叛逆の騎士ですがなにか?【永久凍結】   作:くずもち

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第38話 曹操、宣言する

私は一瞬、何が起きたのか理解できなかった。

 

「チッ、やはりただの魔導具では無理があったか。計画の修正が必要だな」

 

私達は声のした方へ顔を向ける。そこに居たのは、軽鎧とマントを身につけた、強大なオーラを纏った男だった。

 

「……誰?」

 

「お初にお目にかかる、忌々しき偽りの魔王の妹よ。私の名前はシャルバ・ベルゼブブ。偉大なる真の魔王ベルゼブブの血を引く、正当なる後継者だ。先ほどの偽りの血族とは違う。ディオドラ・アスタロト、この私が力を貸したというのにこのザマとは。先日のアガレスとの試合でも無断でオーフィスの蛇を使い、計画を敵に予見させた。貴公はあまりにも愚行が過ぎる」

 

旧ベルゼブブッ!

 

「シャルバ! 助けておくれ! キミと一緒なら、赤龍帝を殺せる! 旧魔王と現魔王が力を合わせれば―――」

 

ピッ!

 

シャルバの手から放射した光の一撃が、ディオドラの胸を容赦なく貫いた。

 

「哀れな。あの娘の神器の力まで教えてやったのに、モノにできずじまい。たかが知れているというもの」

 

嘲笑い、吐き捨てるようにシャルバは言う。一方シャルバに殺されたディオドラだが、塵と化して霧散していった。今のは天使や堕天使の光の力か?それにしては妙だが。…寧ろ、転移系の術に似ていた気がする。ッ!だとすればッ!

 

「グレモリー!アーシアはまだ死んでいないぞ!今のは転移の光だ!アーシアはまだ何処かに居る!!」

 

「無駄だ。あの娘は次元の彼方に飛ばした。すでにその身も消失してるだろう―――死んだ、ということだ」

 

「生憎と私はあきらめが悪くてなッ!小猫!仙術でアーシアが飛ばされた場所を逆探知できるかッ!?見つけ次第、私が次元の壁を切り裂く!!」

 

「……やってみます!」

 

「フンっ無駄な事を。さて、サーゼクスの妹君。いきなりだが、貴公には死んでいただく。理由は当然。現魔王の血筋をすべて滅ぼすため」

 

「グラシャラボラス、アスタロト、そして私たちグレモリーを殺すというのね」

 

「その通りだ。不愉快極まりないのでね。私たち真の血筋が、貴公ら現魔王の血筋に『旧』などと言われるのが耐えられないのだよ」

 

シャルバからの敵意が大きくなる。それに対応して、次元を斬る準備をしている私と、アーシアが飛ばされた先を探っている小猫以外の者は皆、戦闘態勢に入る。だが、

 

 

「アーシア? アーシア?」

 

イッセーだけは、フラフラと歩きながらアーシアを呼んでいた。

 

「アーシア? 何処に行ったんだよ? ほら、帰るぞ? 家に帰るんだ。父さんも母さんも待ってる。か、隠れていたら帰れないじゃないか。ハハハ、アーシアはお茶目さんだなぁ」

 

その足取りは覚束無く、今にも倒れてしまいそうだ。

 

「アーシア? 帰ろう。もう誰もアーシアをいじめる奴はいないんだ。いたって、俺がぶん殴るさ! ほら、帰ろう。体育祭で一緒に二人三脚するんだから……」

 

「まだ理解できていないのか、愚かだな。もう一度言ってやろう。先程の転生悪魔の小娘は死ん ドスッ!… だ?」

 

 

その場の誰もが混乱していた。突然、シャルバが背後から槍で貫かれたのだから。

 

「貴、様ッ!曹操ッ!!」

 

「シャルバ。お前達はもういい加減、邪魔なんだ」

 

曹操と呼ばれた男がシャルバに対して吐き捨てると、シャルバを貫いている槍が輝き出し、強大な聖なるオーラが現れる。

 

「お前はここで消えろ」

 

シャルバは断末魔の声をあげる暇もなく、槍から出た聖なるオーラで消滅した。

シャルバを一瞬で片付けた男はこちらを見た後、通信機のような物を取り出して会話を始める。

 

「ゲオルク、確保したアーシア・アルジェントをこの場に転移させるんだ」

 

