叛逆の騎士ですがなにか?【永久凍結】   作:くずもち

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第37話 モーさん、テロを迎え撃つ

旧魔王派の悪魔たちをあらかた殲滅した後、残りは部下たちに任せて俺はアザゼルと共にある存在の気配がする場所へと向かった。そこに居たのは、腰まで届く黒髪に黒いワンピースを着た少女だった。

 

「お前が自ら出張って来るとはな。一体何を考えている?オーフィス」

 

「モードレッド、アザゼル、久しい」

 

アザゼルが警戒する様に光の槍をオーフィスに向けるが、オーフィスはそれをまるで気にしない。

 

「止せアザゼル。俺とお前の二人がかりでも、足止めにすらならん。例えそこに居るタンニーンを加えてもな。下手に刺激しない方が良い」

 

俺に言われてかどうかは知らないが、タンニーンはオーフィスを睨みつつも、無言で俺たちの傍に降りてきた。

 

「折角若手悪魔が未来をかけて戦場に赴いているというのにな。貴様らが茶々を入れるのが気に喰わん!あれほど世界に対して興味を示さなかった貴様が何故、テロリストの親玉をしているんだ!?何が貴様をそうさせた!答えろオーフィス!!」

 

タンニーンの問いに対し、オーフィスは静かに答えた。

 

「静寂な世界を取り戻す」

 

「何?」

 

「故郷である次元の狭間に戻り、静寂を得たい。ただそれだけ」

 

「ホームシックかよと普通なら笑ってやる所だが、次元の狭間と来たか。あそこには確か……」

 

「グレートレッドが居る」

 

次元の狭間。世界同士の間に存在する、何もない場所。そこに入ったモノ全てが、次元の狭間の“無”にあてられて消滅する。例外も存在するが。

同時に、無限を司るオーフィスと、夢幻を司るグレートレッドが誕生した場所でもある。

 

「もう一度問う。モードレッド、我が静寂を取り戻すのを協力して欲しい」

 

「断る。グレートレッドはこの世界にとって絶対に必要な存在だ。奴を殺す手伝いなどする気はない」

 

「…そう。だけど我、諦めない」

 

「勝手にしろ」

 

俺がそう言い放つと同時に、オーフィスの隣に転移魔法陣が展開され、そこから貴族風の男が現れた。

 

「お初にお目にかかる。俺は真のアスモデウスの血を引く者、クルゼレイ・アスモデウス。カテレアの仇を討つため、人間、貴様に決闘を申し込む」

 

「へぇ、俺相手に…ね。良いだろう、かかってこい。お前等は手を出すなよ?コイツは俺の獲物だ」

 

クルゼレイは空中に浮かび上がってこちらを睨み付けてくる。俺が戦闘態勢を取ると、アザゼルとタンニーンは常にオーフィスが見える位置へ距離を取る。どうやらオーフィスの監視をしてくれるようだ。

 

「死ねい!」

 

クルゼレイが、両手から大量の魔力弾をマシンガンの様に発射してくる。俺はそれらを自分に当たる分だけ剣で切り裂いて防いでいく。

今のクルゼレイはオーフィスの蛇によって魔王クラスまで強化されているため、流石に俺の対魔力でも無効化はできない。

 

「どうした!その程度か人間!」

 

クルゼレイの挑発を無視し、俺は奴に向けて力強く踏み込む。地上を超高速で直進し、クルゼレイの真下から斬り上げながら跳躍する。

俺の動きに反応したクルゼレイは咄嗟に魔力弾を撃ってくるが、虚数空間を通じて勢いをそのままに背後に移動し、脳天に踵落としを叩き込む。

 

「落ちろ!カトンボ!」

 

「ぐふっ!」

 

踵落としを食らったクルゼレイは、そのまま地へと墜落する。追撃の為に虚空を蹴って加速し、クルゼレイに剣を突き立てようとしたが、クルゼレイは地面に激突寸前に体勢を整えて回避したため、攻撃は地面を砕くだけに終わった。

 

「チィ!」

 

攻撃を躱したクルゼレイは、後ろに後退しながら魔力の弾幕を撃ってくるので、当たる物だけを斬りながら接近する。近付けば近付く程弾幕は濃くなっていくが、対処できないレベルではない。

クルゼレイとの距離をあと一歩まで詰めた所で、奴は特大の魔力弾を打ち出してきた。

 

「温い!」

 

右足で踏み込みながら右回転し、横凪ぎの一撃で斬り飛ばす。その勢いを維持したまま、左足に聖剣のオーラと氣を込めてクルゼレイの脇腹を蹴飛ばす。

 

「がはぁ!」

 

