ゲームセンター『ゲームの島イシャナ』にてトップランカーの二人組、ルナとカルルを倒したラグナ3姉妹とタオカカ。勝負が着いて休む暇無く、彼女達に新たな試練が訪れようとしていた。
「あら、貴方は……」
ラグナの目の前にいる1人の少女、レイチェル=アルカードは真っ赤な瞳でラグナを静かに見つめていた。
「テメェ……ウサギ……!?」
「ウサギ? この頭のリボンのことかしら。コレを見て私を『ウサギ』と呼ぶ人を初めて見たわ。それに私の名前はレイチェル=アルカード、覚えておきなさい」
(なっ……!? まさかコイツも記憶が……? いや、コイツは普通の存在じゃねえ。何かあるはずだ……)
「ふん、レイチェルが来たのか」
ラグナの後ろの方から、ルナが喋りながらこちらに近づいてきた。
「ご機嫌ようルナ。貴方、向こうのモニターの結果を見るに負けたようね」
「う、うるさい!お前も『死神3姉妹』のことは知っているだろ!コイツに負けたんだ!」
ルナは不満げにラグナの首に腕を回して指を指す。
「おい!馴れ馴れしいぞ!」
「へぇ……」
レイチェルはラグナを品定めするような目付きで見る。それはラグナがいつも見るレイチェルの眼差しだった。
「面白いわね。ラグナ=A=マーキュリーと言ったかしら? よかったら私の『屋敷』に来てくれる?」
「おおっ! ショップチャンピオンが『死神3姉妹』を御誘いしたぞ!」
「すげぇ! これで『死神3姉妹』も有名人の仲間入りだ!」
1人2人が声を上げ、それにつられるように周囲の声が大きくなりラグナ達を称賛するようになる。
「ねーさん」
「ラグ姉どうしたの?」
「ジン、サヤ……」
観客の反応に心配してか、ジンとサヤがラグナのそばに来た。
「そこの2人もいらっしゃい。少しお話をしたいの。よかったらお菓子も出すわ」
「お菓子!? 行く行く!」
「……ふん」
サヤはすっかり行く気になり、ジンの方はレイチェルを半ば疑っている。
ラグナはレイチェルの正体を調べるべく、もちろん行くのであった。
*
レイチェルが乗る黒塗りのリムジンにはラグナ、ジン、サヤの3姉妹と、
「タオ、今日はイイ人と一緒!」
タオカカが共に乗っていた。今日は『タオカカと一緒に遊ぶ』という約束をゲームセンターの店長であるミツヨシと約束しており、タオカカを置いて行くわけには行かなかった。ちなみにタオカカは『一緒ならどこでもいい』と言っており、レイチェルは『同じチームで勝利したから構わない』とのこと。店長のミツヨシはラグナ達と仲良くなっている様子を見て安心したのか、外出の許可を出してくれた。ちなみに席の方はラグナの横にジン、レイチェルで正面にサヤとタオカカとなっている。
「ねえタオちゃん! この車中に冷蔵庫があるよ!」
「凄い!とっても美味しそう!」
「よかったら飲んでもいいわよ」
「「いいの!?」」
サヤとタオカカは歳が近いからかすぐに仲良くなったようで、2人はリムジンの飲み物で盛り上がっていた。
「で、俺達に何をしようってんだ。ウサ……いや、レイチェル」
「フフッ、別に。ただ貴方達を応援しようと思っているだけよ」
「そんなの信じられないね」
ラグナの横からジンが言葉を挟んだ。その表情はレイチェルを警戒している。
「おいジン……」
「お前はねーさんにあんなことやこんなことをしようと考えているんだ…! そんなこと! 私がさせないからなぁ!!」
「おい! どうしてそうなるんだ!」
「それも面白そうね」
「お前も乗るな!」
レイチェルの屋敷に到着するまで車の中は騒がしかった。
「……午○の紅茶?」
「○後の紅茶だね……」
*
しばらくしてリムジンはレイチェルの屋敷にたどり着いた。ラグナの知っているレイチェルの城とは外装が少し異なるが、退廃的な雰囲気と大量の赤いバラは相変わらずだった。
「レイチェル様、到着いたしました」
「ご苦労ヴァルケンハイン。後で紅茶とお菓子を用意して頂戴」
「了解しました」
車を運転していたのはレイチェルの執事、ヴァルケンハインだった。車を運転していたヴァルケンハインに運ぶように言ったレイチェルの台詞を聞く限り、屋敷にはレイチェルとヴァルケンハインの2人しかいないようだ。
「屋敷にようこそ。歓迎するわ」
「うわぁすごい!」
「きれい……」
屋敷の中は外装と違って綺麗にされており、塵一つとして存在しないものだった。 更に奥から2匹の生物がやってきた。
