修行が終わって全員がグレモリー邸へ集合した。グレモリー眷族は塔城を除く全員、あまり変わった雰囲気が無いが、それはまぁ時間的に仕方ないというもの。寧ろこの短期間で急激に成長している塔城が凄いのだ。
ゼノヴィアは……うん、まぁ…良いんじゃないかな。
まさかこの修行期間中にバカどもを従えているとは思わなかった。確かに大量に討ち取られては召喚してたけど、ここまでとは。
グレモリー邸に集まる際、バカどもが引く人力車に乗ってやって来た時はビビった。完全に英霊を顎で使ってるよ。
そして現在俺は、グレモリー邸で暇を潰していた。これからパーティーがあるそうなのだが、グレモリー眷族といつの間にか居たシトリー一同の女性陣及びギャスパー・ヴラディが、パーティー用に着替えるそうだ。ゼノヴィア?いつも通りジーパンにTシャツだよ。俺もいつもの鎧姿だし。少し待つと、着替え組がドレスに着替えてやって来た。
パーティ会場まではタンニーンとその眷属が送ってくれるらしいので、彼等が到着するまで待つことになる。タンニーンの名を聞いてゼノヴィアが物凄く気まずそうな顔をしていたが、何かあったのか?
ゼノヴィアに話を訊こうとした時、執事がやってきてタンニーンの到着を報告した。
庭に出てみると、タンニーンと同等サイズのドラゴンが十数体居た。だが、一番最初に俺の目に付いたのはそこではない。剥げているのだ、タンニーンの鱗が。それも広範囲に。どっかでモンスターなハンターにでも襲われたのか?
それからタンニーンに会場に送り届けて貰ったが、何故か終始ゼノヴィアを警戒していたな。……ゼノヴィアがタンニーンを……まさか、な。
「モッキュモッキュモッキュモッキュ」
「モッキュモッキュモッキュモッキュ」
パーティの最中、俺とゼノヴィアはひたすらにメシを食い続けていた。折角の無料飯だ、これを食わぬ手はあるまい。食えるだけ食っとこう。
俺達の食いっぷりは凄まじく、俺達に接触しようとした悪魔達も引いていく程だ。ゼノヴィアはそれなりに食ったら、デザートを全種制覇しようしてる。
そんな俺達に話しかけようとする猛者が現れた。
「久しぶりだね、モードレッド」
「んお?おお!ディハウザーじゃん!久しぶり!」
「モードレッドさん、誰ですか?」
この状況で声を掛ける猛者に興味を持ったのか、ゼノヴィアがデザートを食う手を止めて訊いてくる。
「ディハウザー・べリアル。レーティングゲームのランキング一位で、通称
「初めまして。紹介に与った、ディハウザー・べリアルだ。気軽にディハウザーと呼んでくれ」
「ゼノヴィアです」
「ところでディハウザー、今度は何時クレーリアに会いに行く?」
「ここのところ政務が多くて、暇がまるで取れないんだ。暫くは無理そうだな」
「そうかー。んじゃあ、暇が出来たら家に来てくれ」
「ああ。そうするとしよう」
その後はディハウザーと談笑しながらパーティーを楽しんでいると、妙な氣を感じた。使い魔の氣だが、仄かに仙術の力も感じる。
氣の方向を見渡してみると、一匹の黒猫が走っており、それを塔城が追いかけていた。更にそれをグレモリーと兵藤が追いかける。……面白そうなイベントの予感。これは行くしかないな。
「ディハウザー、すまんが用が出来た。ちと行ってくる」
「あぁ、分かった」
俺はディハウザーに一言断って、塔城を追ってパーティー会場から出る。
気配を辿って行くと、森の中へと続いている。俺は魔術と仙術を同時併用して、姿隠して尾行を続ける。
暫く歩くと、塔城に似ている悪魔。恐らくははぐれ悪魔黒歌と塔城が対峙している光景が目に入ってきた。近くにグレモリーと兵藤、それから少し離れた所にいつぞやの美猴とかいう猿の気配もする。
というか、グレモリー達はそれで隠れてるつもりか?
