叛逆の騎士ですがなにか?【永久凍結】   作:くずもち

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第39話 モーさん、英雄派との戦いを見守る

旧魔王派の襲撃及び禍の団の三大勢力殲滅宣言から暫く。あの後、三大勢力のお偉いさん達は事後処理に追われる事となった。禍の団が三大勢力のみを狙うと表明した事で、各勢力が三大勢力との同盟を渋り出したのだ。『三大勢力が標的なら、同盟を組む事で我々も狙われるのではないか?』と。

まぁ当然の判断だ。誰だってテロリストに現在進行形で狙われてる組織と同盟は組みたくないだろう。それを差し引いても利益があるならともかくとして。

同盟の条件、かなり足下を見られるんじゃなかろうか?

 

それでも同盟を渋り出した勢力も、まったく同盟をしたくない訳じゃない。アースガルズとの一件があっても、現状連中の言葉が真実だという保証はないからな。

 

 

 

 

 

ある日の放課後、俺は部室でこの世界の魔導書を読んでいた。直ぐ近くではゼノヴィア達が修学旅行の話をしている。ゼノヴィアは聖地巡礼だ!と言って張り切って、他の面々を引かせている。

ちなみに、ゼノヴィアの修学旅行の班メンバーは、男子がこの学園でエロ三人組と言われる兵藤、松田、元浜。女子がゼノヴィア、アルジェント、紫藤、そして桐生という生徒だ。

 

「そういえば2年生は修学旅行の時期だったわね」

 

「部長と朱乃さんは去年何処に行ったんですか?」

 

「私たちも京都ですわよ。部長と一緒に金閣寺、銀閣寺と名所を回ったものですわ」

 

グレモリーが頷きながら続ける。

 

「そうね。けれど、意外に三泊四日でも行ける場所は限られてしまうわ。あなたたちも高望みせず、詳細な時間設定を先に決めてから行動したほうがいいわよ?日程に見学内容と食事の時間をキチンといれておかないと痛い目に遭うわね。バスや地下鉄での移動が主になるでしょうけれど、案外移動も時間がかかってしまうものだわ」

 

「移動の時間まできちんと把握しておかなかったのがいけませんでしたわね。部長ったらこれも見るあれも見るとやっていたら、最後に訪れる予定だった二条城に行く時間がなくなってしまい、駅のホームで悔しそうに地団駄踏んでいましたわ」

 

姫島が小さく笑って言うと、グレモリーは頬を赤らめる。

 

「もう、それは言わない約束でしょう?私もはしゃぎすぎたわ。日本好きの私としては憧れの京都だったから、必要以上に街並みやお土産屋さんに目が行ってしまったの」

 

「修学旅行で訪れるまで京都に行ったことなかったんですか? 移動は魔法陣ですればいいと思いますし」

 

兵藤の質問に対し、グレモリーは指を左右に振って否定する。

 

「わかってないわね、イッセー。修学旅行で初めて京都に行くからいいのよ?それに移動を魔法陣でするなんて、そんな野暮なことはしないわ。憧れの古都だからこそ、自分の足で回って、空気を肌で感じたかったの」

 

外国人旅行客みてぇな奴だな。悪魔だからあながち間違っちゃいないけど。

 

「旅行もいいけれど、そろそろ学園祭の出し物についても話し合わないといけないわ」

 

「あー、学園祭も近かったですね。うちの高校って、体育祭、修学旅行、学園祭は間が短くて連続で行うからな。そう考えると俺ら二年生は大変だ」

 

「だからこそ、いまのうちに学園祭について相談して、準備しておかないと。先に決めてしまえば、あなたたちが旅行に行っている間に三年生と一年生で準備できるものね。今年はメンバーが多くて助かるわ」

 

「学園祭楽しみです!」

 

「うん。私もハイスクールでの催しは楽しいぞ。体育祭も最高だった」

 

アルジェントの楽しそうな声に反応してゼノヴィアも言う。この間の体育祭で運営として仕事の合間に見ていたのだが、ぶっちぎりで各種競技の一位を乱獲していた。お前ちょっと自重しろよ……。

 

「私もこういうのは初めてだから楽しみだわ~。良い時期に転入したよね、私! これもミカエルさまのお導きだわ!!」

 

紫藤は天に祈るポーズでそう言う。おい、悪魔勢がダメージ受けてんぞ。マジで祈ってんのか、それ止めろ。

 

