魔都聖杯奇談 fate/Nine-Grails【中国史fate】 作:たたこ
それはかつて、匈奴であり
それはかつて、五胡であり
それはかつて、契丹、女真、モンゴル、倭であり――
なべてそれらは、この中華を侵すモノ
中国の法律では売春は禁止されている。しかし上海の共同租界やフランス租界においては公娼制度があったために、中国各地から難民として娼婦が流入してしまっている。そして上海には、七百件を超える娼館が存在する。
外国人娼婦もいるが、やはりメインは中国人である。その娼婦たちは十七段階にランク分けされ、それぞれによって相手にする客層も違う。
そして共同租界の娼館の一室で、二十歳手前の女が横たわっていた。手足はやせほそっており、顔は恐ろしく青白かった。長い髪は芯がないように細く切れてしまいそうである。かけられた毛布は毛布と呼ぶにも烏滸がましいほどの布きれで、この季節をそれだけで過ごそうなどと拷問にも等しいだろう。
既に女の意識は薄く、ほとんど幽明の間をさまよっているようなものだった。
――いいことなど、なにひとつない人生だった。
――そして、誰の役にも立たず、必要ともされない人生だった。
きっと、何も残さず、誰にも気づかれず、誰にも思い出されずに死ぬ。
だから逆に、悔いはない。何の役にも立たないくだらない人間だったけれど、役に立たなかっただけで、大きな迷惑を知り合いにかけたわけではなかったと思う。
生まれた家は貧しかった。地主から土地を借りて耕す小作農だったが、自分は体が丈夫ではなかったから満足に働けなかった。地主の家からも、家族からも使えないと思われてきた。
兄弟は兄が一人、弟が一人いた。二人とも体は丈夫できつい仕事にも耐えられたから、地主からはまだまともな扱いをされていた。けれど天候の具合と治安の悪化で不作、匪賊に収穫物を取られてしまうことが重なって、我が家もいよいよ危機に瀕した。
一番の穀潰しだった私だけではなく、弟までも売られていくことになった。体の弱い私はあまり働けないが、どうやら容姿だけは人並み以上だったらしい。なんとなく売られた先で何をするのかは、おぼろげながら察しがついた。
そもそも、もう地主の家の男たちには何度も好きにされていた身だから、今更どうということもない。親からも兄からも、ロクな扱いをされていなかった。だから離別は少しも苦しくない――ことはなかった。
私と同時期に、しかし違うところへと売られていく弟。同情か憐みかはわからないけれど、弟は優しい子だった。弟は親と離ればなれになることを悲しんでいたのかもしれないが、私は弟と離ればなれになることが一番悲しかった。
結局弟とは離ればなれになり、流れ流され、上海の妓楼で体を売って生きることになってももう「仕方がない」と思っていた。見た目は良くとも、昔から要領もよくなく物覚えもわるかった自分は妓楼での技術もなかなか身につかず、売り上げがいい方でもなかった。
そして、元々体が強くなかったのに日に何人もの客を取っているうちに、体はますます弱っていた。数年はなんとか休みをもらってやっていけたが、体の根本が衰弱していったのだろう。
私、死ぬんだろうな。
自分の体だ、これでもわかっているつもりだ。いい治療を受ければ奇跡もあるのかもしれないが、そんな金はどこにもない。自分を売った親は風のうわさで土匪の襲撃を受けて死んだと聞いている。子を売るくらいなのだから、売った子を助ける金などあるはずがない。
かつてのことを思い出しても、弟以外、いいことが見当たらない。そんなことを考えながら死ぬのはいやだなと思い、上海に来てからのことを思い返した。
上海に来てから、レッキョウの外国人を悪しざまにののしる言葉を多く聞いた。けれど、自分には彼らが、客である彼らがそんなに悪い人間には思えなかった。
体を売っているからだとしても、彼らは故郷の人間のように私を蔑まなかった。
時には手に入れたお菓子などのお土産をくれる人もいて、つまらない話を聞いてくれた。彼らがここの言葉をどれくらいわかっているのか知らなかったけど、それでも聞くそぶりくらいはしてくれた。
故郷で私をないがしろにしたのは中国人だ。私を売った親は中国人だ。本当に動けなくなるまで体を売らせ続けているのは中国人だ。優しくてくれるのは中国人じゃない。列強は清国、いまは中華民国を蚕食している?そんなことは知らない。どうでもいい。
