「えー、では、呼びましたら入って来て下さい」
「「「分かりました」」」
ども、読者の皆さん。モードレッドです。ただいまわたくし、教師として駒王学園に来ております。
夏休みが終わった為、護衛対象であるグレモリー一同は学園に通う事になる。流石に一々事件が起こる度に駒王町に出向くのは面倒だし、なにより手遅れになっては困る。そこで、教師として学園に入れば、有事の際に動き易いからな。
ゼノヴィアに関しては、生徒として転入させた。護衛の仕事の序でに教養を身に着けさせようという魂胆だ。無論学費は向こう持ち。通学に関しては、駒王町にあるマンションの一室を悪魔からタダで借りたのでそこから通っている。
それとアパートの方は借りたままにしておいた。駒王よりあっちの方が住み慣れてるし、なんらかの事情で依頼を止めた際、帰る場所が必要だし。
ついでに言うと、俺達の他に紫藤も転入してきた。ミカエルさんからの
『それでは、入って来てください』
ガラガラッ
俺がドアを開けて先に中へ入り、それに続いてゼノヴィアと紫藤も入っていく。
入って来た俺達の姿を見て、このクラスだったらしい兵藤とアルジェントが驚いた表情をしていた。
「モードレッド・ペンドラゴンだ。本日付けで、この学園で教師をすることになった。担当は英語だ。気軽にモーさん、若しくはモー先生と呼べ」
あん?俺に教師ができんのかって?俺の第2の出身はブリテン、つまりはイギリスだぞ。英語は母国語です。作者は英語のテストで毎回赤点ギリギリだけど。
「ゼノヴィアだ。よろしく頼む」
「紫藤イリナです。皆さん、どうぞよろしくお願いします!」
『『『ウォォォォォ!!美少女だァァァァァ!!』』』
「俺は男だ」
『『『ぐあぁぁぁぁぁぁ!!』』』
『『『男の娘キタァァァァァァ!!』』』
『はかどるわぁー!』
『次の作品は、木場×モーさんで決定ね!』
『早速制作に取り掛からなきゃ!』
腐女子が発酵しとる。腐ってやがる、遅すぎたんだ。
一方ゼノヴィアの方はというと。
『ゼノヴィアちゃんは、何か趣味はあるの?』
「ロボットは好きだぞ?あとプラモ造りもな。ガンダムもゲッターもマジンガーもイデオンもガオガイガーもガンバスターもファフナーも魔装機神もアクエリオンもグレンラガンもデモンベインもボトムズもダンバインもライディーンもマクロスもクロスアンジュもゼオライマーもコードギアスもスパロボも大好きだ」
『お、おう…』
『…そ、そんなことより、後で俺が学園を案内してあげるよ!』
「……そんなこと?貴様今、そんなことと言ったのか?」
『……へ?』
「神聖なロボット達を、そんなこと扱いするとは。……貴様は私を、怒らせた」
『ギャアァァァァァァァ!!』
『『『た、田中ぁぁぁぁぁ!!』』』
テラカオス。
なんやかんやで放課後、オカルト研究部に裏の関係者メンバーが集まった。
「紫藤イリナさん、ゼノヴィアさん、モードレッド・ペンドラゴンさん。貴方たちの来校を歓迎します」
「はい! 皆さん! 初めまして――の方もいらっしゃれば、再びお会いした方のほうが多いですね。紫藤イリナと申します! 教会――いえ、天使さまの使者として、駒王学園にはせ参じました!」
「俺とゼノヴィアは、改まって自己紹介する必要は無いか。俺達はお前らの護衛を続ける事になってるから、大抵の事はなんとかするが、余計な面倒事は持ち込んで来んじゃねぇぞ」
「本音は?」
「ぶっちゃけめどい」
俺の言葉に皆が苦笑するなか、アザゼルが紫藤に質問した。
「お前さん、『聖書に記されし神』の死は知っているんだろう?」
「せ、先生ぇぇぇぇっ! いきなり、それはいかんでしょう!」
突っ込む兵藤だが、アザゼルは嘆息するだけだった。
「アホか。ここに来たということは、そういうのを込みで任務を受けてきたはずだ。いいか、この周辺の土地は三大勢力の協力圏内のなかでも最大級に重要視されている場所のひとつだ。ここに関係者が来るということは、ある程度の知識を持って足を踏み入れていることになる」
