追記
モーさんの容姿についての質問があったのでお答えします。
髪型は原作モーさんと同じで、服装は白いYシャツに赤い革ジャン。青のジーンズとブーツもしくはスニーカーを履いています。
簡単に言えば、原作モーさんの格好から露出が大幅に少なくなっただけとお考えください。
追記
第46話の前書きにも書きましたが、既に46話を読まれており、もう一度46話を読んでいただけない可能性を考えて、こちらにも記述します。
ある方の感想を読んで聖杯戦争に参加させた理由を書くのを忘れてた事を思い出しました。
実はハイスクールD×Dの10巻の内容だと、モードレッドが居る意味がほぼ無かったため、どうしようか悩んでいたのですが、話を飛ばすか番外編を挟めば良いのでは?という意見をもらいました。
そこで10巻の話の間、番外編で聖杯戦争に参加してて居なかった事にしようと結論しました。
不快な想いをさせてしまった方々には、深くお詫び申し上げます。
兵藤家の地下訓練場でグレモリー眷属に修行(塔城の修行を見て自分たちにもと志願してきた)をつけてやっている時、俺はふと呟いた。
「そういや、何でオーフィスがここに居るんだ?」
「「「今さら!?」」」
視線を向けられたオーフィスは、首をコテンと傾げてこちらを見つめ返して来る。
「ふーん、兵藤にオーフィスが興味をねぇ」
俺はリビングで何故オーフィスが居るのかの説明を受けていた。
要約すると、まず初めに兵藤が歴代の赤龍帝とは違う『覇』以外の力にバアルとの戦いで目覚めた。それを見てオーフィスは興味を持った。今代の赤龍帝は覇を捨てて何を目指すのかと。そこでアザゼルが一計を案じた。これを切っ掛けにオーフィスをこちら側に引き込めはしなくても、禍の団から引き剥がせないかと。オーフィスが禍の団から居なくなれば、大幅な弱体化が期待できるからだ。
「だがバレればただでは済まなくなるぞ。俺はどうでもいいから話さないが、フェンリルの奴は確実に北欧に知らせるぞ。あとロスヴァイセも」
「ああ。それも重々承知の上だ。ロスヴァイセは今丁度良く北欧に戻っているし、フェンリルは親バカだから知らせないだろう」
「親バカ?」
「そういや、お前さんはまだ会ってなかったな。それは――――」
「ただいまー」
アザゼルがフェンリルが告げ口しない理由を話そうとした時、誰かが帰ってきた様だ。足音から四人。いや二人と二匹か?足音がリビングに入ってきたのでそちらを見ると、黒歌と見た事の無い少女が一人。それから狼の姿のフェンリルと、フェンリルをそのまま小さくした見た目のハティだった。
「成る程。ハティが居るならフェンリルが態々北欧に暴露することは無い、か」
「そういうことだ」
フェンリルは娘のハティがはしゃいで遊んでいる姿を見てホッコリしている。
「で、そっちの娘は誰だ?」
「あっ、初めまして。私、ルフェイ・ペンドラゴンっていいます」
その名前を聞いてすぐ、俺は黙ってルフェイに近付き、抱きしめる。
「ふぇ!?」
「可哀想になぁ…あのババアの名前を付けられるなんて、可哀想に。まったく君の親は何を考えている!」
俺の行動に周囲の空気がおかしな事になっているが、無視する。
「あんな、自分が王になれなかった嫉妬で国を亡ぼすような腐れ外道と同じ名前を付けるなんて」
「え?え?」
「今すぐ君の両親の元に行ってボコボコに「落ち着け」ぎゃふっ!」
流石にこの状況を見かねたフェンリルにぶん殴られて、俺の意識はブラックアウトした。目が覚めたら既に夕方で、家のベッドの上に居た。どうやらフェンリルが運んでくれたらしい。
突然あんな行動を取られても迷惑だったか。あの娘には悪いことしたな。
「よし、今度は許可をもらってからやるか」
「二度とヤメロ」
解せぬ。
数日後、俺は冥界のとあるホテルに居た。なんでも兵藤等グレモリー眷属の数人が中級悪魔昇格試験を受けるらしく、兵藤の試験が終わってホテルに来るのを待っている。試験の後にオーフィスを魔王領まで連れて行くらしいが、詳しい事は知らん。
