東方紫瑛界   作:澪海

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今回は完結編です。

追記

やっと終わりました。遅れてすいません。一応さらっと読んだので大丈夫かなぁ?と思いますが、今回は9000字ですね。情景とバトルを増やしたのでまだ分かりやすくなったかなと思います。




第4話 -永夜への報い-

 

翌日……

 

界は急いで朝食をとり、永琳に紹介された月夜見様に会いに行くことにした。月夜見様は日々多忙で午前しか、時間がないとのことだった。

 

界は永琳に教えてもらった地図を頼りに、街を歩いていく。よく見ると街は東京の新宿のビルと京都の歴史的な家屋が混在したような不思議な街だった。なのに人は新宿よりもずっと少なく、なんだか変な感じだった。もっと面白く言ってしまえば銀魂の世界みたいな感じに捕らえても良いのではないか。

 

 

まぁそれは置いといて、月夜見様の家に到着した界は、家のでかさに驚いた。永琳の家よりはるかにでかい。そして、入り口の門にはガードマンらしき警備員。それもめちゃくちゃ顔が怖い。

だが界は恐る恐る警備員に話しかける。そうしないと中には入れない。

 

 

「アポはとってあります。古神界と申します。月夜見様とお会いしたいのですが。」

 

「ほぉ!これが噂の少年か…………。月夜見様からは話しは聞いている。入りたまえ。」

 

「ありがとうございます」

 

 

界は緊張しながらなんとか、中に入れて少しホッとした。門の中は、The 日本庭園 と言わんばかりの風景で、木と木の間に石畳の道が敷かれていて、なんとも優雅な光景だった。

 

その中を進んでいくと、奥に中戸があった。界はノックして扉をそっと開けた。すると、入り口に30人ほどのメイドではなく家政婦ではなくお手伝いさん?が玄関先でお辞儀をしている。

 

そして、お手伝いさんの後ろから、小さな足音が「トン……トン……」と聞こえると、お手伝いさんらは左右に退き、後ろから来た女性に頭を下げている。

 

界の目の前には、薄茶色の髪の美しい女性が立っていた。

青い着物に、20代くらいの大人のお姉さんのような感じにみえた。界はあまりのオーラに一瞬たじろいでしまった。

女性は口元を扇子で隠すと、ニコッとしながら自己紹介をした。

 

 

「わたくしが、この国のこの街のリーダーの月夜見でございます。」

 

「お……お目にかかれて光栄です。古神 界と申します。」

 

 

界はギリギリな敬語を使い緊張の中、なんとか自己紹介をすることができた。それを見て、月夜見は何も言わず、ニコニコしながらさらに話し始めた。

 

 

「永琳から聞いているとおりの子ですわね。なるほど、永琳が気に入った理由がよくわかりますわ!ここではなんですし、お上がりくださいな。」

 

「それでは…………お邪魔します。」

 

 

界は靴を脱ぐと、お手伝いさんがスッと界の靴を持ち、「後は任せてください」と笑顔で言った。

(なっ!?可愛い)

よく見るとお手伝いさんはみんな美少女で、それも着物が似合ってる。だがここは、月夜見様を待たせてはいけないと界はお辞儀をして、月夜見様についていく。

 

 

そして、応接間のような場所に入ると、互いに座布団に座った。界は特に話す内容がでてこなかったために、挨拶から入る。

 

 

「今日は忙しい中、時間を割いていただいてありがとうございます。」

 

「あら、いいのよ。永琳の認めた子だから。あと敬語はやめてくれないかしら。もっとリラックスして、本来の貴方を見せてほしいわ。」

 

 

界は意外に思い、一度深呼吸をした。それを見て、月夜見はクスクス笑っている。そして、笑いを止め、月夜見は単刀直入に言った。

 

 

「そういえば、あなた能力を持っているそうね。永琳いわく妖怪を楽々倒せるとか。」

 

「う~ん……楽々ではないですが、能力はあります。『あらゆるものを創造する程度の能力』です。」

 

「えぇ。この世にはかなり少ないけど能力を持つ者がいるのよ。今は貴方を含めて8人だけしか分かってないわ。」

 

 

界はそれを聞いて少し考えた。界、永琳、輝夜その他に誰がいるのかと。そもそも能力を作ったのは誰なんだろうかと。

 

 

「ちなみに私は《夜を支配する程度の能力》を持っています。妖怪の力が最大になるのは夜ですが、夜を支配する私の前では妖怪は手足をだせないのです。」

 