――だって、中国人は私に優しくない。
『中華が憎いか』
唐突に地の底から聞こえたこの声が幻聴なのか、それとも本当に何かが話しかけているのか、もはや自分には判断がつかなかった。別に答えたところで何がかわるわけもなし、と私はかすれた声で返事をした。
――わからない。どうでもいい。考えたくない。苦しい。
『中華から奪いたいか』
――奪う。何を。
『お前が望むなら、全てを』
――奪ったって、私は死ぬ。生きたところで、仕方ない。自分がこんな有様になったことに、きっと理由はない。生まれか、時が、体か、運か、何かが悪かったんだろうな。
その悪かったことに、理由はない。
『理由が必要か。奪うことに理由がいるのか』
その声は、蜜のような甘さを伴っていた。その時思ってしまった。
私は、もしかしてずっと奪われて生きてきたのかと。
――理由は、いらない。だって私が死ぬことに、理由はいらないんだから。それに今更中国人が何を奪われたって、別に私は困らない。
どこから響いているのかわからぬ声が笑った気がした。獰猛で野蛮で、けれど決して嘘をつかぬ素朴な声。決して不快ではなかった。得たり、とばかりに声はさらに問うた。
『お前が奪いたいモノは何だ』
自分は死ぬ。
だけど、その前にどうしても会いたい子がいる。声は囁く、何でも奪おうと。
――仲を返して。
*
「紅焼肉二人前お待たせでーす」
「上海炒麺三人前、お待ち~」
「八宝鴨一匹でーす」
「大闸蟹四人前でーす」
「小籠包五人前、お待たせ!」
紅焼肉は、皮付きの濃厚な豚の角煮である。飴色に照り光る甘辛い臭いの豚肉が、山となって鎮座している。上海炒麺は、上海流の甘辛焼うどんである。具はチンゲンサイ程度のシンプルな主食は、山になって鎮座している。八宝鴨は、アヒルの腹にさいの目切りにした鶏肉、豚肉、中国ハム、タケノコ、シイタケなどを詰めて蒸した料理。白く湯気を立てるアヒルが丸ごと一羽、鎮座している。大闸蟹とは、チュウゴクモクズガニ、上海ガニのことである。蒸されて赤く色づいたカニが山盛りにされ、鎮座している。小籠包は、豚の挽肉を薄い小麦粉の皮で包みせいろで蒸した包子である。そのせいろが十段積み重なって鎮座している。そして、デザートはまだ来ていない。
赤く丸いテーブルに着席しているのは、男と呼ぶには少々早い少年が一人だけ。黒い僧衣のようなものを纏い、深紅のフード付きのマントを着ている。上海ガニの料理店「
少年は好機の視線に動じることなく、箸を取った。
共同租界・福州路。美食とエンターテイメントの通りと名高い場所の料理店にて腹を満たしたルーラーは、悠々と夜の上海へ足を踏み出した。
外灘近くの福州路はビジネス街であるが、奥に行けばいくほど歓楽街となり、妓楼の密集地帯に至る。「紅粉街」――上海屈指の遊蕩の巷である。赤いランタンがともる店が軒を連ね、それには娼婦の源氏名が記されている。
ポン引きと娼婦、それに引き寄せられる浮かれた男たち――その妖しげでえもしれぬ雰囲気に、仲少年は恥じて目をそらす。彼とて男女の営みは知っているが、それはこれほど扇情的に飾り付けられ売りさばかれるものではなかった。
(あの……陛下、お腹がいっぱい過ぎて気持ち悪いです)
『動いていれば楽になる。がまんしろ』
先程の料理店で、あの呆れた量の食事をこの陛下は見事に平らげた。食べ終わった時にはなぜか周囲から歓声が上がった。宝具の行使は体力の消費を伴う――それを補うために、ルーラーは半ば常軌を逸した量の食事をとる。同じ体のはずなのに、なぜかルーラーは平気そうにしているのが不思議でならない。
そして彼が食事をしたのは体力回復のためだが、妓楼街を歩いているのは女を買おうとしているわけではない。
ルーラー曰く「この街をつぶさに観察し把握しておかねばらない」。そのため、ルーラーは暇さえあれば共同租界、フランス租界、南市をくまなく歩き回っているのだ。できるだけ早いうちに蘇州河北の虹口(ほんきゅう)、閘北(ちゃべい)、フランス租界南の徐家淮まで足を延ばすつもりである。
そこへ、内側から仲が疑問を口にした。
(陛下、わざわざ陛下が歩き回らなくても『錦イエーイ』を使って調べさせればいいんじゃないですか?)