「姫様おかえりなさいッス!」
「あら姫様、早かったわね」
赤いコウモリと黒い猫、2匹とも元の生物の面影は無く、デフォルメされた軟体生物のような造形だった。しかも喋っており1匹はオカマ口調である。
「紹介するわ。私のペットのギィとナゴよ」
「よろしくッス!」
「お客さんなんて珍しいわねぇ」
「ねぇ、2人とも何で喋れるの?」
「この子達はブルイブデュエルの技術を応用して造られたアンドロイドなの。だからこうして喋ったり変形もできるわ」
「えっ? 姫様、オイラは…」
「ちょっとギィ黙りなさい」
「ムググ……!」
ギィの言葉を腕を生やしたナゴが塞いだ。レイチェルはギィに対して一睨みし、ギィはそれを見るとシュンと黙った。
「ちょっとお喋りが過ぎるところはあるけれども気にしないで」
「すごーい!ブレイブデュエルってロボットも造れるんだ!」
「そ、ソウッス、オイラ、ロボットッス。ウィーンガシャン、ウィーンガシャン」
「そんな露骨にカタコトになる必要なんかないわよ」
ナゴとギィを引き連れてそのままラグナ達に屋敷の中を案内する。数分後、客室間に到着し皆が椅子に座った。
「ここでヴァルケンハインが紅茶を持ってくるのを待つのだけれど、それまでにラグナ、貴方と個人的に会話がしたいわ」
「お前、やっぱりねーさんを……!」
「よせジン。いいぜ、付き合ってやるよ」
ジンの反対を抑えてラグナはジン達を客室間に残してレイチェルの部屋へ移動する。レイチェルの部屋は貴族らしい装飾が施されており、それ以外は特に目立ったものが無かった。
レイチェルが部屋に入り、続けてラグナが入る。レイチェルが席に座ったところでラグナは彼女に先に話しかけた。
「おい、もう隠す必要はねえぞ。ウサギ」
「流石の貴方でも分かっているようね」
「当たり前だ。そのムカつく雰囲気は相変わらずなんだからよ」
「……そうよ。私は貴方もよく知っている『私』よ」
「下手な芝居なんかしやがって。最初からそうすりゃいいんだ」
「貴方の頭じゃ理解できないでしょうけど、これにもちゃんとした理由があるのよ」
「一言余計だっつーの。まあいい……で、俺に何の用だ」
「あら、その台詞はこっちのものでは無くて?聞きたいのは貴方の方でしょラグナ? だからこうして話の場を設けてあげたのよ」
「チッ……ホントに相変わらずだな。……まず聞きたいのは『ここ』が何処かだ」
「そうね。貴方も分かっている通り、『ここ』はイカルガではないわ。ここはあらゆる事象から外れた未知の世界……。言うなれば『異世界』と言ったところかしら」
「だったら何で俺がここにいる! 俺はあの時……! それに何で俺やジンが女になって、サヤもいるんだ!」
「質問は一つずつにして頂戴。ちゃんと説明してあげるわ」
「まず何故貴方がこの世界に来たのか。それは貴方を強くする為よ」
「俺を強く……?」
「そう。詳しくは言えないのだけれど貴方は本来来るべきではない所へと訪れてしまった。そのイレギュラーに『彼ら』は可能性を見出だして貴方をここに送り込んだのよ」
「『彼ら』? それって誰だよ」
「これ以上は話せないし話す必要もないわ。一つ言えるのは『異世界』に送り込まれたのは『彼ら』の意志よ」
「だったら何で女にする必要があるんだ! 色々と不便だしよ……。それにこの世界は平和だ。修行のしようがねえぞ」
「質問は一つずつと言ったでしょう。女になったのは私にも分からないわ。おそらく、ここに来る直前に事象干渉を受け、『異世界』のルールをすり抜けてそうなったと考えられるわ。他の事もそうだと考えるべきね」
「それに、貴方は『修行しようがない』と言ったわね」
「ああ、言った」
「はあ……馬鹿ね。既に修行は始まっているわ」
「おい、それってまさか……」
「そう、『ブレイブデュエル』。そこが修行の場よ」
「馬鹿馬鹿しい。あんなのが修行になんのかよ」
「あら、楽しそうに遊んでいたのは何処の誰かしら?」
「うぐ……!」
「ラグナ、貴方がそう思っていても事実修行としての役割は果たしているわ。強くなりなさい。少なくとも、世界一位ぐらいね」
「世界一位って少なくとも何も最終目標じゃねえか」
「それぐらいやり遂げなければ強くなることは叶わないわ。そしてもう一つ、貴方には会わなければならない相手がいるわ」
