キャスター組討伐後。アインツベルンの城に帰還した俺。マスターとも合流し、今後の方針を詰めていく。
現状決まっているのは、マスターが敵マスターを暗殺していく方法が有効的なので、今後も続けて行くということだ。
「厄介なのはアサシンだな。分裂出来るのなら、一人二人仕留めた所で意味は無い。直接マスターを仕留めた方が良いだろう」
「そうだね、僕も同じ意見だ」
「現状、居場所がはっきりしているのはアーチャー及びアサシンのマスターだけ。一方は工房に籠り、もう一方は監督役に保護されている。……面倒な」
「やはり、誘き寄せるしか無い、か。…アサシンの殲滅状況は?」
「駄目だな。取り敢えず魔獣どもには見付けしだい始末する様に命じてあるが、10体程始末してからはさっぱりだ」
アサシンが厄介過ぎる。分裂とか仕留めるのが面倒にも程があるぞ。
「今日はこの位にしておこう。流石に情報が少な過ぎるからな。明日には魔獣どもが他のマスターを見付け出しているさ。マスターはもう休め」
「……分かった、そうさせて貰うよ」
少し思案した様子だったが、素直に休んでくれる様だ。
さて、マスターが休んでいる間に、少しでも状況を好転させておくかな。
手始めに、うろ覚えの原作知識からおおよその位置を予測し、探索する。探索にはティンダロスを動員。冬木の隅々まで調べ尽くそう。
その後、夜が明けても俺は探索を続行していた。今まで魔術の痕跡や魔力反応を探させてライダーのマスターの居場所を探っていたが、何時までも見付からないので人海戦術で行く事にした。
具体的には大量のビヤーキーを召喚し、認識阻害をかけてから町中を飛び回らせている。今日中には見付かるだろう。
……………え?もう見付けたの?
ライダーの居場所を突き止めた俺は、昼間にアイリスフィールを連れてライダー組の潜む民家に来ていた。切嗣は民家ごと爆破する気だったが、何とか押し留め、ライダーを別の場所に誘きだす事に決まったのだ。
民家の前でサーヴァントの気配を出し、ライダーを誘い出す。……数分待っても出て来ない。不在か?
「おぉ!バーサーカーとそのマスターではないか!もしや、余の配下になりに来たのか?」
後ろから声を掛けられた。出かけてたのか。俺は霊体化を解き、実体化してアイリスフィールの前に立って話す。
「いんや、決闘の誘いだ」
「そうか、残念だのぅ」
ホントに残念そうに話すライダー。なんというか、凄く俺と気が合いそうな奴だな。マスターのサーヴァントでなけりゃ、同盟組んでも良いかなって思えるな。
そんでライダーのマスターは凄ぇビビってるな。まぁ魔術師としての実力は低そうだし、サーヴァントが怖いのも無理はないのか?
「時間は今日の晩。場所は冬木大橋でどうだ?」
「良かろう!ならば!そこで余が貴様を打ち倒し、我が配下に加えてくれよう!」
「諦めないのね…」
「当然だ、余は征服王であるからな!」
「ライダーお前!何勝手に決めてnブふぇ!」
ライダーに文句を言おうとしたライダーのマスターがデコピンで吹っ飛ばされた。相当苦労してんのな。
「馬鹿者。いずれ戦う相手なのだ、ならば何時戦ったとて同じ事。折角彼方が誘いに来てくれたのだ、受けなければ恥であろう」
「ッッ~~~!!」
ライダーのマスターは痛みで何も聞こえて無いだろ。
「お主等、昼飯はもう食ったのか?」
「? いやまだだけど?」
「ならば丁度良い!美味い飯屋を見付けたのだ!共に食おうではないか!」
「「「は?」」」
「ここだ。このお好み焼きという料理がまた美味くてな」
何でかライダーに昼飯に誘われ、少し強引に連れてこられた俺達。ライダーに戦闘だとか、謀略だとかの意思は見られないので付いてきたが、それ以上に問題なのがアイリスフィールが乗り気であるということだ。
一応認識阻害の魔術で俺の格好に違和感を感じない様に誤魔化してるけど、ふとした切っ掛けでバレる事もあるからなぁ。出来れば実体化したくねえんだが。
「なあ、アイリスフィール。大丈夫なのか?」ボソッ
「大丈夫よ。心配性ね、バーサーカーは」
「そういう問題じゃねえんだが……」
「それに私、B級グルメって言うの?1度こういうの食べてみたかったのよ。それに、いざとなったら、バーサーカーが守ってくれるでしょ?」
「…いや、まぁそうだけども」
可能な限りは安全に動いて欲しいんですがそれは。
「おーい、何をしておる!早く来んか!」
「さ、行きましょ。バーサーカー」
