昨晩の戦いの後、セイバー陣営とアーチャー陣営は同盟を組む事にした様だ。当然と言えば当然の帰結だろう。何せ彼方はサーヴァント2騎でかかっても、俺を落とすどころかセイバーが落とされかけたのだから、単騎で挑むのは自殺行為に等しい。
あちらにしてみれば俺はとことん規格外なのだろうな。遠近中全ての距離に対応できて、理性がある上に尋常じゃない戦闘力のバーサーカー。はっきり言って俺でも戦いたくはないな。面倒にも程がある。
さて、そんな絶賛警戒され中の俺が何をしているのかと言えば、
「ま~だ~?」
「もう出来るぞー」
昨日の約束通り、マスターにケーキを作っている。
俺のお菓子作りスキルを舐めるなよ。円卓時代の時から、暇な時はお菓子を作っていた。現代日本みたいに買える訳じゃないから作ってたんだが、これが中々楽しくて、D×D世界に行ってもお菓子作りは止めなかった。そのお陰で中々の技術力を持っている。
「ほいー出来たぞー」
「わーい!」
「わーい」
完成したショートケーキを、マスターが嬉しそうに……ん?
「……リーゼリットも食うのか?」
「うん」
「…なら、もう一つ作るか」
「どうして?」
「セラが食べたそうに見てるから」
「私ですか!?」
そう言ってセラを指差すと、本人はさも心外だと言わんばかりの声を上げた。
「私は、別に、ケーキを食べたくなどっ」
「良いかマスター、リーゼリット。セラは口ではああ言っているが、実際は餓えた獣の如く、ケーキが食べたくてしょうがないんだ」
「そ、そんなわけないでしょう!?」
「お前がマスターに内緒で街の下見に行った時、ケーキ屋に目を奪われて買おうか十分も悩んでいたくせによく言う」
「なっ!?何故それを!?」
「俺の使い魔は色んな意味で優秀だからな」
「ふーん、セラったら私に内緒でそんなことしてたんだ~」
「ちっ違いますお嬢様!あれはただ―――」
狼狽して必死にマスターに言い繕うセラを見て、俺たちは笑っていた。
「セラ、ズルい」
「リーゼリットまで!バーサーカーも、笑ってないで誤解を解いて下さい!」
「わたすバーサーカーだから言語が分からな~い」
「嘘おっしゃい!」
ひとしきり歓談した後、俺達は真面目に今後の事を相談していた。
「そんで、今夜はどう動く?そろそろ一騎くらいは落としたいんだが」
「そうねぇ…………ねぇ、後戦ってないのはライダーだけよね?そいつについては何か分かった?」
「取り合えず一通りこの街を調べて分かった事は、連中が学校に魔力を補給する為の結界を張っていることだな。ただ質の悪いことに、ライダーのマスターは相当のアホらしい」
「どういうこと?人気が多いからって、ううん、人気が多いからこそ、学校で拠点を造って極力戦闘しない様にしてるんじゃないの?」
「それがな、結界の効果は結界内の生命体を溶かして魔力に変換する物だ。しかも、神秘の隠匿をまるで考えていないタイプのな。敢えて自分がバカだと見せて、比較的人道的な奴か神秘を隠匿しようとした奴を釣ろうとしてるって可能性もあるが、このやり方だと神秘に関わる者を丸ごと敵に回しかねんから違うだろう。以上の事から、ライダーのマスターは魔術について碌に知らんアホだと結論した」
「そう……それじゃあ、そんなマスターどころか魔術師としてもダメなおマヌケさんを討ちに行きましょうか」
マスターはそう言って、冷酷な笑みを浮かべた。
俺はライダーと交戦するため、結界が張られている穂群原学園に来ている。時刻は夕方で既に空は橙色に染まっており、放課後ということもあってか、生徒は見受けられない。
ライダー組を討つと決めたからと言って、ライダーを直ぐに討てる訳ではない。まずは隠れているライダーを見つけ出さねばならない。といっても、索敵は使い魔による人海戦術で臨んでいるので、直に見つかるだろうが。
しかしウチのマスターは待つのはお気に召さないらしく、ライダーを焙り出す作戦を取ることにした。
学校で結界の基点を潰していくことで、結界そのものを邪魔して誘き出す。あんなアホみたいな作戦を立てるマスターだ、かなり早く出て来るだろう。
ちなみに今回はマスターは城に残っている。どうせ基点を潰していくだけの地味な作業だし、居てもつまらないだろうからだ。一応暇つぶしの道具として、色々置いて来たけど。
俺が基点を探知の魔術で探し歩いていると、前方から衛宮士郎と遠坂凛、そしてセイバーが歩いて来た。
「あ」
「バーサーカーッ!」
「待て待て待て待て!こっちに交戦の意思は無い!」
こちらを視認して即座に戦闘態勢を取る彼らに、俺は静止の声を呼び掛ける。その言葉を聞いてかどうか、彼等は警戒しているようだが、攻撃は仕掛けてこなかった。
「こっちの優先目標は、この結界を張ってるライダーだ。今お前らと殺り合うつもりは無い」
「その言葉が信じられると思うかッ!バーサーカー!」
「だよなー……はぁ、仕方ねぇ。面倒だが追っ払うか」
俺は剣を構えて迎え討つ体勢を取る。だが俺が動く直前に、遠坂凛からストップが掛かった。
「待ってセイバー。彼には少し訊きたい事があるの」
「……分かりました、リン。どうか手短に」
「ありがとう、セイバー。バーサーカー、幾つか質問しても良いかしら?答えによっては、ここで戦わないのも吝かではないわ」
「俺が答えられる範囲内なら、構わないぞ」
