叛逆の騎士ですがなにか?【永久凍結】   作:くずもち

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第51話 モーさん、残る

聖杯戦争飽きてきたから、ちょっと駆け足。

 

 

 

「これで良し、後はアサシンを脱落させるだけだ」

 

俺たちは柳洞寺にて聖杯の降誕儀式と、この世全ての悪を聖杯に閉じ込めておく準備を行っていた。今さっきその準備も終わったので、後はアサシンと戦って勝つだけでいい。

アサシンが守っていた山門については、後で決着をつけるからと説得したら、すんなりと通してくれた。

 

「そう……」

 

マスターは感慨深そうに、祭壇に乗った聖杯を眺めていた。

二百年を超えるアインツベルンの執念の到達点。第三魔法に至る手段が目の前にある。ただ手に入れるだけならこの場で俺に自害を命じればいいだけだが、それでは確実にこの冬木の地が、いやもしかしたら日本丸ごと聖杯の泥に飲まれかねない。

一旦聖杯の中身をそのままにして固定し、アインツベルンへと持ち帰ってから解放することで穴をあける。穴をあけた際のアインツベルンへの被害など知った事ではない。被害を受けるのは、聖杯を欲するアインツベルンだけで良い。聖杯の浄化も可能だが、そこまでしてやる義理は俺にはない。精々、他に被害が行かないようにちょっと細工を施すぐらいだ。

 

俺は山門の方へと歩いて行く。マスター達は聖杯の完成の瞬間を見守っているそうだ。

山門に近付いた俺は、アサシンの気配がしないことに気付く。代わりに他のサーヴァントの気配がする。山門を登ってきたのは、セイバーと衛宮士郎と遠坂凛だった。

 

「皆さんお揃いで何か用か?こっちは今忙しいんだが?」

 

俺の問いかけに答えたのはセイバーだった。

 

「モードレッド。貴様は聖杯の中身を知っているのか?」

 

真名で話すってことは、もう自分の真名は明かしているのか。

 

「その話、誰に聞い…いや、神父辺りにでも聞かされたか」

 

野郎、先に始末しとくべきだったか?

 

「ああ知ってるぜ。アンリ・マユ。この世全ての悪だろ?」

 

「知っているなら話は早い。聖杯を破壊す「断る」何!?」

 

「当たり前だ。俺はアレの正体を知った上で完成させる。いや、もう完成したがな。アンタらがアサシンを脱落させたことで、サーヴァント七騎分の魂が揃った。すでに聖杯は完成している」

 

聖杯が既に完成している事を聞かされて一同は動揺するが、俺は気にせず話しを続ける。

 

聖杯が脱落したサーヴァントの魂を燃料に願望器として動くこと。

 

しかしそれは外来の魔術師を欺くフェイクであり、その本質はサーヴァント七騎分の魂を纏めて座に返すことで根源までの道をあける魔術礼装であること。

 

聖杯が完成しても、アンリ・マユを外に出さずに封じ込めて置けること。

 

完成した聖杯を対価に、マスターであるイリヤスフィールの自由をアインツベルンに保障させることを話した。

 

「セイバー。この聖杯を使ってもお前の願いは叶わない。そして、俺が優勝するのが一番平和的にこの戦争が終わる方法だ。それでもまだ、俺と戦うか?」

 

セイバーはしばらく沈黙した後、剣を降ろした。どうやら交戦の意思は無いらしいな。

 

「なら、後はランサーか。出て来いよ、どうせどっかで見てんだろ?お前のマスターは、聖杯が手に入るチャンスを見逃すような奴じゃないだろうからな」

 

俺の言葉に反応してか、ランサーが姿を現した。あちらさんはやる気満々の様だな。

 

「気づいてたんなら話しは早ええ。どうせこれで終いなんだ、いっちょ付き合えや」

 

「構わねえぞ。俺も不完全燃焼だった所だ。テメェ等は手を出すなよ、これは俺等の戦いだ」

 

念のためセイバー達に釘を刺してから戦う事にする。途中で無粋な横槍を入れられないためにもな。

 

「んじゃあ」

 