「夜を……支配……」

 

 

これで四人目。界は夜を支配するという意味を知り、改めて月夜見様のすごさを知った気がした。これでは、まず勝てそうにもない。能力の規模の格が違いすぎる。そう思った。

 

 

「あなたの能力は応用力さえあれば私を越えられる可能性を秘めてるかもしれない。だけど自分の力を弱いと感じ、認めてないままだと強くなれないの。自分を見つめ直し、コツコツ修行すれば報いが帰ってくるはずよ。あなたが強くなったら、いつか手合わせしましょ。」

 

「わっ分かりました。頑張ってみます。」

 

 

界は月夜見と約束を交わした。その他にも、この街の上位の家柄について教えてもらった末、月夜見の屋敷を去った。

 

 

界は翌日から毎日、街の回りを走り、筋トレをし、霊力の使い方を試行錯誤し、一週間で弾幕を出すことに成功した。街の人からも注目され、噂となり、界のことはすぐに街に広がっていった。

 

逆に妖力は街人にばれないよう、森で使い方を練習し、弾幕もだせるようになった。そして、努力の末、空も飛べるようになった。

 

だが界はさらなる強さを求め、妖力と霊力を混ぜた新たな必殺技を考え、森の中で草薙の剣を振っていたのだった。

 

 

修行を続けて一週間と数日たったある日、街の中を走っていると、見た目小学生くらいの姉妹が俺に近寄ってきた。姉の方は帽子をかぶっていて顔が上から見えない。妹の方はポニーテールの薄紫の髪をしている。

片方のポニーテールの女の子は界に勇気を振り絞り話しかけた。

 

 

「お兄さん!毎日走ってるけど、何で走ってるの?」

 

 

なんか、しっかりして、はきはき言える子だなと思いながら返事をする。

 

 

「俺か?月夜見様とお手合わせするから、そのために修行してるんだよ。」

 

「へぇ~すごく強いんだね。お姉ちゃんなんて全然修行しないから見習ってほしいのよ!」

 

 

ポニーテールの女の子は、姉の帽子を被った女の子の愚痴を言い出した。すると、さっきまで静かだった子がいきなり叫びだした。

 

 

「依姫!わたしは修行なんてサボってないわ!」

 

 

するとなぜか姉妹口喧嘩が始まってしまった。私の方が強いだの、勉強は私の方がいいだの、かけっこは速いだの、私のおやつ食べただろと、もう関係ない話になってきた。

界はため息をつくと口喧嘩を止めに入った。

 

 

「やめやめ、喧嘩はよくない。姉妹は仲良くしないとダメだろ。依姫ちゃんと豊姫ちゃんは後々偉くなるんだから、こんなことしてたら笑われるぞ。じゃあまたな。」

 

 

界は綿月依姫と豊姫の二人を残して走りさった。界の背中を見て、なぜ名前を知っているのか疑問に思う二人なのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、街の外の森の奥の奥。電気のない、火のない真っ暗な空間にそれはいた。

 

 

「もうすぐだ。月夜見め!最高の兵器と勢力で次こそは必ずお前を殺すっ!!!」

 

 

狂気と殺気に満ち溢れた影が森の中で蠢いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さらに数日後【発射当日】

 

都街ではついに50機のロケットが完成した。そして、月への遷都計画が街人へと公表された。発射は今夜。それまでにすべての準備を早急に済ませ、ロケットに乗り込めとのことだった。ロケット作りを担当したのは、ナンバー5の家柄の稀神 稚彦(きしん わかひこ)だ。神級の高い知能を持ち、能力は持ってなくとも、恐るべき才能を持つ人間、いや神といえる逸材だ。

 

あくまで界は永琳に聞いただけで、面識はない。だが、上位の人たちは飛び抜けた才能を持っているのはとてもよくわかった。

 

 

そして、夕方になり、多くの人がロケットに乗り込んでいた。そんな中、永琳と界は屋敷にいた。

 

 

「じゃあ界!荷造りは済んだわね。私たちは最後のロケットに乗るわ。それまでは、月夜見様と見回りをするの。」

 

永琳は自分の荷物を持ちながら言った。すでに輝夜はお手伝いさんによってロケットまで運ばれている。そして、屋敷には二人だけしかいない。

 

 

「そういえば、なんで月に行かないといけないのか、何か聞いてないのか?」

 

 

