実はハイスクールD×Dの10巻の内容だと、モードレッドが居る意味がほぼ無かったため、どうしようか悩んでいたのですが、話を飛ばすか番外編を挟めば良いのでは?という意見をもらいました。
そこで10巻の話の間、番外編で聖杯戦争に参加してて居なかった事にしようと結論しました。
不快な想いをさせてしまった方々には、深くお詫び申し上げます。
「俺、久々に聖杯戦争に参加するわ」
「……は?」
「いやー四次には参加したけど、五次には参加してなかったからな。丁度良く俺が居るはずの座に干渉があったぽいし、一度座に帰るわ」
「いやいやいやいや!聖杯戦争?え、何それ?面白そうなんだけど」
「言っておくけど、お前は参加できねぇぞ。英霊が参加するものだし。んじゃ、そういうことで」
「いや、ちょっ、説明してけぇぇぇぇぇ!!」
無視。
「ふぃー、座に帰るのも久々だなぁ。しっかし、ホント何もねぇなぁ、俺の座。だだっ広いだけの草原とかマジつまらん」
今度ここに家でも建てようかな?
「っと、それどころじゃなかったな。呼ばれてるんだから行かねぇと」
分霊を作って呼んでいる所に送り込む。まだ一回しか経験していないが、やっぱ変な感覚だよなぁ。俺はここに居るし動いてないのに、もう一人俺が出来て自由に動かせる。
何というか、遠隔で人形を動かしているみたいで、それが俺自身でもある。何だろう、このいかんともしがたい表現のし難さ。
「まぁ、細かい事は気にしないで行こう」
さぁ、戦争の時間だ!
現世に、仮初の肉体が構築されていく。霊核を包むように魔力で肉付けし、俺という存在が形作られていく。やがてそれが終わるとともに、俺は召喚者に話しかけた。
「サーヴァント、バーサーカー。召喚に応じ参上した。問おう、アンタが俺のマスターか?」
「…………」
「お、おい、マスター?聞こえてるか?」
「……ッ!え、ええ!私があなたのマスターよ」
お、反応してくれた。バーサーカーが喋るのはやっぱ驚くよなぁ。
「そか、なら良かった。俺の真名はモードレッド。マスター、アンタの名は何て言うんだ?」
「モードレッド?やっぱり、ヘラクレスじゃないのね」
「何だ?マスターはヘラクレスを召喚したかったのか」
「ええ。でも触媒も偽物だったみたいだし、しょうがないわよ。それに、あなたもサーヴァントとしてはかなり優秀みたいだし、問題ないわ」
偽物で召喚って、無茶するなぁ……ん?でもそれじゃあ俺が召喚された理由は何だ?偽物とはいえ触媒を使ったんだ、触媒に縁のある英霊が召喚される筈だが……まぁ、考えても仕方のない事か。
「着いてきなさい、バーサーカー。あなたをおじい様、この家の当主に紹介するわ」
「あぁ、それは良いがマスター。俺はまだアンタの名前を聞いてないぜ」
どこかに行こうとするマスターを引き止め、名前を訊く。
「そうだったわね。私の名前は、イリヤスフィール・フォン・アインツベルンよ」
こちらに振り向きながら名乗ったどことなく見覚えのある少女は、ある程度事情を知る俺にとっての爆弾を発言した。
「(俺のマスターが聖杯かよー!!!)」
ブリテン及び魔術関連を除いて、大半の原作知識が虫食いと化している俺。言われるまでマスターがイリヤだということにも気付かなかった。あ、言われてみればアイリスフィールに似てる。だから見覚えがあったのか。
つーかアインツベルンなら前回に俺が参加してた事は知ってるよな?何で俺に悪感情の一つも向けないんだ?もしかして、ここって俺が四次に参加しなかった平行世界?……じゃあ、アンリマユの汚染も残ってんのか?片付けんのメンドくせー。
【CLASS】バーサーカー
【真名】モードレッド
【ステータス】筋力A+ 耐久A+ 敏捷A++ 魔力 A+++
幸運A 宝具EX
あの後アインツベルンの当主であるアハト翁なる人物に紹介され、色々と小言を言われたり、喋ったら驚かれたり、父さん関連でマスターと話し合った後、マスターとその従者二名を連れて日本に渡った。
聖杯戦争の開催まで後二ヶ月もあるそうなので、折角だからその期間を使って準備を整える事ににした。
先ず第一にマスターの安全だな。俺の魔術の腕と魔導書が合わされば、マスターから別のホムンクルスに聖杯を移し替えることぐらい簡単だ。その辺に余ってた材料を使ってホムンクルスを造り、そちらに聖杯を移植する。ちなみにちゃんとマスターの許可は貰ってるぞ。
次に拠点の改造だ。俺が四次に居なかったってことは、金ぴかの野郎がまだ現世に残っているはずだから、迎撃より探知や時間稼ぎをメインとした仕掛けを森に作って置き、三人を逃がすための時間稼ぎの準備をしておく。だって守りながらだと勝てねぇし。ギルガメッシュが手段選ばずに来たら、俺でも対処しきれん。
例えば魔術を無効化する宝具でマスターとのパスを切られたら魔力切れになるし、俺じゃなくてマスターを集中的に狙われたら守らざるをえないから攻撃できねぇし、開幕天の理とかされたら邪神の加護でも防ぎきれずに死ねる自身があるぞ。ホンっとチートだなオイ!
