Infinite Stratos Also sprach Zarathustra -Re:boot-   作:ゆき

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Act 6: セシリア

「その…大丈夫かい?」

 

地面に座り込んで動かないセシリアを見てロートスは心配になったのか声をかけた。

声をかけられたセシリアは一瞬呆気に取られた表情を浮かべるが、すぐにふふと笑う。

 

「えぇ、大丈夫ですわ。ご心配をおかけいたしましたわね」

 

セシリアはブルー・ティアーズを量子変換すると、お尻を軽くはたいて立ち上がる。

今まで見せていた尊大な性格や表情はなく、どこかしおらしいように感じた。

 

「今回は私の負けですが次は負けませんわ」

 

セシリアはスッと右手をロートスに差し出す。

ロートスはうん。とセシリアに右手を差し出し、2人は握手を交わす。その光景を見た観客から再度拍手や歓声があがった。

拍手や歓声がまばらになると千冬はマイクを手に取る。

 

『…コホン。アトラシアの疲労を考慮して第2試合は15分後に行うものとする。

織斑、アトラシアはその間にコンディションを整えること。いいな』

 

「はい!」

 

「おぉ!」

 

両者ともに気持ちのいい返答をする。

千冬はよし。と良いマイクの電源を切った。

 

「それではアトラシアさん。私はこれで」

 

「うん」

 

「…私に勝ったんですから、絶対に勝ってくださいね?」

 

「勿論」

 

セシリアはそういうと控室へと戻っていった。

 

***

 

セシリアはBピットの控室に戻った後、併設してあるシャワールームでシャワーを浴びていた。

壁に寄りかかりながらシャワーを全身に浴び物思いにふけっている姿は様になっており、まめかしく、どこか美しかった。

 

「負けてしまった。英国代表候補生であるこの私が…」

 

敗北した。

BT兵器のデータをサンプリングするために開発された実験・試作機であるブル

ー・ティアーズを預かる英国代表候補生としてはあってはならないことだ。

相手が篠ノ之束が直々に開発したいISだから。相手がビーム兵器を搭載したISだから。

そんな言い訳はできないし、するつもりもセシリアには無かった。

負けて悔しいと言う気持ちは勿論あるがそれ以上にセシリアの心に残っている物が合った。

 

「ーーロートス・アトラシア」

 

自分と戦ったロートスのことを思い出す。

篠ノ之束が直々に開発した専用機を使用しているとは言えISに関しては素人同然。

代表候補生に選ばれたセシリアと相対するなど、よほどの自信家か無謀な人間であろう。

だが女性の地位が向上した今の世にそんな無謀な行動を取れる男がどれだけいることか。

不意にセシリアは父親と母親の会話を思い出した。

 

『ルパート。どうして貴方は昔から私の顔を伺うの!男ならもっと堂々とすればいいじゃない!」

 

『エ、エマ。そんな事を言っても僕は婿養子だから…」

 

「父は、母の顔を伺う人だった…」

 

セシリアは幼少の頃からこのようなやりとりを何度も見てきた。

父は母とは幼馴染の関係で、大学生でついに交際をスタートし、大学卒業後に結婚したとセシリアは母から聞いていた。

父はオルコット家とは釣り合わない家柄出身だからこそ自分に引け目を持っているのだろうと考え、仕方のないことだと思っていった。

しかし、ISが発表されてから父の態度はますます弱くなっていった。

 

「…母は強い人だった」

 

セシリアの母はISが登場する以前。男尊女卑だった社会から名門オルコット家の当主になり、あらゆる経営を成功させてきた。

優しくも厳しく、セシリアにとってはあこがれの存在だったと言える。

そう、"だった”。セシリアの両親は3年前に事故で他界したのだ。

一度は陰謀論が囁かれたが鉄道の横転事故で乗客は全て死亡。乗客は100人を超える大規模なものだったためすぐさま否定された。

残されたセシリアは絶望した。血の繋がった実の両親を失い、天涯孤独の身になったのだから。

手元には豪華な屋敷、莫大な遺産、母が経営した会社が残った。

当時12歳のセシリアに金の亡者達は手を伸ばしてきた。お抱えの執事やメイド達がセシリアを守ってきたが、12歳の少女に権力も権威もなく、オルコット家は窮地に立たされる。

セシリアは金の亡者達からオルコット家を守るためにあらゆる勉強を行ってきた。

その一環でISの勉強もしており、政府公認の上級試験に合格しIS適正A+を叩き出したのである。

そのことが英国政府に認められ、オルコット家の保護を条件に英国代表候補生に選出、

第3世代装備ブルー・ティアーズの第1次運用試験者に抜擢された。

 

「ブルー・ティアーズの可動・戦闘データを取るために日本にやってきた…」

 

そこでロートス、一夏に出会った。

初めは2人のことは気に入らなかった。

英国代表候補生の座。最新鋭の専用機を扱う権利。高い倍率を誇るIS学園の入学。

家を守るために血の滲むような努力をしてようやく勝ち取ったものだった。

なのにロートス、一夏は男というだけでIS学園に入学。一夏に関しては事前に学ぶ努力すらしない怠慢っぷり。絶対に絶対に認めない。そう思っていたが。

 

「あれは機体性能だけではなく…」

 

ロートスの勝因は機体性能や武器の特性だけではなく、

ブルー・ティアーズに冠する研究とISを動かす努力をこの1周間で行ってきたからだろうと

セシリアは考えていた。

 

「見極めなければなりませんわね」

 

父のように弱い瞳ではなく、強い瞳をした男なのかどうか見極めなければならない。

セシリアはシャワーを止めた。




セシリアはロートスや一夏のヒロインにはならない予定です。
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