「ハロー、白音。お姉ちゃんよ」
白音。多分だが、塔城の本名だな。
「黒歌姉さま……」
「会場に紛れ込ませたこの黒猫一匹でここまで来てくれるなんて、お姉ちゃん感動しちゃうにゃー」
「……姉さま、これはどういう事ですか?」
塔城は特に感情を乗せるでもなく、純粋に疑問といった風に訊いた。
「……ちょっと野暮用なの。悪魔さんたちがここで大きな催ししているっていうじゃない? だから、ちょっと気になっちゃって。にゃん」
塔城の反応が予想外だったのか、少し間を置いてから話し、最後に手を猫のように丸めてウインクする黒歌。あざとかわいいな。だから何だという話だが。
「ハハハハ、こいつ、もしかしてグレモリー眷族かい?」
すると美猴がグレモリー達の居る方向を見て言った。
「気配を消しても無駄無駄。俺っちや黒歌みたいに仙術知ってると、この流れの少しの変化でだいたいわかるんだよねぃ」
隠れているのがバレて、これ以上は無駄と判断したのか、素直に出てくる二人。ついでに俺も姿を現そうか。
黒歌の頭の上に。
「遅いぞ、ナッパ」
「え、なに?って重!?」
さっきまでは魔術で体重を軽くして違和感を感じさせない様にしながら乗っていたが、姿を現す際にそれを解いたので、黒歌の首には俺の全体重+鎧の重量が加わっている。
「トウッ!」
「ぶにゃ!?」
黒歌の顔面を軽く蹴って跳躍。三人の傍に着地する。
「モードレッドさん!?」
「先生!?」
この場の全員が驚いた表情をして、兵藤と塔城が声をあげる。
「い、一体いつから乗ってたにゃん!?」
「お前がハローって言った辺りから」
「ほぼ最初っからじゃないの!?て言うか、乙女の頭に土足で乗った挙げ句に顔を踏み台にするとか、頭おかしいんじゃないの!?」
「その場のノリでやった。反省も後悔もしていない。というか頭に乗られてるのに気付かないお前が悪い」
「ムキー!!」
黒歌が怒りだして、今にも飛び掛からんと力を蓄えていると、美猴が黒歌に話し掛けた。
「黒歌~、帰ろうや。どうせ俺っちらはあのパーティに参加できないんだし」
「イヤよ!この鎧野郎に一撃くれてやるまでは帰らないわ!」
どうやら黒歌は相当ご立腹の様だ。
「黒歌」
「…………分かったわよ。ただ、白音は戴いて行くにゃん。あのとき連れていってあげられなかったしね」
「勝手に連れ帰ったらヴァーリが怒るかもだぜ?」
「この子にも私と同じ力が流れていると知れば、オーフィスもヴァーリも納得するでしょ?」
「そりゃ、そうかもしれんけどさ」
黒歌が目を細めて塔城を見る。しかし塔城は平然とした様子で見つめ返す。
そこにグレモリーが割って入った。
「この子は私の眷属よ。指一本でも触れさせないわ」
「あらあらあらあら、何を言っているのかにゃ? それは私の妹。私には可愛がる権利があるわ。上級悪魔様にはあげないわよ」
一触即発といった空気が漂う。先手を取ったのは黒歌だった。
「めんどいから殺すにゃん」
黒歌が笑みを浮かべた瞬間、辺りの空気が妙な物に変わった。空間操作系の術か。
「……黒歌、あなた、仙術、妖術、魔力だけじゃなく、空間を操る術まで覚えたのね?」
「時間を操る術までは覚えられないけどねん。空間はそこそこ覚えたわ。結界術の要領があれば割かし楽だったり。この森一帯の空間を結界で覆って外界から遮断したにゃん。だから、ここでド派手な事をしても外には漏れないし、外から悪魔が入ってくる事もない。あなた達は私達にここでころころ殺されてグッバイにゃ」
黒歌が楽しそうにそう言うが、この程度結界なら殴れば壊せるんだが?予想以上に強固だったとしても、クラレントなら一撃で破れるし。真名解放すら必要無い。
「リアス嬢と兵藤一誠がこの森に行ったと報告を受けて急いで来てみれば、結界で封じられるとはな……」
空から声が聞こえて来たので見上げると、そこにはタンニーンが居た。
「タンニーンのおっさん!」
「おうおうおう! ありゃ、元龍王の
「さっきと意見が180度違うじゃないの…。まぁいいわ。龍王クラス以上の首を三つ持っていけば、オーフィスも黙るでしょうしね」
お?俺も頭数に入ってんのか?
美猴は筋斗雲を呼び出してタンニーンへと向かっていく。それに対しタンニーンは、強力なブレスで迎え撃ち、空中戦を始める。
俺は、塔城を守ろうと前に出ようとするグレモリーと兵藤を手で制す。二人は訝しげに退がるも、念のため赤龍帝の籠手を用意しておく様だ。
「行けるな?塔城」
「……はい!」
前に出て来た塔城と俺を見て、黒歌は疑問を口にする。
「随分と素直に白音が言うことを聞くみたいだけど、あんた白音の何?」
「先生だ。戦闘のな」
「スゥ……ハァ!!」
ゴウッ!!
気合いを入れた塔城から、ドラゴンボールキャラが氣を解放した時みたいなエフェクトが出てくる。
その瞬間、塔城から感じられる力が中級悪魔程度から最上級悪魔並みに変わる。
「………え?な、何それ?…え?」
「……行きますよ姉さま。私は貴女を倒して、過去を乗り越える!」
シュンッ!
