さっきまでの和やかなムードから一転、場は一瞬で凍りついた。
なんの前触れもなく死という運命が彼女を襲った。
紫は目を開けたまま、動かない。心臓は止まっている。
「くそっ!なんか手はないのか…………」
頭をフル回転して考える。
そうして運命に逆らう一つの案がでてきた。
「なんとかこれで時間稼ぎになれ!」
界は自分の手を紫の首と心臓に置き、能力を解放する。
軸をいじり、時間操作を開始する。彼女の脳以外すべての体の部位を過去の体に戻そうとする。
これは界の調味料を作るやり方の応用だ。調味料は力を注ぎ、未来に時間操作をする。
だが今回は過去になる。さらに調味料じゃなく人間だ。難易度は跳ね上がるほど難しくなり、遡る年数も少ししか戻れない。
紫の体に能力を注ぐと、体は緑色に輝き、しばらくしてから光は消える。脈は戻ったみたいだが、脳に血が回ってなかったために意識がある程度戻らないが。
「はっ……はっ……はっ……なんとか……その場はしのいだみたいだな…………!」
うしろを振りかえると、膝をつき、ぐったりとした幽々子がそこにいた。
重症だったのはむしろ幽々子のほうだった。
「おい!幽々子!お前のせいじゃない。紫はまだ生きている。自分を陥れようとするな!」
「……………………」
幽々子は何も答えない。
「お前は悪くない。」
実際に界も頑張って能力を否定した。だが、明らかに幽々子の能力だということはわかる。だが認めたくなかった。
「……紫……は……あと3日後に…………死ぬ…………」
幽々子は紫の寿命を確認し、途方にくれたまま呟いた。
そう……界の応急処置は、頑張った結果、3日前の体まで戻した。いや、これが限界だった。
仮に幽々子が今後近くにいなくても、3日後には確実に死が訪れる。タイムリミットが早すぎる。
近くにいたら、より早くなってしまうだろう。
幽々子はその夜は紫と隔離しなければならなかった。
幽々子は自分の部屋にいた。布団にはいり、自分の責任だと、自分をどんどん追い詰めていった。
対して界は紫の側で、ただ意識が回復するのを見守っていた。
タイムリミットは3日もない。
最悪3日後に時間操作でさらに過去に戻す。これを続けるのはかなりのリスクがいる。
界には打つ手がなかった。
そうして時は瞬く間に過ぎていった。
タイムリミット残りわずかとなったその日の朝。
紫はまだ目が覚めない。
界は時間操作をする準備をしていた。二回目は多分3日前にはできない。もっと短くなるだろう。
界は外にでた。西行寺家の庭には何本かの桜の木がうえられている。既に満開になり、美しさを醸し出している。
それを、暖かい春風が桜の木をそよいでいて、より一層桜の美しさを引き立てている。
そんな中、幽々子の父親が焦りながら走ってきた。
「幽々子がいないんだ!たぶん朝早くにどこかに出ていったんだと思う。文を書いたから渡そうとしたんだがいなかったんだ。」
「なんだって!」
界は嫌な予感がした。
界は父親の持っている文を奪い取り、全力で屋敷を飛び出し、走り出していった。