クロスゴールド 雷鳴が奏でる輪舞   作:愛剣

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第十三話

撃ち落されるキメラたち。

その予想外の光景にエンブリヲは苛立ちを覚えた。

彼の頭の中に描いた予定では、それは向こう側からこちらに進攻して来た者たちでなければならない。

 

「一体、何故バレたのだ!?」

 

苛立ちから声を荒げるエンブリヲ。

その反応が面白いのか、せせら笑う気配がした。

見ると自分が今まで泳がせていたあちら側のスパイのリザーディアがこちらを嘲笑っていた。

 

「目論見が外れたな、エンブリヲ」

 

「くっ・・・」

 

嘲笑われる事に慣れていないエンブリヲは彼女の表情に苛立ちが限界に達し、

 

―――パァン!!

 

彼女の頬を掌で引っ叩く。

しかし、彼女の表情は未だに勝ち誇ったままだ。

 

「言っておくが、私は何も出来ないぞ?」

 

分かっているだろ、と言いたげな彼女の表情にさらに屈辱に表情が歪むエンブリヲ。

言葉通りある程度泳がせて、こちら側に進攻させる手はずが整ったところで捕らえ、

それからここに拘束し、外部の連絡を送れないはずだった。

エンブリヲ自身がそうしたのだ。

ゆえに、そんな事が起こりえるはずがないのだ。

なのに、起こってしまった。

 

―――パァン!!

 

その腹立たしさから手の甲でもう一度彼女の頬を引っ叩いた。

そのまま彼は苛立たしさを隠すことなく立ち去っていく。

 

「フンッ」

 

エンブリヲの悔しげな後姿を見送りながら、リザーディアは胸がすく想いだった。

あまりに愉快な姿だけに叩かれた頬の痛みすらも気にならない程に。

 

「だから、心配する事はないわ」

 

誰も居なくなったかのように見える部屋で一人呟く。

そして、未だに付いたままのモニターを見れば、そこには紅い龍神器の姿が映っていた。

それを見てリザーディアは嬉しげに微笑んだ。

 

「お前のお陰で助かった。礼を言うわ」

 

「へへっ、良いってことッスよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

海上で舞う二体。

その片方は黒いラグナメイルに乗ったサリア。もう片方は白のヴィルキスに乗ったアンジュ。

 

「あの女の次は変な髪形の気持ち悪いナルシストを信仰することにしたの!?」

 

ヴィルキスの剣を振り下ろしながら叫ぶアンジュ。

 

「あの方の侮辱は許さない!!」

 

振り下ろされる剣を受け止めながらサリアも叫ぶ。

そして、先ほどのお返しとばかりにヴィルキスを蹴り飛ばす。

 

「私は変わった。強くなった!!あの方のお陰で、あの方はアレクトラと違う!!」

 

「ハッ、何処が変わったの?飼い主が変わっただけじゃない」

 

「何ですって!!」

 

「だって、あなた自身は何も変わってないじゃない。むしろ、昔に戻ったんじゃないの?

不測の事態に対する適応力が無いのは変わらないじゃない?」

 

「黙れっ!!?」

 

アンジュの言葉を受けて激昂するサリア。

激しく機体をぶつけ合う。

 

「貴女に私の何が分かるのよ!!」

 

「少なくとも、貴女の知られたくない恥ずかしい趣味は知ってるけど?」

 

「なっ!?」

 

狼狽して顔を真っ赤にしたサリア。

動揺して動きが鈍っていると、

 

「前から思ってたんだけど、貴女の趣味って余り良いとは言えないわね。色々と」

 

「余計なお世話よっ!!」

 

男の事と秘密の趣味の事を言われて更に激昂しようとすると、

 

「落ち着いて、サリアちゃん!!」

 

突撃しようとするサリアの前にもう一体の黒いラグナメイルが割って入った。

 

「エルシャ・・・」

 

割って入ったラグナメイルが変形して、操縦者が露となる。

フルフェイスのヘルメット越しの表情にアンジュは見覚えがあった。

 

「どうして“シンギュラー”からアンジュちゃんが?エンブリヲさんからはドラゴンだと言っていたはずだけど・・・」

 

「マジ訳分かんねぇ・・・」

 

