ドーモ、ドクシャ=サン。モードレッドです。
ただいま
『グォォォォォォォォォォォ!!』
「オォルァ!!」
ズバサァァ!!
クトゥルフの振るう触手達を直感で上体を反らしつつ、切り上げにて切断する。
続けざまにクトゥルフは、上からの降り下ろし、正面からの刺突、やや斜め下方向からの凪ぎ払いをしてくる。
それらに対し敢えて正面に向かい、虚数空間を前と後ろに展開し、刺突を虚数空間を通す事で後方へ逸らす。
そのまま接近するが、クトゥルフは触手による攻撃を辞め、触手とは比べ物にならない速度で両腕を振るい始めた。
恐らく、触手では仕留めきれないと判断したのだろう。
数こそ触手より少ないが、その苛烈さは凄まじく、
ぶっちゃけこっちの方が避けづらい。だって攻撃範囲が触手より広いうえ、ラッシュの速度が速すぎて見えねえ。
ダァンッ!
「ガフゥ!!」
何て事を考えていたら攻撃に当たってしまった。直感で大気を前面に集め、即席の盾を作ったお陰で重傷を負わずに済んだが。
吹っ飛ばされながら背後に虚数空間の穴を作り、クトゥルフの背後に回り、吹き飛ぶ勢いのまま首筋の辺りにエルボーを叩き込む。勿論、多量の魔力+ハスターパワーを籠めて、だ。
「フンッ!」
『グアァ!?』
僅かに怯むクトゥルフ。此方に振り向きながら裏拳を放とうとしたので、直ぐにクトゥルフの頭を駆け上がり、頭頂部へ移動する。
当然クトゥルフは、俺を振り落とそうと頭を振り、手で払ってくる。
俺は振り落とされぬよう、クトゥルフの頭部に剣を突き刺し支えにする。振るわれる手に対しては時に屈み、跳び、受け流した。
そうして回避しながら空中に高速で魔法陣を書き上げる。
「特大の突風だ!受け取りなァ!!」
クトゥルフを中心にルルイエの大半を覆うほどの巨大竜巻が発生し、内部にいるクトゥルフの全身を風の刃で切り刻んでいく。序でに大量の深きものどもとビル群が巻き込まれている。
『ガァァァァァァァァァァァァァ!!』
「げぇ!?こいつ、咆哮で竜巻を掻き消しやがった!」
クトゥルフが吼えると、その声は衝撃波となって辺りの瓦礫や深きものどもと一緒に竜巻が消し飛ばす。その際、俺も一緒に吹き飛ばされる。
「アラーッ!」
吹き飛ばされながら見ると、クトゥルフの全身に裂傷が確認できる。だがそれも目に見える速度で塞がっていく。…やはり直接斬る以外の方法では、余りダメージは期待出来ない様だ。
それにあの再生力をなんとかしなければ、必然的に持久戦となる。そうなれば分が悪いのは戦闘だけでなく、ハスターとの合体を維持するのにも魔力を消耗していく俺の方だ。
『モードレッド、心臓だ。奴の心臓を狙え』
空中で体制を整え、再び突撃しようとした時、ハスターが話し掛けて来た。
「何故だ?生物の弱点を狙う事に異論は無いが、何か理由が有るんだろう?」
『勿論だ。奴のあの常識外れの再生力は心臓と脳が原因だ』
「どういう事だ?」
『奴の心臓と脳は地球の生物のソレ等とは役割が違う。奴の心臓は、負傷した肉体を作り直す為のものであり、脳は、壊れた心臓の再生と力の制御だ』
「つまり?」
『どうにかして奴の心臓を破壊しない事には、奴にまともなダメージは与えられず、同時に脳を破壊しなければ奴は死なないと云う事だ。心臓の再生力はさほど高くないからそこを破壊してから攻撃しろ』
「成る程な………でも、…もっと早く言えやぁ!!」
『すまん!忘れてた!!』
「ザッケンナゴラァ!ぶっ殺すぞ!!」
『ざーんねーんでーしたー!俺の本体は此処に居ねーから、殺せないよーん』
「うぜぇぇぇぇぇぇぇ!!」
『ガァァァァァァァァァァ!!』
「『うるせぇぇぇぇ!………あ』」
言い争いをしている内に、いつの間にかクトゥルフが接近しており、凄い勢いでぶん殴られた。
「ヒデブッ!」『アベシッ!』
殴られた衝撃で吹き飛ぶが、身体を捻って体制を整え、地面に足を着けてブレーキをかける。
ズザザサザザザザザザザァァ!!
