ずっと前に書いてメールボックスの底で温めていた作品なので、読みづらいところは多々あるかと思いますが、暖かい目で見つめてくれると幸いです。
ちなみに上2つの作品の中で好きなキャラはBBはタオカカ、なのははディアーチェが好きです。
黒き獣、それは突如として現れた。
『図書館』を喰いちぎり、黒き獣は巨大な咆哮を上げる。
ある者は絶望し、またある者は目の前の光景をただ見ていた。
黒き獣を生み出した者は既に肉体は滅び、精神はこの世のどこにもいなかった。
そう、
『この世』にはどこにもいない……。
*
ラグナ=ザ=ブラッドエッジは不思議な空間にいた。どこまでも続く真っ白な景色。そこには3の椅子がポカンと置かれているだけだった。
いるのはラグナだけ。いや、『意識』を数えるのなら4人だ。
「なんだここは……。俺は確かハザマと闘って……」
『不特定の因子を確認』
『レイチェル=アルカードとの目視的特徴と不一致。よって不特定因子と認識』
『これをエラーとし、修正を確認。…エラー、修正の必要無しとの結論に』
「な、なんだ!?誰かいるのか!?」
ラグナは突然聞こえた声に驚き、辺りを見回す。すると、目の前の椅子に目を凝らすと影が見える。
『確認の結果、コード225で黒き獣を発現させたラグナ=ザ=ブラッドエッジと認識』
「なんだお前らは……」
『黒き獣は不確認の要素多数。そのため、黒き獣の何らかの要素によりこの空間へ転移したと考えられる』
「おい!人の話を聞いてるのか!」
『黒き獣の因子を持つ存在がここに干渉したのなら、黒き獣もこの空間へと干渉する恐れがあるのでは?よって、ラグナ=ザ=ブラッドエッジの排除を提案』
「なっ…!てめえら人の話も聞かずに排除だと!?好き勝手に言いやがって!」
『その提案の修正を要求する。ラグナ=ザ=ブラッドエッジは別コードにてイデア機関との接続に成功し、ムラクモユニットの機能を停止させている。とすれば、コード225もその可能性ありと推測。覚醒を促すため、別コードへの転移を提案』
「…?コード?さっきから何を言ってんだ?」
『さらに修正を要求する。コード225と同パターンが存在するコードへの転移は同じ結論に至ることを推測する。よって、「アナザーコード」への転移を提案』
目の前の3つの影はラグナを置き去りに延々と会話を続けている。
『その修正提案を承認。コード225、ラグナ=ザ=ブラッドエッジをアナザーコード「リリカルなのは イノセント」へと転移させる』
「あ?リリカルなんだって?…って身体が消えているだと!?おいお前ら!俺に何を……」
*
「……ハッ!?」
再び覚醒。起きると見知らぬ天井が見えた。どうやら自分はベッドに寝ていたのかとラグナは認識する。
「ラグナー、朝ご飯できてるわよー。早く起きなさーい」
「はいはい、わーってるよ母さん」
ラグナは気だるい声で返事をする。
(ん…?母さん?何で俺母さんなんて言ってんだ?)
ラグナは違和感を覚えながらも階段を降りる。ラグナは今、意識と身体が別々に動いている感覚を味わっていた。
ラグナが降りた先にあった光景は、長引く眠気を吹き飛ばすほど、とても信じられるものではなかった。
「ラグナ、起きるの遅いわよ」
「お寝坊さんだねー」
「お寝坊さん…」
木製のテーブルには3人の姿。一番小さい子供の姿をしたノエル。いや、サヤがいた。もう一人のほうも女の子だが、外見の特徴からジンと認識できた。
そして、大人の女性。栗色の髪をポニーテールにまとめたその女性は、ラグナが忘れるはずのない存在だった。
「し、シスター…セリカ…」
そう、子供の頃のラグナやジン、サヤを育て、命を捨てて自分を助けてくれた女性、セリカがエプロン姿でいた。
「もうラグナったら。親の名前を呼び捨てにしちゃ駄目でしょ?それにシスター?ジンとサヤならもう朝ご飯食べてるよ」
「あ…あ…?」
目の前の光景はラグナを混乱させるものしか無い。セリカやサヤの存在、そして何故か女のジン。ラグナの情報処理能力ではとてもじゃないが、理解に及ぶものでは無かった。
「ラグナ、ジンやサヤはちゃんと起きれているんだから、ラグナもちゃんと起きなきゃカッコ悪いでしょ?」
「ラグナは2人の『お姉ちゃん』なんだから」
お 姉 ち ゃ ん ?
セリカの発言に疑問を感じたラグナ。今、セリカは俺のことを何て?