そして話が去年の学園祭に移ったところで、全員の携帯が一斉に鳴った。俺は全員の顔を見て言う。

 

「―――行くぞ」

 

 

 

 

 

町にある廃工場。

 

 

「――――グレモリーの眷属か。嗅ぎ付けるのが早い」

 

 

暗闇から黒いコートを着た男が現れ、周囲から複数の人型の黒い異形の魔獣が姿を見せた。工場内にも同じ気配を二百体程感じる。

 

「『禍の団』の英雄派ね? ごきげんよう、私はリアス・グレモリー。三大勢力にこの町を任されている上級悪魔よ」

 

「ああ、存じ上げておりますとも。魔王の妹君。我々の目的は貴様達悪魔を浄化し、町を救う事だからな」

 

英雄派の男は、グレモリー達をゴミを見る様な目で見ている。

ここのところ、英雄派の構成員が三大勢力の重要拠点を襲撃する事件が多発しており、魔王の妹が居るこの町も標的の様で、度々小規模な襲撃を受けている。

 

男の横から更に二人の人間が出てくる。一人はサングラスをし、もう一人は中国の民族衣装の様な物を着ている。

魔獣の方はそれなりに強く、下級悪魔では相手にならない強さを誇り、倒すには中級悪魔以上の実力が必要になる。

 

禁手化をした兵藤と木場が前衛となり、紫藤が前衛兼中衛の為に少し離れた位置へ。塔城とヴラディが中衛。グレモリー、姫島、アルジェントが後衛だ。ゼノヴィアは遊撃として決まったポジションを持たない。最後に俺は、ピンチ以外には基本的には戦闘に参加しない事にしている。

これはアザゼルからの提案で、今後の事を考えてグレモリー達にもなるべく戦闘経験を積ませたいのだそうだ。

黒コートの男は両手に白い炎を発生させ、こちらの様子を伺っている。

 

「っ、また神器所有者か」

 

木場が目を細めて言う。

 

「困ったものね。ここのところ、神器所有者とばかり戦っているわ」

 

グレモリーが嘆息するが、俺としてはこの光景に思うところは無い。英雄派は恐らく、ほぼ人間だけで構成されている。基本的に人間というのは、英雄の様な例外を除いて人外相手には脆い。神器の様な特殊な武器を持っていなければ、そもそも戦力として数えられない場合もある。故に敵の構成員は、神器使いがメインだろう。

 

白い炎を出す男が攻撃を仕掛けた瞬間、兵藤が背中のブースターを使ってダッシュし、炎を弾き飛ばす。

 

「私が魔獣を片付ける」

 

それを合図にゼノヴィアが魔獣に向かって飛び出し、デュランダルを振るう。工場を破壊しないように加減している為か、一撃で十体程しか倒せていないが。

木場がサングラスの男に斬りかかるが、工場内の影が動いて聖魔剣を飲み込む。次の瞬間アルジェントの影が揺らぎ、飲み込まれた聖魔剣が飛び出して来る。

 

バキッ!

 

俺はそれを踏みつけて砕き、アルジェントの身を守る。

 

「―――っ!影で飲み込んだものを任意の影へ転移できる能力か……。直接攻撃のタイプじゃない。攻撃を受け流すタイプの防御系だね。厄介な部類の神器だ」

 

自分の持っていた剣が突然砕けた事と、こちらの様子から相手の神器の能力を推測する木場。直ぐに新しい聖魔剣を創り出し、応戦しようとした瞬間、青く輝く光の矢が木場に向かってきた。装備を見るに、民族衣装を着た男が放ったらしい。

木場は咄嗟に聖魔剣を盾にしながら回避するも、矢は軌道を変えて追尾を始める。

 

「光なら任せてちょうだいな!」

 

木場の後方から紫藤が光の槍を放ち、光の矢を迎撃する。槍と矢はぶつかり合って互いに消えた。反撃とばかりに姫島が氷の槍を作り出して投げつけるが、影が動いて氷の槍を取り込みグレモリーの影から放出する。しかしグレモリーは難なくそれを躱した。

 

「アレをやるぞ!」

 

黒コートが合図を出すと魔獣が三人の前に壁の様に立ち塞がり、攻撃を阻み始める。一撃で数体は倒せるが、直ぐに別の魔獣が前に出て捨て身で攻撃を防いでいる。魔獣が時間を稼いでいる間に影使いの男が味方の周囲に影を展開し、そこに他の二人が攻撃を入れ始める。

 

「食らえ!」

 

