叛逆の騎士ですがなにか?【永久凍結】   作:くずもち

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第17話 神父、自覚する

冬木ハイアットホテルの近くに存在する建設中のビル。

そこで一人の女性が、モードレッドとランサーの戦いを見ていた。

 

「凄まじいですね」

 

『あぁ、今さっき伝わったセイバーからの情報によると、キャスターの正体はモードレッドらしいが』

 

「ブリテンを滅ぼした叛逆の騎士ですか…」

 

舞弥はアーサー王伝説のモードレッドに関する伝承について思い出す。表の社会で一般人に伝わっている、国を滅ぼした叛逆の騎士としての伝承と、魔術師の、歴史にそれなりに詳しい者たちに伝わる救国の英雄としての伝承。どちらを見てもあの姿には結びつかない。

 

『しかもかなりの狂人らしく、常識という物が殆ど通用しないと言っていた』

 

「確かに、上層階に車で突っ込むなど、正気の沙汰とは思えませんね」

 

『あぁ。…しかし、これでセイバーの左腕は治る』

 

「こちらの手の内を晒さずに済んだのは僥倖でしたね」

 

『そうだな、…舞弥、撤退を』

 

切嗣が撤退を指示し、舞弥がそれに従おうとした時。

 

「ちょいと待ちな」

 

背後から声を掛けられる。その声は明らかに、先程まで監視していたキャスターの物だった。

 

パァンッ!パァンッ!

 

乾いた音が連続で響く。舞弥が振り向きながら銃を撃ったのだ。だが弾丸は鎧に当たって弾かれ、意味を成さない。

 

ガッ!

 

舞弥はモードレッドに頭を掴まれ、魔術によって眠らされる。序でに記憶も読まれる。

 

「ふーん、起源弾か。…随分恐ろしい(もん)を使うな」

 

モードレッドは記憶を読んだ後、舞弥を近くにそっと寝かせ、舞弥が使っていた通信機を拾い上げる。

 

「ヤッハロー、アンタが王さまのマスターか?」

 

『……………』

 

「はっはー、沈黙は肯定と見なすぜー。あ、それとホテルに仕掛けてあった爆弾は全部解除して回収したから。あとこの女は此処に放置してくぜ」

 

『……………』

 

「おいおい、何か喋れよ~。まっ良いけど。それじゃあ、お前に用がある奴に変わるわ。オラとっとと出て来いや」

 

モードレッドが柱の影に目を向けると、そこから言峰綺礼が現れる。

 

「ほれっ」

 

モードレッドは通信機を綺礼に向けて放り投げる。綺礼はそれを受け取り、モードレッドに害意が無いのを感じると、警戒しながらも受話器の向こうに居る切嗣に話しかけた。

 

「私は言峰綺礼だ。衛宮切嗣、貴様に問いたいことがある。……貴様が得た答えとは何だ?」

 

『……………』

 

「答えろ!貴様が得た答えとは一体何なのだ!?」

 

切嗣は答えない、否、答えられない。彼にはそもそも綺礼の言っている質問の意味が理解できないのだ。舞弥を助けるのは不可能と判断し、切嗣は何も答えずに通信を切った。

 

「切られたか……」

 

綺礼は落胆しつつも諦めてはいなかった。次こそは問い詰めて、奴の得た答えを聞いてみせると。

 

「それで?答え知れたか?」

 

「なんだと?」

 

切嗣に質問するのに夢中になっていた綺礼は、今更ながらにモードレッドの存在を思い出し、彼のまるで自分の事を知っているかの様な物言いに疑問を覚えた。

 

何故このサーヴァントは、自分が衛宮切嗣に執着していることを知っている?

 

相手はキャスターのサーヴァントだ。権謀策術に秀でたキャスターならば、数日中に自分についての詳しい経歴を調べ上げ、知っていても可笑しくは無い。若しくはマスターが事前に調べていたか、だが。

だがそれでも、自分の目的について知っているのは可笑しい。一体何故?

 

「何でって顔してるから答えるが、俺は生前アンタみたいなのを部下として率いていたことがある。だからアンタの経歴を見て何となくだが、王さまのマスターとの接触を狙って来ると踏んでいた」

 

「なんだと?」

 

最近全く出番が無いから皆さんお忘れかもしれないが、モードレッドの部下は一人(ユーグ卿)を除いてアーサー王ですら手を焼く程の狂人揃いなのだ。…率いている本人もだが。

その中には綺礼の様な奴だって少なからず居る。全員モードレッドがそっち(バカ)側に引き込んだが。

そもそも大半のモードレッドの部下は、モードレッドの部下になる前はまともな騎士だったのだ。それをモードレッド(バカ)同類(バカ)の世界に引きずり込んだのだが。

 

それでも普通の感性を持つ人間が、そんな連中と一緒に居て同類になるかと訊かれれば、答えは否だ。事実モードレッドの部隊の雰囲気に馴染めず、異動願いを出す者もいた。

 

ではどうやってそんな連中が部隊になる程集まったのか、実はモードレッド、騎士の中からそういう事に素養のある人間をピンポイントで探し当てていたのだ。今までの経験を基にすれば、綺礼の様な人間の行動パターンは大体読めるし、何に悩んでいるのかも大体分かるのだ。

 

「お前さん、自分の在り方について悩んでるんだろ?」

 

「!!」

 

驚愕だった。このサーヴァントは、父親にも知られていない自分の悩みを容易く見抜いのだ。と同時に、このサーヴァントならば、答えを知っているのかもしれない。と思った。

なにせ、自分と同じ様な存在を他に知っているというのだ。可笑しくは無い。

 

