黒銀~silvery black~・改   作:蒼乃翼

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※2017年1月15日 改定


6話 拒絶

レンは自分でも何が起こり何をしてどうなったのかが分からなかった・

 

フェイトが自分の目の前に音速の速さで現れたのは分かった。

 

女剣士がフェイトのファミリーネームの叫んだのも聞えた。

 

自分に振り下ろされたその刃が間に入ってきたフェイトを斬ろうとしていた。

 

女剣士の表情から自分でも止めることが出来ないと分かった。

 

フェイトを守りたいと思った。

 

レンは女に対してはかなり淡白だった。“医師”として“女性の身体”と接してはいてもそれはあくまでも男性とは異なる部位がある程度の認識だった。

そんなレンではあったが、空から落ちてきたフェイトを抱きとめた時、何かがレンを揺さ振った。

痛い程真っ直ぐな色をした金色の髪、同年代より発育は良いがそれでも未発達未成熟危うさすら感じる華奢でやわらかな体。

昨夜フェイトに手をつかまれた時、治療中には気付かなかったその温もり、柔らかさ、温かさ、肌触り。

そのフェイトの危機にレンの身体、というより存在そのものの奥底で何かが蠢いた。

 

 

それを感じた刹那

 

 

レンの背中に衝撃が走ったそれが例の襲撃者の片刃直剣により斬撃だと認識する前にレンの意識は途切れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

倒れたレンの下敷きになったフェイトはそれでもレンから離れようとしなかった。背中まで届かない細腕をそれでもしっかりその身体を抱きしめたまま動かなかった、動こうとしなかった。

「テスタロッ…」

 

 

 

「来ないでっ!!」

 

 

 

女剣士が近づこうとしたのをフェイトは拒絶した。

 

「シグナムも、ヴィータも、ザフィーラも、みんな近づかないでっ!!!」

その言葉に女剣士…シグナム、ハンマー幼女…ヴィータ、猛獣…ザフィーラはその場から動けなくなった。

 

「…ッ、」

 

その隙に、最後の気力を振り絞ったレンが黒文字黄色紙の札を取り出して呟いた。

「………っ…、急急如律了ッ…!」

次の瞬間、レンとフェイトがその場から消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

フェイトが目を開けると、そこはログハウスだった。

「レン!大丈夫?!」

「………白衣、持ってこい…、内側のメスを……、よこせ…」

息も絶え絶えなレンは何とかフェイトに指示を出した。

「はい…、これでいい?」

「あぁ…」

レンは着ていたシャツを乱暴に破るとメスを一本握り、斬られた背中の傷に刃先を当て、さらに白衣の袖を噛んだ。

「ッ…!」

傷口に沿って二度メスで切りつけると、傷口は徐々に塞がって、出血も止まった。

「うそ…、なんで…?」

「…それより、白衣の内側に入ってるケースに赤色の丸薬入ってるだろ、それを飲ませ…、ろ………」

フェイトは白衣をさらに探って、漆塗りの長方形小箱3つからなる容器、印籠を取り出した。緒を通して3つまとめられていたのでフェイトは上から順番に開けて中身を調べた。レンの言っていた赤い丸薬を見つけると、一粒摘まみレンの口に押し込んだ。

「ごほっ…」

上手く飲み込めないようで、レンは咽こんでしまった。丸薬をそのまま飲み込むのは今のレンには難しいようだ。

「えっと…、どうしよう…」

フェイトは丸薬を見つめたまま困惑した。せめて水でもあれば口腔内が湿り飲み込みやすくなるはずだ。

「………」

「レン?レンッ!」

レンの意識が無くなり、水を持ってくる時間すら今は惜しい。

「…ん、はぁ…ん」

フェイトは丸薬を口に含んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん…、」

レンが目を開けると、紅い瞳をさらに赤くしたフェイトが覗き込んでいた。

「レン…!よかったぁ…」

「あ~…、久々にやばかったな…」

上半身裸のまま、レンはふらふらと立ち上がるとキッチンへと向かった。

「薄皮剥く気力もねぇや…」

レンはそう言うと、冷蔵庫から取り出したシャボン玉のような炭酸ゼリーをひと吸いで飲み込んだ。

途端、一気に身体に生気が溢れ、髪も一気に伸びた。それを次々に十個も食べ、さらにそれは前菜と言わんばかり、今度は大量の鼈甲のような光沢のある燻製肉を食べ見る見るうちに回復していった。

「あの…、さっきはいったい…、なんで傷が?」

「あれは、蘇生切りっつてな。大昔の食糧難時代に編み出された技だ。組織を一切傷付けずに一呼吸で切る集中力と切れ味のある刃物、それと相応の技術が必要になる。本来は狩猟用の裏技だけど、今回みたいな時は応急処置としても使える。ま、斬られて3分以内じゃなきゃ意味ないけどな。それに巨大な生物の一部に使う技だから人間サイズでやるとなると、相当負担がかかんだよ」

レンは他人事のように話すと、奥から赤ワインの瓶を抱えて戻って来た。

「んぐ…、っぷはぁ。てか、そんなことよりお前連中を拒絶しちまったけど、あいつら仲間だろ?ならさっさと帰った方がいいんじゃねぇか?せっかく迎えに来たんだしよ」

「……」

「あいつらが俺を襲ったことならもう気にしてねぇぞ。俺の方にも非はあるしな」

「………」

 

 

フェイトは、何も言わなかった。否、それを言えばもうレンとは・・・・・

「俺は空から落ちてきたお前が怪我していたから治療をした。そして数日保護した。お前は目を覚まし万全とは言い難いがそれでもほぼ回復はした。で、お仲間が迎えに来た」

「………」

「俺が言いたい事は分かるよな?」

レンはワイン瓶を一本空にすると病室へ行き、管理局の制服と荷物一式を持ってきた。

 

 

「退院だ、仲間んとこに戻れ」

 

 

レンはそれを言うと煙管を咥え、火を付けて一息吸うと紫煙をフェイトに向けて吐きかけた。

「…っあ、………お世話に、なりました…」

フェイトは何か言いたげで淋しそうな、しかしほっとしたような表情で背を向けた。

「…さよなら、レン」

「おぅ、もう空から落ちんなよ」

フェイトはログハウスから仲間たちの所に戻って行った。

 

 

 




ここでは詳しい説明は省きます
本格的にレンが力を使うのは、2章からです
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