叛逆の騎士ですがなにか?【永久凍結】   作:くずもち

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第23話 モーさん、シリアスになる

どうも皆さん、世紀末の掃除(焼却)屋。モードレッドです。

アインツベルンの城内部にて。

 

 

「王さま、来たぜ」

 

「…モードレッド」

 

狂戦士となった嘗ての部下を引き連れてやって来た俺と相対する王さま。その心中は複雑であろう。しかし、王としての責務を果たす為、王さまは剣を取る。ランスロットもまた、己の得物たる魔剣を構える。

 

「この戦闘中は俺は一切手を出さない。思う存分やってくれ」

 

俺はそう言って、少し離れた場所まで移動して座り込む。この戦いを最後まで見届ける為に。

 

「Aruuuuuuu!!」

 

「行くぞ!サー・ランスロット!」

 

御互い同時に駆け出し、剣を振るう。始めは鍔迫り合いになるが、狂化されているランスロットの方が筋力は上であり、その事を知っている王さまは相手の剣を逸らしながら弾き、右回転しながら斬りつける。

ランスロットは二歩下がる事でそれを回避。王さまへと斬り掛かる。それに対し剣で防ぎつつ、下がる王さま。互いに仕切り直す。再び接近し、高速で打ち合う二人。

二流以下のサーヴァントが巻き込まれたならば、数十秒と経たずに死ぬであろう一級の英霊同士の剣劇を見て、俺は何の感慨も浮かばない。この程度の打ち合いは生前の円卓ではウォーミングアップ程度の物だからだ。

 

だが、ウォーミングアップと云えど戦闘での差が分かってくる。ステータス、技量、その両方が王さまはランスロットに敵わない。

俺が集めた膨大な魔力を大量にランスロットに与えるのはフェアではないとして、一度ランスロットの魔力を満タンにした後は、間桐雁夜からランスロットに送られていた魔力とほぼ変わらない量の魔力を与えている為、魔力量にそこまでの差は無いものの、個人としての能力の差が浮き彫りになって来ている。

 

俺の計らいにより、ランスロットは僅かながら理性を取り戻している。といっても王さまを見ても直ぐには襲い掛からず、戦闘でも多少円卓時代の名残を出す程度だが。

それによって行われていたウォーミングアップも終わり、両者ともに全力を出し始める。超高速で振るわれる剣劇の嵐。

直ぐにでもあの中に飛び込んで、剣を交えたくなる自分を抑え込んで我慢する。

 

時間が経つにつれて、この戦闘に於ける優劣がハッキリとしてくる。両者ともに傷が付いていくが、付ける回数はランスロットが上だ。しかし王さまの体には傷一つ無い。それもその筈、付いた側から傷が癒えていくのだ。

王さまが所有する無敵の盾。所有者に不老不死を与える聖剣の鞘。全ては遠き理想郷(アヴァロン)。いつの間に取り戻したのか知らないが、これが有る事で最初からランスロットの敗北は確定していた。ランスロットが幾ら強くても、鞘を持った全力の王さまを殺しきる事は出来ない。逆に王さまもまた、接近戦では格上のバランスロットを殺せない。そうなれば必然的に長期戦となる。

しかし、ランスロットは間桐雁夜がマスターであった時と、魔力の供給量は変わらない。

 

即ち、王さまよりも先にランスロットの魔力が尽きる。

 

純粋な技量の差と、竜殺しの属性を持つ魔剣によって、魔力の不足を補っていたものの、徐々に不利になっていく。そして遂には、致命的な隙を晒す。

その隙を直感によって罠ではないと判断したであろう王さまは、宝具を解き放つ。

 

風王(ストライク)ッッッ鉄槌(エア)!!」

 

王さまの剣から放たれた暴力的な風によってランスロットは吹き飛ばされ、壁に激突する。

王さまは油断すること無く、ランスロットに向かって走り、勢いのままに心臓へとその聖剣を突き立てた。

 

「サー・ランスロット。王として、貴方を処罰する」

 

王さまはランスロットから剣を引き抜く。するとランスロットは壁にもたれかかりながら、ズルズルと崩れ落ちた。決着を見た俺は、静かに二人へと近付いた。

 

「A、Aruuu───……アーサー、王。私は…貴方に裁かれたかった。…他の誰でも無い、貴方自身の怒りによって……我が身の罪を問われたかった。……貴方に裁かれたのであれば、きっと私や王妃は贖罪を信じて…いつか自らを赦す為の道を、探し求める事も出来たでしょう」

 

俺と王さまは、ランスロットの話を黙って聞いている。

 

「王よ、私は貴方に裁かれて良かった。…モードレッド、貴方には、色々と面倒を掛けました」

 

「まったくだバカ野郎、反省しろ。序でに座に帰ったら、ガウェインに謝ってこい」

 

「ハハッ、そうですね。そうしましょうか……」

 

ランスロットは笑いながらそう言い、続けて自嘲する様に言った。

 