影に吸い込まれた連中の攻撃が様々な物の影から次々に放出され始め、三次元的な攻撃を繰り出してくる。

 

「……ここは私が」

 

機動力が低いメンバーを守るため、塔城が名乗り出る。

 

「……ハアァァァァァァ!!」

 

塔城は体内で氣を瞬間的に増幅、その後圧縮し、一気に開放した。氣の開放によって発生した衝撃波で攻撃が弾かれる。

 

「ギャスパ―くん!データは?」

 

「は、はいぃぃぃっ!で、出ました!そ、そちらの方が炎攻撃系神器『白炎の双手(フレイム・シェイク)』!そっちが防御、カウンター系神器『闇夜の大盾(ナイト・リフレクション)』!さ、最後にあちらが光攻撃系神器『青光矢(スターリング・ブルー)』ですぅっ!」

 

ヴラディはアザゼルが開発した神器を解析するマシンを使って調べた結果を、全員に伝えた。

 

「成る程、影使いが厄介だな。あちらは私が殺ろう」

 

ゼノヴィアがデュランダルのオーラを収束させ、影使いに向けて突きを打つと、剣先から細いレーザーの様にオーラが発射される。オーラは影の守りを貫通して男に直撃、腹部を貫いた。

 

「収束デュランダル砲。デュランダルの火力を一点に集中させた物だ。防御とカウンターを兼ね備えた神器の弱点は許容量に限界があること。それを超える火力なら容易く突破できる」

 

あいついつの間にあんな技覚えたんだ。ふと他の面々の方を見れば、影使いが倒れたことで防御が疎かになった炎使いを兵藤が殴り倒し、青い光を使う奴は木場に斬り倒されていた。

これで片が付いたとグレモリー達が安堵した瞬間、上空から緑の光の矢が複数飛来する。それと同時に魔獣が数体出現し、グレモリー達の油断をついて神器使い達を回収した。回収された神器使い達は、足元に現れた魔法陣によってそのまま魔獣と一緒にどこかへ転移していった。

 

 

 

戦闘終了後、また英雄派の人間を捕らえられなかった事を、グレモリー達は落ち込んでいた。実は英雄派に逃げられたのは今回が初めてではなく、これまでの全ての戦闘でそうなのだ。今までは戦闘中に不利になれば直ぐに撤退されていたが、今回の様に倒した後に逃げられるのは予想してなかったらしい。

どうやら英雄派の連中は極力仲間が減るのを避ける方針を取っているらしく、各地でも同様にして逃げられており、英雄派の人間を捕らえた、若しくは倒したという報告は滅多に上がってこない。例えあっても、そいつらは英雄派に関する情報を全て忘れているらしい。

俺が出れば逃げる間もなく速攻で捕まえられるが、失敗もこいつ等には良い経験だろう。

 

「それにしても、何か変よね」

 

「変って、何がだ?」

 

「だって、私たちと英雄派が戦ったのって一度や二度ではないでしょう?それこそ、本気で私たちを倒したいのなら、最初の二、三回ぐらいで戦術家はプランを立ててくると思うの。それで四度目辺りで決戦をしかけてくるでしょう。でも、四度目、五度目でもそれは変わらなかった。ずいぶん注意深いなーと感じたけれど……」

 

「そりゃそうだろう。本気でこっちを倒す気なら、こんな戦力を小出しにするやり方じゃなく、もっと数を揃えた上で戦略的に使うだろうからな」

 

紫藤の疑問に答えれば、今度は兵藤が疑問を投げかけて来る。

 

「じゃ、じゃあ連中の目的って一体?」

 

「連中は組織ができる程に大勢の人手があるが、だからと言って全員が戦闘のプロという訳でもない。今まで戦ったことすら無い奴も居るだろうさ。なら如何するか?簡単な事だ、経験を積めば良い。幸いにして敵は、赤龍帝に聖魔剣に雷光使いにデュランダル。時間停止能力持ちの吸血鬼に消滅の魔力を持った悪魔に優秀な回復要員まで選り取り見取りだ。勝敗以前にお前らと戦うだけで相当な経験値になるだろうさ」

 

自分たちが経験値稼ぎに使われていた事に、グレモリー達は不満気だ。お前らも連中で戦闘経験を積ませてたんだけどな。

 

「まっこれ以上詳しいことが聞きたけりゃ、アザゼルの奴にでも訊きな」

 

これ以上この場に留まる意味も無いので、俺達は部室に戻った。

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