(『錦衣衛』だ愚か者。そうしたいのはやまやまだが、あれは俺の分身。一体の維持に相応の魔力と体力がいる。召喚されたサーヴァントそれぞれに一体宛がっているため、それだけで七体同時維持している。これ以上増やせば俺自身の行動に支障がでる)
現在召喚されているサーヴァントはセイバー二騎、ランサー、バーサーカー、アーチャー、キャスター、アサシン。全て召喚されている。
それらのサーヴァントの戦闘に秩序を与えるために、地理の把握は重大事だと租界を歩いている。それもただ単に歩くのではなく、裏路地や小道にも入り込み建物を触る。もし霊体化できるなら中にも入れるのに、できないことをルーラーは悔やんでいる。
仲としてはそこまでやらなければならないのかと思っていたところ、それを読んだルーラーが言う。
「敵を知り己を知れば百戦危うからず、というものだ」
孫子など知らない仲は、恒例となった「そうですか」と今一つ気の入らない答えを返した。
仲は陛下ことルーラーとは短い付き合いだが、この人は一体いつ休んでいるのかと思うくらい動き回っている。仲の肉体を考え、ルーラーは一日五~六時間は睡眠をとるようになっているが、「生前は三~四時間で十分だったというのにお前の体はだらしがない」と理不尽なことを言われた。
そして起きている時間は、上海を歩き回って地形を調べる、錦衣衛から届けられる各陣営の映像や情報を再確認する、英国新聞・仏国新聞・日本新聞・中国新聞に目を通し(上海という特殊な土地上、万が一国の軍が魔術師を送り込んでくる可能性、破壊の場所によっては国際問題になる可能性を考慮し情勢を把握したいらしい)、ヨゼフ教会の神父たちに九鼎戦争について根掘り葉掘り聞き、ついでにこの上海に住む魔術師――この戦争に参加する可能性のある者たち――の素性を調べあげるなどなど……実に八面六臂の動きをしている。
凄まじい働きに呆然とする仲を知ってか知らずか、ルーラーは忌々しげに言う。
「俺には知覚能力という、現界したサーヴァントの位置を把握する力があるが――気配遮断のスキルを持つアサシンは、正確な座標がつかめない」
現界を果たしているかどうかは判断がつくが、居場所が特定できない。特定できさえすれば、錦衣衛を送り張り付かせることができる。再びアサシン自体を補足できなくなっても、マスターに張り付かせておいたままにすればいい。
その為、ルーラーはアサシンの動向をいかに迅速に把握するかを考えているのだ。
「だがそれは最初から知っていたことだからいい。最も不可解なことは、ライダーの真名がわからず、座標もつかめないことだ」
座標がつかめない可能性としては、ライダーのサーヴァントも気配遮断のスキルを持っていることがあげられる。真名がわからない可能性としては、ステータス隠ぺいスキルか宝具の所持が考えられる。しかし前者はともかく、後者の問題には引っ掛かる点がある。
正確に言えば、ルーラーには真名がわからないというより――複数の真名が見える。
かつてのモンゴル帝国から元朝、そして滅亡に至るまでの歴代カーン・皇帝・宰相の名が移っては消えていく。
ルーラーが思考を止めることはない。それに追いつくなど到底不可能な仲は、ぼんやりとルーラーそのもののことを考えた。
九鼎戦争なるものを中途半端にしか理解していない彼には、どこまでやるべきなのかは判断がつかない。だが、それでもなんとなくこれまでのルーラーの行いには、ルーラーの人格の一端が現れていると思う。