「そう。じゃあ、どうしてライダーがこの結界を張っていると分かったのか、教えて下さる?」
「んなもん簡単だ。俺はライダーを除く全てのサーヴァントと交戦したが、この結界を張れるサーヴァントには一騎しか会ってない。その一騎も、結界じゃなく新都の方で起きてるガス漏れ事件で魔力を集めてるからな。消去法で、残るはまだ会ってないライダーだ」
「そう、そういうこと……じゃあ次よ。何故目の前の私たちより、ライダーを優先するのかしら?」
「んなの、お前さんだって薄々感付いてんだろ?この結界が本格的に起動すれば、中に居る人間は皆殺しになるだろう。それは神秘の隠匿上看過できない事態だからってんで、ライダーとそのマスターを殺すことにしたのさ。俺個人としても、気に食わねぇから殺すけどな」
「なっ!?マスターまで殺すのか!?」
「当たり前だろ?裏に関わっている以上、何時何処で殺されても文句は言えねぇ。ましてや、こんな民間人を虐殺するような方法を直ぐに取る様な奴だ。殺した方が良いと、俺は思うがね」
「ふざけんな!それで人を殺していい理由にはならないだろ!」
「……平行線だな。まぁいい、俺の邪魔をしなけりゃ、こっちは戦うつもりは無いって事を知ってればな」
そう言って俺は、結界の基点がある近くの教室へ入る。
俺は結界の基点となっている呪刻を見つけると、そこに手を当て、解呪の魔術を使用する。が、結界が普通の物ではない為か、結界の効果を弱めるだけに留まった。
「この結界、宝具の類いか。これじゃあ、俺が触媒無しで使える魔術じゃ限界があるな……しゃあねえ、使うか」
俺はセラエノ断章を取り出して解呪を始める。
この結界宝具もかなりのランクの様だが、俺の魔導書には遠く及ばないな。
「嘘……あのレベルの結界を、あんな簡単に…」
遠坂凛は俺が結界の基点を簡単に解除してしまうのを見て、驚いているらしい。
俺は彼等が入ってきたのとは別の出入口から教室を出て、次の基点へと向かう。
彼等も結界を止める為に動いている様だが、別に協力する必要も意味も無いので独自に動く。彼等は結界を弱めるだけだが、俺は破壊も探知もできるからな。
結界を完全に破壊すると、拠点を別に移される可能性があるため、二~三個は残しておく。結界を張った奴はアホっぽいし、明日にでもボロを出すのではなかろうか。
翌日。この日もライダーを討つために学園に来ていた。今日は基点潰しでなく、ボロを出すだろうマスター探しで見回っていたのだが、丁度良い場面に出くわしたようだ。
「お前が虱潰しにしてくれた結界はさ、僕の保険なんだぜ?」
「慎二、お前がこの結界を…」
状況的には、衛宮士郎が遠坂凛と離れて一人で居る所に、間桐慎二が接触したらしい。まだ学校が終わったばかりなためか、霊体化できないセイバーはここにいないようだ。気配を消しているとはいえ、二人は窓の外に俺が居る事にも気付かず話を続ける。
「なぁ衛宮、僕と手を組まないか?」
「何?」
「あぁ。実はb「わりぃがその同盟は最初っから破綻するな」
ガシャァァァァン!!
俺は実体化して窓を突き破りながら間桐慎二に蹴り掛かる。すると近くに居たのだろうライダーが実体化して、手に持った鎖付きの短剣で攻撃を止めようとする。しかしステータスが相当低いのだろうか、拮抗することなく鎧に弾かれ、間桐慎二の代わりにライダーが蹴飛ばされた。
蹴飛ばされたライダーが壁にぶつかり、跳ね返る。その間に着地、接近し、顔を掴んで床に叩き付ける。
「じゃあなライダー。アンタなら、もっとマシなマスターに呼ばれてりゃ楽しめたかもな」
俺はそう言ってライダーの頭を踏み潰した。
「これで一騎。さて、次はお前さんだ」
俺が間桐慎二の方を向くと、奴は腰を抜かして後退りをしていた。
「ヒ、ヒィィィ!ま、待てよ!僕のサーヴァントはたった今お前が殺しただろ!僕はもうマスターじゃない、なのに殺すのか!?」
「当たり前だ。お前は裏に関わる者として、最低限のルールである隠匿を軽視した。なら、殺されるのは当然のことだ。仮に俺がやらなくても、他の参加者が殺してただろうよ」
俺が間桐慎二に近付いていくと、その前に衛宮士郎が立ち塞がった。
「退け、衛宮士郎」
「断る」
「……そうか、やはりそう動くかお前は。お前を殺すと後でマスターに文句を言われるからな、眠ってろ」
俺は衛宮士郎が知覚できない速度で近付き、魔術によって昏倒させる。チラリと間桐慎二に視線を向ければ、這いずりながらこの場から逃げ出そうとしていた。
「ぼ、僕は……僕はこんなところで、死にたくない。僕は、魔術師になるんだ。だから…!」
俺は無言で間桐慎二の下に虚数空間を開いてやり、中へと落とした。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……………」
「そんなに魔術に浸りたきゃ、いくらでも浸らせてやるよ」
奴は死ぬそのときまで…いや、死して尚、永遠に虚数空間を落ち続けるだろう。虚数空間に限界は無い。無限に広がる無の空間だ。
「哀れな奴だ。この世界に関わるには、死の覚悟をし続けなきゃならねぇってのに、その辺の事を教わらなかったようだな」
何はともあれ、これで先ずは一騎だ。次はどこを落とすかねぇ。
あ!そういえばアヴァロンを確保してたな。一応俺にも使えないか調べてみよう。