ラグナはぎこちない動きで横にある鏡で自分を見る。
そこには、白髪で緑と橙色のオッドアイ。紛れもない、女の子の自分自身がいた。
*
自分の姿で頭がパンクしたラグナは黙々と朝食を食べ、自分の部屋に戻った辺りで冷静さを取り戻した。
ラグナは頭の中を整理していた。ラグナの頭の中は『この世界』での知識が入っていた。
ラグナはこの家の長女で小学5年生。ジンとサヤは自分の妹で、ジンは3年生、サヤは2年生である。セリカは義母の立場で、『施設』が潰れることで離ればなれになりそうだった3人を引き取ってくれた存在のようだ。
(一体全体どうなってんだこれ…?俺やジンが女でシスターがお母さん?どこをどう間違えばこんなことになるんだ…?)
ラグナが頭を抱えて悩んでいると、
「ねーさん」
ジンがサヤと一緒に部屋に入ってきた。
「何だよジン」
「かーさんが『3人で外で遊んで来なさい』って」
「おそとー」
「わかった。今行くよ」
考えているばかりじゃしょうがない。そう思いながらラグナは外出の支度をした。
「遊ぶってたってどこで遊ぶんだ?」
「ねーさん、こんなことがあろうかと思って、とっておきの場所があるんだ」
*
ジンに誘われるままにたどり着いたのはちいさなゲームセンターだった。看板には『ゲームの島イシャナ』と書かれている。
「ゲームセンター?」
「うん。ねーさんは『ブレイブデュエル』って知ってる?」
「ぶれいぶでゅえる?何だよそれ」
「今大人気のゲームだよ。魔法を使って戦うんだ。学校じゃ皆遊んでるよ?」
「ふーん。そんなものがねえ」
「せっかくだし、やろうよねーさん」
「あー……まあいいんじゃないか?サヤは?」
「やるー!」
「決まりだね」
自動ドアを開けるとクーラーの冷たい風と音の洪水がラグナ達を招く。
ジンは下調べをしていたようで迷うことなくブレイブデュエルの筐体へと向かう。 ブレイブデュエルの筐体には、男女や大人子供関係なく、皆が楽しそうに遊んでいた。
画面では魔法が飛び交い、お互いの武器をぶつけ合う姿が映っている。
(すげえ…こいつがブレイブデュエル…)
ラグナが画面の戦いに夢中になっていると、
「やあ!ブレイブデュエルは初めてかい?」
「のわっ!?」
背後から突如声をかけられた。
振り向くと、肉体が引き締まった、明るい顔の中年の男性がいた。
「ははは、驚かせたかな?俺はこのゲームセンターの店長、ミツヨシだ。ここで遊ぶなら、覚えといて損はないぞ?」
「えと、私たちブレイブデュエル初めてで……」
「そうかそうか。なら俺が直々に教えてあげよう。こっちにおいで」
店長のミツヨシはラグナ達を機械の中に案内する。
「そこにあるカメラに自分の顔を写すんだ。すると自分自身がカードになる。どうだ、面白いだろ?」
「ほんとだ!私がカードになってる!」
「すごーい!」
ラグナが覗いてみると、ジンは刀を構えている。その刀はラグナもよく知っているアークエネミー『ユキアネサ』と特徴が一致していた。
(流石というか…。この世界でもジンはその武器なのか…)
「ラグナちゃんのカードはどんな感じだい?」
「え、いや、俺のは別に…」
「見せてよねーさん」
「見てもつまんねーから!むしろ見せられない!」
「えい」
「あっ、サヤ!てめっ」
「どれどれ…」
ラグナのパーソナルカードは、白い巨大な剣を武器としているが、その武器を凶悪な面構えで振り回しているというものだった。
「うわあ……」
「これは…何て言うか…その…」
「こわーい」
「うるせえ!」
ちょっとだけメンタルに傷ついたラグナであった。
*
店長の操作でフィールドにダイブし、空を飛ぶという感覚を味わいながら、カードの説明に移る。
『さて、君達のデッキには運よくN+のカードが2枚ある。これによって、「リライズ」が可能となるんだ』
「リライズ?」
『簡単に言えばパワーアップかな。実際にやってみるといい』
「よし…カードアップ、リライズ!!」
ジンがリライズし光に包まれると、可愛らしい服から和服になり、その上に青いジャケットを羽織る姿となる。
「格好いい…!」
『ふむ、ジンちゃんはフェンサータイプのようだね。近距離、中距離に優れたスタイルのことだ』
「フェンサータイプ……。なんだかいい響き……」
「ねーねーおじさん。わたし、武器持ってない」
サヤの方を見ると、サヤもリライズしたようで確かに武器らしきものは所持していない。その代わり豪奢な服装と装飾品を身に纏い、容姿は大幅に変わっている。