「ッ!!」
一瞬にして塔城の姿が消え、黒歌の左横に移動する。そして黒歌の側頭部目掛けてハイキックを叩き込む。辛うじて反応できた黒歌は、反射的に腕に氣と魔力を込めてガードをする。
塔城の蹴りはガードをした黒歌を吹き飛ばし、木々を何本もへし折って漸く黒歌は止まった。
吹き飛ばされた黒歌は直ぐに立ち上がるも、左腕を抑えている。折れはしなくても、罅くらいは入っただろう。
「っ痛!……嘘でしょ?ここまで強くなってるなんて、どういう鍛え方してんのよ……」
「……先生の御指導の賜物です。黒歌姉さまも本気で来て下さい。でなければ意味がありません」
「……分かったわ、もう手加減はしない。でも、死ぬ覚悟をしてかかって来なさい!」
黒歌から放たれる仙術、妖術、魔力のミックス弾の雨霰。それを塔城は、舞空術で高速移動しながらグミ撃ちで迎撃していく。
黒歌は時折飛んで来る気功波を魔力の障壁で防ぎながら、弾幕を濃密にしていく。
「姉さまぁ!!」
「白音ぇ!!」
接近戦は塔城が、遠距離戦は黒歌が上か。
塔城と黒歌が壮大な姉妹喧嘩をしていると、突如赤龍帝の籠手を用意していた兵藤から声がかかった。
「モードレッドさん!緊急事態だ!」
「どうした?」
「俺は、左右どっちのおっぱいをつつけばいい!?」
「…………状況を説明しろ」
「神器が禁手に至るかの分岐点に立っていて、力が使えないんだ!おっぱいをつつけば至れる筈なのに、どっちのおっぱいをつつけば良いのか分からないんだ!?」
「……成る程。ならば兵藤、貴様に天啓をくれてやろう」
「…天、啓?」
「なに兵藤?どちらのおっぱいをつつけば良いのか分からない?兵藤それは無理矢理に限定しようとするからだ。逆に考えるんだ、両方つつけば良いさ。っと考えるんだ」
「ッ!!…両方、つつく!?」
俺の言葉を聞いた兵藤は、驚愕と戦慄の表情をした。そして……。
『Welsh Dragon Balance Breaker!!!』
「
『おめでとう相棒。だがいい加減、俺も泣くぞ?』
御愁傷様、赤龍帝。兵藤はグレモリーの乳を両方つつき、禁手に至った。示唆したのは俺だが、流石に同情を禁じ得ないな。だが私は謝らない。
「小猫ちゃん!今援護に「……必要無いです」じゃ、じゃあタンニーンのおっさ「無用だ!」…………」
折角禁手に至ったのに、いらない子扱いされていじける兵藤。
タンニーンと美猴のバトルは、兵藤には高レベル過ぎて寧ろ足手まといになりかねない。そして塔城の方は、過去を乗り越える為に自力で戦うと決めている。ピンチにでもならん限り、援護は必要ないだろう。
「……接近戦なら!」
「近付かせなければ問題無いにゃん!」
舞空術で黒歌に上方から接近する塔城。近付けば近付く程濃密になっていく弾幕に、氣のバリヤーを張りながら突っ込む。被弾してダメージを負いながらも、臆せず進む。
「……ハァ!!」
黒歌の目の前へ移動し終えた塔城は、そのまま拳によるラッシュを繰り出す。塔城の拳は黒歌の魔力障壁を容易く破り、黒歌の胴体に迫る。
「甘いわよ、白音」
黒歌は焦る事無く冷静に塔城の拳を反らし、躱わし、捌きながら距離を取ろうとするが、最初に罅を入れられた左腕が上手く機能しておらず、次第に押されていく。それを好機と見て、塔城は渾身の一撃を繰り出す。
「……沈んで下さい」
そして黒歌は、塔城の渾身の一撃を左腕で受けた。
ゴキィ
腕から嫌な音がして、黒歌は吹っ飛んで行く。恐らく今のはワザとだろう。敢えて攻撃を受ける事で、吹き飛ばされて距離を取る。
立ち上がった黒歌の左腕は、力無く垂れている。完璧に折れているな。
黒歌は再び弾幕を張り塔城を攻め立てるが、先程と比べるといささか攻撃が弱い。そして塔城も動きが鈍くなって来ている。互いに消耗しているのだろう。少なくとも塔城はもう、先程の様に弾幕に突っ込む事は出来ない。
「……波動拳!」
「当たらないわよ!」
塔城の波動拳を障壁で反らして防いだ黒歌。それを見た塔城は、氣を円盤型に固めて投げつけた。
「……なら、気円斬!」
「障壁を切り裂いた!?」