「フラッシュ」
「甘い、フルハウスだ」
「ブタだ」
「俺の勝ちだな、ストレートフラッシュ」
あんまり暇すぎるんで、俺とフェンリルはロビーで延々とポーカーをやっている。そろそろ百戦目に突入する頃に、ふと違和感に気付く。今俺達以外に二人ほどいなかった?それに気づいた瞬間、全身をぬめりとした感覚が包んだ。前を見れば、曹操と初めて見る男が居た。
「やあ、人類最強。そしてフェンリル」
「おう、曹操か。久しぶりだな」
「ぬ、今の勝負はありなのか?途中参戦だぞ?ありなのか?」
「今日はまた何の用だ?」
「決まっている。オーフィスを取り返しにね」
「なぁ。ありなのか?それとも「「うるさい黙れ」」(´・ω・`)」
フェンリルを静かにさせたタイミングで、グレモリー眷属にアザゼルに紫藤。それからゼノヴィアがロビーに出て来る。
俺達はあちら側に歩いて行き、曹操達も離れた所に歩いて行く。
「やあ。待っていたよ、君たち。そして、やはりここに居たか、オーフィス」
「何故お前らがオーフィスを狙う?目的は何だ!?」
アザゼルの問いに答えたのは、曹操ではなくルフェイだった。
「事の発端はふたつありました。ひとつはオーフィスさまが赤龍帝さんに大変ご興味をお持ちだったこと。ふたつめ、オーフィスさまを陰で付け狙う方がいるという情報をヴァーリさまが得たので、確証を得るため、燻りだす事にしたのです。運が良ければオーフィスさまを囮役にして私たちのチームの障害となる方々とも直接対決ができると。そちらの方々がオーフィスさまと私たちを狙っているので、ヴァーリさまがオーフィスさまをアジトからお連れして動けば、そちらも動くでしょうから、狙ってきたところを一気にお片付けしようとしたのです」
「曹操、我を狙う?」
オーフィスは静かに問い掛ける。
「その通りだ、オーフィス。俺たちにはオーフィスが必要だが、いまのあなたは必要ではないと判断した」
「わからない。けど、我、曹操に負けない」
「そうだろうな。あなたはあまりに強すぎる。俺達では到底勝てはしないだろう。だから、勝てる手段を用意した」
曹操は黒歌に向けて槍を突き付けて問い掛ける。
「さて、ヴァーリはまだか?余興の間に準備は済んだだろう?」
黒歌は苦笑いをしながら口を開く。
「にゃはは、お見通しって訳ね。ルフェイ、あいつを呼ぶわよ」
曹操を警戒して唸っていたハティの足下に魔法陣が展開され、ハティと入れ替わるようにヴァーリが転送されてきた。あっ、フェンリルの目が死んだ。そしてヴァーリを懐疑的な目で見てる。どんだけ親バカなんだ。
「ご苦労だった、黒歌、ルフェイ。面と向かって会うのは久しいな、曹操」
絶霧の結界を越えて転移するとは、凄い技術だ。今度教えてもらおう。
そしてフェンリルが懐疑的な目で見ている事に気付いたヴァーリは、フェンリルに答える。
「ハティにはアーサー達と共に、別動隊と戦って貰う事にした。さて曹操、いい加減お前との決着を着けようか。しかし、ゲオルグとたった二人で来るとは、剛胆な英雄だな」
「いや、俺達だけで十分と判断したまでさ」
「強気なものだな、曹操。例の『龍喰者』なる者を奥の手で所有しているということか? 大方、英雄派が創りだした龍殺しに特化した神器所有者か、新たな神滅具所有者と言うところだろうが」
ヴァーリの言葉に対して、曹操はただ首を横に振って否定の意を示す。
「違うな、ヴァーリ。『龍喰者』と言うのは、現存する存在に俺達が付けたコードネームに過ぎない。創ったのではなく、創られていた存在だ──かつて『聖書に記されし神』が創り出した、あれを」
曹操がゲオルグに合図を送ると、ゲオルグは無言で頷いて魔法陣を展開する。
魔法陣からは、黒く禍々しい障気が流れ出し、俺を含める龍の力を持つ者が顔色を変える。
ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛…………!!