男の言葉を聞いて、グレモリー達が男に詰め寄ろうとした次の瞬間。私達の目の前に霧が発生し、そこからアーシアが出てきた。

 

「「「アーシア(さん/先輩)!!」」」

 

無事だったアーシアに、皆は駆け寄っていく。イッセーなど、号泣しながらアーシアを抱き締めている。

 

「ええっと、どういう事なんでしょう?」

 

何が起こったのか自分でも把握していないからか、アーシアは困惑している様子だ。

そんな彼らを横目に、私は突然現れてシャルバを倒し、アーシアも救った男を警戒していた。

 

「お前は一体、何者だ?」

 

「そう警戒しなくていいんじゃないかい?俺は君の仲間を助けたんだから」

 

「そうだな、その事に関しては感謝しよう。しかし、私は事前にこの作戦について教えられていた。相手の大まかな戦力と、こちら側の戦力についてもな。だが貴様に関しては何も聞いていない。警戒するには充分な理由だと思うが?」

 

私の言葉に対して男は、それもそうか。と言って苦笑した。こうして相対しているだけで分かるが、男は私よりも強いだろう。だがそれ以上に警戒すべきは、男の持つ槍。あの聖なるオーラから判断するに、恐らくアレは黄昏の聖槍(トゥルー・ロンギヌス)だ。

 

「シャルバは死んだか。まさかお前が出てくるとはな、曹操」

 

私が男を警戒していると聞き覚えのある声が聞こえてきて、空間に裂け目が生じる。そこから現れたのは、ヴァーリに美猴、そして聖剣を背負った男だった。

モードレッドさんから聞いていた特徴から推測すると、あの聖剣は聖王剣コールブラントで、それを持っているのはアーサー・ペンドラゴンだろう。モードレッドさんが近くに居るのに来るとは、死亡フラグにしか思えない気が……。

 

ヴァーリ達が来たことに気付いたグレモリー達は一斉に戦闘態勢を取ろうとするが、ヴァーリは手を前に出して言った。

 

「やるつもりはない。俺達は見たいものがあってここに来ただけだ。そろそろの筈なんだが……」

 

そう言いながらヴァーリは上空を見上げ、それに釣られて他の面々も上を見上げる。

 

バチッ!バチッ!

 

空間に巨大な穴が空き、そこから巨大な龍が姿を現した。

 

「よく見ておけ、兵藤一誠。あれが俺が見たかったものだ」

 

全長100メートルを超える巨大な龍が、空中を雄大に泳いでいく。妙な事に、龍からは全く力を感じない。恐らくは私との差がありすぎて、感じる事すらできないのだろう。

 

「『赤い龍』と呼ばれるドラゴンは二種類いる。ひとつはキミに宿るウェールズの古のドラゴン―――ウェルシュ・ドラゴン。赤龍帝だ。白龍皇もその伝承にでてくる同じ出自のもの。だが、もう一体だけ『赤い龍』がいる。それが『黙示録』に記されし、赤いドラゴンだ」

 

「黙示録……アポカリプスか」

 

「そうだ。真なる赤龍神帝(アポカリュプス・ドラゴン)グレートレッド。『真龍』とも称される偉大なるドラゴンだ。自ら次元の狭間に住み、永遠にそこを飛び続けている。今回、俺たちはあれを確認するため、ここへ来た。レーティングゲームのフィールドは次元の狭間の一角に結界を張ってそのなかで展開している。今回、オーフィスの本当の目的もあれを確認することだ。シャルバたちの作戦は俺たちにとってどうでもいいことだった」

 

「あれの打倒がお前の目標か? 」

 

私の問い掛けに対し、ヴァーリは真っ直ぐな瞳で言う。

 

「俺が最も戦いたい相手、『D×D(ドラゴン・オブ・ドラゴン)』と呼ばれし『真なる赤龍神帝』だ。

 俺は『真なる白龍神皇』になりたいんだ。赤の最上位がいるのに、白だけ一歩前止まりでは格好がつかないだろう?だから、俺はそれになる。いつか、グレートレッドを倒してな」

 

ヴァーリは自身の夢を語る。テロ組織に身を置いているのもグレートレッドと言うドラゴンを倒すためだと。

 

「グレートレッド、久しい」

 

「ッ!?」

 

いつの間にか、私達の近くに黒髪に黒のワンピースを着た少女が立っていた。

それだけではない、この少女から感じる力の大きさは、グレートレッドと同じで全く分からない。

 

