クロスゴールド 雷鳴が奏でる輪舞   作:愛剣

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最初に謝っておきます。

申し訳ありません!!


第九話

「でも、良かったんですか?」

 

と、タスクが問いかける。

問いかけた先は今現在部屋の真ん中で座禅を組んで意識を集中させている。

 

「何をでござるか?」

 

目を開けて本当に何の事か分からない様子の空蝉丸が問いかえす。

 

「いえ、サラマンディーネさんと同じ部屋で寝なくて良いんですか?」

 

「何故そんな事を聞くのでござるか?」

 

「はい?」

 

またも当たり前のように問い返され、間抜けな顔をするタスク。

そんな彼に空蝉丸は、

 

「拙者はまだサラマンディーネ殿の騎士になっただけでござる。騎士とは西洋の侍。侍は姫の御身を守るものでござるが、部屋の中に入る事はいたしませぬ。精々、部屋の外で寝ずの番はあるでござろうが」

 

 

あの後、サラマンディーネが自身の部屋の中に招こうとしたのだが、空蝉丸はそれを断り、本当に部屋の外で控えていると言ったのだった。

それからは、「それならば、部屋の中へ・・・」とサラマンディーネが、

「いえ、それはありませぬ」と空蝉丸が、

そう言って押し問答を繰り広げる場面があったのだが、最終的にはサラマンディーネが折れ、

 

「ならば、宮殿内は安全ですので、自室でお休みください」

 

と、そんな事があったのだ。

 

 

 

「えっと、サラマンディーネさんとお付き合いの話だったんじゃ・・・」

 

その事を聞いたタスクは呆然としながら言葉を紡ぐ。

だが、空蝉丸は当然のように、

 

「むろん、拙者はその心算で言ったでござるし、サラマンディーネ殿もそれを理解して頷いてくださった。」

 

しかし、

 

「婚姻をしていない男女が一つの部屋で一緒に寝るなどとんでもない。その者の一生を背負うという誓いの言葉を交わし、

夫婦になってから肌と肌が触れ合う関係になる。それが健全な付き合い方でござろう」

 

と自らの恋愛談を繰り広げる空蝉丸にタスクは唖然とする。

厳格なのか、ただ硬いだけなのか、それとも自分と同じヘタレな部分を屁理屈で有耶無耶にしているのか、

そんな事を考えていると、

 

「ところで、何故、拙者とサラマンディーネ殿との事を知っているのでござるか?」

 

「えっと、それは・・・」

 

言葉に詰まるタスクに対して、空蝉丸は溜息を付いて、

 

「覗き見は良い趣味とはいえないでござるよ」

 

「ゴメンナサイ」

 

「まぁ、構わないでござるが。タスク殿はあの後大丈夫だったのでござるか?」

 

心配そうに空蝉丸は問いかけるが、どうやらそれはタスクにとってはトラウマだったらしく、彼の体がガタガタと震えだした。

ドクター・ゲッコーに性教育の教材とされた彼は、衣服を全て脱がされ、台の上に固定され、年端も行かぬ娘たちの見世物となったのだ。

当然だが、男としてその精神的なダメージは計り知れない。

 

「・・・しかも、その後アンジュも来て、そして・・・・」

 

一体何をされたのだろうか。

黙り込んでしまったタスク。

まぁ、アンジュの性格と彼の反応を見れば、とても恐ろしい事をされた事は想像できるが。

この話題をこれ以上するのはタスクの精神面を考えれば良くないだろう。

そこでこの話は無かった。

 

「あっ、そういえば、先生が手伝いの御代だって―――」

 

「缶ジュースでござるか?」

 

「それが分からないんです。これなんて書いてるんですか?」

 

六本の缶が入ったケースから二本を取り出して眺めるタスク。

その足元には同じようなケースが六つもあった。

その内の一本を空蝉丸に手渡した。

 

「拙者もこの時代の文字はまだ習っていないので」

 

「そうですか」

 

「まぁ、毒ではないでしょうけど、精力剤だったりして?」

 

冗談で言ったタスクだが、全く笑えない。

性教育の報酬だけに、笑えない冗談だった。

 

「缶で、この量は流石に無いのでは?」

 

「それもそうですね」

 

空蝉丸の言葉に表情は引き攣っているが。

 

「とりあえず、飲んでみましょうか?」

 

不安はあるが喉が渇いている。

お礼である以上体に害がある物ではないだろう。

 

「まぁ、何かあればサラマンディーネ殿を経由して解決を頼めば良いでござる」

 