障壁や弾幕を切り裂きながら迫る気円斬を、黒歌は跳躍して回避する。しかし、それが塔城の狙いだった。
「……これで終わりです姉さま!魔空包囲弾!」
「ッ!いつの間にこんなに!?」
グミ撃ちをしながら、少しづつ空中に気配を消した気弾を浮かせていた塔城。今までの攻撃は、これに気付かせない様にするための物。そして跳躍して空中にいる黒歌は、格好の的だった。
「キャァァァァ!!」
百に近い数の気功波が全て黒歌に命中する。咄嗟に張った障壁も、連続した攻撃の前に破れ、殆ど意味を成さなかった。
空中で気を失い、地へと落ちていく黒歌。すると、空間を切り裂いて眼鏡をかけた男が現れ、黒歌を受け止めた。
「そこまでです、美侯。悪魔が気づきましたよ」
眼鏡をかけた男は美侯にそう言う。
「おまえ、ヴァーリの付き添いじゃなかったかい?」
「黒歌が遅いのでね、様子を見に来たのですよ。そうしたら美侯までいて、黒歌は比較的軽傷ではあるものの気を失っている。まったく、何をしているのやら」
二人の会話から察するに、奴もまたテロリストで、ヴァーリの仲間なのだろう。
だが、俺にとって重要なのはそこじゃない。
あの男が手に持っている聖剣。たとえ世界を越えて、姿形が変わり、その剣が持つ力が変わっても、見間違える筈がない。あの男が持っている剣は、コールブランド。又の名をカリバーン。
かつて父さんが、
あの剣は、決してテロなんぞに使われて良い代物じゃあない。
「おい、そこの聖剣使い」
「なん…ッ!!」
キィン!!
「まさか、いきなり斬りかかって来るとは…」
俺は、奴が反応できて、黒歌を美猴に投げ渡す余裕がある位の速度で斬りかかった。そしてそのまま鍔競り合う。
「そっちの聖剣は行方不明だったエクスカリバー、
「斬りかかってから名を訊きますか…アーサーと言います。アーサー・ペンドラゴン」
「そうか。初めましてアーサー。そしてさようならだ。俺はモードレッド。転生体でも子孫でもない。円卓の騎士モードレッド本人だ。俺の目の前でここまで親父を侮辱する様な真似をされたんだ。お前生きて
氣と魔術と魔力。使える物を全て使って肉体を強化して、クソ野郎に前蹴りを放つ。クソ野郎は気づいて直ぐに回避行動を取ろうとするが、俺は直ぐに攻撃先を後頭部に変更した。前に出した足が、足の前に開けた虚数空間に入り、クソ野郎の頭の後ろに開いた虚数空間から飛び出す。
「させねぇよ!」
「…チッ」
仙術で氣の流れを読んだのか、はたまた直感か。突如飛び込んで来た美猴が、クソ野郎の後頭部に迫っている足を攻撃してきた。そのため俺はこの一撃で仕留めるのを諦めて、一度足を引っ込める。
相手の剣を弾いて鍔競り合いを止め、右手で剣を振るいながら左手を虚数空間に突っ込んでトンプソン機関銃を引っ張り出し、そのままぶっ放した。
二人はそれぞれの武器を用いて弾を叩き落として防いでいく。
俺は撃ちながら剣を地面に突き刺して右手に閃光手榴弾を持ち、防音結界を張る。そして弾が切れると同時に炸裂するタイミングで、放り投げた。
カッ!
閃光手榴弾で相手の視覚が潰れてる間に、俺は両手で剣を上段に掲げる。
「
「まずいッ!!」
流石は孫悟空の子孫と言うべきか、美猴は仙術で俺が必殺の一撃を繰り出すことを察知し、行動に移そうとしている。
俺はクソ野郎を殺すべく、剣を振り下ろした。
「―――
振り下ろされた剣から、辺り一面が光に包まれる程の銀色の光が放たれる。光は直線状にある全ての物を飲み込んでいき、消滅させた。
「チッ!!仕留め損なったか!」
光が収まった時、俺の前の大地はほぼ更地になっており、テロリスト三人の姿は無かった。だが、奴を殺ったという手応えは無かった為、どうやら逃げられたようだ。
「…次会った時はぶっ殺す」
ある日の友人との会話
友人「お前の小説って、ヒロインいなくね?」
作者「……こんな主人公にヒロインがいると思うか?」
友人「そこはお前の腕の見せどころだろ」
作者「俺にそこまでの技量を求めんな」
……ヒロイン、居た方が良いんですかねぇ?
皆さんの意見を聞いてみたいと思います。活動報告がありますので、そちらを見てみて下さい。