――すべてを知らなければ気が済まない。すべてを自分でしなければ気が済まない。
「……サーヴァント同士が交戦しているようだ」
突然そうつぶやいたルーラーに、仲はびくりと驚いた。錦衣衛の視界を通して、どこかの陣営の映像を見ているようだ。それは仲にも共有され、暗い公園で槍を振るう大柄な男と、仲と同い年くらいであろう少年の姿が見えた。
「――あれはどのサーヴァントのマスターでもないな」
仲より遥かにたくましい体をもつ少年は、ルーラー曰くマスターではない。なら何故サーヴァントの戦いの最中にいるのか。
サーヴァント同士の接触を確認すると、『大明律』で自動的に人払いの結界が張られる。ゆえにそこへ飛び込んで来れるという時点で、少年はすでに一般人ではなく何らかの形で魔術にかかわるものである。
「あれは昼間、セイバーに絡んでいた男だな」
セイバーに張り付けた錦衣衛からの情報により、ルーラー及び仲はその男を知っていた。今日の昼に日本は長崎からやってきた少年――名は雷剣英。彼がセイバーとしていた話も雑談の域を出ないものであったため、セイバーと別れてからは新たに錦衣衛をつけることもしていなかったのだ。
しかし今、その少年の行動は明らかに常軌を逸していた。人間であるはずの彼が、サーヴァントであるランサーと戦っているのだ。通常なら瞬殺されるだろうが、少年はその身ひとつで槍兵と渡り合っている。
だが、その戦いぶりはやはりランサーの優勢、少年は防戦を強いられている。このまま続ければ、槍は少年の体を貫くだろう。
仲は自分と近しい年であろうその少年を、あっけにとられながら見ていた。何故、マスターでもないのにも拘らず、自ら死ににいくように戦っているのか。それに対しルーラーはその戦い以外の光景に目を配っており、ぴくりとその眦を動かした。
「――早速、本格的な戦争が始まるか」
少年と槍兵が覇を競う人気無き深夜の公園。
一般人が立ち入るはずもない、夜の戦に突撃するは赤き常勝の皇帝。
*
日も暮れた上海租界、北に位置する虹口の高級料亭「六三館」。虹口はアメリカやイギリスに遅れて上海に乗り出してきた新興国・日本の租界である(正確に言えば、共同租界の中に日本租界が含まれているというのが正しい)。
この一帯には日本人が多く生活しており、日本とほぼ変わらぬ生活が送れる。しかしそんな場所に位置するこの料亭には、日本人や中国人より列強の国の人々が多く訪れる。それを反映し、酒はウィスキーやワインがメインで、酒はウイスキーがメインで、カウンター席やテーブル席が多い。しかし料亭というだけあり、日本庭園の見える和室も存在し、特に好まれている。
そして、九鼎戦争に挑まんとするとある二人組は、その和室に陣取って料理を楽しんだ後であった。
畳に座布団の上で、片手にガラスの器、片手にスプーンを握りしめている黒髪の男は、何やら小刻みに震えていた。
「潤華さん、僕、聖杯に願いができました」
「何よ」
「九鼎の魔力を以てすれば、僕の宝具を長時間つかうことも可能なはず。だから宝具で
異様にテンションの高いセイバーを眺めながら、潤華は「好きにすれば」とやる気のない返事を返した。戦争を戦う身としては、むしろこれからの夜こそが本番なのだが、既に彼女は半ば疲労状態であった。
戦争にそなえ、地理を把握してもらうためにセイバーに上海案内をするはずだったのが――否、案内はしたのだが、最早観光と言った方がふさわしいありさまだった。
まずは
当初、潤華は強い態度でセイバーをいさめようとしたのだが、期待に満ちたまなざしで印をつけまくった