「主と友に看取られながら逝くとは、まるで私が忠節の騎士の様だ……」

 

主の妻と関係を持ち、円卓崩壊の一端となった自分を恥じる様なランスロットのその言葉に、王さまは反論する。

 

「まるで、ではない。まさに忠節の騎士だ。ランスロット、貴方は何度も私達を助けてくれた、盟友なのだから」

 

ランスロットは一瞬、自分が何を言われたのか理解出来ない様だった。だが、理解すると同時に、顔が笑顔に変わっていく。

 

「……あぁ、王よ、貴方に仕える騎士であれて良かった」

 

ランスロットは悔いの無い顔で消えていく。それを俺達は、静かに見送った。

 

 

 

 

「じゃあ、王さま。始めるか」

 

「ええ」

 

ランスロットを見送った後、決着を付ける為に王さまと戦う。

ハッキリ言おう、俺と王さまは物凄く相性が悪い。何せ俺の殆どの魔術は対魔力で効かないし、全ては遠き理想郷がある為、戯曲・黄衣の王(ザ・グローリー・オブ・ハスター)は使えない。アレを発動されたら、ハスターの力でもどうしようもないからだ。一応、全ては遠き理想郷をどうにかする手は有るが……。

 

使えるのはバルザイの偃月刀やロイガー&ツァールといった実体剣や、魔術強化を施した銃火器のみ。掻き集めた魔力を全て使うつもりで行かなきゃな。

 

「ヴーアの無敵の印において──力を与えよ!力を与えよ!力を与えよ!」

 

偃月刀を大量に鍛造し、宙を舞わせる。その数、30本。狭所ではこんなもんだろう。

 

「超攻性防御結界!」

 

30の刃が全て王さまを両断せんと宙を舞い、向かって行く。だが王さまはそれらを平然と弾き、躱わし、受け流し、斬り伏せ、適切に対処していく。

 

「ロイガー!ツァール!」

 

2本の剣を召喚し、両手に構えて接近する。偃月刀で動きを封じつつ、ロイガー&ツァールで仕留めに掛かる。長期戦になれば魔力の差で勝つ事も出来るが、それでは俺が納得出来ない。故に俺は、王さまをこの手で倒す。

 

「オラァッ!…ッドラララララララララララァ!!」

 

「…くっ!」

 

打って打って打って打って打ち合い続ける。先程から少しづつダメージを与えてはいるが、どれだけ連撃でダメージ与えようとも、致命傷を与えない限り王さまは倒れない。

 

ガッキィ!!

 

「これなら!」

 

王さまの剣を双剣で挟み込み、左に抑え込む。その間に王さまの背後と俺の背後から、偃月刀が飛来。

 

「なめるなッ!」

 

ガンッ!

 

「っぁ!?」

 

偃月刀で肩を裂かれながら放たれた予想外の頭突きで、俺は後退さられる。つか、兜被ってる奴に頭突きするか普通!?

 

「はぁあ!」

 

「ぐっ!」

 

後退して出来た隙に、王さまはすかさず斬り掛かって来る。咄嗟に複数の偃月刀を即席の盾にして防ぐも、バルザイを真っ二つにしなから迫る刃に胸を薄く斬られる。俺はバックステップで距離を取り、体勢を整える。

 

やはり王さまは強い。ステータスの上ではほぼ互角。耐久が低い分こちらが不利か。

耐久的に攻撃は当てられない様に動かなければならいし、元々耐久性も回復力も並外れた王さまに全ては遠き理想郷が加わったのだ、堅牢過ぎてマジ笑えねぇ。

 

「ヴーアの無敵の印において、力を与えよ!」

 

取り合えずは、破壊されて数か減った偃月刀を補充する。このまま攻めても良い結果は得られなそうだ。次の手で行こう。

双剣を地面に突き刺し、偃月刀で牽制しつつ虚数空間から武装を引っ張り出す。取り出したのは二丁の大型ガトリングガン。それらを片手ずつで持ち、躊躇無くぶっ放す。

 

ガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガッ!!!!!!!!!!!

 

一分間に一万発のイブン・ガズィの粉薬を使用した弾丸を発射、それを2門。弾だけは生前に大量に作って虚数空間に仕舞っておいたとわ言え、一分ちょいあれば全て撃ち尽くすだろう。

 

全ては遠き理想郷(アヴァロン)ッ!!」

 

「チィッ!」

 

王さまが全ては遠き理想郷を使った事で、全弾防がれる。弾を撃ち尽くした所で全ては遠き理想郷を解除し、こちらに向かって来る王さま。ガトリングを投げつけて双剣を引き抜く。ガトリングを躱わしながら接近して来た王さまと斬り結ぶ。

 

多少のダメージは回復し、高火力は全て防がれる。やはり全ては遠き理想郷は面倒だ。味方なら頼もしいが、敵だと厄介な事この上ない。

このまま消耗戦はしたくねぇし、一か八かの賭け、行ってみるか!