ギルガメッシュ対策として、特殊ギミックでも造っておくか。
二ヶ月掛けて拠点構築を終えた俺は、マスターを連れて夜の冬木市を散策していた。認識阻害で俺の姿を誤魔化しながら歩いていると、直感からサーヴァントがつけて来ているのを察知した。
「マスター、サーヴァントだ。どうする?」
「ふーん…近くに公園があったはずだから、そこで迎え撃ちましょ」
「了解」
少し歩いて海浜公園に着き、人払いの魔術を使用する。俺はマスターを守るように前に立ち、片手でクラレントを構えて、つけてきたサーヴァントに話しかけた。
「さっさと実体化しな。でなきゃそのまま斬るぜ?」
俺の言葉に反応して現れたのは、青い髪を後ろで纏め、紅い槍を持った青い全身タイツの男だった。コイツは確かクー・フーリンだったか?五次鯖は印象が一番強かったから、一応名前と宝具は覚えてるんだよな。ステにスキルと、何をしたとか、どんな奴だとかは忘れたけど。
「コイツは運がいい。のっけからセイバーとやり合えるとはな」
「期待してるとこ悪いが、俺はセイバーじゃねぇ」
「何?そいつはどういう…」
ランサーが俺の言葉を聞いて訝しげに眉を顰めるが、マスターが直ぐに答えを口にした。
「ランサーね。初戦の相手には丁度いいわ。やりなさい、バーサーカー」
「オーライ!」
「バーサーカーだと!?」
驚愕するランサーに接近し、上段から剣を振り下ろす。ランサーは槍を横にして受け止めるが、力はバーサーカーであるこちらが圧倒的に上であるため、無理矢理に押し込んでいく。力勝負は不利だと感じたのだろうランサーは、槍を傾けて力を受け流そうとした。
受け流されて体勢を崩すのは不味いので、一度力で押すのを止めて顔に目掛けて突きを放つ。ランサーは首を傾けて躱し、横薙ぎに槍を振るって俺に距離を取らせた。
俺は再びランサーとの距離を詰めて、今度は左上に逆袈裟斬りをする。ランサーは剣に槍をぶつけて軌道をずらし、これを防ぐ。反撃とばかりに突き出された槍を、振った剣を引き戻して弾く。
斬り掛かり、逸らされ、突きを躱し、逆に刺突を繰り出す。これらを幾度か繰り返しながら、俺はランサーが槍を使いづらい距離まで詰めようとし、ランサーは槍を振るいやすい距離を保とうとする。
「何やってるのバーサーカー!遊んでないで真面目に戦いなさい!」
「……できればもう少し続けてみたかったんだがな。しゃーない、マスターからの命令だ、ちっと本気で行くぞ」
「構わねぇよ。寧ろ全力で来い!」
そう言って繰り出された突きを、鎧を滑らせながら左脇で抱え込む。
「んじゃ、遠慮なく!」
魔力放出を使って筋力を強化し、ガッチリと槍を固定する。そのまま右手の剣で首を刎ねようとしたが、ランサーは固定された槍を一度手放してしゃがみ、足払いを掛けて来る。俺は槍を抱えたままバックステプで下がり、左手に槍を持ち直す。そして魔力放出により赤雷を纏わせてランサーに投げ返した。
「イィィィヤッホォォォォォォ!!」
「ぐっ!無茶苦茶しやがるぜ!」
ランサーは投げられた槍を受け止めるが、勢いまでは殺せずに地面を削りながら下がっていく。俺は魔力を足元からブースターのように噴出し、超高速でランサーに接近する。
こちらの接近に反応したランサーは、未だ止まらぬ槍の勢いを殺さずに、自身を主軸としてUターンさせてきた。勢いの乗った槍と、赤雷を乗せた剣の一撃がぶつかり合い、余波で公園が崩壊していく。技量の差は左程無くても、ステータスによる差が顕著に出たのか、ランサーは今のぶつかり合いで大幅に後退した。
そして再び連続で攻撃を交わし合う俺達。だが少し遊びも混じっていた先程とは違い、魔力放出も使用して更にスペックアップした俺が、ランサーを圧倒していく。このままなら時間は掛かるがランサーを討てるだろう。
だが、突然ランサーは打ち合いを止めて距離を取った。
「チッ、良いところだってのに。悪いな、ウチのマスターが分が悪いのなら一度退けと言ってやがる。つー訳だから、ここは見逃してくんねぇか?」
「…ちょっと待て、マスターに確認を取る…………分かった。行っていいぞ、ランサー」