怨嗟の声を挙げながら、魔法陣から現れたのは
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!あー、出ねーわー、マジ出ねーわー。激レアアイテム全然ドロップしねーわー。マジでどうなってんだよ物欲センサー」
こちらに背を向け、炬燵に入ってゲームをやっている、ニートだった。
「あーーーーぁぁぁああっ!!??」
ゲームを止めて寝転がったニートは、体勢的にこちらを見上げる形になり、驚きの声をあげた。
「え、何?召喚されたの!?もしかして俺召喚されたの!?うわ、やっべえわ。ワンモア!ワンモアリテイク!」
ゲオルグは無言でサマエルを送り返し、もう一度召喚し直す。
オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛ォ゛ォ゛ォ゛ォ゛ォ゛ォ゛…………!!
魔法陣から現れたのは、目隠しをされ、十字架に全身を杭で磔にされた、下半身が蛇の十二枚羽の堕天使。目隠しの隙間からは血の涙が延々と出続けており、目隠しに使われている布は血が固まったのか、一部を除き真っ黒に染まっている。
「馬鹿なサマエルだとッ!?コキュートスの封印を解きやがったのか!ハーデスの野郎は何を考えて……まさかっ!」
アザゼルはさっきの事を無かったことにしたい模様です。
「そう、ハーデス殿と交渉してね。何重もの制限を設けた上で、サマエルの召喚を許可してもらったのさ」
曹操、お前もか。
「……野郎! ゼウスのオッサンが各勢力との協力体制に入ったのがそんなに気にくわなかったのかよッ!」
曰く、神の毒。曰く、神の悪意。本来あり得てはならぬ、聖なる神の悪の側面。その具現化。
アダムとイヴに知恵の実を食わせ、神の怒りを買って呪われた禁忌の天使にして龍。あらゆる蛇、ドラゴンを殺す最悪の龍殺し。
「そいつを使って何をするつもりだ!?ドラゴンを絶滅させる気……いやまさか、お前らオーフィスを―――」
「―――喰らえ」
アザゼルの言葉を最後まで聞かず、曹操はサマエルに指示を出す。
サマエルの口が開かれると同時に、知覚ギリギリの速度で黒い何かが延びてくる。俺はオーフィスとサマエルに挟まれる位置に居た為に、その何かの攻撃コースに居る。
「危ねっ!」
マトリックスの様に上半身を反らし、そのまま倒れて横に転がる。
「おい、オーフィス!返事しろ!」
オーフィスの方を見れば、そこにはオーフィスがスッポリ入る位の大きさの黒い球体が鎮座しており、球体からサマエルの口に向かって管が延びている。
球体から伸びる管は、ドクンッドクンッと、サマエルが何かを吸い上げている様に脈動する。
この場の面々がオーフィスを助け出さんと、黒い球体に攻撃を加えるが、聖魔剣も消滅の魔力も雷光も半減も仙術も聖剣も無効化される。
「まったく何をやっている。退け、吾輩がやる」
フェンリルが前に出て球体に爪を振るおうとした時、曹操がそれを止めに入る。
「させんッ禁手化!馬宝!」
フェンリルの背後に転移した曹操は、後ろから刺し貫かんと槍を突き出す。しかしフェンリルはそれを余裕をもって回避する。
「今だ!」
「ぬっ?」
ジャララララララ!!