アイリスフィールとライダーに促され、店へと入る。入ると同時に、お好み焼きの良い匂いがしてくる。この匂いを嗅ぐのは15年ぶりだな。転生前が懐かしい。店の奥に行き、人目に付かない所に席を取る。
「どうぞ、アイリスフィール」
「ありがとう、バーサーカー」
椅子を引き、アイリスフィールが座りやすくすると、ライダーのマスターが羨む様な目でアイリスフィールを見ていた。恐らくサーヴァントが従者らしい行動を取っているのが羨ましいのだろう。ライダーは言うこと聞かなそうだもんな。
「さて、何を頼む?面倒なら纏めて大量に頼むのでも良いが、先に飲み物は注文しとけよ」
「それよりもバーサーカーよ。御主鎧は脱がんのか?そのままでは食えなかろう?」
「大丈夫だ。何故なら…」
カシュッ
兜の口の部分だけが変形、収納され、口許が露になる。
「こうなるから」
生前、円卓の仲間と一緒に飯を食う機会も有ったからな。兜を外さずに食事が出来る様に改造したのだ。
「便利だのぉ、その兜」
「だろ?」
円卓の皆が見ると、何故か全員異様な物を見る目で見てくるんだよなぁ。可変型の素晴らしさが分からんのか?まぁマーリンだけは興味深げに見てたけど。
暫くしてから店員を呼び、注文を済ませて具材が運ばれてくる。
それらを適当に焼いていると、ライダーが話し掛けて来る。
「バーサーカーよ、貴様の聖杯に掛ける願いは何だ?」
「なんだ、藪から棒に……」
「そう煙たがる事もあるまい。貴様も聖杯に招かれし英霊ならば、憚る事なき願いが有るはずだ」
「…んーまぁ良いか。受肉だよ」
「ほう!ならば貴様も、再び世に覇を成さんとするのか!」
「違ぇーよ。単に自由に動ける肉体が欲しいだけだよ。つか、
「そうだ。この世界に再び一個の命として根を下ろし、余自身の手で、世界を征服するのだ」
「ほーん。ま、頑張れば?俺が勝つからどうせ願いは叶わないんだし」
「言うではないか」
俺が挑発染みた発言をすると、ライダーが愉快そうに応える。ふと横を見ると、アイリスフィールが追加で注文をしていた。意外と食うのね。
おい ライダー、テメェ何大量注文してんだよ。誰が払うと思ってやがる。
そんなこんなで飯を食い、暫くして解散となる。会計?全部俺持ちだよ。ライダーのマスターは明らかにそんな金持ってねーだろうし、ライダーはそもそも現代の金を持って無い。アイリスフィールは多少持ってるが、それでも払える程ではない。
生前、虚数空間に入れておいた貴金属を換金しておいて良かった。
ライダー組と解散した後、街中の人目に付かない場所でランスロットが接触してきた。戦闘を行おうとしたら待ったを掛けられた。
「何だ?命乞いなら受け付けんぞ?」
「いえ、違います。私達は交渉がしたいのです」
「交渉?」
アイリスフィールに確認するように顔を向けると、頷き、了承の意を示したので聞くことにする。
「言ってみろ」
「感謝します、モードレッド。さぁ雁夜」
「……本当に、大丈夫なんだな?」
マスターに促す様に言うランスロットだが、マスターの方は懐疑的だ。そりゃ、生前からの知り合いとはいえ、今は敵どうしだし、警戒するのは当然だ。
「えぇ。と言うより、これ以外に桜を助ける方法は有りません。私では彼に勝てない。」
「……分かった。頼みが有るんだ。セイバーの支配権は渡すし、知ってる限りの情報を話す。俺を使い潰しても良い。だから、力を貸してくれ」
少し思案するも、悲鳴染みた懇願とも言える交渉をしだす。
「………事情を話せ。でなければ此方としても判断しにくい」
ランスロットのマスター、間桐雁夜の話しを整理すると。
御三家の一つ、遠坂の次女桜が間桐の養子に出され、拷問とも言える魔術的調教を受けている。
今回の聖杯戦争で勝利して聖杯を持ち帰れば桜は解放される。
しかしセイバーの判断で俺と交渉し、桜の安全を確保してもらい、今後魔術と関わらせずに人並みの幸せを約束してもらう事にしたのだとか。
うちの陣営にした理由は、第一に俺がいること。第二に、魔術師らしからぬ魔術師がマスター、もしくは協力者にいる事だった。
間桐雁夜は確信を持った様子で取り出したそれは、機械の残骸だった。
はっきり言えば甘い。
まず、俺やマスターが交渉に乗るとは限らないし、そのまま殺されていた可能性もある。桜に関しても、ギアスロールを使ったとして、破る方法は存在する。破戒すべき全ての符とかな。
だがそれを考慮しても、俺と敵対するよりは、交渉した方が良いと考えたのか。俺を知るランスロットだからこその行動だな。
