レイチェルの案により『ブレイブデュエル』の特訓をすることになったラグナ達。特訓の場所は離れた所のため、3人はまず義母であるセリカに外泊の許可を求める必要があった。
セリカは3人が『ブレイブデュエル』をやっていることは知っているのだが、それの特訓のために外泊するとなると許可をくれるのか怪しいので、キャンプと偽って交渉していた。レイチェルが『キャンプも予定している』と言ってはいたので、一応嘘はついていないことになるが。
「頼む母さん! 友達のキャンプに行かせてくれ!」
「お母さん、私からもお願い」
「お願い~」
「うーん、キャンプねえ……」
セリカは目を瞑りながら3人の言葉を吟味していた。セリカの目が開くまでの合間が、ラグナ達にとって時間の流れがいつもより長く感じられた。そしてついに、セリカが目を開けて言い放つ。
「……うん、行っていいわよ。 楽しんでらっしゃい」
「やった!」
「たーだーし、出発する日までに宿題は半分終わらせることと、キャンプ先でも宿題をすること。これが条件よ」
「ああ、絶対に宿題を終わらせる! ジン! サヤ! 早速やるぞ!」
ラグナ達は駆け足で2階へ上っていき、宿題を進め始めた。その姿を見てセリカはやれやれと溜息を吐く。セリカが施設から3人を引き取った当初は、いつも3人一緒で他の子ども達と絡むことが少なくて心配していたが、ブレイブデュエルを始めたことで友達ができて、今までとは違うような笑顔を見せるようになった。その点ではブレイブデュエルに感謝すべきなのだが、セリカは自分が蚊帳の外にいるような気分になって少し寂しいというのが今の悩みになっている。
「ホント、見てるこっちにも伝わってくるぐらい元気ね……。うん、もう一仕事頑張ろう!」
*
レイチェルの指定した日付までにラグナ達はセリカとの約束を無事に済ませることができた。ラグナは今の身体こそ小学生だが、頭脳は『向こうの世界』にいた時ののままなので、修業時代に獣兵衛から最低限教わっていた勉学が役に立ったのだ(読書感想文に苦戦したのは内緒である)。
そして特訓当日、集合場所に指定されている『ゲームの島イシャナ』に行くと、そこではラグナ達が以前戦った相手、ショップランカーのルナがレイチェルとの1対1の勝負を行っていた。戦況はルナが圧倒されており、レイチェルには傷一つ付いていない。
「くう……相変わらずこっちの攻撃を簡単に避けて……!」
「うふふ、偶然って恐ろしいわね」
「~~っ!! だったらこれならどうだ! 『ミラクルジャンヌ』!」
ルナがスキルを発動させると、彼女の武器である杖の先端が黄色い光を放つ。
「まずはこいつを喰らえ!」
ルナが杖から一度に大量のミサイルを発射させた。それだけでなく、ミサイル一つ一つの速度が上がっている。
それでもレイチェルは軽々とミサイルを避けてみせた。しかし、ミサイルの次には先程よりも多い数の爆弾が雨のごとく降り注いでいた。レイチェルの傍にいたギィが防御の魔法陣で上から落ちてくる爆弾を防ごうとするが、それと同時に杖を巨大なハンマーに変化させたルナがレイチェルに接近を仕掛けていた。
「あわわわわ! これじゃ防御が間に合わないッス!」
「レイチェル覚悟ぉ!!」
2方向からの攻撃、流石のレイチェルも駄目かと観戦していた観客達。しかしレイチェルの表情には焦りが一つも無かった。
「はあ…馬鹿ね」
レイチェルが軽く指を鳴らす。するとレイチェルとルナを押し出すかのような突風が突如として吹き荒れた。彼女のパーソナルデータである『シルフィード』の力だ。それにより、レイチェルは爆弾が落ちる位置からずれてそこにルナが入れ替わるように置かれる形になった。そこにギィを残しながら。
「な、何だとー!?」
「な、何でオイラまで~!?」
行動をずらされて体制を崩したルナに防御をする時間は無く、そのまま自分が降らせた無数の爆弾でギィごと自爆してしまった。
『勝者、レイチェル=アルカード!』
「まあ、こんなところかしらね」
「うぅ~……。ヒドイっすよ姫様~……」
「チャンピオン! チャンピオン! チャンピオン! チャンピオン!」
モニターで見ていた観客たちはレイチェルに歓声をあげており、途中から見始めたラグナ達は改めてレイチェルの強さを確認した。そして、彼女に特訓を付けてもらって自分たちがどれほど強くなるのか。その考えも同時に浮かんでいた。
「みんなー!」
そこに、ゲームセンターの奥から店長であるミツヨシとその親戚であるタオカカが駆け寄ってきた。黄色の可愛らしいリュックサックを片方の肩に引っかけており、準備ができている事が分かる。
「タオ、みんなとのとっくん楽しみにしてた! はやくいこ!」
「そうだな。俺も早く行きたいけどレイチェルがまだなんだ」
先ほどの試合会場を見てみると、試合は終わったいるのだが、観客が押し寄せて中々前に進めないのと、敗北したルナが再戦をしつこく要求しており、レイチェルの到着はもう少しかかりそうだった。
「いやあ、タオが皆とキャンプに行くほど仲良くなってるだなんて嬉しいなあ。タオのこと、よろしく頼んだよ」
「ああ、任せてくれ」
「揃ったようね」
続けてレイチェルもルナを軽くあしらって合流し、今回の合宿のメンバーがそろった。