蹴飛ばされたクルゼレイは、血反吐を吐いて十数メートルほど転がった。瞬間的に氣を増幅させて体内に聖なるオーラと一緒に流し込み、蛇をピンポイントで殺した。これでもうコイツは魔王クラスの魔力は使えない。

 

「何だ?貴様一体何をした!?」

 

「…お前の中の蛇を殺した。もうお前はそこらの上級悪魔と変わらん」

 

俺はクルゼレイに近付き、顎を蹴り上げて体を宙に浮かせ、

 

「テメェは俺のボーナスに変われ!」

 

思いきり顔面を殴り抜いた。

 

「ぐばぁ!」

 

殴られたクルゼレイは近くの壁に叩きつけられ、ズルズルと崩れ落ちた。

 

「ぐ、くぅ……何故だ…何故勝てん!?俺の力は、オーフィスによって、魔王クラスにまで引き上げられていというのに!?」

 

ふらふらと立ち上がり、クルゼレイは怨嗟の声をあげながら近付いて来るが、その足取りは覚束無い。……万が一逃げられる前に、仕止めておくか。

 

燦然と輝く(クラ)

 

「おのれ、おのれおのれおのれおのれ!おのれぇぇぇぇぇ!!!」

 

王剣(レント)!!」

 

苦し紛れに魔力弾を打ち出してくるが、クラレントの光に掻き消され、クルゼレイを消し飛ばした。

 

「一足遅かったか……」

 

丁度そのタイミングで、ルシファーがここに駆け付けてきたようだ。

 

「すまんがルシファー、クルゼレイは俺が討ったぞ」

 

「そうか、残念だ……」

 

恐らくルシファーはまだ、旧魔王派と和解したかったのだろう。甘い男だが、だからこそのカリスマ性か。

 

「さて、オーフィス。今回おまえが態々出てきた理由は何だ?」

 

「一つはモードレッドの勧誘。もう一つは見学」

 

「……旧魔王派のか?」

 

「違う」

 

「違うだと?それじゃあな……ッ!」

 

アザゼルがオーフィスに問い掛けようとした時、強大な聖なる力を感じた。

 

「アザゼル!」

 

「あぁ分かってる。こいつは、間違いないねぇ」

 

アザゼルとルシファーは、難しい顔をして話し始めた。ふと見るとタンニーンも同様の顔をしている。

 

「オーフィス。アレがお前の言ってた見学か?」

 

「そう」

 

「おい、お前ら一体何の話をしている?このバカでけぇ聖なる力がどうかしたのか?」

 

「……そうか。モードレッド、お前はまだアレを見たことは無いみたいだな。……これは、聖槍の気配だ」

 

「聖槍つうと、神滅具最強って言われてるアレか?」

 

「そうだ、その聖槍だ。今代の担い手はまだ見つかってなかったが、まさかテロリストをやっているとはな」

 

「アレと悪魔の相性は最悪だ。最悪、かすっただけで悪魔が滅せられかねない上、神殺しの性質まで兼ね備えている。急がなければ、リアス達が危ない!」

 

「急ぐぞ!」

 

ルシファー達は皆、グレモリーが居る所へ転移していった。俺は無言でオーフィスを見た後、続いて転移する。

 

 

 

 

 

『時は少し遡り、ゼノヴィア達が最後の神殿に突入した頃』

 

 

私達が神殿に突入して見たものは、あちこちに宝玉が埋め込まれ、怪しげな紋様と文字が刻まれている巨大な円形型の装置と、そこに張り付けにされているアーシアの姿だった。

 

「アーシアァァァァッ!」

 

「やっと来たんだね」

 

イッセーが叫ぶと、装置の横からディオドラが姿を現した。

 

「……イッセーさん?」

 

イッセーの声を聞いたアーシアが、顔をこちらに向ける。彼女の目元は腫れ上がっており、尋常じゃない量の涙を流したと思える程に目が赤くなっていた。

 

「ディオドラ。貴様、アーシアに事の顛末を話したのか?」

 

「うん。全部、アーシアに話したよ。ふふふ、キミたちにも見せたかったな。彼女が最高の表情になった瞬間を。全部、僕の手のひらで動いていたと知ったときのアーシアの顔は本当に最高だった。ほら、記録映像にも残したんだ。再生しようか? 本当に素敵な顔なんだ。教会の女が堕ちる瞬間の表情は、何度見てもたまらない」

 

「クズが…」

 

私は吐き捨てるようにそう言う。

 

「本当は堕天使の女。レイナーレを殺して、僕の駒を与える予定だったんだ。だけど、グレモリーが余計な事をしてくれたせいで手が出せなくて、計画がだいぶ遅れてしまったよ。でも、ようやくアーシアを手に入れたよ」

 

「黙れ」

 