「そちらの事情は分かった。だが少し待て、マスターに確認を取る」
「あぁ、そうしてくれ」
五感共有で俺の見聞きした情報をマスターに送っておいたので、話しは手早く済む。
《で、マスター。どうする?ランスロットの技量は役立つ。アーチャー相手の盾には有効だぞ?》
《そうだね…今の話を聞く限り、間桐雁夜の言葉に嘘は無さそうだ。城まで連れてきてくれ、そこでギアスロールを書く》
《了解》
「マスターがお前らを城まで連れて来いとさ」
「じゃあ!」
「あぁ、間桐桜の安全な人生は約束する」
それから俺は二人を連れて城に戻る。マスターがギアスロールを書いて一段落着いた後、間桐雁夜を治療する事にした。
ギアスロールで縛った以上、間桐雁夜は裏切れないからな。
間桐雁夜の治療後、俺は一人、冬木大橋でライダーが来るのを待っていた。時間的にはそろそろだろう。
すると、此方に高速で向かって来るサーヴァントの気配を感じた。雷鳴の音がする事から、確実にライダーだろう。
「来たか」
ライダーは俺から20m程離れた場所に戦車を止め、話し掛けて来る。
「待たせたなバーサーカー」
「待っていたぞライダー」
ライダーは恐らく突進の準備を、此方は全て断つ稲妻の剣を、互いに宝具を構える。
「では、始めるとしようか!」
「来い!」
「
「
二つのA+宝具のぶつかり合いにより発生した衝撃波が橋をぶち壊して行く。
宝具同士のぶつけ合いに勝ったのは俺だった。宝具のランクは同じでも、マスターから供給される魔力量の差が決め手となった。あちらは三流マスター一人に対して、此方はマスター+大量のホムンクルスだ。魔力では先ず負けない。
「チッ…避けたか」
ライダーは俺の宝具に押し負けた瞬間、即座に戦車を捨てて、マスターを連れて飛び降りたのだ。
「危ない所だったわ。大丈夫か坊主」
「あ、ああ……」
「悪ぃが待ってやる義理は無いんでな。早々に終わらせて貰う」
「くっ!」
ライダーに接近し斬り掛かると、マスターを庇う様に応対し始める。
乗り物の乗っていない騎兵など敵では無い。剣を弾き、その胸に深い切り傷を付ける。
「令呪を持って命ず!ライダー、何とかしろ!」
「任せい!」
後一歩の所でライダーのマスターに令呪を使われ、ライダーが何かの宝具を発動させる。
それを警戒して俺は、少しばかり距離を取る。
光で視界が奪われるも直ぐにそれは収まり、目の前に広大な平原が広がる。
「固有結界…だと!」
魔法に最も近い大禁呪。己の心象風景を具現化し、世界を一時的に書き換える大魔術。
俺は即座に対魔力で警戒しつつ、魔術でいつでも対応できる様に構える。固有結界はそれぞれ、特殊な効果を持っている。発動した瞬間決着が着く様な物も存在する以上、警戒する必要がある。
「? 何も起こらない?」
可笑しい、何も変化が無い。俺に効果が無いということは、使用者を強化する類いの物か?
そう思いライダーの姿を探すと、直ぐに目についた。数万の軍勢を率いるライダーの姿が。
「行くぞバーサーカー!これぞ我が宝具、王の軍勢《アイオニオン・ヘタイロイ》なり!!」
「成る程、それがお前の切り札か。確かに、それなら凡百の英霊相手なら一方的に倒せるだろう。だが、知るが良い、お前が相手にするのは、円卓最強の騎士であるということを!!」
馬に乗り、此方に駆けてくるライダーに対して、俺は再び宝具を使う準備をする。
「AAAlalalalalalalalalalalalalalalalalaei!!!」
『『『ウォォォォォォォォォォォォォ!!!』』』
「
降り下ろすのではなく、横凪ぎに払う様に。ライダーの誇る万の軍勢を消し飛ばして行く。
例え万軍であろうと、それをどうにかする術さえ有れば、恐れるに足りない。
だが、軍勢の大半を消し飛ばされ、結界が解除されて尚ライダーは向かってきた。
「ウォォォォォォ!!」
「フッ!!」
左手にクトゥグアの銃を召喚。馬を撃ち抜く。そして、馬から転げ落ちながらも向かって来るライダーを、スレ違いながら胴を切り裂き、止めを刺す。
「まぁ、中々だったぜ。お前」
ライダーは笑いながら消えて逝った。残るは固有結界に取り込まれなかった事で、生き残ったライダーのマスターだが……。
「ぁ、…ライ、ダー?」
「せめて、痛みなく殺してやる」
呆然としているライダーのマスターの首を、一瞬で刎ねる。痛覚の遮断と恐怖の抑制の魔術を掛けてから。
後始末は教会の人間に任せて、俺はこの場を去る。
現状、アサシンは敵足り得ない。故に残すは、アーチャーだけだ。