「もちろんです、堕天使の総督様。安心して、イッセーくん、私は主の消滅をすでに認識しているの」
「意外だね。信仰心の厚いイリナの事だから、ショックで寝込むと思っていたけど」
そんなゼノヴィアの言葉の後、一泊開けて、紫藤の両目から大量の涙が流れる。
「ショックに決まっているじゃなぁぁぁぁい! 心の支え! 世界の中心! あらゆるものの父が死んでいたのよぉぉぉぉっ!? 全てを信じて今まで歩いてきた私なものだから、それはそれは大ショックでミカエル様から真実を知らされた時あまりの衝撃で7日7晩寝込んでしまったわぁぁぁっ! ああああああ、主よ!」
うわぁ。信心深い奴だと分かっていたが、此処までとは。これが神の死を知った奴の普通の反応なのか?いやでもゼノヴィアは割りと直ぐに立ち直ったし、こいつだけか。
泣きじゃくる紫藤を、ゼノヴィアとアルジェントが慰めている。紫藤が泣き止んだところで、再びアザゼルが質問する。
「ミカエルの使いってことでいいんだな?」
アザゼルの確認に紫藤は頷く。
「はい、アザゼル様。ミカエル様はここに天使側の使いが一人もいないことに悩んでおられました。現地にスタッフがいないのは問題だ、と」
「ああ、そんなことをミカエルが言っていたな。ここは天界、冥界の力が働いているわけだが、実際の現地で動いているのはリアスとソーナ・シトリーの眷属と、俺を含めた少数の人員だ。まあ、それだけでも十分機能しているんだが、ミカエルの野郎、律義なことに天界側からも現地で働くスタッフがいたほうがいいってんでわざわざ送ってくると言ってきてたのさ。ただでさえ、天界はお人好しを超えたレベルのバックアップ態勢だっつーのに。俺はいらないと言ったんだが、それではダメだと強引に送ってきたのがこいつなんだろう」
紫藤が不意に祈りのポーズを取ると、体が輝き始め、背中から翼が生えた。
「―――紫藤イリナといったか。おまえ、天使化したのか?」
「天使化? そんな現象があるんですか?」
「いや、実際にはいままでなかった。理論的なものは天界と冥界の科学者の間で話し合われてはいたが……」
「はい。ミカエル様の祝福を受けて、私は転生天使となりました。なんでも熾天使の方々が悪魔や堕天使の用いていた技術を転用してそれを可能にしたと聞きました」
さらに紫藤は話を続ける
「四大熾天使、他の熾天使メンバーを合わせた十名の方々は、それぞれ
「なるほど『悪魔の駒』の技術化。あれと堕天使の人工神器の技術を応用しやがったんだな。ったく、伝えた直後に面白いもん開発するじゃねぇか、天界も。悪魔がチェスなら、天使はトランプとはな。まあ、もともとトランプは『切り札』という意味も含んでいる。神が死んだあと、純粋な天使は二度と増えることができなくなったからな。そうやって、転生天使を増やすのは自軍の強化に繋がるか」
簡単に言えば悪魔の駒《イーヴィル・ピース》の天使バージョンって事か。
「そのシステムだと、裏でジョーカーなんて呼ばれる強い者もいそうだな。十二名も十二使徒に倣った形だ。まったく、楽しませてくれるぜ、天使長さまもよ」
アザゼルは楽しげに笑いを漏らしている。
「それで、イリナはどの札なんだ?」
気になったのか、ゼノヴィアが紫藤に質問する。すると紫藤は胸を張り、自慢げに言う
「私はAよ! ふふふ、ミカエルさまのエース天使として栄光な配置をいただいたのよ! もう死んでもいい! 主はいないけれど、私はミカエルさまのエースとして生きていけるだけでも十分なのよぉぉぉぉっ」
更にイリナは、俺たちへ楽しげに話を続ける。
「さらにミカエル様は悪魔のレーティングゲームに異種戦として、『悪魔の駒』と『御使い』のゲームも将来的に見据えているとおっしゃっていました! いまはまだ熾天使のみの力ですが、いずれは熾天使以外の上位天使様たちにもこのシステムを与え、悪魔のレーティングゲーム同様競い合って高めていきたいとおっしゃられていましたよ!」
