ライダー討伐から数日が経った。
この数日の間に、状況は大幅に変化をしていった。
「まず、セイバーがキャスターに奪われたようだな。結界内で行われていたから詳しい事は分からんが、状況から見るに人質を取られたらしい。もっとも、衛宮士郎はセイバーが奪われても諦めていないようだが」
「ふーん、お兄ちゃんらしいね。でもサーヴァント無しで戦おうなんて、ちょっと無謀かな」
「無謀ってレベルじゃねぇと思うが……その後キャスターは監督役を襲い、教会に陣取っている。遠坂凛がアーチャーと共にセイバー奪還の為に行ったようだが、あえなく返り討ちにされたようだな。しかもアーチャーまで奪われたときた」
「プ、アハハ!なにそれー!自信満々で挑んで返り討ちだなんて!アハハハハ!」
「まぁ、失笑もんだわな。それから…………ッ!」
「どうしたの、バーサーカー?」
急に黙った俺を不思議に思ったのか、マスターが問い掛けて来る。
「侵入者だ。気配からして、サーヴァントだな。今映像を出す」
俺は空中にディスプレイのように映像を投射し、マスターに現場が見えるようにする。そこに移っていたのは、今までに確認されていない、金髪紅眼の黒い服を着たサーヴァントだった。そしてこのサーヴァントには、俺は見覚えがある。
「どういうこと?こんなサーヴァント、見たことないわ……そっか、誰かが不正に八騎目を召喚したのね」
「……マスター」
「何?」
「セラとリーゼリット、それから聖杯を持ったホムンクルスを連れて今すぐこの城から、いいやこの森から退避しろ。このサーヴァントはヤバ過ぎる」
「バーサーカー、貴方このサーヴァントを知っているのね。答えなさい、バーサーカー。コイツは一体何?」
マスターは黙秘や虚偽は許さないといった口調で問い掛けて来る。それに対し俺は、素直に答える事にした。
「前に俺が参加した聖杯戦争で、アーチャーとして召喚されたサーヴァント。英雄王ギルガメッシュだ。こいつ相手には、周りを気にしながらだと勝てねぇ。だから、三人はこの場を離れて欲しい。俺が本気で戦うために」
「……分かったわ。でも。必ず勝ちなさい!」
「了解、マスター」
マスター達が退避した後、俺は城の前でギルガメッシュを待ち受けていた。念のため家具とかその他諸々は虚数空間に仕舞っておいたから城は壊れても問題無いとして。奴と交戦中に、マスター達の方へキャスターが襲ってきた場合の事も考えて、部下たちを護衛に付けたが大丈夫だろうか。勿論あいつ等が粗相をしないかという意味で。
そんな事を考えている間に、ギルガメッシュが来たようだ。
「来たか、英雄王。悪いが聖杯ならここには無いぞ」
「ほう、我の目的を見越していたか。ならば貴様を始末し、早々に聖杯を回収するとしようか」
「その必要は無い」
「何?」
俺は剣をギルガメッシュに突きつけながら宣言する。
「アンタはここで死ぬからな!」
「王に対するその不敬、その身をもって償うがいい!」
言葉と共に、ギルガメッシュの背後より十挺程の宝具が射出され、俺に迫り来る。
俺は二挺の宝具を狙った場所に弾き、弾いた宝具で別の宝具を弾いて防ぐ。
「口だけではないようだな。それ、追加だ」
コイツ相手に手段を選ぶのは不味い。奴が慢心してる間に、殺す。
俺はギルガメッシュの左に回り込む様に走り出す。その間に射出される宝具も、全て叩き落としていく。
ギルガメッシュの左側に回って直ぐ、魔力放出によって突進。
正面から十挺、背後から三挺、上方から五挺の宝具が姿を見せ、順々に射出される。
俺はまず正面から来た物を二挺弾き、間を置いて来た斧を裏拳で軽く叩いて軌道を剃らして、背後から迫る宝具にぶつける。