界はずっと疑問に思ってたことを言った。月夜見から直接聞くのを忘れていた。だがこの二週間で永琳は何度も会議をしているし、情報を聞いてるはずだと思った。

すると永琳は淡々と教えてくれた。

 

 

「それは、地球には我々の他に妖怪などの穢れの生物がたくさんいるの。最近彼らは異様な増殖と強化を続けているわ。だから、穢れから逃れるために、何もいない月に移動するの。それに……この街はもう限界に近いのよ。」

 

「限界?」

 

「えぇ。防御壁は穢れを反射する機能があるの。だけど二週間前に亀裂が入ったのを月夜見様が気づいたの。だから、もう妖怪が入ってきてもおかしくないの。」

 

「そうなのか……」

 

 

界はそれを聞きようやく自分の立場と直面した。

界はただ俯いたまま、永琳の後をついて、誰もいないゴーストタウンを歩いていた。

 

『俺は永琳たちと本当に月に行ってもいいのだろうか?』 という、本当の疑問に胸を刈られる。半妖でありとも妖怪だ。もしばれたら処刑されるのではないかと。だが、みんなは自分を大事な仲間だと思ってくれている。裏切りたくない、そんな感情がじわじわとあふれるのを必死に堪えていた。たが、裏切らなければならないのは運命なのかもしれない。なぜ自分はあんな軽はずみで半妖を選んだのか。それが今、やっと後悔の念という形で身体を蝕んでいく。

 

 

そんなこととは関係なくロケット一号機は夜の6時に発射する。ロケットは5機あり30分ごとに違う場所で打ち上げる予定だ。何故なら月が地上から見えないと、場所がわからないからだ。だが夜になると妖怪が活発になるから特に注意が大事だった。

 

 

街の中心街では月夜見、界、永琳の三人は他のロケットの指揮にあたっていた。そして、やっと三号機までのロケットを無事発射することができた。

 

まもなく7時半。

 

三人は四号機発射台まで移動し、発射を見守っていた。

 

すると、 轟! と爆音がし、ロケットは熱風を吹き出しながら、上昇していく。

 

輝夜、綿月姉妹らが乗った四号機は無事発射された。そして、ロケットがいつの間にか星のように小さくなると、三人は最後のロケット発射台に向かって歩き始めた。

 

 

「残りは私たちと、軍部のリーダーたちだけだわ。軍部はもう乗ってるみたいだから私たちが最後ね。」

 

 

月夜見は真剣な眼差しで、星空を見上げながら言った。月夜見は地球との別れを少し惜しんでいたようだった。

それを見て界はなんとも言えない気持ちになる。自らの運命は自分で切り開く。それが運命なのだと。だが、運命は決まっている中でしか、切り開くことができない。どちらをとってもbadとなる運命は刻々と近づいていた。界はもう限界だった。それなら早いところ決着をつけるべきだと。

 

そんな中、永琳は静かに言った。

 

 

「それでは私たちも急ぎましょ!できるだけ早いほうがいいでしょう。」

 

 

そして、月夜見と永琳は走り出す。だが、界はその場に立ち止まっていた。

 

 

「あのさ……俺……」

 

 

界は静かに言った。震えた声、痺れた声、泣きそうな声。すべてが混沌とした声は前の二人を立ち止まらせた。二人は静かに振り返ると、顔を俯かせたまま、下を向いている界の姿があった。

 

 

「俺は……俺は半……」

 

ズドーン!

 

 

界が何かを言おうとした途端、界の真後ろから大きな爆発音が鳴り響いた。すぐ近くの高い防御壁の辺りから煙が上がっていた。

 

 

「……ッ! まさか、防御壁が崩された!こんな時にッ!」

 

 

月夜見は叫ぶと、屋敷の屋根にジャンプし、遠くを見渡していた。

 

 

「永琳、界……今はロケットに向かうより妖怪を倒すのが先です。妖怪にロケットを壊されてしまう前に全部倒しましょう!」

 

 

月夜見の呼び掛けに、界は黙ったままだった。それに対し、屋根の上で見張っていた月夜見は「来たぞッ!」と叫ぶと、界のすぐ近くに着地した。

 

すると、大通りの奥から数々の妖怪が走って突進してきた。動物のような形の妖怪である。

 

 

「仕方ない。月光レーザーで殲滅するか……」

 

 

満月の空に右手を上げ、手のひらを大きく開ける。すると、手のひらに白く輝く光の塊がだんだんできていく。月光のパワーがだんだん手に吸収されていく。そしてそれがだんだん大きさを増して、きれいな白い球体になっていった。そう、電球のように。