『え、何で?何で俺も一緒にダメージ受けたの?』
「…グフッ、道連れだぜ」
『テメェのせいかぁ!!』
さて、おふざけはこの位にして、真面目に殺らないとな。
ハスターの指示通りに動くとしても、心臓を破壊する方法を考えなければ。……あ、アレが有った。
「と、云うわけで、一旦逃げるぜぇ!!」
ダッ!
『……………』
ズシンッ…ズシンッ…ズシンッ…ズシンッ…ズシンッ…
崩壊した自らの国を見渡しながら、その原因を探して廻るクトゥルフ。原因である人間は、憎き宿敵ハスターの力を使って逃亡した。必ず見付け出して殺さねばならない。……とか思ってるんだろうなぁ。
いいぜ、テメェが絶対強者で狩る側だってんなら、まずはそのふざけた幻想をぶち殺す!
さて皆さん、俺が第1話にてアレ?これ出来んじゃね?と思ったネタ技の1つを覚えているだろうか。
電気キャラと言われて、大抵の人が思い浮かべるであろうビリビリ中学生が使う必殺技。
そう、『
今までの話の中ではレールガンの話などしたことはなかったが、実は密かに建造していたのだ。(普段は虚数空間に収納)
レールガンの見た目はドイツ軍が作りしかのロマン砲、列車砲グスタフだ。内部の機構はほぼ全て魔術によって作られ、俺の魔力をエネルギー源に動く、科学と魔術のハイブリッドである。……但しまだ未完成で、一発撃つとぶっ壊れて二度と使えなくなるが。
こいつをクトゥルフにぶっ放すのだ。勿論、砲弾は俺である。
「くたばれぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
ドゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォン!!
『ギャァァァァァァァァァァァァァァァァ!!』
「ヒャッハー!!土手っ腹に風穴が空いたぜぇ!」
クトゥルフの正面からレールガンをぶっ放ち、特攻する。ギリギリで反応され回避行動と防御行動をとられた為、心臓部でなく腹部に命中したが、序でに防御に使われた両腕をぶち抜き、粉砕した。
「フゥハハハハハハハハハ!………クンクン…ハッ!俺の身体から焦げた肉の臭いがする!しかも髪燃えてる!アチィーーー!!」
などと言いながらも、クトゥルフに空けた風穴を確認する。大体直径30m程の大穴だ。だが、それもどんどんと再生されていく。なので、再生しきる前に傷口からクトゥルフの体内に侵入する。
「内部、グロッ!」
入ったところで傷が塞がり、出られなくなる。出るつもりは無いが。
どうやらクトゥルフの体内ではハスターの力を体外に放出するのは無理なようだ。その為、飛行が出来ない。
「再生能力が高い様だが、これならどうだァ!!」
クトゥルフの体内を剣で斬り、抉り、刻み、焼き、滅茶苦茶に暴れまわる。
『ギャァァァァァァァァァ!!』
「おらどうした!もっと良く味わえ!」
暴れまわりながら心臓を探していると、前方に大量の小型クトゥルフ(全長約2m)が見えてくる。どうやらクトゥルフの免疫細胞の様だが、悪趣味な造形である。
「ザコ助どもが!この俺の前に立ち塞がった事を後悔しやがれ!」
『『『グギャァァァァァァ!!』』』×10000
「えっちょ、多い。……ここは、戦略的撤退ぃぃぃ!!」
ダッ!