直後に上から降って来た宝具を右へと跳んで躱わすが、回避したポイントに再び上から降ってくる。俺はもう一度右へ跳んで躱わすが、再び宝具が降ってくる。ついでに正面と後方にあった残りの宝具だけでなく、更に二十を超える宝具が逃げ場を塞ぐように飛んで来た。
俺は一度足を止めてその場で高速でターンしながら、迫って来る宝具を弾き落としていく。
地面が砕ける程の力で踏み込み、魔力放出によって爆発的に向上した敏捷性で、初速から音速の数倍を超える速度で接近する。
近付きながらも宝具の雨は降り続けるが、それを悉く防ぎながら進もうとした。そのとき、ギルガメッシュの背後から飛んで来た槍を見て、剣による防御を止めてバックステップで回避を選択した。
「…武器破壊の宝具か。厄介だな」
その後も飛来する数々の宝具を、バックステップからバク転を連続で行って躱していると、離れた所に衛宮士郎と遠坂凛の姿が見えた。恐らくセイバーとアーチャーを取り返す為に、協力を要請しに来たのだろう。しかし今は邪魔でしかない。
「余所見をしている暇があるのか?」
視線を逸らした間に周囲が大量の宝具で囲まれており、足元からも射出される。直感で体を捻って躱わすも、宝具の長刀が俺の兜を掠り、砕けてしまう。鎧破壊の概念でも込もっていたのだろう。
俺は宝具の着弾前に地面を人一人入れるくらいの穴を穿って入り、地面を掘り進んで別の場所から出る。
今のはちょっと危なかったな。
「しゃあねぇ、切り札一枚切りますか!」
そう言って地面に手を着き、魔力を流し込んで予め仕込んでおいた術式を起動する。多少壊れても問題ないようにしといて良かった。ギルガメッシュの宝具で辺りがボロボロだからな。
魔力が込められると同時に周囲の大地が大きく振動し、隆起し始める。
「な、なんだ!?」
「地震!?」
振動は徐々に大きくなっていく。そして、
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!
大きな音を立てて、アインツベルンの城が宙に浮き始める。城の部分部分が分離していき、変形、合体、分離、変形、合体を繰り返してその姿を変える。
人工物で出来た拳を握りしめ、二本の足で大地に立つその姿。それは、さながら某国民的RPGの竜の冒険に出て来るゴーレムの如き姿だった。まごうことなきゴーレムだった。
「完成!超弩級魔術ロボ、アインツベルン!!」
「「はぁぁぁぁぁぁぁ!?」」
全長40メートル程のゴーレムは、周囲を見渡した後、その双眼をギルガメッシュへと向ける。
「行けっゴーレム!マッハパンチ!」
「■■■■■■■■■■ッ!!!!!」
ゴーレムは雄叫び上げながら拳を振り上げ、ギルガメッシュに向けて振り下ろさんとする。
「フンッ、木偶人形が…」
ギルガメッシュがつまらなそうに鼻で笑い、ゴーレムを囲う様に宝具が展開され、発射される。
「甘いわぁ!全砲門開け、発射ァ!」
ゴーレムの全身の至る所が開き、大砲が顔を覗かせる。大砲からは実弾、魔力砲、エーテル砲、熱線、冷凍光線、雷撃、ビーム、光線、荷電粒子砲等の様々な物が発射され、次々と宝具を撃ち落としていく。
その間にもゴーレムはギルガメッシュに拳を何度も振り下ろして攻撃している。まるでスタープラチナのようだ。
「いい加減にしろ!人形風情がぁ!」
宝具が当たらぬゴーレムは優勢を誇ったが、キレたギルガメッシュが出した超巨大な剣によって上下に真っ二つにされてしまう。
「あぁ!ゴーレムが壊れた!……とでもいうと思ったかぁ!?その程度じゃ壊れんわぁ!」
真っ二つにされたゴーレムは、下半身は立ったまま、上半身が空を飛んで下半身とくっ付いて直った。因みにこの間も射撃は続けられている。
このゴーレムは対ギルガメッシュ用に用意した特別性だ。並大抵の事では壊れないようにしているが、ギルガメッシュの事だ、どんな宝具を使って来るか分からん。油断せずに行こう。
