでもない!」と声を上げた。

「オズ様ほどの方の舌に合うといいのですが!」

 まさに平身低頭、ぺこぺこと頭を下げに下げまくる男は、さささどうぞどうぞさささ、と繰り返して二人を誘った。

「あ、ねぇ! アンタがハンター・ライフやってる人?」

 グレイタスはまさに怖いものなしと言ったようで、小太りの男についてきていた男性に話しかけていた。

「え、あ、はぁ」

「協力プレイやろうよ! ソロだとレジェンドレベル狩りにいくのもめんどくさくてさぁ!」

「ああ、確かにソロプレイだとキツいですよね」

「やっぱり威力最低の弓じゃ限界だよねぇ」

「ゆ、弓!? よ、よく狩れてましたねぇ」

 何やら二人でわいわいと盛り上がり始めたが、子供二人は放置すると言わんばかりにオズは無視していた。

 

 

「ご馳走様。……日本の料理の粋を集めただけはあるな。いつも思うが、日本料理の味の繊細さは世界に誇っていい物だな」

 上品に優雅に、ナプキンで口元を拭うオズと対照的に、グレイタスは相変わらず小太りの男の部下とゲームをして遊んでいた。

「回復薬回復薬! 死ぬ死ぬ!!」

「さすがに下級装備+裸で連続レジェンドの縛りはキツ……あ、死んだ」

「僕も死んだ……これで3タテかぁ……トホホ」

 何だかよく分からない用語が飛び交っているが、二人だけで分かっていればいいらしいのでまだ放っておいていいのだろう。小太りの男も愛想笑いを浮かべていた。

「お気に召していただけたようで、いやはや! それと、忘れてはいけませんな! まだまだご賞味頂きたい物があるんですよ!」

「ほぅ?」

 そう言うと、小太りの男は一瓶のワインボトルを取り出した。袋に入っており、厳重に包まれたそれは割れないようにと細心の注意を払われて包まれていると一目で分かった。更には保冷剤もたっぷりとついて袋に入っている。

「ワインか? ……赤のようだが」

「ええ! ワインです! それも、『貴方様のために特別に作らせた』ワインです! つまみとしてこれもどうぞ!」

 小太りの男のその言でオズはワインの正体を把握したらしく、少しばかり眉を上げた。

「……そういうことならありがたく頂いておくとしよう」

 ワインボトルとそのつまみを受け取ると、すっとオズは脇に置いた。

「そのぉ……それでですな、実は今経済は非常に困窮しておりまして……」

 とてつもなく言いにくそうに小太りの男は汗を何度もハンカチで拭いながら言った。勢いが明らかに落ちており、言い出しにくかったのだろうというのは想像に難くない。

「援助か。……まぁいいだろう。いくらほど必要だ?」

「それがですねぇ……多額の援助を願えませんかと……」

「……ふむ。とりあえず1兆あれば足りるか?」

「そ、そのような額をいただけるので!?」

 突然、小太りの男は驚愕の色に加え、ギラギラとした欲望の目を見え隠れさせたが、オズにとっては興味のないことだった。

「後で送っておこう。いつもの口座でいいのか? ああ、小分けにしたほうがいいのだったか」

「は、はい! 本当に、いつもいつもありがとうございますぅぅ……!!」

 小太りの男はとうとう机からずりずりと下がり、土下座までした。

「……その話を聞いた後で、少し言い出しづらいのだが……」

「ええ! ええ! なんなりと申し付け下さい!!」

 ぺこぺこと何度も頭を下げる男。もうまともにまっすぐ立っている時間の方が少ないくらいだった。

「まぁ、取り立てて急ぎの用件というわけではないのだが、近々メディアや軍、……おっと、この国ではあれは軍隊ではなかったのだったな。まぁ、平たく言えば軍事力と報道関係の権力を一時的に貸してほしい。今すぐというわけではないから安心してほしい」

 それを聞いた男の額から、汗がつぅぅっと流れていった。

「それは……いやぁ……その…………」

「別に経済的に打撃を与えようとかそういうわけではない。ただ、大捕物を演じる必要がある時が来そうでね」

「でしたら警察に……!」

 そう聞いた途端、オズは苦笑した。今日初めて他人に見せた、笑みらしい笑みだった。

「いや、恐らくその時が来たら警察の手も借りるとは思うが、正直に言ってしまうと心許ないのでな」

 途端に、ぶつぶつと口ごもり始め、動揺の色が隠せなくなってきた男に、オズは柔らかな笑みを向けてやり、言った。

「何も君の国の警察機関をバカにしているわけじゃないんだ、総理。もっと堂々としていろ。君はこの国のリーダーであることを誇っていい」

 その言葉をかけられた、第127代総理大臣、小柴正西は卑屈な笑みを浮かべてひひひ、と声にならない声で笑った。

 

