Infinite Stratos Also sprach Zarathustra -Re:boot- 作:ゆき
Act 3: マーリン
放課後。
「アトラシア、織斑、オルコット。話があるから来い」
授業が終わり生徒たちが教室が出ていく中、
ロートル、一夏、セシリアは千冬に呼び止められていた。
「1週間後の決闘だが、トーナメント方式でやってもらう」
「トーナメント方式ということはオルコットさんと僕と一夏のどちらかが決闘。
勝ったほうがもう1人と戦うってことですか?」
「そうだ。最初は2対1も考えたが素人2人がコンビを組んで代表候補生相手にするのは
流石に勝負が見えすぎてるからな。それに1周間でコンビネーションが身につくとは思えん」
「私はそれで構いません。連戦でも勝ってみせるのが代表候補生ですもの。
ではお二人とも、まともに踊れるように練習してくださいまし」
セシリアはロートスと一夏に挑発的な視線を投げかけて教室から出て行った。
「・・・何にせよこの一週間は死に物狂いで努力することだな」
そう告げると千冬も教室から出ていこうとするが、何かを思い出したのかロートス達のもとに引き返してきた。
「お前達の寮の部屋割りだが、山田君が伝えにくるはずなので教室で待機していろ。いいな」
「わかりました」
「おう・・・あっ、わかりました」
千冬は今度こそ1-Aの教室から出ていった。
一夏は千冬が教室から出ていったのを確認すると席に身を沈める。
「あと1週間でISの基礎知識を頭に叩き込むのと操縦を同時に行わないといけないんだよな」
「織斑先生が言ってたように死に物狂いでやらないとスタート地点にも立てないからね。
今の状況ってスポーツ未経験の素人がオリンピック選手候補生でスポーツで勝負するレベルだから」
「その例えはわかりやすいな」
「アトラシア君、織斑君!お、お待たせしました!」
真耶は急いで来たのかぜいぜいと息を切らしていた。
「山田先生大丈夫ですか?」
「だ、大丈夫です!お二人ともを待たせるわけには行きませんので!
ではこちらが部屋番号とキーになります」
はいどうぞと真耶は部屋番号の描いたメモと入室に必要なカードキーをロートスと一夏に渡す。
IS学園は生徒はセキュリティー上の観点から全員寮で生活することを義務付けられている。
もちろんロートスと一夏も例外ではない。
「俺は1025だな。ロートスは?」
「僕は旧寮長部屋だね・・・ん?僕と一夏君って同室じゃないんですか?」
「はい。アトラシア君は1人部屋で織斑君は相部屋になります」
「えっ!?」
一夏はあまりのことに驚き、素っ頓狂な声を上げる。
「ロートスが1人部屋なのに俺は女子と相部屋なんですか?
ロートスと俺を相部屋にして女子はロートスの部屋に移動してもらえればいいんじゃないですか?」
一夏の発言はごもっともな意見だった。
一夏もIS学園に所属する女子生徒たちも思春期まっただ中、異性や性に関してはどうしても意識してしまう。そんな空間で生活をするのは苦痛でしかない。
「それなんですけど「上」からの指示なので私はなんとも...。
1ヶ月後くらいで個室が用意できると思うのでそれまでは我慢をお願いします。
夕食は1年生用の食堂で6時~7時の間でとってください。お風呂に関しては大浴場とシャワーがありますが、お二人は当面はシャワーでお願いします」
真耶はこれからまた会議なので失礼しますといい頭を下げて足早に教室から出ていった。
一夏はどこか不満げでバツの悪そうな表情である。
「まぁまぁ、1ヶ月っていう期間限定だから頑張ろうよ」
「ロートス、お前まじで言ってるのか・・・」
ロートスはうん?と首を傾げる。
真耶のいう「上」とはIS学園のトップもしくは日本政府のことで、それらが決めたことなのだろう。文句を言ったところで覆るわけもない。ならば1ヶ月耐えきってみせると誓う一夏であった。
***
1年生の校舎から寮まで50メートルもないため早々と自室前に到着した。
「あとで食堂見に行こうか」
「だな、じゃあ6時に部屋の前集合な」
「うん」
ロートスは一夏に手を振ると自室に入っていく。
「うわぁ、広いな」
旧寮長部屋と聞いていただけに期待していたがその予想を大きく超えていた。
15畳の部屋に大きなベッドと大容量のクローゼット。最新鋭の机にデュアルモニター。
冷蔵庫も完備しておりいたせりつくせりの空間であった。
「さてと...」
ロートスはベッドに座ると、足元に置いてあるトランクに手を伸ばす。