「というわけでドーン!」
俺はクラレントに魔力を込めてギルガメッシュに向かって振り抜き、ビームの斬撃を放つ。剣から放たれた斬撃は地面を裂きながらギルガメッシュへと向かって行く。
「返す刀で
ギルガメッシュが斬撃に反応した瞬間にギガブレイクを放つ。ギガブレイクは斬撃より速くにギルガメッシュに当たる速度だが、盾の宝具で防がれる。
だがそれは予定通り。ギルガメッシュ相手には宝具は目眩ましにでも使えれば、それで十分。接近さえできれば殺すことは容易いからな。
目の前に開いた虚数空間に向かって魔力放出で全力疾走し、ギルガメッシュの背後に移動する。
「戯け。それで欺いたつもりか、雑種!」
ギルガメッシュはこちらに剣と槍の宝具を多数射出するが、俺は躱さずに剣と槍に貫かれながら走った。あきらかに致命傷になってるような傷もあるが、気にせずに走る。
ギルガメッシュが驚愕の表情でこちらを見るが、俺は気に留めずに、剣を持たぬ左手で奴の顔面を殴った。
「なぜ死なん、雑s――「アヴァロンがあるんだよこちとら!」――ぐはぁっ!」
殴られたギルガメッシュはぶっ飛び、待ち構えていたゴーレムの手に捕まった。
それを見た俺は、身体中に刺さった宝具を抜いていく。アヴァロンを調べといて良かったぜ。真名開放はできなくても、不死身には成れたからな。
「ぐっ、おのれ雑種がぁ。調子に乗るのもいい加減に……何ッ!」
「くっくっくっくっくっくっ。気付いたかギルガメッシュ!そう、そのゴーレムには、手の平で捕らえた対象の空間への干渉能力を封じる術式が組み込まれているのだ!これで貴様の王の財宝は使えん!財宝の無い英雄王など、もはや敵ではないわぁ!さらにここに転移阻害の結界を張って、これで令呪による転移も不可能よ!ハハハハハハハハ!!」
今の俺の顔は、相当あくどい顔をしているだろう。まぁ、実際。旧アーチャーでもなけりゃ、王の財宝の無いギルガメッシュは大して強くないからなぁ。
「おのれ――――おのれ、おのれおのれおのれおのれおのれおのれ……!!!」
ギルガメッシュは怒りのあまり冷静さを失っているようだ。俺はギルガメッシュを無視して、呆然としている衛宮士郎と遠坂凛に話しかける。
「お二人さんは俺達の陣営に協力要請に来たって事で良いんだよな?マスターがダメって言ったら協力はしないが、この場で話だけは聞いておくぜ?」
「え、ええ。口振りから知ってるみたいだし、詳細は省くけど、キャスターからセイバーを取り返すのを協力して欲しいの」
「セイバーだけか。アーチャーは?」
「できればアーチャーも取り返したい。でも、そこまでの対価をこっちは支払えないもの……アレ、放っておいて良いの?」
遠坂凛がギルガメッシュについて訊いててきたので、答えてやることにする。
「そうだな…おーい、ギルガメッシュ!一応教えとくけど、そのゴーレムって実は高性能爆弾にもなるんだよねー。しかも威力は高いけど爆発のエネルギーに指向性を持たせてあるから、被害は小さくて済むっていう優れものでさー…………あと10秒くらいで爆破するんだわ。」
俺の言葉にこの場の全員の顔が引きつった。
「安心しろ。おまいら二人は転移でつれてってやるから。じゃーなーギルガメッシュ!精々無様に死にやがれー!ブワハハハハハハ!!」
「おのれ雑種ゥゥゥゥ!!」
視界が一瞬で切り替わり、目の前に逃がしたマスター達と部下数名の姿が見え、直後に遠くで閃光が発せられた。少し遅れて爆発音が来ると思うので、防音の結界で音が一帯に響かないようにしとくか。
「おうマスター。野郎しっかり仕留めて来たぜ」
「そう。よくやったわ、バーサーカー。それで?バーサーカーが連れて来たって事は、私に用があるんでしょ、お兄ちゃん?」
「ああ。実は―――」
説明はさっきと同じなのでカット!
