幼馴染の凛ちゃんがうざすぎる   作:nao.P

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前話の続きになります。


その2

家を出る直前に凛は「かよちんに電話するにゃ!」と言った。

 

俺は適当に返事をし、ガスの元を閉めノブナガと言う愛称を付けられた王室犬ウェルシュ・コーギー・ペンブローグが餌を貪っているその隙に玄関の扉を静かに閉め鍵を掛けた。

 

「あっもしもしかよちん? おはよー! うん! 今から行くから待ってるにゃ!」

 

凛は電話の向こうの相手にそう言うと高校入学祝いに買ってもらったばかりの携帯を制服のポケットに大事そうに突っ込んだ。

 

「かよちん朝から元気そうだったにゃ!」

 

「なんだ? 風邪でも引いたのか?」

 

「全然違うよ! そうじゃなくてかよちんの声聞くとね! 凛が元気になるんだにゃ!」

 

握り拳を作った片手を目一杯突き上げ、朝から随分と騒がしい。

言っている事は既に意味が分からなくなっているし、それ以上元気になってどうするのだろうかと思った。

 

「えへへ☆」

 

と本当に元気が出るらしく語尾に☆が溢れ出て来るほど嬉しそうに凛は笑った。

 

ただ朝から☆マークは鬱陶しい。

☆マークは星らしく夜ぐらいにして下さいと俺は地球の裏側で瞬いているであろう星々にお願いをした。

 

「花陽は俺が一緒に行くことわかってるのか?」

 

「え? 言ってないけど?」

 

「なんで?」

 

「なんでってかよちんだよ。かよちんなら言わなくても何でも分かってるにゃ」

 

「なんだよそれ分かるわけないだろう」

 

と、意味深というか意味不明な会話を続けたところで、昨日買った蛍光ペンを部屋に忘れたことに気が付いた。

 

「まったくもうー。ナオくんって本当しょうがない子なんだにゃ」

 

「お前に言われたくないにゃ」

 

と語尾を真似るのが俺の最近の趣味だ。

 

「あ〜!! 今真似したにゃ〜!! もぉ〜!! ナオくんのばかばか!!」

 

凛は顔を赤くして俺をポカポカと叩いた。

凛は何故か真似をされるのを恥ずかしがる。

だったらやるなよと思うが癖で一生治らないにゃと言った。

大人になってもにゃーにゃー言うつもりらしい。

 

 

「もう! ペンなら凛が貸してあげるから早くかよちんち行くよ!」

 

と半分怒りながらもそう言ったので俺は家に戻るのをやめて歩き出した。

 

「何色のペン借りたいにゃ?」

 

「何でもいい。黄色とかでいい」

 

と俺は答えた。

 

 

 

 

花陽の家は俺の家から5軒しか離れていない所にあり、今のやり取りで家の先まで着くには充分だった。

 

「あっ、凛ちゃんおはよー…えっ!? あれっ!?ナオくん!? もしかしてナオくんも一緒に登校するの!?」

 

予想していた通り驚いた表情を見せながら彼女は軒先から姿を現わした。

 

彼女の名前は小泉花陽(こいずみはなよ )

 

同い年で、凛の幼馴染。

 

俺と凛と同じく音ノ木坂学院に通いクラスも同じ。

 

引っ越してきて間も無く凛を通して俺はこの子を知り、気付けばこの子とも幼馴染という間柄になっていた。

 

ふわふわとしたショートボブで眼鏡をかけ一見地味ではあるが、温和な性格も相まって、凛とは違い、側に置いておくと落ち着けるアロマテラピーの様な存在だった。

 

アロマテラピーで思い出したが、俺は良く凛に

 

「ナオくんて、線香の匂いがするんだにゃ!」

 

と、顔を近づけられてくんくんと匂いを嗅がれることがある。非常に腹が立ってくるのであんまり思い出したくない。忘れよう。また今度。

 

 

「よう」と軽く声を掛けると花陽は「うん。おはようナオくん!」と、いつもと変わらず少しはにかむ様に笑顔を向けてきた。

 

おっとりした空気を漂わせ少し引っ込み思案なところもあるがそこが中々にいじらしかったりする。

 

「かーよちん!! おはよ〜 」

 

と言いながら凛は花陽に飛びつきまとわり付いた。

花陽も抱きつかれて全く嫌がる素振りもなく、むしろ二人は幼い頃…ではなく産まれた時からの幼馴染と言っていたので二人にこの先何が起ころうとも、俺は見て見ぬ振りをしてあげなければならない。

……でいいのだろうか。

 

「あのね。凛ちゃんナオくん。今日寄って行きたいところあるんだけど…ダメ? かな?」

 

「え? これから? 学校間に合うの? かよちん」

 

と凛は絡みついていた縄を解き、携帯に視線を逸らしていた俺も二人へと視線を戻した。

 

「うん。大丈夫。あの…行きたいのはUTXだから。」

 

「UTX? 何があるのー? あ、分かった! A-RISEがなんかやるにゃ?」

 

「うん! そうなんだけどね、今日の朝新曲のPV発表するってついさっき公式でアナウンスがあったの。あのっ、だからっ…」

 

と花陽は気持ちを抑えて言ったが実は居ても立っても居られない感じだった。

 

A-RISEはUTX学院(通称UTX、開校して数年の私立高校で、独創性の高い教育方針をかかげスクールアイドルと呼ばれるプロレベルの在校生アイドルグループを生み出したことで有名な学校。)に在席するスクールアイドルで花陽は彼女らのファンであり部屋はグッズで溢れかえる程だった。

 

UTXは音ノ木坂学院からも近く、通学には少し遠回りになるくらいなので時間的にはまだ余裕がある。

 

と言うか凛。俺を起こしに来るのが早すぎだ。遅刻どころか一番に学校へ着く優等生になってしまうところだ。

 

「いいに決まってるにゃ! じゃUTXまで競争するよかよちん! よーいドン!! 」

 

「えっ!? えっ!? チョット待って凛ちゃん! 待ってー! 」

 

「……おい」

 

 

一緒に行こうと起こされたのに初日から置いてけぼりされるとはどういうことかと思った。




この後一期一話のシーンに繋がる感じです。

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