「お、話の分かるマスターだぜ」
「ああ。『どうせ今討ち取るか、後で討ち取るかの違いしかないんだから、今回は見逃してあげる』だとさ」
「言ってくれるじゃねぇか」
ランサーは愉快そうに笑った後、直ぐに撤退していった。その後俺はマスターと合流し、冬木の散策を続ける。
魔力の流れから、柳洞寺の方にキャスターが拠点を造っている事は判明しているので、一度様子見に行くことした。
「一夜に二度も戦って平気かマスター?一応今後の事も考えて、さっきの戦闘では宝具の効果は使わなかったが…」
「平気よ。私は最強のマスターなんだもの、この程度の魔力消費なら問題ないわ。それに、貴方が改造した城に戻れば、魔力の回復も早いしね」
「分かった。でも無理は禁物だぞ」
マスターに注意をしていると、柳洞寺の山門が見えてきた。
柳洞寺は山門以外からの自然霊を除く全ての霊の侵入を拒む結界が張られている。俺も前回の聖杯戦争ではお世話になったが、敵に回すと厄介なもんだな。ここに拠点を造ると他の陣営にもろバレするが、正面以外には気を付けなくていいという利点がある。
結界の対象はサーヴァント限定だけど、問題は無い。いくらサーヴァント最弱(笑)なキャスターでも、相当化け物染みたマスターでなきゃ、魔術合戦で即死だ。
「待たれよ」
柳洞寺へと続く階段を登ろうとしたところで、上段の方、階段の踊り場辺りからサーヴァントと思しき存在に話しかけられる。
「サーヴァントね……バーサーカー、アイツ大したことないわ。サッサと倒しちゃいなさい」
俺はマスターの命を背に、サーヴァントと対峙した。サーヴァントは紫の陣羽織を着た、日本刀を持った男だ。
「アサシンのサーヴァント、佐々木小次郎だ」
「…真名を自分からバラすか。んな真似ができるのは、相当の自信家か相当のバカかのどっちかだな。だが、嫌いじゃないぜ。俺も名乗りてぇところだが、そういう訳にもいかないんでな」
「構わぬ。此度の戦はそういうものだと理解している故、無理に訊きだそうとは思わん。ただ武器を交えるだけで十分よ」
「そうかい」
ダンッ!っと石段を踏み砕きながら接近し、横薙ぎに剣を払った。アサシンは一歩退いて躱し、逆袈裟に刀を振るう。俺は半身になって躱しながらアサシンの横に回り込んで斬り掛かろうとするが、それを予測していたアサシンが移動を阻害する様にに刀を振った。
俺は回り込みを中断し、魔力放出で急速に方向転換。正面に回って階段ごと斬り上げる。しかしアサシンに往なしながら距離を取られ、回避される。
俺は斬り上げた状態から追いかける様に剣を振り下ろし、そのまま下段から上段、上段から下段と、ランダムに刺突を繰り出していく。アサシンはそれらを全て逸らし、往なし、受け止めずに流していく。
上手いな。純粋な技量ならランスロ以上、寧ろ俺より上かもしれん。それでもスペックの差があるため、長期戦にはなっても負けはあり得ないがな。
あまり時間をかけてマスターに負担をかけすぎるのも不味いので、アサシンを斬るのではなく、アサシンの刀を破壊する方針に変更する。
アサシンの刀は宝具でも何でもない、ただの刀だ。たった一度でも宝具による重い一撃を浴びせれば、容易く折れてしまう。
「くっ!そうくるかッ!」
アサシンも早々に俺の狙いに気付いたらしく、刀を破壊されまいと受け流し続ける。
「……?」
気のせいか、一瞬魔術による干渉を受けた気がした。それを気にせずに攻撃を続けようとしたが、直後に警鐘を鳴らした直感に従って階段を飛び降り、マスターを庇う様に前に立つ。直後、俺の全身に大量の攻撃的魔術が直撃した。
「バーサーカー!?」
「大丈夫だマスター、対魔力で無効化した。それにしても今の攻撃、キャスターか……」
攻撃が来た方向である上空を見上げれば、キャスター(確かメディアだったと思う)のサーヴァントが飛行しながら魔術でマスターを狙っている。俺は冷静に左手にリボルバー式拳銃を召喚し、キャスター目掛けて撃った。
「風に乗りて歩む者よ!」
タァン!タァン!タァン!