『サヤちゃんのはサポート特化のプロフェッサータイプ。戦闘には不向きだが、やれることは沢山あるぞ』
「へー、何かいいかも…」
「2人のそんな強そうなのを見たら俺もやりたくなるな。よーし、カードアップ…」
その時、ラグナ達のいるフィールドにアラームがけたましく鳴り響く。
『挑戦者が現れました。これより戦闘が始まります。プレイヤーは準備をしてください』
「な、なんだ!?」
「挑戦者?」
警戒していると、ラグナ達から少し離れた方向に2つの人影が見えた。
1人は金髪を2つに結いた少女。片手には炎を纏った剣を持っている。
もう1人はリライズしたサヤのように紫色の髪をポニーテールに結んでいる。武器らしいものを所持した様子が無いところから、プロフェッサータイプだと判る。
「相手はあそこにいる人達ね。……ねえすずか、1人リライズしてないけどあの人初心者かな?」
「きっと最初の頃の私達みたいにトレーニングモードの設定間違えちゃったんだよ。どうしようか?アリサちゃん」
向こう2人はラグナ達を見ながら話し合っている。内容は聞き取れないが、ラグナはこちらの力量を測っているんだと理解していた。
しばらくすると、金髪の方がラグナ達に向かって叫びだした。
「おーい!見たとこ初心者みたいだけど、やらないならあたし達の降参で退くけどどうするー!?」
ラグナとしてはこの提案は賛成だった。さっきのジンやサヤの言動を見るに、ジン達には『向こうの世界』の記憶は無い。本来の能力は十二分に発揮されないだろう。 ラグナのリライズはジンの様子を見るに、間違いなく『アレ』に成るはず。しかし、ラグナは本調子で戦えたとしてもジン達は戦いにおいて足掛かりになることは明白である。向こうの口振りはブレイブデュエル慣れをしているのが分かるため、力の差は歴然だ。
(下手に戦うのは得策とは言えねえ。向こうからの提案なら願ったり叶ったりだ)
「その提案、飲ませて…」
「その台詞、私達を馬鹿にしてるのか?相手が格上だろうと気に入らないね」
「む、別にあたしはそんなつもりで言ったんじゃないんだけど……」
「確かに私達は初心者だけどそれだけで勝敗が決するっていうのは少し急ぎ過ぎてない?それとも、本気で戦って初心者に負けるのが怖い?」
「何を……!上等じゃない!受けてたってあげようじゃないの!!」
「あ、アリサちゃん!?」
「ジン!てめえ馬鹿か!ご丁寧に対戦相手挑発しやがって!」
「挑発したのは向こうが先でしょ?」
「んなわけあるか!」
ラグナは発言を撤回できないものかと思ったが、向こうのを見るにそれは叶いそうにない。すっかり臨戦体制に入っている。
ラグナの計画はジンの挑発で完全に破綻してしまった。
「あたしを馬鹿にした事を後悔させてあげる…。行くよ!フレイムアイズ!」
『了解、やり過ぎるなよ!』
「フレイムウィップ!」
アリサが剣を振り降ろすと、剣から伸びた炎が鞭の如くラグナ達を襲う。
「危ねえ!」
「ぬるい!」
ラグナはサヤを抱えながら避けるが、ジンは避けた後アリサ達に向かっていった。 ジンの動きはラグナが思っていた以上に俊敏で、どうみても初心者のそれではなかった。やはり、多少でも『向こうの世界』の影響が及んでいるのだろうか。
「はあっ!」
「やあ!」
ぶつかり合った2人はそのままつばぜり合いになり、離れたと思うと剣を振るいあい、お互いの攻撃を弾きあう。
「アリサちゃん!援護するよ!」
「ええ!」
「なっ…!」
すずかが何かを唱えると、ジンの関節が突然凍らされ動けなくなり、そこへアリサの攻撃が当たる。
まともに食らったジンは後ろへ大きく飛ばされ、ラグナはジンを受け止めた。
「大丈夫かジン」
「くそ…!もう1人の能力、どうやら氷を使うみたいだね」
「さっきの動きを止める攻撃は厄介だ。直接的な威力は無いとはいえ、隙を作られるのは危険だ」
どうしたものかと考えていると、サヤがラグナに話しかけてきた。
「ラグ姉、ジン姉がこっちに飛ばされた後、あそこの周りに模様が沢山浮いてる」
「模様?そんなの見えないぞ?」
「ううん、ホントにある。なんだか触ると凍っちゃうみたい」
「そこまで解るのか?」
「うん、調べてみたからホントだよ」
サヤのプロフェッサータイプ。どうやら肉眼では探知できない物まで見ることができ、更にその物の特性まで調べられるようだ。
サヤの言っていることが本当なら、すずかがトラップを仕掛け、動けなくなったところをアリサの攻撃で一網打尽といった戦法なのだろう。