突如虚空から出現した鎖に雁字搦めにされるフェンリル。鎖を引き千切ろうと力を込めるが、鎖には罅一つ入らずびくともしない。
鎖の出てきた虚空から、二人の男が出てきた。どうやら隠蔽や隠密に特化した神器。それも禁手のようだ。
「ぬぅ…グレイプニルか。しかもかなり強化されているな。それにしても吾輩が存在を感知できなかったとは、恐ろしい神器だな」
フェンリルが無力化されるとは、連中相当対策を練ってきたようだな。
「北欧神話の勢力であるあなたには手は出したくはなかったが、オーフィスを助けようとするなら話は別だ。暫くそこでそうしていてもらう」
グレモリー眷属達がオーフィスを助け出そうと画策している間に、ゼノヴィアは管の本体であるサマエルを狙ってオーラを飛ばした。しかし、曹操がサマエルとの間に入り込み、槍でオーラを弾き飛ばした。
「その手は食わないさ。サマエルを狙って来るのは、予測済みだからね」
サマエルを止めるには、先ず曹操を倒す必要がある。曹操の周りに浮かぶ七つの球を注視していると、ヴァーリが注意を促す。
「気を付けろ。あの禁手は『七宝』と呼ばれる力を有していて、神器としての能力が七つある。あの球体一つ一つに能力が付加されているわけだ」
「七つッ!?二つとか三つじゃなくてか!?」
「ああ、七つだ。それのどれもが凶悪だ。といっても俺が知っているのは三つだけだが。だから称されるわけだ、最強の神滅具と…」
「輪宝」
曹操が呟いた瞬間球体の一つが高速でゼノヴィアの元へと移動し、ガキィィィィン!!と、大きな音が響き渡った。ゼノヴィアのデュランダルを狙って放たれた攻撃の様だが、ゼノヴィアは上手く受け流した。
「ッ!成る程、今の手応えで分かったが、その球の力は武器破壊という訳か」
「驚いたな。その通り、輪宝の能力は武器破壊。しかし、これは相当な手練れでなければ対処できないというのに…」
「ふっ、私の実力もそれだけ高くなっているということだ」
そう自信満々気に言うがゼノヴィア、お前が今ボソッと「もうちょっとで反応できない所だった。弾幕ゲーで反射神経を鍛えておいて良かった」って言ったの聞こえたからな?
「ならば、女宝」
球体の一つがグレモリー眷族達の方へと向かい、弾けて広域に光を発する。直前でアルジェントを連れて飛び退いて避けた塔城達を除き、光に包まれたグレモリーと姫島は反撃に魔力を使おうと手を突き出すが、何も起こらない。
「女宝は異能を持つ女性の力を一定時間、完全に封じる。これも相当な手練れでもない限りは無効化できない」
曹操が言い終わる前に俺と黒歌とルフェイはサマエルに向けて遠距離攻撃を行う。
「イア・イタクァ!」
「馬宝」
球体が光ると攻撃の射線上にアルジェントが現れる。このままではアルジェントに当たるため、弾丸の軌道を変えて二人の攻撃に当てて相殺する。
今のは恐らく任意で対象を転移させる能力だろう。俺は自身への空間干渉を阻害する術があるから問題ないが、他の奴はそうはいかん。遠距離攻撃も効き辛いとなると、少々厄介だな。
直接接近して仕留めようとした時、後方でサマエルを制御していた男が動いた。
「サマエルよ!」
磔にされていたサマエルの両手が解放され、俺の方に向く。その瞬間に俺は直感に任せてその場から飛び退いた。次の瞬間には俺が居た場所に、人一人を飲み込める大きさの黒い球体が、フェストゥムのワームスフィアの様に出現した。