「「死合うかァ!」」

 

両者共に一斉に駆け出し、武器を交え合う。ランサーの動きは以前戦った時よりも速く、その攻撃は重かった。

高速の打ち合いから斬り払いによって距離を取り、雷撃を飛ばして追撃をする。しかしランサーは鮮やかな足捌きで雷撃を躱わしながら接近してくる。

 

「シィッ!」

 

「ッラァッ!」

 

走りながらの刺突を打ち上げて防ぎ、反撃の斬り下ろしを繰り出す。ランサーは槍を半回転させて受け止めたので、前蹴りを出したら一歩下がって避けられる。

薙ぎ払いが来たのでしゃがみ、足払いを仕掛けると跳躍され、空中から連続で刺突を放たれる。俺は横に転がって躱わし、立ち上がってランサーに向けて剣を投げつけると同時に駆け出す。

 

「ソォイ!」

 

「なに!?」

 

真っ直ぐランサーに向かった剣は槍で弾かれるも、そのままランサーに向かって跳躍。腕を剣を振る構えにしてから虚数空間を通じて手元に剣を戻し、斬り掛かる。

ランサーは槍を横にして防ぐが、その衝撃で地面が砕けて小さなクレーターが出来上がる。

 

「ランサー。実を言うと俺は、空中でも踏ん張りが効いてな!」

 

俺は剣を受け止めているランサーに言ったと同時に空中の足下に踏める魔法陣を展開、更に剣を押し込んだ。

競り合いは不利と分かっているランサーは後ろに跳び、この状態を仕切り直す。俺も地面に降りて構え直す。

 

「やるなランサー。お前程の槍の使い手は、俺もそう見たことはない」

 

「そういうテメェも、狂戦士とは思えん程達者な技を使う。もっと早くテメェと全力で殺り合いたかったぜ」

 

「俺もだ。だが、生憎と俺は今マスターを待たせている身でな。あんまり待たせると拗ねちまうから、名残惜しいがそろそろ終いにさせて貰う」

 

俺は言外に、そろそろ宝具を使って仕留めに掛かると伝える。できればランサーにも乗ってきて貰いたいが。

 

「そいつは残念だ。だが女を待たせるのは悪いからな、テメェの思惑に乗ってやるよ」

 

「ありがとよ」

 

俺は剣を上段に構え、ランサーは刺突の構えを取る。

 

「神を殺した一撃、受けてみろ」

 

「その心臓貰い受ける!」

 

全て断つ稲妻の剣(ギガブレイク)!」

 

刺し穿つ死棘の槍(ゲイ・ボルグ)!」

 

降り下ろされた稲妻の剣を、ランサーはスレスレの所で回避しながら突っ込んでくる。

 

「貰ったァ!」

 

槍は鎧を障子紙の様に突き破り、心臓へと迫る。

 

「舐・め・る・なァァァ!」

 

槍の穂先が心臓に数ミリ突き刺さったタイミングで、姿勢制御を考えずに全力の魔力放出と跳躍で後ろにぶっ飛ぶ。ランサーは躱わされたと理解した瞬間に追撃を加えてきたが、そちらを片手を剣から手放して籠手で受け流して対処する。

俺は十メートル程飛んで地面に激突し、何度かバウンドした後に転がって停止した。

 

「痛ッ~~~~てぇぇぇぇ!!」

 

俺は立ち上がりながら傷を確認する。アヴァロンが機能して治癒を開始しているようだが、治癒阻害の呪詛故か少し回復が遅い。それでも回復できない訳じゃないのが、アヴァロンの凄い所だな。

 

「手足千切れる事はよくあったけど、心臓を怪我したのは初めてだぞおい」

 

「バーサーカーテメェ、どうやって俺の槍を躱わした?」

 

「躱わしてねぇよ。確り当たってる。俺は、当たってから避けただけだ。お前の槍は、先に『心臓に当たった』という結果を作ってから『槍を放つ』という原因を作る。結果が決まっているが故に回避は不可能。なら、話しは簡単だ。戦闘に支障が出ない程度に心臓に傷を負ってから、致命傷に至る前に槍を躱わせばいい」