「まさか、コイツがオーフィスかッ!?」

 

「そうだ、彼女がオーフィス。禍の団のトップだ」

 

未だにグレートレッドを見ているヴァーリに代わり、曹操という男が私の言葉を肯定する。それを聞いて驚愕する面々を無視し、オーフィスは指鉄砲の構えで、グレートレッドに向けてバンッと撃ちだす格好をした。

 

「我は、いつか必ず静寂を手にする」

 

直後に魔法陣が展開され、アザゼルにタンニーン、ルシファー様が現れ、少し遅れてモードレッドさんが別の転移でやって来る。

 

「お前たち、無事か!?」

 

アザゼル達は皆、グレモリー達を庇うように曹操との間に立つ。

 

「転移したのにオーフィスの方が速く居るとは、流石は世界最強」

 

凄くシリアスな空気なのに、呑気な事を言うモードレッドさん。

 

「全員、あの男の持つ槍には絶対に気を付けろ。あれが最強の神滅具、黄昏の聖槍(トゥルー・ロンギヌス)だ。神をも貫く絶対の神器とされている。神滅具の代名詞になった原物。俺も見るのは久しぶりだがな」

 

やはりアレがロンギヌスの槍か。ふと見ると、アーシアが虚ろな目で槍を見ている。それに気付いたアザゼルが、咄嗟に槍との間に入って視界から外す。

 

「アーシア。信仰のある者はあの槍をあまり強く見つめるな。心を持っていかれるぞ。聖十字架、聖杯、聖骸布、聖釘と並ぶ聖遺物の1つでもあるからな」

 

信心深かった頃の私なら、そうなっていたかもしれないな。今は信仰の薄れた自分に感謝だ。

 

「どうも初めまして。アザゼル総督、魔王サーゼクス・ルシファー殿。そして、人類最強、モードレッド殿」

 

「へぇ、俺の事も調べてんのか」

 

「ええ。始めは半信半疑でしたが、貴方は間違いないなく人類最強だ。様々な神話の神と繋がりを持ち、単身で魔王を超える人間など、貴方ぐらいだ」

 

強いとは思っていたが、そこまでか。まぁカテレアを一方的にボコボコにしていたからな。納得だ。

 

「俺の名は曹操。禍の団の英雄派という派閥を仕切っている者だ。今回ここに来た目的は二つ。我々の存在を知ってもらう事と、ある事の表明のためだ」

 

「表明だと?」

 

曹操の言葉に、アザゼルが訝しげに呟く。

 

「そう、表明だ。幸いにして、ここには各神話勢力のトップ陣が集まっており、中継もされている。宣言するには丁度良いだろうからね」

 

曹操は一拍置いた後、堂々と宣言した。

 

「我々禍の団は、今後一切三大勢力以外の勢力に手出しをしない」

 

『『『!?』』』

 

 

 

 

 

む?俺の視点に戻ったか。メタい?気にするな。

 

曹操の宣言に、この場に居る誰もが驚く。恐らくは、この場にいないトップ陣もだろう。

 

「元々、禍の団の目的はあそこに居るグレートレッドを打倒する事なのだから、テロ行為をするのはおかしいでしょう。我々も本意ではない」

 

「じゃあ、旧魔王派は何だ?アイツ等は堂々とテロリスト宣言しやがったが?」

 

納得のいかないアザゼルは曹操を問い詰め始めたが、曹操はそれを予期していたように語りだす。

 

「それについては謝罪するしかありませんね。あれは力を得た一部の者の暴走です。その証拠に、派閥のトップである俺自ら旧魔王派の始末に動いたのですから」

 

「ではアースガルズを襲った件についてはどうなのだ?」

 

今度はルシファー様が質問する。

 

「あれも同様です。ですが、あの件については既にアースガルズに謝罪し、互いに納得のいく形で和睦となりましたよ」

 

「なっ……!」

 

成る程、オーディンの野郎が狙ってたのはこれか。グレモリー達を助けるふりして、コイツを招き入れたな?