その一言で幾分かマシになった不安を解消し、二人は同時に缶を空け口に付けた。

 

「ぶっ!?」

 

だが、すぐにタスクは驚いたように口に入った液体を噴出した。

 

「こ、これアルコールじゃ!?」

 

幸い口に含んだだけで僅かしか飲み込んでいないが、大慌てで騒ぎ立てるタスク。

すると、

 

「うるせぇぞ!!」

 

「へっ?」

 

隣に居た空蝉丸が恫喝する。

普段の彼からは考えられない言葉に呆然となるタスク。

 

「ガタガタと喚きやがって・・・」

 

グシャリと缶を握りつぶす。

どうやら一気に飲み干したらしい空っぽの缶。

 

「黙って飲めないのか、テメェは・・・」

 

「い、いや、でも、お酒ですし・・・」

 

「あぁっ!?」

 

突然、タスクの胸倉を捕まえる空蝉丸。

完全に目を据えて睨みつける空蝉丸にタスクは顔を引き攣らせる。

 

「テメェ、俺と酒が飲めないなんて言うのか?」

 

「何でそうなるんですか!?」

 

「だから、うるせぇ!!」

 

「ひっ!?」

 

ザンダーサンダーをタスクの首に押し当てる。

 

「だいたいテメェの声は最初から気に入らなかった」

 

「はいっ?」

 

「前に俺たちが倒した敵の一人の声に似ていやがる。テメェの声を聞いていると、こいつで切りつけたくなるぜ」

 

「何ですか!?その理不尽!!」

 

完全に酔っ払って言っていることが支離滅裂だ。

 

「だから、テメェは俺と酒を飲むか、こいつで斬られるかどっちがいいんだ?」

 

「その二択ですか!?」

 

そんなの飲む他に選択肢はないではないか。

 

 

 

 

 

 

そして、十分後。

 

「アンジュのバカ!!」

 

タスクも酔っ払っていた。

床には彼らが飲んだ酒の缶が散乱していた。

 

「俺は君一筋だと言っているのにどうして信じてくれないんだ!!」

 

「そうだ。言え言えっ!!」

 

酒の勢いでアンジュに対する不満をぶちまけるタスク。

空蝉丸も煽りに煽っている。

 

「暴力女!!」

 

「野獣皇女!!」

 

「あそこの毛―――」

 

「何かしらタスク」

 

突然、降ってきた女性の声に心臓が飛び上がり、手に持った缶を落としてしまうタスク。

恐る恐るその背後を振り返る。

 

「ア、アンジュ・・・!?」

 

振り返った先には笑顔をこちらに向けるアンジュ。

だが、彼女の目が据わっているため、酔いで真っ赤だった顔が真っ青になる。

 

「随分と楽しそうじゃないタスク」

 

「い、いや、違うんだアンジュ」

 

「何が違うのかしら?」

 

「こ、これは空蝉丸さんが・・・」

 

説明してもらうために空蝉丸を見る。

だがしかし、無情にも空蝉丸はうつ伏せで潰れていた。

要するに、

 

「寝てないで説明してくださいよ、空蝉丸さん!!」

 

空蝉丸を起こそうと揺さぶるタスク。

だが、彼は全く起きない。

 

「心配しなくてもいいわ、タスク」

 

「ア、アンジュ」

 

「アンタは私が・・・しっかり寝かしてあげるからッ!!」

 

「う、うわぁあああああああああっ!?」

 

 

その夜、タスクの身に語る事も恐ろしい事が起こるのだった。

 

 

 

 

 

 

そんな恐ろしい事が起こったとは露とも知らず寝ていた空蝉丸だが、次の日の朝。

 

「あぁぁぁっ・・・・・」

 

「大丈夫ですか、空蝉丸殿?」

 

当然のように二日酔いで苦しんでいる彼をサラマンディーネが微笑みながら声を掛ける。

 

「な、何とか・・・」

 

「こんな日ぐらい鍛錬を休まれては?」

 

一日も欠かすことなく鍛錬を積んできた空蝉丸。

ゆえに、今日は鍛錬のために朝早く出ようとしたのだが、二日酔いが酷いため思うように体が動かないのだ。

 

「し、しかし、強さは一日にして成らず。毎日の鍛錬で少しずつ積み上げてゆくもの。毎日一段一段上っていても、一日休めば三段も下がって・・・」

 

「でしたら―――」

 

起き上がろうとする空蝉丸の体をサラマンディーネは優しく倒しながら、

 