キャスターは弾丸を迎撃しようと魔力弾を放つが、弾丸は何度も軌道を変えて魔力弾を躱し、キャスターに迫る。キャスターは飛行でも回避は無理と判断したのか、弾丸を魔力障壁で受け止めた。弾丸は着弾と同時に炸裂し、障壁諸共対象を殺さんと大気を凍り付かせていく。
しかし流石は魔術師の英霊と言うべきか、弾丸の性質を見抜いたのであろうキャスターが展開した障壁は、イタクァの冷気を受けて尚、凍ってはいなかった。
「上空に居るのなら都合がいい」
部下を数人召喚してアサシンの足止めをさせ、俺は剣に大量の魔力を込めていく。
「真名開放ではないが、いかんせん攻撃範囲が広くてなァ!」
クラレントの機能である増幅によって、瞬間的に剣に込められた魔力が膨れ上がる。キャスター目掛けて突きを打ち、剣先からビームの様に銀色の魔力をぶっ放した。エフェクト的には
ビームはキャスターの障壁を容易く打ち破れる威力だったが、キャスターはどうやってかイタクァの力が籠った魔術をレジストし、回避行動を取ったため掠るだけで終わった。それでもかなりのダメージのようだが、俺と違って大概のキャスターは撃たれ弱いからな、しゃーない。
「…っ、うぅ……バーサーカーの癖に理性があるなんて、反則じゃない。こうなったら……」
ダメージを負ったキャスターが、フラフラとよろめきながら何かを呟いている。すると部下たちを倒したアサシンが、石段を降りてきた。
「女狐め、随分と手酷くやられた様だな」
「黙りなさいアサシン。これほどのサーヴァントが居るなんて、予想外もいいところよ。だけど、簡単にやられるつもりは無いわ」
そう言ってキャスターは空中に大量の魔術を用意する。俺は倒せなくても、マスターは討とうとでも言うつもりか?
「マスター、どうやら奴さん、刺し違えてでもこちらを討つつもりらしいぜ」
「ふーん、でも、バーサーカーには通じないでしょ?」
「まぁな。宝具を使えば簡単に対処できるぞ。いざとなりゃ、この山ごと吹き飛ばすこともできる」
マスターは少し考え込んだ後、愉快そうに答えた。
「そう……いいわ、今夜は退いてあげる」
その言葉に驚いたのは俺だけじゃないはずだ。俺は確認を取る様にマスターに訊いた。
「良いのか?今なら確実に仕留められるぞ。今じゃなくても左程変わらんが」
「ええ、聖杯戦争はまだ始まったばかりだし、こんな序盤に落としちゃうなんて面白くないもの。それに、弱い者いじめは好きじゃないしね」
「……ッ」
おーおー言うねぇ。普通は格下しかいないマスターに、サーヴァントが弱い者扱いされて情けを掛けられる。基本的にプライドの高いのが多い英霊には、この上なく屈辱的だな。事実、ローブから見えるキャスターの口元は悔し気に歪んでいる。
「んじゃ、帰るか」
「ええ」
余裕綽々で帰る俺達を、キャスターは何もせずに見送らざるを得なかった。