「アーシアはまだ処女だよね? 僕は処女から調教するのが好きだから、赤龍帝のお古は嫌だな。あ、でも、赤龍帝から寝取るのもまた楽しいかな? キミの名前を呼ぶアーシアを無理矢理抱くのも良いかもしれ――――」

 

「黙れェェェェェェェッ!!!」

 

『Welsh Dragon Balance Breaker!!!!!!』

 

ディオドラの下衆な発言にイッセーが激怒し、一瞬で禁手の鎧を纏った。

 

「ディオドラァァァァァァァァッ! てめぇだけは!絶対に許さねぇ!部長、皆、ディオドラは俺がやる!絶対に手を出さないでくれよ!」

 

「分かってる。だが、イッセーが倒した後で、奴は拷問にかける」

 

「イッセー、全員で倒すわ――――と言いたいところだけれど、今のあなたを止められそうもないわね。手加減してはダメよ」

 

「アハハハハ! 凄いね! これが赤龍帝か! でも、僕もパワーアップしているんだ! オーフィスから貰った『蛇』でね! キミなんて瞬殺――――」

 

イッセーは背中のブースターを噴出させて一瞬でディオドラとの距離を詰め、腹部に鋭く拳を打ち込んだ。

 

「瞬殺がどうしたって?」

 

イッセーの力が予想以上だったのか、それとも単に慢心していただけなのかは知らないが、ディオドラには先程までの余裕は無く、後退りながら魔力弾を撃っていく。だが、イッセーはそれを避けようともせずに近付いて行く。

 

「くっ!こんな事で!僕は上級悪魔だ!現魔王ベルゼブブの血筋だぞ!キミの様な下級で下劣で下品な転生悪魔ごときに気高き血が負ける筈が無いんだッ!」

 

「うるせぇ」

 

「がふっ!……痛い。痛いよ!どうして!僕の魔力は当たったのに!オーフィスの力で絶大なまでに引き上げられた筈なのに!」

 

ディオドラの魔力はイッセーの鎧に弾かれて効いてないが、イッセーの拳はディオドラの張った障壁を容易く破壊して、ディオドラを殴っている。

ある程度ディオドラを殴ったイッセーは、片手でディオドラの胸ぐらを掴み上げ、拳を握り締める。

 

『BoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoost!!!!!』

 

「俺ん家のアーシアを、泣かせんじゃねぇよ!!」

 

そう言って顔面を殴り飛ばした。吹っ飛んだディオドラは神殿の柱に打ち付けられ、崩れ落ちる。打ち所が悪かったのか、手足がひしゃげたらしい。

イッセーはディオドラに近付いてマスクを収納し、膨大な龍のオーラを放出しながら言い放つ。

 

「二度と、アーシアに近づくなッ! 次に俺達の前に姿を現したら、本当に消し飛ばしてやるッ!」

 

『相棒、そいつの心はもう終わった。そいつの瞳は、ドラゴンに恐怖を刻み込まれた者のそれだ』

 

イッセーがディオドラをぶちのめすのを見届けた私達は、アーシアが張り付けにされている装置へ駆け寄る。手足の枷を外そうとするが、中々外れない。

 

「頑丈な魔導具だ。面倒だから斬るか」

 

「……ゼノヴィアさん、私がやります。……セイッ!」

 

バキン

 

枷から解放されると、アーシアはいの一番にイッセーに抱きついた。

 

「信じてました……。イッセーさんがきっと助けに来てくれるって」

 

「当然だろう。でも、ゴメンな。ツラい事、聞いてしまったんだろう?」

 

「平気です。あの時はショックでしたが、私にはイッセーさんがいますから」

 

笑顔で一誠に言うアーシア。

 

「部長さん、皆さん、ありがとうございました。私のために……」

 

「アーシア。そろそろ私の事を家で部長と呼ぶのは止めても良いのよ? 私を姉と思ってくれて良いのだから」

 

「はい! リアスお姉さま!」

 

今度はリアスとアーシアが抱き合い。ギャスパーが大泣きし、小猫が頭を撫でる。

 

「さて、アーシア。帰ろうぜ」

 

「はい! と、その前にお祈りを」

 

アーシアは、天に向かって何かを祈る。

 

「アーシア、何を祈ったんだ?」

 

一誠が訊くと、アーシアは恥ずかしそうに言った。

 

「内緒です」

 

笑顔でイッセーのもとに駆け寄って来るアーシア。

私はその時、アーシアを助け出した事で気が緩んでいたのだろう。ここはまだ、戦場の真っ只中だというのに。

 

突如アーシアを包むように発生した、眩い光の柱。私はそれに反応できなかった。

 

「……アーシア?」

 

光が収まると、そこにアーシアの姿は無かった。

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