「天使や悪魔の中には上の決定に異を唱える者も少なくない。長年争い合ってきた中だ、突然手を取り合えと言えば不満も出るさ。しかし、考えたなミカエル。そうやって代理戦争を用意することで、お互いの鬱憤を競技として発散させる。人間界のワールドカップやオリンピックみたいなもんだ」
人外連中も、そういう面倒臭い所は人間と大差無いよなぁ。寧ろ長生きな分だけ、何時までも過去の事をグチグチと引きずってそうだ。
「では、いずれ僕たちグレモリー眷属と天使のゲームシステムが戦うこともあるのでしょうか?」
木場の問い掛けに、アザゼルは首をひねる。
「将来的にはそうなるかもな。と言っても、すぐにじゃない。少なくとも十年……もしかしたら二十年後だ。ま、お前らはその頃ちょうど新人悪魔としてもいい時期だろうし、楽しめるだろうさ」
アザゼルの言葉に、悪魔の面々は楽しみそうに談笑する。
「その辺りの話はここまでにしておいて、今日は御三方の歓迎会としましょう」
シトリーがそう言って仕切り直し、歓迎会が行われた。尚、俺とゼノヴィアはひたすらに食い続けていたとだけ言っておこう。
数日後、オカルト研究部にて。
オカ研メンバーが全員とアザゼル、それから俺達が揃った所で、グレモリーが記録メディアらしき物を取り出した。
「若手悪魔の試合を記録したものよ。私たちとシトリー眷属の物もあるわ」
俺達の前に巨大なモニターが用意され、その前にアザゼルが立って言う。
「お前等以外にも若手悪魔たちはゲームをした。大王バアル家と魔王アスモデウスのグラシャラボラス家、大公アガレス家と魔王ベルゼブブのアスタロト家、それぞれがお前等の対決後に試合をした。これはそれを記録した映像だ。ライバルの試合だから、よーく見ておくようにな」
アザゼルの言葉にグレモリー眷族達が真剣に頷いた。
「先ずは、バアル家とグラシャラボラス家の試合だ」
数十分程観たバアルとグラシャラボラスの試合は、かなり一方的な物だった。
眷族の質の差はそこまで大きな物ではなかったが、バアル側が上回っていた。グラシャラボラス側の眷族が全員脱落すると、グラシャラボラスはバアルに一騎討ちを挑み、バアルはそれを了承した。結果はバアルの圧勝。
グラシャラボラスも決して弱い訳ではなかったが、それでもバアルが強すぎた。グラシャラボラスの攻撃はバアルに全く効かず、逆にバアルの攻撃は一撃でグラシャラボラスに大ダメージを与えていく。
身体能力だけなら最上級…いや、魔王クラスに近いな。だが……
「グレモリー、グラシャラボラスはどの程度の強さだ?」
「今回の六家限定にしなければ決して弱くはないわ。と言っても、前次期当主が事故で亡くなっているから、彼は代理と言う事で参加している訳だけれど……」
姫島が続ける。
「若手同士の対決前にゲーム運営委員会が出したランキングでは、1位がバアル、2位がグレモリー、3位がアガレス、4位がアスタロト、5位がシトリー、6位がグラシャラボラスでしたわ。王と眷属を含み、平均で比べた強さランクです」
「ふむ……差があるとはいえ、上級悪魔を一方的に倒せるスペックか」
この男は赤龍帝である兵藤か、超絶パワーアップを果たした塔城以外には倒せそうにないな。それにしてもこの男……
「動きに随分と無駄が多いな」
「……ですね」
どうやらゼノヴィアと塔城も同じ事を思っていた様だ。
「なぁゼノヴィア、小猫ちゃん、それってどういう意味なんだ?」
今の二人の会話の意味が理解できなかったのか、兵藤が二人に問い掛ける。
「今の試合は、サイラオーグのそのパワーの高さのインパクトが強かったが、彼は受ける必要の無い攻撃まで受けていたんだ。それだけじゃない、なんと言うか、彼の戦い方は自分のスペックに物を言わせたゴリ押しで、魔獣のそれに近い。イッセー、君は別に、何か格闘技をやっている訳ではないんだったな」
「ああ」
「だから分からないかも知れないが、技術レベルがそれなりの域に達している者からは、彼の動きにかなり無駄が見えてな…」