 

「ふー! 楽しかったぁ! おかげで大分欲しい素材が揃ったよ! これでレジェンド装備はコンプリートかな?」

 グレイタスは帰宅するまでずっとごきげんだった。毎日協力プレイじゃないとハンター・ライフをプレイしたくないと我侭を言ってはよくオタクの街に出没していた彼は、今回たまたま総理と同じ党に所属している若手議員が同じゲームをプレイしていると知ったのでオズに付いていったのだ。

 ホテルに帰り着き、先に風呂に入りたいと主張したグレイタスに一番風呂を譲ってやると、グレイタスは「あとはオールド装備だけ~♪」とよく分からない歌を歌いながら風呂場に消えていった。

 その隙に、オズは土産に持たされたワインボトルを開けた。よく冷えたままで、コルクを抜いた瞬間から香りが広がっていった。

「ふむ……なかなか上物のようだな」

 満足気に笑むと、オズは一緒に入っていたワイングラスにとぽとぽとワインを満たしていった。透き通るような美しい赤紫の液体が、ゆっくりとワイングラスを染めていった。

 ちなみに、一緒に持たされていたつまみは何だと開けてみれば、チーズの盛り合わせが詰められており、ご丁寧にチーズを切るためのナイフまで一緒に入っていた。いくらかチーズを適当にカットすると、オズはまず味見とワインを口に運んだ。

 ふわりと香る、みずみずしい果物の香。それはぶどうだけの単純な物ではなく、様々な他の果物をすべて集めたような物、爽やかさと甘い芳醇な香りが複雑に喧嘩することなくしっとりと絡み合い、味蕾には柔らかい甘さと軽い口当たりをもたらした。

「うん……ここまで昇華させるには相当苦労したのだろうな……」

 うっとりと感動すると、オズはカットしたチーズを、ワインの味が口腔内から消え失せる前に頬張った。すると、チーズのほどよい塩気と濃厚な風味が、残っていたワインの甘さと絡まり、甘さがより際立ち、塩気がアクセントとなって舌を楽しませた。

「わ、オズ一人で何飲んでるの! ずるい! 僕も飲む!」

 いつの間に風呂から上がったらしいグレイタスは、ばっとオズの手からワイングラスをひったくると、がぶっと一口ワインを飲んだ。

「……うぇ、何コレ」

 物凄く渋い顔をしたグレイタスは、すぐさま飲み残しのコーラをあおった。

「ああ、もったいない。これほどの物はなかなかないというのに」

 それを聞いたグレイタスは信じられないという顔をした。

「どこが!? ただの鉄みたいな味しかしないじゃん!」

「それはそうだろう。これは赤ワインじゃなくて血液を使って作られた特殊なワインだぞ」

 オズはさも当然とばかりに平然と言い放ったが、そんなものを飲んでしまったグレイタスは目を大きく見開いた。

「はぁぁ!? あのそーり何考えてそんなモンよこしたんだよ?!」

 グレイタスは幼い子どものように両手を振り回した。どうやら相当気に入らなかったらしいが、オズは肩をすくめただけだった。

「美味いのに、この味が分からないとは人生損してるな」

「これを美味いと感じるのはお前だけだろう!? 普通吸血鬼じゃなきゃ血なんて飲まないから! あと人生って言うけど俺もお前も人間じゃないからね!?」

「細かいことは気にするな。しかしホムンクルスの口にはこれは合わないんだな」

「数百年一緒に旅してて今更気づいたの?!」

「うーん、年だから忘れてしまったな。ハッハッハ」

「ハッハッハじゃないよ!? とんでもないもの飲んじゃって俺結構混乱してるからね!?」

 この二人は言い合いから分かるように、世にも珍しい、吸血鬼とホムンクルスのコンビだった。互いに何百年も前に出会い、意気投合し、今日まで一緒に世界各地を旅してきたのだ。双方の身に宿した不死性と不老性のおかげで、二人は最高のパートナーとなることが出来た。

「ったく! 本当に石に選ばれた者とは思えないよ!」

 グレイタスが肌身離さず持っている懐中時計。もうあちこちメッキも剥げてしまってみすぼらしい見た目だったが、それでもまだ時を刻んでいたし、時計盤に埋め込まれた緑の明るい石は綺麗に輝いていた。