 

月夜見は光輝く玉を顔の前まで移動させ、手を前に伸ばし、左手で手首を支える。

 

 

「はぁぁッ!?」

 

 

白く輝く力の球体から力が押し出され、光線が一直線に妖怪どもを消し飛ばしていく。轟!という衝撃波が周りの家の屋根をもぎ取り、遠くへと吹き飛ばしていった。言ってしまえばマスタースパークみたいなビーム。それが通った後には妖怪の見るも無惨な死骸が転がっているだけだった。

 

 

「まぁこんなものかし……ッ!」

 

 

「月夜見様!私も手伝います。」

 

 

月夜見は一撃で100体ほどの妖怪を抹殺した。だが、次から次へと湧いてくる。

そんな中、永琳は弓と矢を取り出すと、霊力を使い、矢を作成する。そして、天上に向かって矢を思いっきり射ぬくと、矢は雲の上空まで飛んで、重力によって下へと落下し力が加速する。そこで焼夷弾のごとく一つの霊力矢から小さな霊力矢へと分裂していく。その一つ一つの霊力矢が走って突進してくる妖怪たちの背中から腹へ、グサリと刺さり、倒れ伏していく。まるで流星群のような光景だった。

 

 

界は道の真ん中でこの光景を見ていた。界にとっては、その二人の力は圧倒的だった。もしここで、自分が穢れた存在だとバレたら、あんな攻撃を持つ二人と敵対しなくてはいけない。そんなの絶対敵わない。

界はただ自分の無力さに動くことができなかった。そして、自分が何をすべきなのかもわからなくなった。

 

 

そんな中、月夜見と永琳は何回もビームと矢を打ちまくっていた。もはや倒した妖怪は5000体以上。だが妖怪はまだまだ防御壁の外から湧いてくる。

 

 

「はぁ……はぁ……ッ!もう雑魚ばっかり。キリがない。」

 

 

少し霊力を使いすぎ疲れた表情をする月夜見と永琳の前には、次から次へと妖怪が出てくる。

永琳は大通りを見ると、そこで固まって動かない界を目撃した。そこへ、次々に妖怪たちがやってくる。

 

 

「界……逃げなさい!」

 

 

永琳の呼び掛けに界は動こうとしない。いや聞こえていない。界はすでに放心状態に陥っていた。だがすぐ近くまで妖怪が迫ってきている。

 

 

「月夜見様!界が……!」

 

 

永琳が月夜見に叫ぶと、月夜見は界の元へ移動する。月夜見は界の様子を察知すると、団子のように真ん中に界を挟んで、前と後に永琳と月夜見が立ち、武器を構えている。

 

 

彼ら三人の周りには妖怪が群がり円のように囲み始めていた。

 

 

「まずいわ……。界がこうなってる以上、界を守りながら戦うしかないわね。でもなぜ襲ってこないのかしら……」

 

 

月夜見は永琳に言った。するとその時、周りの低妖怪がいきなり横に後ずさりし始め、その中を黒い丸い球体がふわふわとやってきた。その球体からは紫の煙のような闇がモクモクと周りを漂っている。

 

 

「ワシはこの妖怪のリーダー空亡(そらなき)。ワシは魑魅魍魎の代表として、月夜見、貴様をなんとしてでも殺さなくてはならない。あの蓬莱山の夫婦みたいに貴様に制裁を与えてやる。」

 

 

空亡の後ろからは牛鬼、風狸、ヤマタノオロチ、などの強力な大妖怪が這い出てきた。だが、月夜見はそれを見ても驚かない。月夜見は手を前に出し構える。

 

 

「じゃあ、お前らごと倒すのみ。はぁぁッ!」

 

 

月夜見は問答無用で三体の大妖怪と空亡に向かって、月光レーザーを発射する。轟!と真っ白なレーザーは大妖怪ごとすべてを消失させ、爆発が起きた。それを見て月夜見はため息をつきながら言った。

 

 

「ふぅ……!ボスがやられれば雑魚も撤退は余儀ないはずよ。」

 

 

月夜見はすべて終わったと思った。だが、煙の中から急にとてつもない妖力があふれでていた。「まさかッ!」と月夜見は警戒し、煙がなくなると中から空亡が無傷で宙に浮いていた。

 

 

「残念ながら不意打ちは通用しない。次はこちらの番だ。覚悟しろ!」

 