「相手? 誰だよそれ」
「なのは……。『高町 なのは』。それが貴方の会うべき人物よ」
「高町……なのは……」
コンコン
「レイチェル様、お茶の御用意ができました」
「ええ、今いくわ」
ヴァルケンハインがドア越しに用件を伝え、レイチェルが席から立ち上がった。どうやらラグナとの話し合いはこれで終わりのようだ。
レイチェルが部屋を出ようとしたとき、ラグナはもう一度話しかけた。
「おいウサギ、最後に一つだけいいか」
「ええ、いいわよ」
*
「このお菓子美味し〜い!」
「美味しくてほっぺが落ちちゃいそう!」
「……」
サヤとタオカカが盛り上がる中、ラグナはレイチェルと交わした会話を頭の中で巡らせていた。
「どうしたのねーさん。やっぱりアイツに何かされたんじゃ……」
「いや何でもねえよ。気にすんな」
誤魔化しの為に紅茶を一口飲む。ラグナには分からないがこれが上品な味という物なのだろうか。
少しの時が経ち、レイチェルが口を開く。
「貴方たちをここに呼んだのはただお喋りしたかっただけではないわ。貴方たちを鍛えるために呼んだの」
「私たち強くなれるの!?」
「強いの大歓迎!」
「ええ、私は強くなる可能性を持ったプレイヤーに興味があるの。そういった人を鍛えて強くさせるのが私の趣味なの」
サヤとタオカカが喜ぶところに、ジンが口を挟んだ。
「私は反対だね」
レイチェルの提案にジンが反対の意を唱えた。サヤとタオカカは『何で?』と頭に疑問符を浮かべおり、ラグナはそれを見ているだけだ。
「あら、修行は嫌いかしら?」
「そうじゃない、何でお前なんかに鍛えられなくちゃいけないんだ。強くなるだけなら私たちだけでもなれる。ショップチャンピオンだか何だか知らないけど、あまりデカイ面しないでほしいね」
「口だけは達者ね。でも口だけでは私には勝てないわ」
「この……!だったらブレイブデュエルで勝負だ! 私が勝ったら2度と私たちの前に出てくるな!」
「ジン!」
「構わないわよ」
「おい! お前もかよ!」
「だけど、『仮に』貴女が負けたとしたら、何でも言うことを聞いてもらうわよ」
「何でそんな要求を聞かなきゃいけないんだ」
「あら、自分から勝負を申し込んでおきながら負けるのが恐いの?」
「……っ! いいよ、受けてたってやる」
双方共に条件を承諾し、レイチェルは外のリムジンではなく地下へと案内した。そこには屋敷の古い内装には似合わないブレイブデュエルの筐体とホログラムフィールドが置かれてあった。レイチェル曰く、『運営に知り合いかいる』とのことだ。
「さあ始めましょう。リライズアップ」
「リライズアップ」
お互いが戦うためにバリアジャケット形態になる。ジンは和服の上に青い長袖のジャケットを羽織ったで、レイチェルはリライズする前と何一つ変わっていなかった。
「なんだそれは。リライズしてるのか」
「ええ、ちゃんとリライズしているわ。人前で着替えるのは非常識ではなくて?」
「ジン姉やっちゃえー!」
「ファイトー!」
応援席からサヤとタオカカがジンへと応援の声を掛けている。そこに一つの影が現れた。
「フフフ、レイチェル様があのような小娘に負けるはずがございません」
「あ、さっきの……」
「申し遅れました。私、レイチェル様の執事を勤めておりますヴァルケンハイン=R=ヘルシングと申します。以後、お見知り置きを」
ヴァルケンハインはこっちを向いて丁寧に自己紹介をした。レイチェルが同一人物だと言うならこのヴァルケンハインも同一人物なのだろうとラグナは考えていた。
サヤはヴァルケンハインの言葉が気に入らなかったのか、頬を膨らませて彼に反論をする。
「ジン姉は負けないもん! ジン姉は強いんだよ!ほら、ラグ姉も!」
「え? お、俺か? そうだな……ジンは腕が立つからな。簡単に負ける奴じゃねえよ」
ラグナはレイチェルの強さを身をもって知っているのでジンに勝ち目は薄いというのがラグナの予想だ。しかしそのまま言ってしまうとサヤが泣く恐れがあるので当たり障りのない答えをした。
サヤのジンへの信頼を感じ取ってか、ヴァルケンハインはまた丁寧におじぎをした。
「これは失礼。執事である身でしてどうもレイチェル様へ肩を入れてしまう癖があるようで」
「皆! バトルが始まるよ!」
タオカカの言葉で全員がモニターに向き直る。そこで丁度ゴングが鳴り出した。
カァン!