 

高速で打ち合いながら慎重にタイミングを測る。一歩間違えば自滅しかねんからな。

接近戦をし始めて、十数分程だろうか?遂に待ち望んだタイミングが来る。

 

今だッ!

 

王さまが突きを繰り出したのを見た瞬間、右手の剣を捨て、抱え込む様に受け止め様と動く。当然王さまは直ぐに剣を引き戻そうとするが、それよりは速く、剣を俺の腹に突き立てた。

 

俺が何かを狙っている事を突き立てる直前に察したであろう王さまは、急いで距離を取ろうとする。

 

「逃がすかぁ!!」

 

ドスッ!

 

偃月刀を王さまの背後から飛来させ、俺ごと貫通した。

王さまの背部から突き刺さった偃月刀は、そのまま肉薄していた俺の腹を突き破って背中から出ている。それを動かぬ様に固定した。これで逃がさずにすむ。

 

Departure(決別せよ)!」

 

腹の痛みを無視しながら、右手に魔術を込め全ては遠き理想郷に触れ、魔術を発動させる。すると、全ては遠き理想郷の機能が停止する。

 

「なっ!?これは!?」

 

「全ては遠き理想郷は封じさせて貰ったぜ、王さま!」

 

これが俺の対全ては遠き理想郷用の切り札。全ては遠き理想郷対策の魔術。

魔法クラスの宝具である全ては遠き理想郷を封じるのは、その神秘の違いからほぼ不可能といって良い。だがその僅かな例外がこの魔術だ。

嘗て母モルガンが、王さまから全ては遠き理想郷を奪う為だけに、時間と命を賭けて作り上げた魔術。効果は、全ては遠き理想郷と王さまの繋がりを一時的に断ち切る事。全ては遠き理想郷そのものには干渉出来ないのなら、王さまと全ては遠き理想郷を繋ぐラインを断ち切れば良い。ちなみに対魔力対策として、龍殺しの属性も僅かに含んでいるらしい。

これで王さまは全ては遠き理想郷の治癒力も真名解放も使えない。

 

ただしもって20秒。それまでに決着を着けなくては!

 

「ハァッ!!」

 

「がふっ」

 

王さまは俺に突き刺さった剣を横に引き抜き、俺の腹を左へかっ捌いた。

即座に偃月刀を自壊させ、動き易くする。と同時に右足を顔へ蹴り上げ、左足を軸に一回転。蹴りは回避されるが、そのまま左手のツァールで剣を警戒しつつ、右手にロイガーを召喚、斬り掛かる。周囲からは飛来する偃月刀。

 

獲った!と思った瞬間。

 

 

約束された(エクス)───」

 

なっ!?このタイミングで撃てるのか!?

 

「───勝利の剣(カリバ)ァァァ!!」

 

チャージから発動までの間が速すぎる!不味い!避けられねぇ!?

 

『避けて!』

 

!!

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………ごふッ」

 

ドサッ

 

約束された勝利の剣の光が消え、爆煙が収まり行く中、俺に心臓を貫かれた王さまが倒れた。

 

「ハァ……ハァ……」

 

危なかった。マスターからの咄嗟の援護が無ければ死んでいた。令呪で転移した俺は、宝具使用中の王さまに対して心臓に剣を突き刺した。ギリギリの勝利だった。

 

恐らく相手はあの時令呪を使ったのだろう。でなければあのタイミングで約束された勝利の剣(エクスカリバー)を使える筈が無い。

 

「モード……レッド」

 

剣を仕舞い、俺は王さまを抱き抱える。

 

「俺の、勝ちだぜ、…王さま」

 

「そう…ですね。………モードレッド、……これを」

 

息も絶え絶えに王さまが呼び出し、渡して来たのは、見覚えの無い一本の剣だった。

 

「これは、燦然と輝く王剣(クラレント)。…王の後継者が持つ、剣です」

 

「王さま、アンタ……」

 

俺が戸惑う様な声を出すが、王さまは気にせずに続けた。

 

「私はずっと、後悔していた。王としてでもあったが、一人の親として。かの神の打倒も、本当は、貴方を奪われた復讐の意味もあった」

 

「貴方に会えて、この剣を渡せた。今はそれだけで、十分です。これで、決心がついた。……私は、聖杯を求めるのを、止める。結果を、甘んじて受け入れる。………頑張りなさい、モードレッド」

 

今際の際に放たれた王さまの言葉は、俺の心に深く染み渡った。そして、俺の口からこの言葉が自然と出てきた。

 

「ありがとう、父さん」

 

王さま、……父さんは一瞬驚いた顔をするが、直ぐに正して笑顔になり、消えていった。

 

俺は父さんから受け取った剣。燦然と輝く王剣(クラレント)を握り絞めた。

悪くはない勝利だった。円卓の連中が見ても文句は言って来ないだろうと思うくらいには、納得が出来る勝利だった。だが……

 

 

 

……王を、父をこの手で殺したからだろうか?

 

何故か俺は、涙が止まらなかった。

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