幼馴染の凛ちゃんがうざすぎる   作:nao.P

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その18 ファーストライブ その2

 

「あ」と俺は言った。

 

「あ」と西木野真姫が言った。

 

階段の上り口。

 

階段を上がった所の近くが自分達の教室ではあったが、しかしその階段から降りてきた女子生徒は花陽でも凛でもなく、クラスメイトである西木野真姫だった。

 

花陽と凛を探すことだけに気を取られていた俺は彼女が、西木野真姫がここを通ってくることなどすっかり頭の片隅から抜け落ちてしまっていた。

 

ふっと現れた彼女に、思わず心拍数が上がり俺の顔は赤くなった。

 

階段を一段一段正確に降りてきた彼女の振る舞いは、大人びていて今日も完璧だ、と思った。

 

俺の側で立ち止まると「どうしたの?」と彼女は訊いてきた。

 

完璧な西木野真姫と目が合った。

 

「え? い、いやなんでも……」

 

「なんでも?」と彼女は言って僅かに首を傾げ、さらに「顔、赤いみたいだけど?」と完璧な追い打ちをしかけてくる。

 

俺はすぐに「あ、いや」と言い「は、走ってきたから」と苦しい言い訳を展開した。

 

すると「何かあったの?」と彼女は普通に心配そうな顔をしてくれたので、良かったと思う反面悪いとも思った。

 

と、そんなことを考えている場合ではないことを思い出す。

 

「あ、あいつら探しに来たんだけど、見てない?」と訊く。

 

「星空さんと小泉さん?」

 

「うん、そう」

 

「あぁ、それなら少し前だけど、この階段じゃなくて向こうの通路へ歩いていくのを見たわ。でもなんて言うかアレは、星空さんが一方的に引っ張っていくような感じだったけど」

 

と彼女は、何だったのかしらという表情でしかし具体的に教えてくれた。

 

「やっぱりか……。あの、ありがとう」と俺は言った。

 

「本当仲良いのね」と彼女は言う。

 

「幼稚園からずっと幼馴染だったみたいだし、あの二人」

 

「貴方もでしょ」

 

「え?」

 

「三人楽しそうで、いいじゃない」

 

「俺は、別に……」

 

と言いかけて、迷う俺がいた。

 

「……ところで二人探していたんじゃないの?」

 

「あ。うん。そうだった。……あの、じゃあ」

 

と言うと彼女は「ええ」と返してくれた。

 

 

その時、彼女は一枚のプリント用紙を手に持っていることに気がついたが、中身は見えなかったので何か部活勧誘のチラシだろうか、と思った。

 

 

 

@@@

 

 

 

それから二人を見つけたのは、開演時間が差し迫る頃だった。

 

いまだに講堂へ行かずに体育館近くの廊下で仲睦まじくじゃれ合っている二人を見つけ、若干の笑みと溜め息をこぼしてしまった。

 

ただ既に時間も時間なこともあり

 

「お前ら、ライブ観に行かないのか?」

 

と声を掛けた。

 

花陽が振り返り慌てているのか「ナ、ナナオくんっ」と言った。

 

「ナナオくんて誰だよ」

 

「あれれ? なんでナオくんがいるんだにゃ!!」と凛が響く声で叫ぶ。

 

「忘れ物取りに……ってか何やってんだよ。今日ライブだろ」ともう一度訊く。

 

「ライブ?」と凛がようやく首を傾げる。

 

どうやら忘れているらしかった。

 

「ライブ? ライブって?」と凛が連呼してくるので「ライブはライブだ」と俺が言い、花陽が「ナ、ナオくん……」と意味深長に俺の名を言った。

 

花陽の顔を見る。相変わらず優しそうな顔の造りをしている、と思った。

 

思わずその少し丸みを帯びた柔らかそうな頬をつねりたくなった。わざわざ探してきたんだからな、と思う。

 

でも俺は我慢をする。

 

「花陽。前に言ってたよな。今日の放課後にスクールアイドルのライブがあるって」

 

「えっ、あ、うん。そ、そうなんだけど……」

 

軽くどうしたらいいか分からなくなってる様子の花陽の横で、凛が突然悲鳴の様な大声をあげる。

 

「あ〜!! 忘れてたんだにゃ〜!」

 

「うるさい」

 

花陽と違ってやかましく、俺は思わず凛の頬もつねりたくなった。わざわざ探してきたんだからな、と思う。

 

でも俺は、我慢をする。

 

「ってかもうそろそろ始まる時間だろ」と言った。

 

「えぇ!? かよちんほんと!?」

 

「う、うん……」

 

「ごめんねかよちん! 凛ってば、かよちんのこと陸上部に連れて行っちゃうところだった 」

 

「ううん。だって凛ちゃん陸上部見に行くって言ってたから……」と花陽は少し困ったような顔をして首を横に振った。

 

「そんなのいいって! ライブは今日しかないんでしょ? かよちん楽しみにしてたんだよね! だからかよちんと一緒に凛も楽しみたいから、早く行くにゃ!」

 

と凛が言った。

 

このままさっさと講堂へ追いやっても良かったが、花陽がまだそんな顔をして俺の方を見てきたので俺は

 

「俺も凛も、花陽がアイドルを見て楽しんでいるのを横で見ていることが楽しいって思ってんだよ」と言った。

 

「え……えぇ? そ、そうなの?」と花陽が言った。

 

「アイドルを見てるときの花陽の笑顔、すごいよな?」と凛に振る。

 

「そうにゃ! すーんごく幸せな顔してるんだよかよちん! 凛ね、そのかよちん見るの大好き!」

 

「うぅ……」と恥ずかしそうに花陽は下を向く。

 

「凛もそう言ってるし。だから何も気にしないで今日のライブ、思いきり楽しめばいいんじゃないか」

 

と言うと「う……うんっ」と花陽は顔を上げ頷いた。

 

そして今日やっと今頃になって花陽が本当の笑顔を見せた。

 

楽しみにしていたライブ当日だと言うのに、人の事ばかり気にしていて困った幼馴染だと思っていたが。

 

ほっとしている俺がいた。

 

「かよちん行くにゃ!」

 

「うん!」

 

駆けていく二人を見ながら俺はまた「やれやれ」と言っていた。

 

 

 




やっと3話です。

大好きな3話。

頑張って書きたい。

たくさんのお気に入りありがとうございます

ではまた
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