(この状況、上手くやれば……)
「ジン、サヤ。耳を貸せ。いいか…(ゴニョゴニョ)」
「なるほど…、やってみる価値はあるね……」
「やってみる!」
「よし、いっちょいくか!カードアップ、リライズ!」
ラグナがリライズをする。ラグナのリライズは案の定、赤いジャケットと大剣だった。
「なっ……あいつもリライズできるの!?」
「できねえとは言ってねえだろ!行くぜ!ジン!」
ラグナとジンは正面を切ってアリサ達に向かっていく。
『ラグ姉、右に避けて!』
『ジン姉、左右に模様があるからそのまま真っ直ぐ!その直後に上へ!』
「そんな…!私のトラップを全部避けてる!?」
「向こうにもプロフェッサータイプがいるってことね!」
アリサとすずかの2人はトラップに引っ掛かるものだと思っていた。しかし、サヤのおかげでトラップの位置が分かるラグナとジンは、すずかのトラップを全て避けきることで引っ掛かると思っていた2人の隙をつくという戦法を行ったのだ。
「く…!すずか!」
「わかってる!」
アリサはとっさの判断ですずかに指示し、すずかは相手の関節を凍らせた。
しかしこの技は凍らせる座標を正確に測らなければいけないので凍らせるのは1人が限度だ。すずかが凍らせたのはラグナだった。ラグナの持つ巨大な剣はアリサが押し負ける可能性があるためだ。
あとはアリサがジンの攻撃を受けきり、その間ですずかがジンを凍らせてしまえばアリサ達の勝利…
の、はずであった。
「なっ…!?」
「嘘…!?」
「引っ掛かったのは、お前らみたいだったな」
凍らされなかったジンはアリサに脇目もふらず、その後ろのすずかに向かっていった。
「お前らが私達の動きを止めるのは分かりきっていた」
ラグナはこのことをあらかじめ計画していたのだ。
『いいか、俺らがあのトラップを抜けたとしても例の技で動きを止められるはずだ。そこでだ、俺らのどちらか一方が止められたら、金髪のやつじゃなくて後ろの奴を攻撃するんだ』
相手のとっさの判断を裏切ることで生まれる隙。ラグナ達の作戦は、二重仕掛けで相手の油断を誘ったのだ。
「氷の壁!」
しかし、すずかの行動はラグナ達の予想を越えた。すずかは目の前に氷で作られた壁を生成したのだ。
しかし、それでもジンは止まらない。
「ねーさんが考えたこの作戦、成功は私の手に掛かっている!だから、私は立ち止まらない!目の前の壁を打ち砕く力を見せてみろ!『ユキアネサ』!」
ジンが無意識に叫んだその名前、ユキアネサはその声に応じるかのように氷の刃を生成し、壁に突き刺すことですずかの氷の壁を打ち砕いた。
「そんな…!私と同じ氷のパーソナルデータ…きゃあぁぁぁ!!」
「すずか!」
ジンの攻撃を受けたすずかは気を失い、戦闘不能になった。
そしてそれは、氷の拘束が解けたことも意味していた。
「隙だらけだぜ!」
「しまっ…!?きゃあぁぁぁ!!」
氷の拘束が解けたラグナの勢いが付いた一撃はアリサに命中し、アリサはそのまま気絶となった。
『勝負あり!勝者はラグナ、ジン、サヤ選手!』
*
「うー…!悔しい悔しい悔しいー!もう1回!もう1回勝負!」
「アリサちゃん、対戦の設定は1本勝負だよ」
「えー!? そんなー!?」
「そんなに私と戦いたいなら、また今度相手してあげるよ」
「ホント!? ねえ、名前を聞いてもいいかな?」
「私はジン。ジン=キサラギだ」
「俺はラグナ=ザ=ブラッドエッジ」
「サヤ」
「ジンにラグナにサヤか。あたしはアリサ=バニングス!よろしくね!」
「月村すずかです。またお会いしましょうね」
お互いに自己紹介を終えると、アリサとすずかは姿を消していった。
対戦を終え、マシンから出たラグナ達の元へミツヨシが駆け寄ってきた。
「いやートレーニングモードの設定弄り忘れてたよーごめんね。でも、初めての戦いで勝つなんて凄いじゃないか!」
「いや、それほどでもないですよ」
ジンは謙遜した口振りだが、表情は明らかに嬉しそうだった。
「わたし、もっかいやるー!」
サヤはさっきのほとぼりが冷めていないようで、再び筐体へと勢いよく向かっていった。
「ねえねーさん」
「なんだよジン」
「ブレイブデュエル、楽しいかい?」
「はっ、当たり前だ」
今ここに、夏の小さなゲームセンターで、3人の新たなデュエリストが生まれた。
この作品は今3話ぐらいまで書きためているので、次回は修正しつつ早めに投稿するつもりです。
簡単な感想やアドバイスくれれば嬉しいです。