 

そして、体から妖力が溢れ、空を紫の雲で覆いつくす。そして、三人の周りにも紫の雲が覆い始めた。すると、空亡は不気味な笑い声でこう言った。

 

 

「これは有毒胞子の煙だ。妖怪には無毒無害だが妖怪以外が吸うまたは肌に触れた瞬間、体のすべてを麻痺させる恐ろしい兵器だ!さらに、お前の使う月光を遮らせてもらった。」

 

「なっ!?」

 

 

月夜見が気づいたときにはすでに遅く、動こうとしたが、体が完全に動かない。

永琳と月夜見は歯ぎしりをしながら呟いた。

 

 

「くそっ!私の能力が使えない…………」

 

「私の……能力も無理だ……」

 

 

二人は動こうとすると、バランスを崩し、地面に倒れてしまった。体を動かすと二人は絶体絶命だった。界が無力な中、守れなかったことを悔やんで。

 

 

「はははは。お前らを即死なんてさせないぜ!お前らの霊力を少しずつ吸いとッてやるからなぁ!」

 

 

すると、倒れてる月夜見、永琳、そして放心状態の界から霊力が溢れでて具現化し、白いもやもやとした物体となり、それが空亡の体へと吸い込まれていく。

 

 

 

 

そして、放心状態の界も力を失い、地面へと倒れてしまった。ただ界の意識はずっと真っ暗な世界にいた。

 

 

(俺は無力だ。何もできない。俺は弱虫だ。臆病だ。月夜見様や永琳が戦ってくれてるはずなのに、ただ見ていることしかできない俺っていったい何なんだろう。)

 

(俺は古神 界だ。半妖だ。そうだった、俺は人間であり妖怪でもあるんだったな。だが、妖怪と人間は共存できない。それは証明された。人間は妖怪の穢れを嫌い、妖怪から逃げてきた。いや、妖怪を殺し、敵対していたんだろう。)

 

(じゃあ俺は妖怪と人間という立場をどう理解しないといけないんだろうか?)

 

 

 

 

 

その時パッと目が覚め現実に帰って来た。再び界の目に色気が戻った。だがすでに遅かった。空は紫の雲に覆われ、周りも紫の煙で漂っている。さらに体の霊力まで吸いとられているのを自覚した。

 

 

「ここは……」

 

 

界は目の前を見ると月夜見が地面に倒れているのに気づいた。そして、首を後ろに向けると同じく永琳倒れている。だが、二人とも顔が生きていなかった。絶望の悲しみに打ち拉がれてしまっていた。

 

 

「永琳!月夜見様!」

 

「ふふっ!やっと正気になったようね。」

 

 

月夜見は薄ら笑いをしながら、界に呟いた。

 

 

「だけどもう手遅れ。霊力や神力はあるけど能力ごと動かせないんじゃ、あとは妖怪に殺されるだけかしらね……」

 

 

後ろから永琳の声も聞こえる。

 

 

「そうね……妖怪を侮った私たちが馬鹿だったわね。」

 

 

永琳の力亡き言葉が自分の胸を強く打ち付ける。

 

 

(なんでだよ!違う。こんな永琳と月夜見様の姿なんて見たくない……。俺は……俺は……)

 

界は泣きそうなのを必死に堪えていた。そして永琳は最後に一言言った。

 

 

「界の声が最後に聞けて良かったわ。私たちより界が先に死んでほしくないもの……」

 

「えっ……」

 

 

永琳の言った言葉で界の頭が真っ白になった。

 

(まさか俺を守りながら戦ってくれてたのか……。二人とも俺を信用して……)

 

すると界の目からはいつの間にか涙が溢れだしていた。その涙は地面へと流れ地面がシミとなっていく。

 

 

「さて、地球最後の告白は終わったかね?まぁもう待たないがな。さぁてワシの炎に焼かれて消滅しろぉ!」

 

 

空亡は叫ぶと、倒れた三人の上空へ移動し、自身の球体から出る炎の渦を目下に吐き出した。炎は重力によって三人の上に流れていった。

 

そして地面では、上空から降り注がれる炎の塊を見ながら永琳は呟く。

 

 

「ごめんね……」

 

 

そして永琳と月夜見は目を瞑った。

炎は容赦なく界、月夜見、永琳の三人のを飲み込んでいった。

 

 

だが炎に包まれたなか、ただ一人男の叫び声がする。

四方八方炎の中、覚悟を決めたように叫ぶ

 

