残り五時間。
それが地球滅亡までのタイムリミット。
太古の昔、地球に飛来した暗黒種、デーボスの復活によって地球は滅亡の危機に瀕していた。
しかし、それを阻止すべく、十体の機械の体を持つ恐竜『獣電竜』と彼らのパートナーである人間『強き竜の者』。
史上最強のブレイブチーム、『獣電戦隊キョウリュウジャー』が戦っていた。
そして、地球滅亡を阻止する重要な鍵であるデーボス軍首領、蝶絶神デーボスを倒すべく六人のキョウリュウジャーはデーボスのいる要塞『氷結城』へと向かっていたのだった。
しかし、その途中で、デーボスの力によって、彼らが身に纏っている強化スーツ『キョウリュウスーツ』の変身を強制的に解除されてしまう。
更に、彼らの前に二体の戦騎と呼ばれる幹部が立ちはだかった。
「鎧、こいつ等皆殺しにして獣電池を破壊するぞ」
と、炎を模様したような怪人、怨みの戦騎エンドルフが、獅子の仮面と甲冑の怪人、怒りの戦騎ドゴルドに言う。
それを五人のキョウリュウジャーは迎え撃とうと身構えようとするが、彼らの間を雷の斬撃が駆けた。
「各々方、ここは拙者一人にお任せを」
五人の前に立ち、二人の幹部と向き合い紡がれた一言。
しかし、その一言はあまりに無謀なものだった。
戦騎の一体の強さは変身した彼らでも苦戦を強いられるほど手強いもの。
それなのに、変身も出来ない状態で二体も相手にするなど出来るはずがないのだ。
しかし、
「生身でも戦う術はあるでござる」
そう言って、剣を両手で握り、二体の幹部に向ける。
「キング殿に最後の一撃を決めていただく為にも。まずは拙者に先陣を切らせてくだされ」
決死の覚悟で紡がれた言葉。
その言葉にキングと呼ばれた戦隊のリーダーは頷き、
「その心意気、確と受け取った!!」
「行くぞ、皆」とキングの言葉に他のメンバーも頷き駆け出す。
それを確認してから正面の二体を見据える。
すると、エンドルフは手を頭に当てて、
「やれやれ、頭が痛いぜ」
と、走り去るキングたち五人を見る。
そんな敵を睨みながら、握っていた剣を地面に突き刺し、
「雷鳴の勇者っ!キョウリュウゴールドっ、見参!!」
名乗りと共に、剣を引き抜き、キョウリュウゴールド。又の名を『空蝉丸』は駆けた。
そこから始まった戦いは予想通り、空蝉丸が押される防戦一方のものだった。
しかし、二体の戦騎も空蝉丸を追い詰めながらも、止めを刺すには至らなかった。
「こんな生身の死に底ないを、何故、攻めきれない!!」
満身創痍にも関わらず果敢に立ち向かう空蝉丸の姿に苛立つエンドルフの言葉。
その視線の先には、倒れ伏して尚、武器を離さず立ち上がろうとする空蝉丸。
目障りこの上ない光景に更に苛立ちが募る。
「エンドルフ様」
そんな中で、もう一体の戦騎、ドゴルドが声を掛けた。
「頼みます。アンタの怨みのパワーで奴の動きを封じてください。その間に俺が止めを」
「フンっ、出来るんだろうな、鎧」
信用していないエンドルフの言葉だが、
「因縁の相手、必ず仕留める」
その一言を聞き、エンドルフは満足した。
正直、この戦いにもウンザリしていた所だ。
「いいだろう」
そう言って、エンドルフは手に握っていた剣を腰の鞘に収めると、自らのエネルギーを腕に集中させ、どす黒い闇を空蝉丸に向けて放つ。
すると、闇は空蝉丸の体に絡みつき、彼を拘束した。
「う、動けぬ・・・」
「やれっ、鎧」
完全に拘束することが出来たことを確認し、エンドルフはドゴルドに命令する。
同じ幹部だが、ドゴルドはエンドルフを嵌めようとし、その代償として彼の下僕に堕とされたのだ。しかし、それゆえだろう・・・
ゆっくりと自らが持つ剣を空蝉丸に向けて、数歩歩み寄るドゴルド。
「オラァアアッ!!」
「がっ!?」
しかし、その剣は空蝉丸ではなく、背後を振り返りエンドルフへと突き刺した。
その攻撃によって、空蝉丸の拘束は解けるが、突然の事に驚いた彼は呆然と目の前の出来事を見るしかなかった。
その間も、ドゴルドは不意打ちで怯んでいるエンドルフに剣を振るう。
幾度も振り下ろされる剣、その内の一撃がエンドルフの腕に装着された装置。
ドゴルドを従わせるための装置に当たり破壊した。
「フフッ、どうだ?俺の怨みも中々のものだろ」
自らに掛けられた首輪のような装置が粉々になるのを確認しドゴルドは不敵に笑う。
その様子にエンドルフは睨みながら、
「て、てめぇ、俺への反逆を狙ってたのか・・・」
怨みの戦騎らしい恨み言だが、ドゴルドはそれを無視し自分の背後にいる空蝉丸に声を掛ける。
「手を貸せ、空蝉丸。二人でコイツを倒すんだ」
「なんと・・・」
その提案に、空蝉丸は驚いた。
ドゴルドにとって自分は宿敵であり、自分も憎んでも足りないほどドゴルドに怒りを覚えているからだ。
だが、ドゴルドは、
「お前の言葉で吹っ切れたんだよ・・・」
最終決戦の前に互いは剣を交え、戦う機会があった。
その時、エンドルフの下僕に成り下がったドゴルゴに空蝉丸は腹立たしい思いを口にした。
―――お主は真の悪党。なれど、己の強さに誇りと自信はあったはず
―――それすらも・・・それすらも失ったのでござるか!!