『『『ギャオォォォォォォォ!!』』』×100000
ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド!!!
「追ってきたぁぁぁ!!しかも増えてるぅぅぅ!!」
クトゥルフの免疫から逃げるために走り続ける。たまに邪魔な肉壁が出現するので、それらを切り裂いて抉じ開けながら。
「邪魔じゃぁぁぁ!!」
全力で壁をぶち抜いた先は。
ジュワァァァァァァァァァァ!
胃袋でした。
「危ねぇぇぇぇぇぇぇ!!」
勢い余って飛び出してしまい危うく落ちかけるが、ギリギリで穴の淵を掴んで飛び上がり、事なきを得る。
「あ"~、死ぬかと思ったー……」
しかしこれでは先に進めない。前門の強酸、後門のクトゥルフ。
ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド!!!
『『『グギャァオォォォォォォォォォォォ!!』』』×1000000
「(゜Д゜)」
あ、これ死んだ。
「ウオォォォォォォ!オラァ!!」
ズバンッ!
「ゼェ……ゼェ……や、やっとたどり着いた…」
百万の小型クトゥルフ(1体1体が英霊クラス)を
「ま、魔力ほぼ使いきったぞオイ」ゼヒュー…ゼヒュー…
しかし、ここに来るまでに竜の因子から作られる膨大な魔力を殆んど使いきり、魔力の回復薬も使い果たした。魔力炉心からは今なお魔力が作られ続けているが、生成量より合体維持の為の消費量の方が多く、戦闘にはほぼ回せない。
「…こうなったら、奥の手を使うしかないか」…ハァ…ハァ
術式、『アルハザードのランプ』 始動。
これが、俺の最後の切り札。この術式は己の魂を削り、燃焼させて魔力を作り出す魔術であり、これによって生み出される魔力量は竜の因子すらも超える。因みに消費した魂は数年もすれば回復する。
だが、魂を燃焼させると云う方法から、これを余り長く使いすぎると死んでしまう欠点がある。
『おいおい、大丈夫なのか?』
「大丈夫じゃねぇ。それでも、やるしか無いだろ」
ハスターと話ながらも、心臓に対して飛び掛かり剣を突き立てる。そのまま心臓の側面を走り回り、切り裂いて行く。
「そして!これでどうだぁ!全て断つ稲妻の剣ゥ!!」
心臓の頂点に着いたとき、垂直に跳躍し、縦に一回転。そのまま全力の一撃を降り下ろした。
ザンッ!
「ハンッ、これで自慢の再生力も落ちるな!」
『まだだモードレッド!脳を破壊しろ!』
「っと、そうだった。脳を目指すなら、序でに身体の中を破壊しながらi──ズボッ!! なッ!」
脳を目指して進もうとした時、突然巨大な掌が現れ、俺を掴んだ。
「こ、こいつ!自分の身体に腕を突っ込みやがった!」
クトゥルフは俺を掴んだまま腕を引き抜き、頭上に掲げ、握り絞め始めた。
メキメキメキッ!
「ァ、ガァァァァァァァ!!」
俺も全力で逃れようとするが、拘束はまるで解ける気配が無い。それどころか次第に締め付ける力が強くなっていく。野郎、俺をじわじわとなぶり殺しにするつもりか!
メキメキメキッ!
「ぐぁ!、~~~ッッガァ!」
骨が軋み、肉が潰れる音が聞こえる。
『モードレッド!?くそ、仕方ねぇか!』
ハスターが何かを言っている気がするが、気にする余裕は無い。どうにかして脱出しなければ!
「はぁぁぁ!!」
ズドンッ!
! 一瞬だが拘束が緩んだ。今だ!