各勢力のトップが集まっているこの場で表明すれば、各神話に対して表明したのに等しい。しかも、北欧神話と和睦しているとなればそれなりの信用にもなる。いやもしかしたら、既に他の勢力とも交渉済みの可能性もあるか。

 

不味いな。非常に不味い状況だ。曹操は三大勢力だけを狙うと言った。三大勢力は他の神話勢力との同盟のダシに、禍の団のテロ対策を推している。だが禍の団が三大勢力だけを狙うのなら、同盟など組む必要は無い。寧ろ秘密裏に連中を支援する奴らも出てくるだろう。何せただ見てるだけで、大嫌いな三大勢力が弱っていくんだからな。

 

「曹操君、君は我々以外には手出しをしないと言った。では何故、我々を狙うのかね」

 

「その質問に答える前に先ず、我々英雄派の行動理念を説明しましょう。我々の目的は、人間が人間のまま何処までやれるのかを知りたい。それだけです。グレートレッドを倒す、というのは、世界で誰も成し得ない事だからですよ。世界最強と言われるオーフィスでさえもね」

 

グレートレッドの打倒。たとえ世界中の人外達が協力したとしても、不可能とされる事だ。確かにそれができたなら、称賛されるだろうな。本当に連中が狙っているかは別だが。

 

「ですが、グレートレッドの打倒は目的の一つでしかない。オーフィスとは、グレートレッド打倒という利害が一致しているから手を組んだに過ぎません。我々のもう一つの目的、それは人間を守る事だ」

 

「人間を守る?それは一体…」

 

「あなた方三大勢力は人間から搾取し過ぎた。英雄派の構成員の半分以上は、三大勢力の被害者たちだ」

 

「ッ!」

 

「無理矢理に転生悪魔にされた者。神器を持っていたというだけで我が子を堕天使に殺された者。病に倒れた母を救おうと悪魔と契約し、エクソシストに殺された者。悪魔の管理不足が原因で生まれたはぐれ悪魔に、友人を殺された者。悪魔にされた後、何とか逃げ出してきた家族を天使に殺された者。…まだまだいるぞ、お前たちが原因で、人生を踏みにじられた者達は!」

 

曹操の話を聞いていたルシファーは、悲痛な顔をしていた。ルシファーは悪魔らしくなく心優しいから、自分達の不甲斐なさが原因で誰かが不幸な目にあっているのは辛いのだろう。

 

「故に俺達は決めた。俺達は、お前たち三大勢力へ報復する事を。そして俺達がお前たちを滅ぼせば、第二、第三のお前たちが現れない為の抑止力にもなりえる」

 

ルシファー達に宣言する曹操の瞳には、確固たる決意が宿っていた。ルシファーの望む、対話による説得は無理だろう。

ルシファーは話し合いは不可能と判断したのか、残念そうに臨戦態勢を取る。

 

「そうか……ならば、私は魔王として君を討とう」

 

「そういうこった。態々大将一人で敵陣の中に居るんだ、やられても文句は言えねぇだろ?」

 

ルシファーに続いて、俺やアザゼルも構え始める。

 

「ここで戦って損をするのはそちらだが?生憎こちらに守るものは無いが、そちらにはあるだろう」

 

曹操のその言葉に、俺達は動きを止める。曹操は言外にこう言っているのだ。戦いになればグレモリー達を狙う、と。

こちらが動かない事を確認すると、曹操は通信機で誰かに話しかける。すると、曹操の周りに突然霧が発生する。

 

「この霧は、絶霧(ディメンション・ロスト)かッ!!」

 

絶霧……確か結界系最強の神滅具だったか。アレは確か結界だけじゃなく転移もできたはずだ。

 

「曹操、転移する前に一つ訊かせろ!」

 

ゼノヴィアが曹操に向かって問い掛けた。

 

「何だ?」

 

「何故アーシアを助けた?お前たちがアーシアを助ける利は何だ?」

 

「それはただ、赤龍帝に覇龍を使わせたくなかったからだ。過去にも、歴代の二天龍が親しい者の死を切っ掛けとして発動させる事例はあった。そうなっては面倒だったからね」

 

「なら、俺からも一つ質問だ。お前はグレートレッドの存在意義を知っているか?」

 

「ッ…さぁ?知らないな」

 

「……そうかい」

 

今の反応で確信した。コイツは本気でグレートレッドを倒す気は無い。恐らくグレートレッドの存在する意味を知っているからだ。グレートレッド云々は、オーフィスを利用する為の建前だろう。

 

俺の質問に答えてすぐ、曹操は霧に包まれて見えなくなる。直ぐに霧は晴れるが、曹操の姿は何処にもなかった。

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