「貴様は、私の答えを知っているのか?キャスター」

 

「知っている、が、ただ言った処で信じないだろうからな。その前にこれを読め」

 

そう言ってモードレッドが投げたのは一冊の本だった。綺礼は困惑しながらも受け取る。本はそれほど厚くなく、15分程で読み終えそうだ。表紙を見ると題名が書いてある。

 

『猿でも出来る起源覚醒~自覚と受け入れ編~』

 

・・・・・・・・・・。

 

「……ふざけているのか?」

 

「大真面目だが?あ、ちなみにそれ、俺の自費出版ね」

 

ふざけている。綺礼にはそうとしか思えないが、今は自分の答えを知る事が先決なので、深く考えない様にする。

 

ペラッ……ペラッ……ペラッ……

 

暫くは、綺礼が本を捲る音だけが鳴る。綺礼が本を読み終わるまでの間、モードレッドはマイケル・ジャクソンのスリラーを、完コピで音もなく踊っていた。延々とループして。

 

パタンッ

 

「キャスター、貴様は、私がこの様な非道徳的人間だと言うのか!?」

 

本を読み終えた綺礼は、モードレッドに対して吼える。その怒りは、自らを辱しめられたからか、はたまた図星だからか。どちらにせよ綺礼は否定したかった。

 

ちなみに本に書かれていた内容は、読んでいる内に無意識に自分の起源を自覚するように誘導するものだ。

作者の力量では詳しくは書けないので、皆さんで想像してみてほしい。

 

あとがきにはこう書いてある。

起源を自覚しても受け入れられない人には、第三者が受け入れさせてやれば良い。但し方法は問わない、と。

 

「少なくとも間違ってはいないだろ。…納得出来ないんなら、見せてやるよ。お前が悦ぶ光景を」

 

「何?」

 

綺礼が気付くと、そこはもう先程のビルではなかった。いや、ビルではあるが、見たこともない風景の崩壊したビルの中だった。

そのビルの名はマルノウチ・スゴイタカイビル。ここはモードレッドの幻術で作られた、ニンジャスレイヤーのアニメ第一話の世界である。

 

詳しい描写を書くと作者がニンジャに始末されかねないので省くが、端的に言えば、今まで勝ち誇っていた連中が、被害者に一方的にぶち殺されるというものだ。

やがて幻術が終わり、元の光景が戻って来る。

 

「キャスターよ、お前はあの光景を私に見せて何がしたいのだ…」

 

「言ったろ?お前が悦ぶ光景を見せるって」

 

「これが、こんな物が私が悦ぶ光景だと!!」

 

綺礼は内から沸き上がってくるナニカを抑えながら、声を上げる。

 

 

 

 

「ん~でもよ、笑ってるぜ、アンタ」

 

「何…?」

 

モードレッドが鏡を取り出し、それを綺礼に渡す。綺礼は受け取ると、鏡を覗き込んで驚愕する。

確かに、鏡の中の綺礼は笑っている。愉悦を感じているのだ。先程の幻術で見た、被害を被った者と、そいつに殺された連中に。

 

「私は……一体……」

 

この世の全てに絶望したかの様な表情で膝を着く綺礼。

 

「何をそんなに悩んでんだ?別に良いだろ、他人の不幸は蜜の味ってのは、お前さんが持って生まれた性質なんだから。それに」

 

モードレッドは溜めを持って言う。それこそ、何でもないかの様に。

 

 

 

「悪党を裁いて不幸な目に会わせるのは、悪行か?」

 

「……何を…言っている」

 

「悪人を裁くのは別に悪行じゃないだろ。それが悪なら、異端を狩ってる代行者だって悪人だ」

 

「それは……」

 

「正義の味方でも目指せば良いじゃん。人を救いつつ悪党の死に様を嘲ってやれば、それだけでアンタは満たされると思うが?」

 

「……………そう、か」

 

先ずはモードレッドに渡された本を読み、自らの性質を自覚した。次に幻術とモードレッドの言葉に後押しされ、綺礼は自らを受け入れた。

己が悪を受け入れ、善行によって不幸を与え、愉悦得る事を知った。

 

「そうか、…こんなにも簡単な事だったのだな。感謝するぞキャスター。私は、漸く答えを得た」

 

「そっか、そいつは良かったな」

 

だが綺礼には、問わねばならない事があった。

 

「だがしかしキャスターよ、何故貴様はここまで私にしたのだ?」

 

「ん~まぁ何となくだね」

 

「何となく、か」

 

「おう、何となくだ」

 

「変わったサーヴァントも居たものだ。態々敵に塩を贈る様な真似をするとは。マスターに知られれば、ただでは済まないのではないか?」

 

「はっはー、問題ねぇよ。俺は自他共に認めるバカだからな。例え知られても呆れられるだけだ」

 

「フッ…そうか。ではなキャスター」

 

「おう、じゃあなー」

 

綺礼はキャスターに背を向け去っていく。それをモードレッドは手を振って見送る。

 

「さて、帰って使い魔どものご飯を用意するか」

 

後にアサシンのマスターを見逃した事がマスターにバレて、起源魔術の実験台にされた、どこまでも平常運転のモードレッドであった。




『猿でも出来る起源覚醒~自覚と受け入れ編~』

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※尚、本書をお読みになった際に生じる被害については、著者は一切の責任を負いません。
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