「その下がった分は私が補って差し上げます」

 

「な、なれど、サラマンディーネ殿の騎士になった以上は・・・」

 

「守らないとならない、と?」

 

サラマンディーネの問いかけに頷く空蝉丸。

しかし、彼女は優しく笑いながら、

 

「あら、ただ守られるだけの女ではないですよ、私は」

 

だから、とサラマンディーネは空蝉丸に布団を被せながら、

 

「今日は私に、私の大事な騎士殿を看病させてくださいな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから昼まで空蝉丸は寝込むことになったのだった。

 

「お世話をかけました、サラマンディーネ殿」

 

「いえいえ、御気になされないでください」

 

何とか昼食を取れるまでに回復した空蝉丸は、サラマンディーネ達と食堂を出て廊下を出て歩いていた。

 

「おっ、ウッチーだ!!」

 

「ん?」

 

そこへ一人の女の子が彼らに声を掛けてきた。

 

「童、何処かであったでござるか?」

 

「酷っ、ちゃんと会ったじゃん!!」

 

声を荒げる少女だが、空蝉丸は首を傾げるだけだ。

そんな空蝉丸にサラマンディーネは笑いながら、

 

「フフッ、空蝉丸殿。彼女はアンジュたちと共にいたシルフィスの娘です」

 

「では、お主がヴィヴィアンでござるか?」

 

「うむ。そうでござる!!」

 

空蝉丸の真似をしながら無邪気に笑うヴィヴィアン。

 

「おお、人間に戻れたのでござるな」

 

「ドクターの尽力のお陰ですよ。ところで、空蝉丸殿、ウッチーとは?」

 

「ああ。昔、仲間に呼ばれていたあだ名でござる」

 

そう答えると、後ろに控えていたナーガとカナメがクスクスと笑い出した。

 

「ウッチーですか」

 

「フフッ、可愛いあだ名だな」

 

「皆様も呼んでくれて構わないでござるよ」

 

「ねぇ」

 

談笑をしているとヴィヴィアンが気になった様子で、

 

「二人は付き合っているんだよね」

 

「なっ!?」

 

いきなりの言葉に言葉を失う空蝉丸。

何故知っているのだろうか、と考えていると、

 

「ここの皆がそうだって」

 

「・・・皆でござるか」

 

つまり、宮廷中に二人の事は伝わっているらしい。

まぁ、いずれ知られることだろうと言う空蝉丸。

尤も、サラマンディーネの態度でほとんどの者は気が付いているのだが。

 

「ええ。確かにそうですが、それが何ですか?」

 

「じゃあ、どうして二人ともお互いの名前に“殿”をつけるんだ?」

 

「「・・・・・・」」

 

ヴィヴィアンの言葉に黙り込んでしまう二人。

確かに、二人の名前の呼び合いは他人行儀だ。

しかし、何と呼べばよいのだろうか、と二人が思い悩んでいると、

 

「ねぇ、所でアンジュ達は?」

 

「あ、今から私たちも合いに向かうところですよ。一緒に参りましょうか。丁度貴女に会わせたい者がおります」

 

「ほぇ?」

 

サラマンディーネの言葉に首を傾げるヴィヴィアン。

そして、空蝉丸とサラマンディーネは一先ず、彼女の指摘した事を後回しにするのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

それから空蝉丸たちはヴィヴィアンを連れて、宮殿内の庭園にやってきていた。

 

「あ!アンジュ!!」

 

「ヴィヴィアン!!元に戻れたのね!!」

 

庭園内にいるアンジュとタスクの姿を確認したヴィヴィアンは一目散に二人に駆け寄った。

再会できたことが嬉しいのかアンジュに抱きつくヴィヴィアン。

アンジュも彼女を抱きとめながら驚く。

それから二人が言葉を交わし合う中、空蝉丸はタスクの方へ近づいた。

 

「タスク殿、昨日は申し訳ない付き合わせておいて先に寝てしまい」

 

「いえ、御気になさらず」

 

「大丈夫でござるか?」

 

「ハハッ、もちろんですよ」

 

「・・・そうでござるか」

 

タスクは問題ないというが、とてもそうには思えなかった。

何せ、彼の顔にはかなりの格闘の後があったのだから。

殴られた痣、引搔き傷、更には歯型がくっきりと残っていた。

しかし、それは触れやるべきではないのだろう。

そう思い何か他の話題は無いものかと、考えていると、サラマンディーネが一人の女性を連れてやってきた。

赤い髪をした女性。

丁度、ヴィヴィアンと同じ色をした。

 