「篠ノ之博士から渡されたものだけどこの中にISが入っているのかな」
トランクは指紋認証と網膜スキャンの複数認証を採用した最新鋭のものである。
ロートスは指紋認証と網膜スキャンをクリアするとガチャと音と共にトランクが空いていく。
すると中には縁が角ばったアンダーリムのメガネが1つ入っていた。
「め、メガネ?」
ISは普段は待機形態と呼ばれる形で持ち運びされている。
待機形態は体に身につけるアクセサリーの形状になることが多いが、待機形態は作り手の趣味が出ることもある。
ロートスのISの場合は待機形態がメガネだったということだ。
「見るかぎり普通のメガネだけど・・・うわっ!」
次の瞬間メガネのフレームから光線が投射された。
部屋の中央に投射された光線はホログラム映像で、そこには流れるような黒いロングヘアの美少女が写っていた。
『問おう』
「えっ?」
『お前が私のマスターか?』
「・・・」
『・・・』
トランクを開けたら中から待機形態がメガネのISだと思ったら、その眼鏡からホログラム映像が投射されて、
挙句の果てに自分に話しかけてきたのだ。ロートスとしては頭を抱えるしかない。
『おい、聞いているのか』
「えっ、あっ・・・うん、聞こえてる。もしかして録画ではなくてリアルタイムに話してるの?」
ロートスの問に少女は小馬鹿こばかにするような、鼻で笑うように声をたてた。
『あぁ、そういえば挨拶がまだだったなマスター。私はマーリン。
第3世代型IS「ローエングリンR2」に搭載されているAI型電子解析システムだ。
しかしこの程度で驚くようでは先が思いやられるな』
他の人間に同じことを行っても帰ってくる反応は変わらないと心の中で思うロートスだったが、
話が進まないと思ったため、あえて心に秘めていることにした。
「えっと、マーリンは篠ノ之博士に作られたってことでいいのかな?」
『あぁ、このローエングリンR2は常人では扱いきれないISだからな。
その補助のために開発されたのがこの私だ』
「なるほど...そのへん詳しく聞きたいんだけーー」
「ぐおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!!」
ロートスの声をかき消すほどの一夏の叫ぶ声と共に壁にぶつかる音がした。
内容までは聞き取れなかったが箒らしき声も聞こえてる。
ロートスは勢いよく自室のドアを開けると、そこには一夏が廊下に倒れ込んでいた。
「一夏君ごめん。一夏君は相部屋だから入る時気を付けるんだよって言い忘れたよ・・・」
「いや、いいんだ。俺が悪いからな・・・というよりよく躱せたな俺」
「篠ノ之さんの声も聞こえてるけど何かあったの?」
「部屋に入った俺、シャワー浴びて出てきた箒と鉢合わせ、木刀で突きをくらう。以上」
「えぇ・・・」
何故手元に木刀があるのだろうかというツッコミを入れたいところだが、
その前にロートスは一夏に手を差し出す。
「流石に廊下で倒れ込んだままなのはまずいよ。
防音対策が完璧な部屋にさっきの声聞こえてたから多分、人が集まってくると思う」
「それはまずいな・・・」
一夏は1025室の扉を数回ノックをすると、頭の上で合掌して頭を下げる。
「箒、まずは声をかけずに入って申し訳なかった。頼むから部屋に入れてほしい」
「・・・・・・」
ドアから返ってきたのは沈黙だった。
しばらく間があったが、ガチャと音が鳴りドアロックが解錠されたのがわかった。
「・・・一夏、今後のことで話がある。早く入れ」
「あぁ・・・ロートス。また後でな」
そういうと一夏は自室に戻っていった。
「今の音なに?」
「あれ、アトラシア君だ」
「何やってるの?」
騒ぎを聞きつけてそれぞれの部屋から女子達ぞろぞろと出てきた。
一夏が箒のタオル姿を見て木刀で突きをされたなど言えるわけもなく。
「・・・一夏君がベッドの上で跳ねて遊んでたら着地失敗して地面に激突したらしいよ」
「織斑君ってなにげに子供っぽい所もあるんだ~」
「男の子っぽい感じしたんだけど意外と可愛い所もあるのね!」
女子たちはロートスの言ったことに納得するとまたぞろぞろと自室に戻っていった。
一夏の評価が男子!というものから子供っぽいという評価になったがラッキースケベ扱いされるよりマシだろう。我ながら頑張ったなとロートスも自室へ戻っていった。
1ヶ月とはいえ女子と同じ部屋で生活するって羨ましいですけど
絶対苦痛ですよね...。