「それはお互い様だな」

 オズが常にそのたくましい指にはめている指輪。深く赤い色の、血を連想させる石があしらわれた指輪は、ちゃんと磨くことを欠かさないおかげで、光沢を維持したままの銀の細かい細工も同じくらいに美しかった。

「もーホントお前といると脱力するよ!」

 そう言いながらグレイタスはゲームを立ち上げようとテレビをつけたが、映ったバラエティ番組を見て固まった。

「うん? ゲームはしないのか、グレイタス?」

「……オズ、見て」

 グレイタスがいつになく嬉しそうに指さしたそのテレビの画面には、一人の青年が映っていた。

『ええ、でも、あの、僕なんかでいいのでしょうか……』

 全体的にどよんとしたオーラを醸し出す、アンニュイな青年の指には青い石のはまった指輪が煌めいていた。

「……見つけちゃった」

「へぇ、タレントにも『あの子』は目をつけたのか……」

 今まで和気あいあいと談笑していた二人は、一瞬で獲物を見つけた狩人と化した。いや、雰囲気だけで言うならば、捕食者の方が近いだろう……。

『そうです、今三匹目です。……はい、猫は好きです』

 口角を釣り上げるようにして、無理やり笑おうとする青年を画面越しに捉え、オズはネットで検索をかけていた。

「……えーと、笹中陸だって」

「ささなか、りく……ああこれか? ふむ、最近ブレイクしているタレントだそうだな。所属事務所は……これか」

 しばらくして、オズはパソコンの画面をまじまじと眺め、電話番号を控えた。

「場所はここからそう遠くはないな」

「まぁ、多分こいつ何もわかってないと思うよ。石のことを知ってたら安易にテレビなんて出ないだろうし」

『違います! 僕そんなんじゃないんです!』

 テレビでは、何かを言われて必死に頭をぶんぶんと振って否定の意志を表現している陸の姿があった。

「……髪長いねこいつ」

 グレイタスがぼそりと呟いたが、オズがすかさずツッコミを入れた。

「人のことを言えないだろう、グレイタス」

「む。まぁそうだけどさ」

 二人はしばらくバラエティ番組を眺め、放送終了までしっかりと見た。

「で、オズ。オッケー?」

 オズはゆっくりと頷いた。

「まず、笹中陸という青年……見た目と違って年は16と言っていたからギリギリ少年か? まぁいい。彼は母親と二人暮らしの母子家庭。家は一軒家、一人っ子で猫を三匹飼っている……最近そのうちの一匹を拾ったと言っていたな。自宅の場所はどうやら都心の庵城寺近辺のようだな。目撃情報が多い。残念なことにあまりネットでの活動は頻繁ではないが、ファンの方々が色々とバラしてくれているな」

「……あのさー」

 グレイタスは自分の髪を弄り回しながら言った。

「猫を一匹拾った、っての気になるんだよねぇ」

「……猫?」

「うん。……覚えてる? 前々回の争奪戦」

 そう言われ、オズは腕組みをして視線を宙に彷徨わせた。

「……ひょっとして房八のことを言っているのか」

「うん、そう。あん時は犬が石持ってたじゃん。……陸が拾った猫が石持ちの可能性は?」

 オズは顎に手をやると、軽くうなずいた。

「……少なくとも可能性の一つとして視野に入れておいていい考えだな。……だからどうした?」

「えっ? だって飼い主とペットって基本的に仲いいじゃん」

「犬なら確かに外に連れ回すだろうが、猫となればそうそう連れてこないだろう?」

 オズは、ニヤリと微笑んだ。

「まして、仕事場なら」

「……その様子だと、もうこいつを仕留めるプラン出来てるんだ?」

 オズは笑いながらチェックしていた不動産のリストから、一件の家を選んだ。奇しくも、ページには「日当たり良好!」の文字が踊っていた。

「16歳で命落とすことになっちゃうなんて可哀そうだねっ!」

 グレイタスは心底楽しそうに、全く哀れんでいない声で笑った。

「まぁ、久々に少年の血を味わうのも悪くないな。……ククク」

 オズは「購入希望」ボタンを押し、残った血のワインをぐっと飲み干した。

 

 

 




第六話です。もうL4DにもジョジョにもUA負けている……。しょぼん。

オリジナル要素が強いので、二次創作なような、二次キャラをモデルにキャラを借りて作り上げただけのオリジナルのような……。カテゴリなんなんでしょうねホントに。
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