聖徳伝説編一応ラストです。
題名は芥蔕(かいたい)と読み、゛胸のつかえ、わずかなもの゛という意味です。
界と神子が青娥から教えて貰った尸解仙になるための方法(勿論、界は尸解仙にはなるつもりない)。
それは、なかなか難しい内容だった。
まず、長い間朽ちることのない宝物
(例)宝剣、皿、鏡、壺、勾玉 、笏など。
に秘伝薬で文字を書き、自ら宝物を抱えたまま、自分が秘伝薬を服用する。そのまま呪文を唱え、目を閉じて息を90回のむ。目を開けると天から馬がやってきて、迎えにくる。天馬にまたがると、自らは死に、死体は朽ちることなき宝物に吸収される。自らの魂は天馬と共に隔離されるみたいだ。
そして世代を越えて再び尸解仙として、その宝物から復活するのである。
ただし、唐には道教を信仰するが誰も尸解仙になれたのかは分からない。だって挑戦したものは死んでいるのだから。復活するのも数千年と言われていてわからない。ただの迷信なのかもしれないという可能性もかなりあった。
豊聡耳神子はそれを恐れていた。
界がやって来てから、1年が過ぎた。この1年間、豊聡耳神子は推古天皇の摂政をしながら、蘇我馬子と協力し政治を進めていた。だが、裏では青娥から道教を教わり道教を極めていた。迷いを抱えながら。
物部布都は神子と共に道教を学んでいたが、神子は布都の決意を壊したくないという思いがあった。
対して布都は神子に内緒で物部氏と対立していた蘇我氏の中で一番年が近い
界はこの屋敷の料理長と神子の剣の修行相手をしていた。青娥と芳香は相変わらず呑気にしていた。
てゐは、もうここにはいない。
ちょうど2ヶ月前に神子のお使いで京(京都)へ行っていた。その帰りに竹林で道に迷いその時に、竹林の兎たちに助けて貰ったのだ。竹林の兎たちと、てゐはすぐに仲良くなり、てゐは兎たちと共に過ごすと言い出してきたのだった。それからてゐとお別れしたのだ。
それぞれ6人は違う道へと進んでいったのである。
ある日、青娥と芳香は、神子、布都、界の三人に言った。
「もう私から教える事は無いわ!私はそろそろ故郷に帰らないといけないの。あなたたちには、この秘伝薬を与えるから、あとは貴方たちの力で完成させるのよ。」
青娥は手元から秘伝薬を出すと、神子に渡した。
神子は秘伝薬を何も言わず薬を見つめていた。
その後、青娥と芳香は屋敷の外に出てから、
「また尸解仙になった貴方たちと、時を越えていつか会えるといいわね。さようなら。」
「死ぬなよ。死ぬのはいけないぞ!生き返るのだー!ばーいばーい」
彼女らは手を振りながら、去っていった。
3人になると一気にこれまでの和やかさから、閑散としたかんじになった。
その夜、界と神子は法隆寺の最上階にて星を見ていた。
「明日、俺もここを去ることにしたよ…………」
「そう…………貴方がいつか言ってくるとは思っていました。これでお別れですか…………」
「そうだな。お前らは、いつ眠りにつく予定なんだ?」
「…………」
「どうした?」
「私は……本当にこのような道を歩んで良かったのでしょうか……。私は実は尸解仙になるの……恐いんです。成功する可能性のわからないことを。」
「…………誰もが死ぬってことに恐怖を覚えるのが普通なんだよ。必ずや尸解仙になると信じないと何もはじまらない。」
「そうですよね。しかし私も人間です。迷いが生じることもあるでしょう?」
「……あぁ、もちろん。お前が弱い理由は迷いがあるからなんだ。俺はただひたすら迷わず人生を突き進んでいるんだ。」
「……それは、貴方が人間じゃない神の種族だからでしょう?」
「……いや……俺は昔はただの人間だった。俺は災害で一度死んでいるんだ。自分が復活したときにはすでに異人となっていたんだよ。尸解仙みたいに。」
「…………貴方は本当に面白い方ですね。一度死んでいるというのは本当に興味深い話です。……なぜでしょう、私は貴方を見ていると迷いが抜けていくような気がするんです………………しかし…………」
「恐怖が……やはりあるのか。それなら布都に最初にやってもらうといい。布都なら絶対成功させるはずだ。まぁ俺が教えたからな。だから安心してお前も眠りにつけるだろ?」
「確かに……それなら恐怖に打ち勝てそうな気がします。」
「それでこそ、神子だな。これで心置きなく旅立てるよ!」
「えぇ……また会ったら剣を交わらせたいです。この夜空の星のごとき七星剣で!」
「あぁもちろんだ。」
二人は互いを見て、静かに酒を交わしていた。神子は久しぶりの笑顔で界を見つめていた。
翌日、布都と神子に長き別れを告げた界は新たな旅へと出掛けたのだった。
次の物語は、輝夜編ではないです。見てからのお楽しみです。その前にサイドストーリーもありましたね。