「はああっ!」
開始と同時にジンがレイチェルへと素早く接近する。しかしレイチェルは余裕の表情だ、避ける素振りを見せない。
「動きは悪くないわ。でも……」
ガキィン!
「なっ……!?」
ジンの攻撃が受け止められていた。ギィが魔方陣を展開し、ジンの一太刀を防いでいたのだ。
「姫様には指一本触れさせないッスよ!」
「くっ……!」
ジンは距離を取ろうとするが、
「あらぁタダじゃ帰さないわよぉ」
「ガハァっ……!?」
ナゴの豪腕がジンへと襲いかかった。ナゴはその大柄と軟体さを活かし、様々な形態に変化できるのだ。
「ジン兄!」
「ジンのバリアジャケットはダメージを軽減しにくい……。これは一気に食らったな……」
「流石レイチェル様、素晴らしいカウンターです」
「……! 氷の人倒れてない!」
ナゴの豪腕を脇腹に受けたジンだが、とっさにそこへ分厚い氷を生成していたことでダウンを逃れていた。
「いやぁん冷たい!」
「舐めるなぁ!!」
反撃と言わんばかりにジンが動く。
「そんな分厚い氷を抱えていては次の攻撃は読めてよ」
レイチェルはギィの防御を使うことなく左へ避ける。しかし、
「ギャッ!?」
「……っ!? ギィ!?」
ナゴが驚きの声を上げる。レイチェルの横にいたギィが突然凍りつき、そのまま地面へと墜落したのだ。
「防御と同時にお前の盾も封じさせてもらったぞ。これで攻撃は届くようになる」
「ジンのやつ、一瞬であんなことをするんなんて……」
「一切の迷いが無い行動と判断力。あの娘の能力を見抜けなかったとはこのヴァルケンハイン、少し老いてしまったようで」
「……瞬時にそんな行動をとれるなんてホント、素晴らしいわね。私も少し本気を出そうかしら……」
そう言うとレイチェルは空中に浮遊し初め、彼女を中心に風が吹き荒れた。突然の突風にジンは吹き飛ばされ、レイチェルとの距離を空けられてしまった。
「あれは!」
「あれはレイチェル様のパーソナルカード、自由自在に風を巻き起こす『シルフィード』でございます」
「こんなもの……向こうが接近するのを待てば……!」
「ふふふ、いつまで待っていられるかしら……」
レイチェルの周辺に幾つもの魔方陣が展開された。その中から複数の顔が彫られたカボチャが現れる。
「さあ行きなさい。私の可愛い僕」
カボチャは風に乗って素早くジンへと接近する。レイチェルの風は相手の接近を防ぐ効果と自分の武装のサポートを兼ねているのだ。
ジンはカボチャを横に避けるが、地面と接触したカボチャは爆発を起こし、ジンにダメージを与える。
「ぐっ……! このカボチャ、爆弾か!」
ジンがカボチャの解析をしている間にもレイチェルの魔法陣からは大量のカボチャが召喚される。
「レイチェル様は接近戦では無く相手との距離を取った戦いを得意としております。なのでフェンサータイプのジン殿には今は苦しい状況でしょう」
迫るカボチャを避けても爆発でジンへのダメージが蓄積され、凍らせるにも数が多くて捌き切れない。ジンの体力は限界へと達していた。
「もう終わりかしら? 口ほどにもないわね。退屈しのぎにもならないわ」
「クソッ……! クソォッ!」
「ジン! ヤケクソになるな! 冷静に対処しろ!」
「ユキアネサ! 力だ! もっと力を解放しろぉ! 目の前の全てを凍てつかせろ!」
強く握り絞められたユキアネサはジンの叫びに応えるように刀身を青く輝かせる。しかし、その光は綺麗とは言いがたく、荒れ狂う淀みの青のようであった。
「オオオォォォォォオオオオオォォォォォッッッ!!!!!」
ジンを囲うように吹雪が吹き荒み、迫り来るカボチャも、レイチェルが起こす風すらも掻き消してゆく。
「いかん! あの娘、デバイスに精神を喰われている! あのままでは身体に支障が出るぞ!」
「ジン!」
「ラグ姉!?」
ラグナは筐体に駆け寄りジンを出そうとするが、扉は頑丈に閉まっており子供の力では到底開けることは叶わない。
「クソッ! だったら!」
ラグナは空いている筐体に入り、リライズしてバーチャルフィールドへ浸入するとジンを囲む吹雪へと近づく。