「でやぁッ!!」
握り絞められた掌を強引に抉じ開けて脱出する。そして、自分を助けた存在を知る。それは全身に痛々しい程の傷を付け、電気を帯びたラーミアだった。
どうやら雷を体に纏ってクトゥルフの腕に体当たりを仕掛けたようだ。
「ラーミア!?何故戻ってきた?」
「……奴に、貴方の危機と言われましたから」
「…なるほど、そういう事か。ありがとう、助かった。」
「いえ。…ですが、この傷ではこれ以上の戦闘は出来ません。私はこれで本当に退きます」
そう言って去っていくラーミアを見送る暇もなく、クトゥルフと向き合い構える。心臓を破壊したためか、ラーミアから受けたダメージを回復するのも直ぐにとはいかないようだ。
俺はクトゥルフの頭部、正確には脳を狙って突っ込む。当然の如くクトゥルフは迎撃しようと動くが体内で暴れまわったせいか、その速度は目視できる程に遅く成っていた。
だがこちらも疲労と負傷が重なり、動きが鈍くなっている。なんとか避けることはできるが、あの剛腕を一発でも受ければもう戦えないだろう。
「ウォラァ!」
『ガァァァァァァァァァ!!』
クトゥルフの右ストレートを回避し、腕を足場にして駆け上がる。クトゥルフは振り落とそうとするが耐えられない程ではなく、問題なく走り続ける。次にクトゥルフは髭の触手を使って攻撃してくる。
斬り、弾き、躱し、防ぎ、叩き落とし、無様に転がり、ダメージを受けながらも突き進む。
肩の付近まで上がった所で跳躍、脳天へと斬りつける。
「『ダァァァリャァァァァァァァ!!』」
俺の斬撃はクトゥルフの頭に深々と傷を付ける。このままダメージを与え続ければ勝てるだろう。だが、先程俺の発した声がハスターの声と重なって発せられた。これは合体が解け始める初期症状だ。あまり時間は掛けられない。
『心臓の再生が進んでいる!急いで脳を破壊しろ!』
「『分かっている!』」
勝機が見えたことで油断してしまったのだろう。その時、剣を持っていない左手を触手に掴まれ、握り潰した後に引き千切られた。
ブチィ!
「『ッッ!ガァ!!』」
激痛が奔り、今にも傷口を抑えて治療したくなる。だがそれを堪えて剣を構えて、ハスターの力を行使し、雷雲を地上に下ろしてクトゥルフに纏わり付かせる。
「『フル……バーストォ!』」
バヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂ!!
『グォォォォォォォォォォン!』
全身に雷を浴びてたたらを踏むクトゥルフ。更に竜巻を発生させ雷雲を巻き込んだ風がクトゥルフを切り刻んで行く。
このまま一気に決める!
残っている魔力を全て剣に集中させ、心臓と脳を纏めて斬れる軌道で振り下ろす。
「『これで!終わりだァ!!』」
ズバンッ!!!!
『グギャァァァァァァァァァァァァァ!!』
全て断つ稲妻の剣によって縦に真っ二つとなり崩れ落ちるクトゥルフ。
竜巻はまだ残っており、それによって体を切り裂かれていく。心臓と脳を完全に破壊され、再生が追い付かなくなり、どんどん肉体が崩壊していく。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!
クトゥルフが死ぬと同時にルルイエも崩壊し始め、バラバラになったクトゥルフの死体と一緒に海へと沈んでいく。
「『ハァ……ハァ……終わった…ッ』」
合体を解除し、落ちながらも僅かに回復したなけなしの魔力で飛行魔術を行使する。
血を沢山流しすぎたのか、視界がぼやけてくる。それに力を引き出す為とはいえ、魂を削り過ぎたのだろう。身体がふらつき飛行魔術を保てない。
海へと真っ逆さまに落下する。段々と海が近づいて来るが、身体が動かない。意識も遠く成っていく。
ここ……までか。……王…さま、すみま……せん。帰…還……出来……ませ…ん……でした。
意識が完全に無くなる直前に、こちらに飛んで来るラーミアが見えた気がした。