 

原理は簡単だが、それを実行するのは恐ろしく難しい。躱わすタイミングが早すぎれば避けられずに貫かれ、遅すぎれば致命傷となる。それに宝具を躱わしても、ランサー本人の技量による追撃がある。

幸運と直感に任せて因果操作を打ち消すのも良かったが、なんとなくダメな気がしたので止めた。

 

「俺もダメージを負ったが、お前も無傷とはいかなかったようだな」

 

そう言ってランサーの左腕を見れば、炭化してボロボロになっているのが見て取れる。直撃はしなかったものの、完全に避け切る事はできなかったのだろう。だがランサーは問題ないとばかりに笑みを浮かべて槍を構える。

 

「フッ、そうこなくちゃ面白くない。行くぞ!」

 

再び武を交え合う俺達。

 

「オォォォアアアァァァァァ!!」

 

「ウォォォアアアァァァァァ!!」

 

この後しばらくの間決着が着かず、三日三晩に及ぶ戦いの後、消耗戦の果てにランサーの魔力が尽きて倒れるまで続いた。戦闘描写?そんなもん省いたわ。延々と似たような戦闘シーンを描写するなんて心が折れます。

だってアイツ滅茶苦茶しぶといんだもん。聖杯があるから宝具撃つ時は気をつけなきゃいけないし、仕切り直しで有利な状況を何度もやり直され、持ち前の戦闘続行スキルでしぶとく生き残り、矢避けの加護のせいで遠距離攻撃は効き辛い。まったく決着がつかねぇよ。流石公式でも生き残る事に特化しているサーヴァントと呼ばれるだけの事はあった。

 

聖杯の完成後、セイバーはアーチャーに言われた『間違えた願い』の意味を知るため、現世に留まり続けるらしい。その結果セイバーがどうなるのかは、俺の知った事じゃねぇけど。

 

 

 

ドイツのアインツベルンの城。その城門前に、俺はトランク片手にやって来ていた。マスター他二名は日本でお留守番だ。

実はさっきから城門が開くのを待ってんだが、いつまでたっても開かねぇ。もしかして俺に気付いてねぇのかな?………イラッ

 

「開けろやボケェェェェ!!」

 

門を蹴りつけると、ドォォォォンと大きな音を立てて門が吹っ飛んでいく。すると何事だとばかりに警備用のホムンクルスが集まって来る。居るんなら早く開けろよ!こちとら吹雪の中立ち尽くしてたんだぞ!

 

「おうコラテメェ等、こっちが吹雪の中聖杯持ち帰ったってのに出迎えも無しかコノヤロー。ふざけやがってこの腐れ人形どもが。聖杯をこの場でぶち壊したろか?」

 

俺が軽くこの場の連中を罵倒していると、アハト翁が歩いてきた。

 

「バーサーカー、貴様何をしに来た」

 

「何?テメェ等がご所望の完成した聖杯を持ってきてやったんだろうが」

 

「聖杯だと?」

 

「ああ」

 

俺はトランクを開いて中の聖杯を見せつける。聖杯を確認したアハト翁は、明らかに動揺しながらこちらに近付いて来るが、俺はケースを閉じて一歩下がる。

恐らくアンリ・マユによる被害が出なかった事から、俺達が聖杯を破壊したなりと考えたのだろう。

 

「だが、タダではコイツはやれん。代りに保障して貰いたい事がある」

 

「……何だ?」

 

「なに、簡単な事さ。今後一切、イリヤスフィール・フォン・アインツベルン及びその従者に害のある行動を、アインツベルンが取らない事だ」

 

そう言って俺は、自己強制証明(セルフギアススクロール)を取り出して投げ渡した。

アハト翁はそれをよく読んで確認した後、躊躇わずに署名した。

記入された自己強制証明を受け取り、しっかりと署名されている事を確認した後、聖杯の入っているトランクを手渡した。

 

「それじゃ、俺はこれで失礼するぜ」

 

その後アインツベルンがアンリ・マユによって多大な被害を被ったそうだが、本人達は第三魔法を手に入れられて満足そうなので良しとする。

 