 

「まだ終わらない!死なせるものか!」

 

 

それを聞き、永琳と月夜見が目を微かに開けると、そこには立ち上がった界の姿があった。

 

 

「貴方、その妖力(ちから)は……」

 

 

月夜見は薄れた目で界の姿を見据えて呟いた。

界は妖力を使い自らを完全な妖怪に近づかせ、麻痺を解き、能力で小さな結界を張っていた。

 

 

「ごめん……裏切って……」

 

 

界は小さく呟き謝る。界の声は震えていた。界の顔はうつむいていて見えない。そして界は「水流……」と小さく呟く。

すると空亡のさらに上から大量の水流が流れ落ち、炎を綺麗に消し飛ばす。それと同時に結界を解除する。

 

 

「今まで仲良くしてくれてありがとう……。元気でな……。」

 

「待って……」

 

 

後ろから永琳の声が聞こえたが、界は背を向けたまま上空を見ると、腰にさした鞘から刀をゆっくり抜いた。刀は銀色の光を放ち、紫の雲を吹き飛ばした。その衝撃波は周りを一瞬静寂とさせた。

 

そして界は静かに高くジャンプする。満月を背に最強の一撃を与える。

 

 

「天生『光芒一閃』」

 

 

界の振るった草薙の剣に反射した光の軌道すべてが、刃そのものとなり、空亡の球体にすぱすぱと貫通し切り刻む。そして最後に本体の剣を上から振り下げると同時に、閃光がすごい勢いで周りを包んでいく。

 

 

あまりの光量、そして衝撃波で月夜見、永琳は飛ばされていく。そして二人の意識は一瞬にして剥ぎ取られた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次に目が覚めたのはいつだったか、気がつくとそこは機械の空間だった。

 

 

「ここは……」

 

 

永琳は朦朧とするなか呟いた。

 

 

「ここはロケットの中よ。」

 

 

隣から口を挟んだのは、あの月夜見だった。

月夜見と永琳は発射台のすぐ近くまで飛ばされ、救助されたのだった。すでに、ロケットは宇宙空間を飛行しており、まどの外は真っ暗だ。

 

 

「そぅ…………」

 

 

永琳は悲しげに答えた。それを見て、月夜見も黙り混んでしまう。

 

永琳と月夜見の考えていることは同じだった。

 

これが二度と会えない最後の別れとなってしまった悲しみ。そして、最後まで穢れから守ってくれたヒーローであったことへの感謝。二つが最後に淡々と心の中に残っていった。

 

二人は忘れない。彼のことを。そう誓って二人は月へと去っていった。永夜の報いへと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、あれから2億年が過ぎた。

 

 

古神 界はただ一人孤独に森の中を歩いていた。2億年前に生きていた妖怪はすべて消え、今はその妖怪の孫の孫の孫の……と数えきれないくらいの世代が今を生きている。

 

ただ妖怪の寿命は数千年~数百万年と言われている。だが界は違う。不死であるため病気にならないし、ずっと生きてきた。会うすべての妖怪を斬り、修行しながら毎日を過ごしている。自炊生活も慣れ、今では★★★レストラン級の料理テクニックを持つようにもなった。

 

界は未だ文明もない世界の大地を歩き続ける。

 

あれから永琳と月夜見たちはどうなったのかは分からない。

だが、あの日から一年後に街に帰ると、街は廃墟と化していた。彼女たちの姿も見当たらず、住んでいた形跡さえもなくなりかけていた。彼女たちは俺を置いて月に去って行ったのだろう。

 

いつかまた会える。これは絶対だ。だからこの世界を生き延びてやろうと決意した。

 

 

 

 

 




古代月人編完結しました。

ご参考まで「永夜への報い~imperishable night~」は4面道中曲です。


月夜見(つくよみ)
通称:月読命(つくよみのみこと)
種族: 神、月人
能力:夜を支配する程度の能力、
後に、月を支配する程度の能力 も追加

古代月人のリーダーであり人と神の力を持つ。姉の天照大御神に対をなして対抗できる力を持っている。月と地上をつなげる力を持つが、当時は神力が弱く大量の月人を移動できなかったためにロケットを使用した。夜の神、月の神である。

元ネタは日本神話にでてくる月読命(つくよみのみこと)で男性であるが、東方設定では女性。両親はイザナギ(夫)とイザナミ(妻)。イザナギが川で右目を洗ったときに生まれたとされる。





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