「やはりか、人類最強。貴方の魔力を調べたところ、僅かだが竜の力が検出されましてね。もしかしたらと思って試したのですが、大当たりの様だ」
「チッ、面倒くせぇなおい。この黒いの、一発でも当たったらアウトってか」
そうこうしてる間にも球体は次々と生み出されては消えていき、それを避け続けている。これじゃあ他の奴を援護する暇は無さそうだ。ハスターを憑依させれば効かないだろうが、その暇すらねえ。
「さて、厄介な面々は封じた。後は君らだけだ。そして、居土宝」
球体の一つから光り輝く人型が複数出現し、全員が統率された動きで曹操を守り出した。
「この人型は一体一体が俺に近しい技量を持っている。これで、数の有利はこちらだな」
球体から人型は次々と生み出され続け、そのうちにはこの場の面々では対処しきれなくなるだろう。それでも生成限界はあると思うが。
「ハッ、あんま舐めんじゃねぇぞクソガキ。行くぞヴァーリ、合わせろ!」
「まったく、俺は一人でやりたい所だったんだがなッ!」
アザゼルとヴァーリが禁手の鎧を纏って曹操に向かって行き、他の者は人型の相手をし始める。堕天使総督と白龍皇を同時に相手しているにも拘らず、曹操は余裕をもって対処している。
「力の権化たる鎧装着型の禁手は莫大なパワーアップを果たすが、パワーアップが過剰すぎて鎧からオーラが迸りすぎる!オーラの流れに注視すれば、次にどこから攻撃が来るか容易に把握しやすいッ!」
アザゼルの動きを読んだ曹操は、居土宝で造り出した人型がアザゼルの光の槍を自らに突き刺す形で止め、人型ごとアザゼルを貫いた。人型越しだったためか刺さりは甘いが、曹操は即座に次の手を打つ。
「聖槍よッ!」
掛け声と共に聖槍から膨大なオーラが溢れ出して一点で凝固、槍が刺さっているアザゼルの腹部で炸裂した。
「がはっ!」
その結果アザゼルの腹部は大きく抉れ、壁際まで吹き飛ばされる。体のは辛うじて上下が繋がっている状態であり、内臓にも大きなダメージを負っている。いくら堕天使とはいえ、直ぐに本格的な治療をしないと長くは持たないだろう。グレモリーが指示を出し、アルジェントが治療に向かう。
「アザゼルッ!おのれ、曹操ォォォォッ!!」
アザゼルがやられて激昂したヴァーリは、曹操に向けて極大の魔力弾を放った。
「育ての親がやられて激怒したか!?だが、甘いと言わざるを得ない!珠宝!」
魔力弾の射線上に一つの球体が割り込んでくる。球体の前方に黒い渦が生まれ、魔力弾はその中に吸い込まれる。そして黒い渦は黒歌の真後ろに再び出現し、先程の魔力弾を吐き出した。狙われた黒歌は人型の対処に追われて魔力弾を防ぐ事ができない。
「……姉さま危ない!」
しかし黒歌に当たる直前で、塔城が飛び出す。塔城は身を挺して攻撃を防ぎ、氣を集中した左腕で魔力弾を受け止めた。
「……くっ」
「白音!?あんた、私を庇って!?」
「……大丈夫です姉さま。この程度で倒れる程、軟な鍛え方はしていません。片腕でも、十分戦えます」
「そういう問題じゃないわよ、バカ!」
人型を対処しながらも、塔城を心配する黒歌。塔城の左腕はボロボロで、まともに動かす事はできないだろう。それに完全に防ぎきれなかったのか、左腕以外にもダメージを負っている。
「曹操ォォォ!テメェ、よくも小猫ちゃんを!