「いいわ。バーサーカーの力を貸してあげる。でもそうねぇ…?」
力を貸しても良いと言ったマスターだが、少し考える様な仕草を取った。
「代りにシロウは何をくれるの?」
「え?」
「え?じゃねぇよ。マスターは力を貸す対価に、何を支払ってくれるのかって訊いてんだ」
「あ、えっと、うーん…」
衛宮士郎は対価を要求されて困っている。そこで遠坂凛が助け船を出そうとした。
「なら、キャスターに関する情報じゃダメかしら?」
「ダメだな。さっきのサーヴァントが来たせいで報告できなかったが、キャスターの真名には当たりを付けている。その宝具もな。それじゃ釣り合わん」
俺の言葉を聞いて、遠坂凛が悔しそうに歯噛みする。
「対価が払えないなら、こっちはバーサーカーの宝具で拠点を薙ぎ払ってもいいんだよ?」
「なっ!?」
おいおいマスター。それはちょっと意地悪じゃねぇか?と思った所で、マスターがこちらに目配せをしてくる。
あぁ、成る程。マスターは衛宮士郎をいじめて楽しもうとしてんのか。
意図を汲んだ俺は、マスターを肯定するように発言する。
「そうだな。本来なら、宝具で三騎纏めて倒した方が楽ではある。拠点攻めをするなら、まるごと吹き飛ばすのが手っ取り早い」
「ダメだ!それじゃセイバーがっ…!」
「ならどうする?頼むからには相応の対価を提示しな」
「それはっ……」
対価の所でまた言葉に詰まった衛宮士郎に、今度はマスターが助け船を出した。
「ならこうしましょ。シロウ。貴方、私とデートしなさい」
「で、デート!?」
「なっ!?いけませんお嬢様!そのような不埒者t「ハイハイ、ちょっと黙ってようねー」もごもごッ!」
セラを後ろから羽交い締めにして、口を塞いでおく。リーゼリットも手伝ってくれたので身長差があっても楽ですた。
「バーサーカー。今夜、キャスターを討ちに行くわ」
俺達がセラを黙らせてる間に交渉は終ったらしく、二人に協力することになったようだ。
「了解、マスター。オーダーはセイバーの奪還で良いんだよな?」
「ええ」
帰る二人を見送った後、マスターがこんなことを訊いてきた。
「ねぇ、バーサーカー?お城は貴方が壊しちゃったんだよね」
「ああ」
「じゃあ、私達はどこに帰れば良いの?」
「大丈夫だマスター。今部下と工事ができる使い魔を総動員して家を建てさせてるから、数十分で寸分違わぬ城が建つぜ。資材は幾らでもあるし」
「そっか。じゃあ歩いて帰りましょう」
衛宮士郎とのデートを確約した為か、上機嫌なマスターに続いて歩こうとした。
「もがもがー!」
「あ、セラの事忘れてた」
ずっと口塞いだままだったわ。すまん。
モ「そういや、お前らどうやって俺の強さを思い出したんだ?普通は宝具の効果で忘れてる筈だけど」
凛「簡単よ。セイバーが自分と同じ顔ですって言ったら、思い出せたの」
モ「この宝具素顔知られてるだけで効果無くすのかよ。そんな抜け道があったとは……」