その恫喝がドゴルドに決意させた。
「俺は体を持たない鎧・・・」
怒りの戦騎、ドゴルゴは他者の身体に自らの鎧を着せて乗っ取る者。
「だが、俺は戦騎だ!!」
吼えると共にドゴルドはエンドルフに剣を振るう。
「その誇りを踏みにじったコイツを倒せるなら・・・他に、もう何もいらねぇっ!!」
そう言って、エンドルフを空蝉丸の方へ斬り飛ばす。
「はぁっ!!」
ドゴルドの言葉を聞いた空蝉丸もまた吹っ切れた。
向かってくるエンドルフに斬撃を浴びせ、ドゴルドとの共闘することを決めたのだ。
「ウラァッ!!」
「はぁっ!!」
それを察したドゴルドは空蝉丸の隣に立つ。
そして、二人は示しを合わせたかのように、同時に上段からエンドルフに向かって剣を振り下ろした。
「ぬぁっ!?」
それを受けたエンドルフは地面に悶えるように転がり倒れるが、一瞬の隙を突いて自らのもう一つの武器である銃を取り出し放つ。
「くっ」
向かってくる銃弾に空蝉丸は被弾すること覚悟した。
しかし、その時、驚くべき状況がもう一度起こったのだ。
「ぬぅっ!?」
生身の体の空蝉丸をドゴルドが自らの身体で盾になったのだ。
そんな驚愕するような状況だが、追い詰められているエンドルフには驚く余裕もなく、銃をしまい、自らのエネルギーで作った球を放った。
放たれたエネルギーは一直線に二人へと向かい、強烈な一撃は爆発を起こし二人を包んだ。
そして、爆炎が晴れた時、そこには二つの影が立っていた。
しかし、その状況にエンドルフは今度こそ戸惑った。
一つはついさっき自分を裏切ったドゴルドだ。ゆえに、もう一つは空蝉丸でなければ可笑しいはずなのだが、
そこにいたのは、ドゴルドが乗っ取っていた手下の怪人だったからだ。
「何っ!?」
ボロボロの手下を見ながら、空蝉丸が消えたことに驚くエンドルフ。
しかし、すぐにその答えが分かった。
仁王立ちしているドゴルゴの仮面が一部割れ、そこから空蝉丸の顔が見えていたからだ。
つまり、爆発の瞬間、ドゴルドは空蝉丸に自らを着せたのだ。
この状況には空蝉丸も驚いていた。
「ドゴルド、コレは一体・・・」
困惑する空蝉丸にドゴルドは不敵に笑いながら、
「乗っ取りはしねぇ。俺たちの技を合わせるんだ」
そう言って、両手にはドゴルドの剣と空蝉丸の剣が握られ、彼が言わんとしていることが理解できた。
「ウラァアアアアアア!!」
腰の剣を引き抜き、こちらに突っ込んでくるエンドルフに向かって、
「「奥義・雷電残光!!!」」
二本の剣から凄まじい雷の斬撃が放たれ、エンドルフを貫いた。
「がっ・・・他人の怨みの力に負けたのか?頭が、痛すぎる・・・」
その言葉を残し、エンドルフは爆散した。
「・・・貰、った」
爆発するエンドルフを確認したドゴルゴは空蝉丸から離れると、隣にいたボロボロの部下の体をもう一度乗っ取った。
「ハハッ・・・最高、の気分だぜ・・・・」
良い気分を隠すことなく紡ぐ言葉。
フラフラな状態で歩きながら、ドゴルドは木に持たれかかりながらも、空蝉丸に剣を向けた。
「さぁ、今度は・・俺たちの決着だ・・・」
「ドゴルド・・・」
その様子を呆然と見つめる空蝉丸。
相手の体は限界が来ているのか、崩れ落ちそうになっている。
「さっさと、構えろよ・・・空気、読めよ・・・空蝉丸ちゃん」
「先ほどの戦いですでに致命傷を・・・」
もっと言えば、エンドルフの攻撃から自分を庇った時。
だが、お互いはもう何も言葉を交わさなかった。
お互いに自らの得物を相手に向ける。
先ほどの共闘は異例のものだ。
本来の自分たちの関係はコレが正しいのだから。
「はぁああああああああっ!!」
「オラァアアアアアアッ!!」
互いに雄叫びを上げながら、必殺の刃を相手に放つ。
一瞬の静寂―――
お互いに背中を相手に預け、奇しくも互いに支え合いながら空蝉丸は首だけをドゴルドに向け、
「お主、最後は拙者に倒される心算でござったな」
「あ、ありがとな・・・俺の、我侭に、付き合ってくれて・・・」
その言葉に自然と苦笑が漏れた。
「あ、悪党のクセに殊勝なことを申すな・・・腹立たしい!」
拳を作って自らの胸に当てながら、宿敵の口癖だった台詞を放つ。
「そうかい・・・腹立たしいかい・・・」
同じようにドゴルドも自らの胸に手を当てて放つ。
それを最後にドゴルドは倒れ、光となって散った。
「・・・ドゴルド」
空蝉丸はドゴルドが散った位置を見つめ、
「憎き宿敵・・・だが―――」
剣を置き、正座をし、姿勢を正す。
武人の礼を尽くそうとする姿勢を取る空蝉丸。
「最後の最後で、武人としての意地、見せてもらった」
その直後、「うっ」と、空蝉丸は力尽きたかのように地面に倒れた。
「やりましたぞ・・・キング殿・・・各々方・・・パーフェクトで、ござる」
その瞬間、空蝉丸は意識を手放した。
しかし、事切れる寸前、彼の体を不思議な光の現象が包み、彼の体は忽然と姿を消してしまうのだった。