兵藤が怒りのままに曹操に殴りかかる。しかし曹操はそれを冷静に捌き、反撃に球体の一つが分厚い鎧を突破して兵藤の体に直撃した。
「ぐぁっ!」
「輪宝は破壊力に特化したモノでね、ルーク状態の君の鎧だって貫ける」
曹操は兵藤とヴァーリを見ながら言う。
「ヴァーリ、兵藤一誠。君たちは仲間想いすぎる。仲間が負傷し、瀕死になったからといって、激情に身を任せて突っ込んできては対処は簡単だ。二天龍はいつからこんなに軟くなった?それとヴァーリ、キミに見せていない七宝で態々攻撃をしたんだ。良かったな? これで七宝の全てを知っているのはキミだけになったぞ」
「では、こちらも見せようかッ! 我、目覚めるは、覇の理に全てを奪われし―――」
ヴァーリが覇龍の呪文を唱えだした瞬間、まだ動いてなかった球体の内片方が、俺でも知覚するのが難しい速度で動きだし、ヴァーリを貫いて腹に風穴を開けた。ヴァーリは何が起こったのかも分からずに血を吐いて倒れ、鎧も解除された。
「…ゴフッ。ばか…な、その球体、は……別の……」
「ああ、ヴァーリ。全ての七宝を見せたと言ったな?あれは嘘だ。将軍宝。この宝の能力は、敵の切り札へのカウンター。相手が切り札を切ろうとした瞬間に自動で発動し、相手を仕留めるんだ。切り札限定のカウンターという制限を加える事で、威力が上がっている。ヴァーリ、君はもう意識を保つ事さえキツイだろう?」
「曹…操……ッ!」
ヴァーリは憎々し気に曹操を睨みつける。
「さて、人類最強は今も尚サマエルから逃げ回り、フェンリルも捕らえた。二天龍は倒したし、堕天使総督も瀕死。猫又の姉妹も負傷した今では居土宝で十分。ルフェイに聖魔剣使いとミカエルの天使も同様っと。後は―――」
ガァァァン!
聖剣と聖槍が打ち合わされ、余波の聖なるオーラが周囲に広がる。
「私だ」
「君だ、デュランダル使いのゼノヴィア」
ゼノヴィアの大振りの一撃は曹操に往なされて当たらないが、曹操の攻撃もゼノヴィアは見事に捌いて防ぎきる。
「人外は嫌という程仕留めてきたが、厄介な物だねっ!弱点の無い人間を相手にするのはッ!」
「そうか!?生憎と私は得意なほうでな!」
女宝は効かず、輪宝による武器破壊を受け流し、馬宝の強制転移には同じ転移の術を戦闘と並列して準備しておくことで対処し、居土宝で曹操が人型を生み出せば、薙ぎ払いで消し飛ばす。しかし珠宝による受け流しを警戒してか攻めきれず、将軍宝があるため行動も制限される。そして曹操はまだ使っていなかった最後の球体。象宝の力を使った飛行能力により地の利を得た。対空能力の低いゼノヴィアでは、さらに攻め辛くなった。
それでも魔法陣を足場にして疑似的な空戦能力を得たゼノヴィアにより、互いに譲らぬ一進一退の攻防を繰り広げていたが、徐々にゼノヴィアが押され始める。
「どうやら、ここにきて武器の差が出始めたようだね!」
「そのようだ、なッ!」
デュランダルは聖剣の中で出力だけならコールブランドすら上回れる力がある。だがそれでも、最強の神滅具である聖槍のそれには僅かに及ばない。単純火力に特化した聖剣でも、禁手とはいえ七つに力を分割して使われている聖槍を上回れず、神器の力で安定した飛行能力のある曹操と無いゼノヴィアの差が浮き彫りとなる。
「そこッ!」
「くっ!」
ゼノヴィアの手からデュランダルが弾き飛ばされる。それでもゼノヴィアは手元に残ったオーラで攻撃を防ぐが、一旦距離を取った曹操は、投げ槍の体勢を取った。
「これで終わりだ!」