「ラミア。彼女です。遺伝子照合で確認しましたから間違い在りません。貴女の娘、ミィです」

 

サラマンディーネが言葉を紡ぐと女性が泣き出しそうな表情となる。

 

「ミィ!本当にミィなの!?」

 

歓喜の涙を流しながら彼女はヴィヴィアンを抱きしめる。

しかし、抱きしめられているヴィヴィアンはどういうことか分からず困惑していた。

 

「彼女らは親子なのでござるか?」

 

「はい。十年前に彼女は母親を追って、向こう側の地球に迷い込んだようなのです」

 

空蝉丸が問いかけるとサラマンディーネが微笑みながら答える。

そして、後ろに控えていたナーガとカナメ。

親子の再会に感動の涙を流している二人に向かって、

 

「祭りの準備をお願いします」

 

「「はい」」

 

「祝いましょう。久しぶりに故郷の地球に帰って来られた仲間の無事を」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

サラマンディーネの言葉の後、日が完全に暮れた頃アウラの塔にてヴィヴィアンの帰郷を祝い祭りが開始された。

満月の月と無数に煌く星の下でサラマンディーネと祝いに集まった民衆は灯篭を夜空へと飛ばす。

空へと上っていく無数の灯篭の光が幻想的な光景を作っていた。

 

そんな中で空蝉丸はタスクとアンジュの姿を発見した。

 

「どうかなされましたか、お二方」

 

「別に」

 

声を掛けるが、アンジュに素っ気無く返された。

だが、空蝉丸は笑いかけながら、

 

「色々と信じられぬ事を聞かされて驚かれたでしょう」

 

「そうね。余りにも現実から掛け離れていて全部が本当なのか怪しくなるけど」

 

「アンジュ・・・」

 

「仕方ないでしょ!あいつ等と私達はお互いに殺しあっていたのよ。簡単に信用できるわけ無いじゃない」

 

嗜めようとするタスクに詰め寄るアンジュ。

 

「だいたい、あの女もこんな物を見せて何をしたいのか分からないじゃない」

 

あの女とはサラマンディーネの事だろう。

彼女を敵視するアンジュの物言いに空蝉丸は苦笑を浮かべながら、

 

「恐らく、お互いの事を知りたかったのでござろう」

 

「そんな事をしてどうなるって言うのよ」

 

「では、アンジュ殿は、ドラゴンが自分達と同じ人間だと知らないまま戦いたかったでござるか?」

 

「それは・・・・」

 

空蝉丸の言葉に言いよどむアンジュ。

 

「ドラゴンが人間ではなく化け物ならば殺し合うしかなかったでござろうが、人間だと分かれば別の道も選べるかもしれませぬ」

 

「別の道・・・」

 

「さよう」

 

タスクの呟きに頷いてから空蝉丸は頷く。

 

「サラマンディーネ殿が以前、申されていたでござる」

 

―――知り、理解し、受け入れる。そこから何かを学べれば、私達はより良く前に進むことが出来ると思ったのです。

 

「憎しみを消す事は容易ではござらん。だが、憎しみで殺し合えば、どちらかが倒れるか、共倒れするまで続くでござる。そうなれば、行き着く先は滅ぶのみ。

だから、サラマンディーネ殿は別の道を探す為に、アンジュ殿方の事を知り、自分たちの事を知ってもらおうとしているのだと思いまする。

何せ、聡いお方でござりますから」

 

「・・・惚気話にしか聞こえないんだけど」

 

負け惜しみのように呟くアンジュの言葉。

しかし、空蝉丸はそれを笑い飛ばしながら、

 

「兎に角、どちらにしろ、暫くの間は滞在するほか無いのでござる。ごゆっくりなされてよろしいと思いますぞ。

恐らく、サラマンディーネ殿もそう思っておられるでしょうから」

 

そう言って空蝉丸は二人から離れるのだった。

 




あとがき
今日はここまでです。

・・・・空蝉丸を荒れさせたかったのに、小話が思いついて中々進みませんでした。

全ては自分の実力不足が原因です。
タスクの声が、獰猛の戦騎Dと同じ事に感想で教えてもらうまで全く気が付きませんでした。
今後のタスクの使い方を思いつき、その内容を考えれば気が付くはずだったのに・・・・
本当に自分の力不足です。

それでも持てる全ての力を込めて面白いと思ってもらえるように頑張ります。
これからも見てもらえると幸いです。

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