「……今の試合では問題ありませんでしたが、それは彼のパワーが相手を上回っていたからです。逆に言えば、彼は自分よりパワーのある相手には殆ど勝ち目は無いと思います」
ゼノヴィアの言葉を、塔城が補足説明する。
「今からグラフを見せる。これは各勢力に配られている物だ」
そう言ってアザゼルが術を発動させ、宙に立体映像のグラフを展開した。
映像には六人の若手悪魔達のパラメーターが映されており、パワー、テクニック、サポート、ウィザード、キングと表示されている。
件のバアルのグラフは、サポートとウィザードは若手の中で最低だが、パワーは2位以下を大きく引き離している。
「やっぱ、天才なんスかね、このサイラオーグさんも?」
兵藤の言葉を、アザゼルは首を横に振って否定する。
「いいや、サイラオーグはバアル家始まって以来の才能が無かった純血悪魔だ。バアル家に伝わる特色のひとつ、滅びの力を得られなかった。滅びの力を強く手に入れたのは従兄弟のグレモリー兄妹だったのさ」
血筋によって受け継がれる物が、本家ではなく分家に受け継がれるとは、皮肉だな。
「でも若手最強なんでしょう?」
「家の才能を引き継ぐ純血悪魔が本来しないものをしてな、天才どもを追い抜いたのさ」
「本来しないもの?」
「……凄まじいまでの修業だよ。サイラオーグは、尋常じゃない修練の果てに力を得た希有な純血悪魔だ。あいつには己の体しかなかった。それを愚直なまでに鍛え上げたのさ」
「「レベルを上げて物理で殴れ」」
俺とゼノヴィアの茶々を気にも留めず、話を続けるアザゼル。
「奴は生まれたときから何度も何度も勝負の度に打倒され、敗北し続けた。華やかに彩られた上級悪魔、純血種のなかで、泥臭いまでに血まみれの世界を歩んでる野郎なんだよ」
才能が無いから、才能が有る奴を超えるまで努力する、か。前世はともかくとして、今世に於いては父さんのコピーとはいえ、才能のある側に居る俺には理解し辛い事だ。いや、俺の剣術及び魔術関連の才能は、父さんやババアを超えているか……。
暫くして、試合がバアルの勝利で終わった。バアルの強さに恐れをなしたグラシャラボラスが投了したのだ。
「先に言っておくがお前ら、ディオドラと戦ったら、その次はサイラオーグだぞ」
「マジっすか!」
兵藤が驚いた様に言うと、アザゼルが頷いて肯定した。だが、グレモリーは訝しげにアザゼルに質問する。
「少し早いのではなくて? グラシャラボラスのゼファールドと先にやるものだと思っていたわ」
「奴はもうダメだ」
アザゼルの言葉に、皆が訝しげな表情になる。
「ゼファールドはサイラオーグとの試合で潰れた。サイラオーグとの戦いで心身に恐怖を刻み込まれたんだよ。もう、奴は戦えん。サイラオーグはゼファールドの心まで断ってしまったのさ。だから、残りのメンバーで戦うことになる。若手同士のゲーム、グラシャラボラス家はここまでだ」
絶望的な迄の力の差に、心が折れたか。
「おまえらも十分に気をつけておけ。あいつは対戦者の精神も断つほどの気迫で向かってくるぞ。あいつは本気で魔王になろうとしているからな。そこに一切の妥協も躊躇もない」
アザゼルは真剣な顔で、グレモリー達に忠告をする。
「まずは目先の試合ね。今度戦うアスタロトの映像も、研究のためにこのあと見るわよ。対戦相手の大公家の次期当主シーグヴァイラ・アガレスを倒したって話しだもの」
「大公が負けた…」
「先ほど朱乃が話してたランクで上位のアガレスを打ち破ったアスタロトは金星という結果ね。所詮対決前のランキングはデータから算出した予想にすぎないわ。いざ、ゲームが始まれば何が起こるかわからない。それがレーティングゲーム」
まぁそれは当然の事だ。戦いというのは力が強ければ勝てるほど、単純な物ではない。それで勝てるなら対軍、対城宝具が複数あった(連射可)ブリテンが、異形も混じっていたとはいえ人間でしかないBANZOKUに遅れをとる筈がない。
「けれど、アガレスが負けるなんてね」