彼女自身、十年もこの地で暮らしているから地理自体には詳しい。しかしあまり遊ぶ余裕もなく術の研鑽にいそしんできたため、恥ずかしながら今日の観光で自らも知ることが多く新鮮な気持ちになっていた。
「……ま、まあ一回くらい観光もいいわ。で、一通り上海は案内したつもりなんだけど、戦ううえでどう?」
潤華は自分に言い訳するように、少し気まり悪く言った。だがセイバーは能天気に口をとがらせた。
「え~またしましょうよ。南市にある明代の庭園とか見てないですし」
「観光から頭を離せッアホ皇帝!!ええい、あんたの好きな観光をするにも、とにかく勝ち残らなきゃ話になんないんだから!」
「……む、痛いところを。そうですね、ちょっと困るなあって思ったことがあります」
セイバーは器の底にたまった溶けたアイスを未練がましく掬いながら続けた。「宝具がつかいにくいかなと」
「?何で?」
「二つあるんですけど、一つ目の方です。威力は申し分ないんですが、対象レンジがやたらと広いので」
「この狭い割に人の多い上海では、余計な被害を出しかねない?」
セイバーは神妙な顔つきで頷いた。寡兵を以て大軍を打ち破ることを得意とした彼の生前を反映した性能だが、こと人口過密地域の上海においてはマイナスになりかねない。
潤華としても戦争に関係のない人間を巻き込むことは避けたい。その上、セイバー曰くルーラーは一般人への被害を厳しく禁じているため、禁を破れば思いペナルティが課されるとのこと。
「やり方はいろいろあります。ビルの上を戦場に選ぶとか、空に向かって放つとか。ただもし周囲に人気のない土地が周辺にあるなら、敵をそっちに持っていくこともできますし」
「……フランス租界の南は徐家淮っていうんだけど、そこらへんはまだ開発が進んでいないから林だらけよ」
「ふむ」
「他陣営が私たちみたいに被害を出さないとする陣営だけとか限らなかったけど、ルーラーのおかげで他陣営もそのルールは守るでしょ」
潤華には伝えていないが、ルーラーの真名を知るサーヴァントたちならルーラーが容赦しないだろうことはわかっているだろう。ルーラーのやり方は苛烈に過ぎるとは思うが、セイバーはその方針自体には賛成である。
「レンジの広い宝具を持っているのは僕だけじゃあないと思いますし、敵も人気のない場所を選定すると思います」
「他は何かある?」
「特には。あとはどんな人が召喚されているのか会ってみないと」
会ってみなければ始まらない。潤華も探索の魔術は得意ではないらしく、その方面に魔力を割く気はないため、方針は既に決まっていた。二人は同時に座敷を立った。
「じゃ、行きますか!」
二人はあえてサーヴァントとしての気配を隠さず、むしろ積極的にふりまいて上海を巡回することにした。しかし最初に料亭で話の出ていた林、徐家淮周辺を見て回ってからになる。
徐家淮区域は夜になれば人気もなく、森閑として寒々しく吹く風だけが通り抜けていく。二人で林の中を歩き回ったが、特に魔術の後もなければサーヴァントの気配もなかった。
「……期待していたわけじゃないけど、何もないわね」
「ですね。でもここなら気にせず宝具をぶっ放せそうではあります」
徐家淮はフランス租界の南に面しているため、二人はフランス租界を歩き回ることにした。共同租界にほど近い境界周辺は治安が悪いが、中央部は閑静な高級住宅街である。人種を問わず、裕福な人間はこの区域に住むことが多い。だけあって、周辺は静まり返り二人が石畳を歩く音だけが妙に響いていた。等間隔で道路に立っているガス灯の明かりもどこか空々しい。