「ジン! 今すぐ止めろ! ユキアネサの力に呑まれるな!」
吹雪の中のジンへと叫ぶが、声を掻き消されて届くはずがない。通信魔法を試みるがノイズが走るだけだった。
「こうなったら、『ブレイブルー』きど……」
「やめなさいラグナ。無理に大きな力でこの吹雪を攻撃したら中にいる彼女ごとやられるわよ」
レイチェルが猛吹雪の中であることも関係なしに、ラグナを止めて優雅に地面へと着地する。
『ブレイブルー』の起動を止められたラグナは彼女に向かって叫ぶ。
「ウサギ! これはどいういうことだ! この世界は『向こう』の事象とは関係ないんじゃないのか!」
「そうね、これは間違いなく『ユキアネサ』の力に支配されたジンの事象。確かに『この世界』のユキアネサは何の力も無いただのデバイスのはずだったわ」
「はずだった……?」
「原因は貴方よラグナ。『向こう』の事象の因子を残した貴方がここに来たことでこの世界にも多少の影響が出ているの」
「俺が……原因……?」
突きつけられた事実にラグナは絶望した。自分がここに来たせいで向こうの世界を知らないジンを苦しめているという現状はラグナに辛く思い重圧を感じさせた。
しかし、レイチェルはショックを受けて呆然とするラグナに言葉を投げ掛ける。
「ラグナ、確かに私は貴方を『原因』と言った。しかしそれは『傍観者』になっていいという理由ではないわ。この事実を受けられるなら今よりも強くなりなさい。自分で起こす不幸に勝てるぐらいに」
「…………」
「今の貴方は弱いわ。だから今は力を貸してあげる」
レイチェルはラグナを通りすぎて吹雪の目の前に立った。そして、レイチェルのパーソナルカードである風の能力『シルフィード』を発動させる。
すると、猛烈な勢いだった吹雪はたちまち力を弱め、十秒も経たない内に吹雪は収まり、吹雪が起きていた場所の真ん中ではジンが気を失って倒れていた。
さっきの戦いでレイチェルの風は一度消されたが、あれは本気ではなかったのだ。
「レイチェルさん凄い……。あれが、ショップチャンピオンの力なんだね……」
「うん……私もあんな風に強くなりたい……!」
レイチェルの力に魅せられ、彼女に近づく為より一層の力を身に付けることを決意する2人の少女。そして、内に一つの決意を固める少女。レイチェルはそれらを見て静かに微笑むのであった。
*
「うぅん……。こ、ここは……」
「ジン! 起きたか!」
「ジン姉!」
「氷の人!」
「ねーさん、みんな……」
ベットの上で目覚めたジンは横を向いて、心配そうな顔でそばにいたラグナ、サヤ、タオカカの存在に気づいた。
「ジン、身体の調子はどうだ」
「大丈夫だよねーさん。それにしてもここは……?」
「ジン姉、バトルの途中に倒れてヴァルケンハインさんに運ばれたの」
「それじゃあ、バトルは……」
「貴方の負けよ」
「……っ! レイチェル=アルカード……!」
「確か、貴方が負けたら言うことを聞く約束だったはずよね?」
「チッ…! 勝手にしろ!」
「じゃあ勝手にするわ。さて、最初に言った通り貴方達を鍛えるわ。覚悟はよろしいかしら?」
「うん! レイチェルさんみたいに強くなりたい!」
「にゃっ! 私も!」
「ラグナ、貴方は?」
「……頼むレイチェル」
「あら、以外と素直でつまらないわね」
「四の五の言ってられねえ。俺は強くならなきゃいけない。テメェが言った通り、自分の不幸に打ち勝てるように」
「その意気よラグナ。さあ、特訓は再来週、夏休みが始まってからよ」
ストックしていた3話目まで出しました。ここからは投稿がしばらく先になってしまうので待っていただけると幸いです。はたして飽きっぽい性格で最後まで書ききれるのか……。
友人の指摘を参考に加筆と修正を行いつつ一気に投稿しました。友人の指摘が無かったら1話目のアリサは男勝りの性格と口調のまま投稿するところでした(笑)
ブレイブルーイノセントの最新話を書きつつオリジナルで他の作品も投稿してみたいですね。R-18作品とか!