「荷物は全部車の中に入れて頂戴。そしたらすぐに出発するわ」
「そういえば、この合宿ってどこに行くんだ?」
「行けば分かるわ。それまでは内緒」
ラグナの質問にレイチェルはそっけなく返し、ヴァルケンハインの待つ車の方へと向かっていった。
「上等だ、場所がどこだろうとやってやる!」
強くなることを誓ったラグナは怯むことなく、レイチェルの後を追いかけていった。
*
全員が車に乗り、出発してからしばらく経った。皆がそれぞれ別行動をとっていると、レイチェルは皆を自分に注目させて、合宿の内容について話し出した。
「今回は貴方たちの弱点を無くすための特訓よ」
「弱点だって? 今のわたしたちにそんなものはない」
ジンがレイチェルに反論する。ジンは前回の敗北からレイチェルが気に入らないらしく何かと突っかかっているが、レイチェルはそれすらも楽しんでいるようでまるで効果なしだ。
「この前のルナ達との戦い、見せてもらったわ。酷い試合ね」
「何だと! 最後には勝てたからいいじゃないか!」
「結果ばかり見ても何も得られはしないわ。ジン、貴方はチームでは氷の力を使ってテクニカルに前衛で戦うフェンサータイプの基本的な役割をしているわ。とっさの判断力も優れている。でも、そのテクニックが通じないパワータイプに攻められたら何もできない。事実、カルル=クローバーが操るニルヴァーナ相手には苦戦を強いられていた。それに、私との試合でもフェンサータイプが苦手の遠距離からの攻撃を捌ききれていないわ」
「くっ…!」
レイチェルの客観的な評価は的確で、ジンは一つも反論ができなかった。
「ジンだけでもこうして弱点が露呈しているわ。いくら貴方たちの特徴を鍛えたとしても、弱点を突かれたら意味をなさないわ。そのために今回の特訓を用意したの。強くなるというなら、まずは己の弱点を知ることね」
後の3人はは到着してから教えるわ。と、レイチェルは言って説明を終えた。それから数十分後、
「皆様、目的地に到着しました」
ヴァルケンハインが車を止めてこちらを向きながら言った。レイチェルはご苦労と一言だけ言って車を降り、ラグナたちもそれに続く。
到着した場所はレンガでできた塀と鉄製の門の前。その奥にはタイルが一本道に敷かれており、両側は木漏れ日の多い森になっている。タイルの一本道を進んでいくと道が広くなっていき、その先には巨大な豪邸があった。
玄関だけでも視界に入りきらない広さで、窓の数を数えるのも気が滅入るほどだ。
「レイチェルさんってお金持ちだとは思っていたけど……ふえ~」
あまりのスケールのデカさにサヤは言葉を失った。サヤだけではない。タオカカやジン、そしてレイチェルのことをよく知っているラグナも「ここまでやるか」と驚いていた。
「驚いている暇はないわよ。ここは荷物を置くだけ」
「え? 特訓ってここでやるんじゃないの?」
「特訓場所はここよりもずっと良いところよ。ついてきなさい」
玄関に荷物を置き、5人は再びヴァルケンハインの車に乗る。それから数分ほどで車が止まり、本当の目的地に到着した。
そこは白を基調とした建物で、デザインも近未来的なものになっている。建物の周辺には白衣を着た人間が何人も行き来しており、ここが何かしらの研究所であることが分かる。
「レイチェル、ここは?」
「ブレイブデュエルの総本山、『グランツ研究所』。ここが貴方達の特訓の場所よ」
「その通り。そして我々はこの研究所を代表するプレイヤーというわけだ」
突如としてラグナ達一行の前に3人の少女が現れた。尊大なオーラを醸す銀髪の少女、不敵な笑みを浮かべる青髪のツインテール少女、そして眼鏡をかけた物静かな少女。年はラグナ達とはそう差はないが、彼女達から感じ取れる雰囲気は普通の少女のものではなかった。
「申し遅れた、我はディアーチェ・K・クローディア。こっちは…」
「僕はレヴィ・ラッセルだよ!こっちはシュテルん!」
「シュテル・スタークスです。以後お見お知りおきを」
「俺はラグナ=A=マーキュリーだ」
「同じくジンだ」
「サヤ=A=マーキュリー、こっちこそよろしくね!」
「タオカカ!」
「彼女達はさっきも言っていた通りこの『グランツ研究所』を代表しているチームよ。実力も全国で上位に君臨しているわ」
「説明ご苦労蝙蝠。特訓をしたいならここの施設を好きに使え。グランツ研究所は強さを求めるものを拒まぬ」
「全国上位か……。そんな奴らに特訓をつけて貰えるなんて随分と豪華じゃねえか」
「む? 何だ貴様ら蝙蝠から話を聞いてないのか? 特訓の相手は我らではない」
「なっ…!? 違うのかよ! だったら誰が相手に……」
「それは私だ」
ラグナの台詞を遮るように1人の少女が姿を現した。
先端がネコの手の形をしたような長い袖のジャケットを羽織っており、桃色の髪を後ろで一つに纏めた頭からは猫耳が、お尻には同じ色の尻尾が生えていた。その少女はラグナも知っていた、第七機関技術部の……
「ココノエだ、私がお前達の特訓をサポートする」
前の投稿から大きく空けての投稿になってしまいました。今後も不定期にはなりますが完結まで持っていきたいです。
ブレイブルーは新作出まくりですがこの物語にはCSのキャラまでしか出ません(キャラ掴みにくいから)