槍は残ったオーラを軽々と突き破り、ゼノヴィアに突き刺さって共に墜ちていく。地に落ちたゼノヴィアは地面に磔にされて気を失う。だが幸いにして心臓には刺さっていないようだ。ゼノヴィアも無意識のうちに氣を使って防いでいたからか、そこまで重傷でもない。
ゼノヴィアに突き刺さっていた槍は一瞬で消え、曹操の手元に戻る。遠距離からの呼び戻しも自由なのか。
曹操は仲間の側へと行き、問い掛けた。
「これで全員か。ゲオルク、状況は?」
「四分の三強といった所か。奴の牽制をしていたために時間が掛かったが、大半は奪えた。これ以上はサマエルを現世に留めておくのは厳しいな」
「充分だ」
オーフィスを包んでいた黒い球体が突如として弾け飛び、サマエルも魔法陣の中へ消えて行こうとしている。俺への攻撃も止んでいる為、漸く自由に動けるようになった。しかしそれはあちらも承知のようで、俺を最大限に警戒している。
「行くぜッ!」
曹操に向かって走り出し、斬り掛かるフリをする。それに反応して曹操が迎撃しようとした瞬間に跳び、二人の上を飛び越えていく。そして手元に釣り竿を呼び出し、糸を魔法陣へと垂らす。
「来たぜっ!フィィィィィイッシュ!」
「アバー!」
「釣れたァー!大物だー!」
釣り上げたサマエルを勢いのままに振り回し、
「大雪山おろーし!!」
上に向かって全力でぶん投げた。
「アッッッバアアアアァァァァァァァ!!!???」
投げられたサマエルは天井を次々とぶち破っていき、最終的に屋上を越えて遥か空の果てに消えていった。
俺は額を拭いながら言った。
「ふぅ……良い仕事したぜー」
「…………ァァァァァァァァァァァアアアアアアアベシッ!!」
あ、落ちてきた。
「フェンリル、こいつ吊し上げっぞ!」
「いいですとも!」
いつの間にかグレイプニルから脱出していたフェンリルを誘い、サマエルを十字架から剥がしてロープでぐるぐる巻きにしてボコってから吊るす。
それとフェンリルを捕らえてた奴が、アレ!?いつの間に!?みたいな表情でフェンリルを見てる。ゼノヴィアが曹操と戦ってた頃にはもう抜け出してたよ。
吊るされたサマエルは赦しを乞い始めた。
「出来心だったんです。赦してください」
「ダメだ。ジャングルの掟に則り、貴様を処刑する」
「酷い人だ……貴方に人の心はないのか!?」
「そんな物はない」
「そんな……貴方は鬼だ!悪魔だ!」
「悪魔で良いよ。悪魔らしいやりかたで、お前を殺す」
「何故に突然のヒイロ」
「なんか殺意が湧いた」
「殺すなんて酷い!幸福なのは義務なんだよ!」
「「幸福なのは罪なんです」」
「訴えてやる!」
「「俺(吾輩)が
三人の言動が支離滅裂で纏まらない。まさにカオスだ。
「ゲオルク、撤退するぞ」
「いいのか?今なら二天龍と堕天使総督を確実に仕留められるが」
「サマエルがあちらの手に渡り、フェンリルも想定より早くに自由になった。これ以上はこちらが不利になる」
「了解した」
俺達はサマエルをしばきながら話半分で曹操達の会話を聞いてた。
「もうじきここに死神の集団がやって来る。ハーデスは有限になったオーフィスが必要らしいのでね、精々頑張ってくれ」
曹操達は霧に包まれてどこかへ転移していった。状況から察するに、さっきのゲオルクとかいう男が絶霧の所持者か?
曹操達が去っていった後、俺は辺りを見渡す。
瀕死のアザゼルと必死で治療するアルジェント。何もできなかった無力感にうちひしがれているグレモリー眷族一同+紫藤。塔城やヴァーリの心配をしつつ治療をしている黒歌と、それを手伝うルフェイ。気を失って倒れているゼノヴィア。吊るしたサマエルの足下で火を起こして火攻めをしつつ、熱々のおでんを食わせようとしているフェンリル。
俺は嘆息しながら言った。
「後始末面倒くさい」