魔術協会に俺達の事が知られると、封印指定扱いされて執行者が送られてきたので、返り討ちにした挙句魔術刻印を分捕ってやった。それでも度々送られてきて鬱陶しいので、協会本部に直接乗り込んで上層部の人間を何人かぬっ殺してやったらおとなしくなった。

 

全て片付いた後、俺は冬木のアインツベルンの城で三人と暮らしている。少なくともマスターの寿命が尽きるまでは、俺はこっちに留まり続けるつもりだ。マスターが亡くなったら、聖剣の鞘を持って本体の居る座に帰ろう。

鞘といえば、度々セイバーが鞘の返却を求めてくるが、その度に追い返している。いい加減諦めれば良いのに。

 

 

 

 

 

所変わって英霊の座。

 

「………あいつ、座に帰らずに現世に留まりおったで」

 

まさかの展開に俺氏絶賛困惑中でございます。…………まぁいいか!あっちの俺が決めたことなら、俺がどうこう言うような事でもないし。D×D世界に帰ってゲームしよっと。

 

 

 

家に帰ると誰も居なかった。

今は昼頃だが、フェンリルがこの時間に家に居ないのは珍しいな。いつもは部屋でエロゲやってるかテレビ観てるかの二択なのに。携帯に電話してみるか。

 

『もしもし吾輩だ』

 

「おうフェンリル、今何してんの?」

 

『む?モードレッドか、帰っていたのだな。今は塔城の奴に鍛錬の相手を頼まれてな、相手をしている。場所は赤龍帝の家地下にある、訓練場だ』

 

「うい~今からそっち行くわ」

 

『後で聖杯戦争について、詳しく聞かせろよ』

 

「わーってるって」

 

えーと座標は兵藤家の地下。転移っと。

 

「波ァーーーー!」

 

「え?」

 

転移陣を抜けたら、そこは閃光だった。

 

「ギャアァァァァァ!!」

 

「……先生!?」

 

転移先で突如発せられたエネルギー弾が腹部に直撃して吹き飛ばされ、壁にめり込む俺。壁から抜け出して辺りを確認したところ、今のは塔城の攻撃だったらしい。俺に痛みを感じさせるとは、いつの間にか良い一撃を出すようになったじゃねぇか。

 

「お前は何をやっているんだ」

 

「あ、フェンリル」

 

俺がしみじみと感じ入っていると、人型に化けたフェンリルが呆れた声で話しかけてきた。

 

「転移先の確認位しておけ。今の攻撃が吾輩の物だったら、お前は死んでいたぞ」

 

「へへッすいやせん。……で?塔城はどんなもんだ?」

 

「そうだな…中々に筋は良い。鍛え上げれば一角の戦士になるだろう。界王犬も、場合によっては1.2倍くらいなら習得できるかもしれんな」

 

フェンリル曰く、俺が居ない間に行われたサイラオーグ・バアルとのレーティングゲームでは、一人で三人の相手を纏めて倒したという。しかも相手は重力場を発生させる神器や異能を封じるという変わった神器の使い手だったらしく、仙術を封じられながらも辛くも勝利をもぎ取ったのだと。

 

「ほうほう。俺が居ない間に随分と強くなったみたいだな。……よし、塔城!」

 

「……はい!」

 

「これから修行をつけてやる」

 

「……ありがとうございます!」

 

俺の言葉に嬉しそうに返事を返す塔城だったが、次の言葉を聞いて固まる。

 

「取りあえず高重力下での戦闘に慣れるため、重力三倍+重し追加でやろうか」

 

「に゛ゃ゛」

 

「修行効率を上げる為に、フェンリル、お前も協力してくれ」

 

「いいぞ」

 

「さてと……塔城、逃げるな」

 

「…………!?」ビクゥ!

 

忍び足でこの場から逃げ出そうとしていた小猫を呼び止め、満面の笑顔で言ってやる。

 

「さぁ、楽しい楽しい修行の始まりだ」

 

「に゛、に゛ゃ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛」

 

その日からしばらく、訓練場から猫の様な悲鳴が響き渡った。

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