そう言いながらグレモリーが次の映像を再生しようとしたとき、部屋の片隅に転移魔法陣が現れ、そこから一人の悪魔の男が出てきた。
「ごきげんよう、ディオドラ・アスタロトです。アーシアに会いにきました」
部室のテーブルにグレモリーとアスタロト、顧問としてアザゼルも座り、姫島がお茶を淹れてリアスの傍らに待機する。俺を含めたそれ以外のメンバーは、部屋の片隅で待機している。
「リアスさん。単刀直入に言います。『僧侶』のトレードをお願いしたいのです」
トレードとは、王同士で駒となる眷属を交換出来るルールの1つで、同じ駒同士なら可能なシステムの事だ。
「いやん!僕のことですか!?」
「なわけないだろう」
この吸血鬼も随分と逞しくなったな。
「僕が望むのリアスさんの眷属は、僧侶のアーシア・アルジェント」
アスタロトはそう言ってアルジェントに視線を向けた。
「こちらが用意するのは―――」
自分の眷属が載っているであろうカタログらしきものを出そうとしたディオドラへ、グレモリーは間髪入れずに言う。
「だと思ったわ。けれど、ゴメンなさい。その下僕カタログみたいなものを見る前に言っておいた方がいいと思ったから先に言うわ。私はトレードをする気はないの。それはあなたの僧侶と釣り合わないとかそういうことではなくて、単純にアーシアを手放したくないから。―――私の大事な眷属悪魔だもの」
グレモリーは躊躇いも無くそう言い切った。元々比べる気もトレードする気も無いのだろう。
「それは能力?それとも彼女自身が魅力だから?」
「両方よ。私は、彼女を妹のように思っているわ」
「―――部長さんっ!」
今のグレモリーの言葉に感動したのだろう。アルジェントは口元に手をやり、瞳を潤ませていた。
「一緒に生活している仲だもの。情が深くなって、手放したくないって理由はダメなのかしら?私は十分だと思うのだけれど。それに求婚したい女性をトレードで手に入れようというのもどうなのかしらね。そういう風に私を介してアーシアを手に入れようとするのは解せないわ、ディオドラ。あなた、求婚の意味を理解しているのかしら?」
「わかりました。今日はこれで帰ります。けれど、僕は諦めません」
立ち上がったアスタロトは、アルジェントの方へと近づいていく。俺はそれを尻目に、アザゼルに小声で話しかける。
「アザゼル、奴から僅かにだがオーフィスの力を感じるが?」
「ああ、分ってる。それについては後で詳しく話す」
「分かった」
パンっ!
「そんなこと言わないでください!」
俺が元の位置に戻ろうとした時、何かをはたく乾いた音の後に、アルジェントの叫び声が聞こえてきた。そちらの方を見ると、アスタロトが頬を赤く腫らせていた。
「なるほど。わかったよ。では、こうしようかな。次のゲーム、僕は赤龍帝の兵藤一誠を倒そう。そうしたら、アーシアは僕の愛に答えて欲し―――」
「お前に負けるわけねぇだろッ!」
睨み合う兵藤とアスタロト。そのときアザゼルの携帯が鳴り、グレモリー達に告げる。
「リアス、ディオドラ、ちょうどいい。次のゲームの日取りが決まったぞ。五日後だ」
アザゼルの言葉を聞いて直ぐに、アスタロトは帰って行った。
その日の夜、俺とゼノヴィアはアザゼルに呼ばれたが、ゼノヴィアは深夜アニメをリアルタイムで観るために呼び出しに応じなかった。……後で俺が伝えておこう。
「それで?何故アスタロトを放っておく?」
「…ディオドラ・アスタロトが禍の団と繋がっているのは確実だ。だから今回は、それを利用する」
「……囮か?」
「そうだ」
アザゼル曰く、次のグレモリーとアスタロトのゲームで禍の団が仕掛けて来るのはほぼ確実らしく、それを利用して一気に禍の団の戦力を削る作戦なのだとか。そのためにはグレモリーを囮にする必要があるので、この事はグレモリーには話してはならない、と。
「おい、じゃあ護衛の仕事はどうなる?」
「安心しろ。今回に限っては、何か有っても一切お咎め無しだ」
「なら、良いが」
「そんじゃ、宜しく頼むぜ」
「ああ、了解した」