「人払いがかかっているわけでもないのに、静かね」
「潤華さん、サーヴァントの気配がします。しかも二騎」
セイバーは潤華より一歩前に出て、足を止めた。「多分あの公園の中、交戦中みたいです」
指さされたのは、闇に隠れて分かりにくいが三百メートルほど先にある復興公園だ。大きな公園で、常に清掃されている美しいエリアである。公園内には街灯もあるが、この距離で植林に囲まれていてわからない。
「……こっちが気づいたってことは、あっちにも気づかれている?」
「……どうでしょうね。僕は気づいた瞬間に皇帝特権で気配遮断をしましたが、どうだか」
本来自分自身を撒き餌にしてサーヴァントをひっかけるつもりであったが、二騎が交戦中に行き会ってしまうことになるために様子をうかがえる可能性が出てきた。
「とにかく行ってみましょう、気配遮断しているならちょうどいいわ」
セイバーは潤華を抱きかかえると、魔力で編んだ赤い甲冑、マントに装束を変えて地をひとっ跳びに蹴った。公園は木々が多いので、身を隠すには不自由しない。二人は木陰に隠れて様子を窺ったが、一度その光景には目を疑った。
ランサーが戦っている相手は、サーヴァントではなく人間なのだ。潤華と同い年くらいのたくましい少年が、ランサー相手にひるまず戦っている。潤華では目で追うことすら難しい瞬殺の槍を、少年は躱して身一つで懐へともぐりこんでいく。しかしランサーに拳を叩き込むには至らず、一進一退を繰り返している。少年の方が劣勢であるのは、潤華からみても明らかだった。それでも、ここまで戦えているのは異常である。
「何アイツ!?っていうかサーヴァント!!もう一騎は!?」
「戦ってる少年の後ろに、座っている女の子がいます。あれ、サーヴァントです」
セイバーが指差した先、植込みのそばで力なく座り込んでいる少女。弱弱しく、セイバーやランサーのような強さを感じない。怪我をしているのか、その場から全く動かない。
「まさか、アレサーヴァントの代わりに戦っているの?……ってあれ、セイバー」
潤華がそうつぶやいた時、隣にいたはずのセイバーが、唐突に姿を消していた。
☆ライダー枠にはツイッターから趙武霊王コールももらってたんですが、気付いたらよくわからないサーヴァントになってました(アヘ顔) 真名はあってないようなもの 見破ったらえらいっ!(たけ●の挑戦状風)
☆ルーラーは何気にスキル高速思考あるからね、仲じゃ追いつけないよ仕方ないね
そいや清の法って明の法律を土台にしてるらしいから、とすればルーラーの法って500年くらい使われているってことで、もちろん臣下と一緒に法を練り練りしているとはいえこいつは本当に元ホームレス農民なの?
型月NOUMINやべーけどこのリアルNOUMINヤバスギだな
☆男セイバーは生前も南からはちみつ取り寄せて臣下と食ってたって聞いてからなんだそのスイーツ皇帝
寡兵を以て大軍を破るの最大値は3000VS1000000(内40万くらいが実際戦闘員であとは後方援助?)
セイバー「生前、『なんでいつもは戦いのときにびびっているのに、こんな大軍前にして逆にびびってないんですか?』って聞かれましたけど、ここまで気持ちよく絶体絶命だと開き直るしかないっていうか、生きて大勝か死ぬかの二択で、大暴れすればもしかしたら前者になれるかもって感じで」
潤華とセイバーは何気にガンガンいこうぜだからな
☆次は前回の剣英&ランサー側の続きかな?(予定は未定