更にもう一機のラグナメイルがやってくる。

 

「クリス・・・」

 

彼女にも見覚えがあった。

 

「後二人いるみたいだけど、だれなの?」

 

「名前を教えて分かるの、アンタに?」

 

その方が驚きだ、と言うクリスにアンジュは視線を彷徨わせた。

その先には他の二体のラグナメイルがサラマンディーネの焔龍號がビーム兵器で打ち合っている。

確かに、全員の顔と名前を知っている訳ではないし、

 

「アンタ、一緒の部隊の人間以外知ってる奴いるの?」

 

別になじっている心算は無いだろう言葉。

だが、事実だけにアンジュは何もいえなかった。

 

「何をしているのですか、アンジュ!?」

 

「サラ子!?」

 

そこで焔龍號がヴィルキスの近くへやってくる。

 

「のんびりとお喋りとしている時間は無いはずですよ」

 

「貴女こそ向こうの二体はどうしたのよ!?」

 

「そんなに長く相手が出来るはずが無いでしょ!!悠長に話してないでください!!」

 

焔龍號の背後から迫ってくる二体のラグナメイルの姿に引き攣った表情となるアンジュ。

確かに、計画ではここに長居する心算は無かった。

だが、どうしてもアンジュは彼らのうちの誰かに一撃を入れなければ気がすまなかったのだ。

 

そんな事を考えていると、目の前にいるエルシャが睨みながら、

 

「アンジュちゃん。どうして貴女がアルゼナルを襲ったパラメイルと一緒にいるの?」

 

「そういう貴女達こそアルゼナルで虐殺を命じた奴の仲間になったじゃない」

 

「それはアンタの兄貴で、エンブリヲ君じゃない」

 

クリスもこちら側を睨む。

そこでサラマンディーネを追っていた二体のラグナメイルが加わり、こちら側は包囲された。

 

「ナイトリーダー!エンブリヲ閣下からアンジュリーゼの身柄を拘束せよ、との命令よ!!」

 

「分かったわ」

 

ラグナメイルの一体からの通信を聞いたサリアはビームライフルをアンジュの方へ向けた。

 

「アンジュ、一応言うわ。投降しなさい」

 

「しなかったら力尽く?」

 

「この状況で何かが出来ると思っているの?」

 

サリアと無言で睨みあう。

隣にはサラマンディーネが援護として隣に居るが、ラグナメイルが五機に囲まれ、

真下には軍艦が編隊している。

完全に包囲されている。

 

(まだ時間が掛かるの・・・)

 

隣に居る焔龍號の方を見る。

タイミングを見て時間稼ぎをしなければならないだろうと、ハンドルを握りなおしたとき、

 

「アンジュ!避けて!!」

 

「え?」

 

サラマンディーネの声に反応し、アンジュは機体を動かした。

すると、先ほどまで彼女が居た場所に戦艦からの銃弾が通り過ぎた。

 

「警告なんて意味ないじゃない!!」

 

「そんな事を言ってる場合じゃありませんわ!!」

 

サラマンディーネの言うとおり下の戦艦群はこちらを撃ち落す心算で撃ってきている。

 

「投降しろなんて良く言えたわねっ」

 

「わ、私、そんな命令してない・・・」

 

苦言を言うアンジュだが、どうやらサリアも予想していないらしく狼狽している。

 

「相変わらず部下にも恵まれてないのね・・・」

 

「アンジュ、あの隊長殿は・・・」

 

「ええ。部下もだけど、上司になる人も碌な人物にめぐり合わないみたい。しかも、本人はその人物に心酔しちゃうみたいなの・・・」

 

「それはそれは・・・」

 

「「不憫な人・・・」」

 

「うるさいっ!!!?」

 

戦艦からの攻撃を回避しながらサリアに悲哀の眼差しをサリアに向ける二人。

尤も、その視線は周囲の仲間の間からもだったりするのだが。

 

「アンタが言うなっ、アンジュ!!」

 

私からしたらアンタが一番の問題児なのよっ、と言うかのようにサリアが突撃を掛ける。

 

「な、何よ、アレ!?」

 

「き、機械のドラゴン!?」

 

感情的に突撃を掛けようとする彼女に周りの仲間が止めようとする時、巨大な影がその空域を覆った。

 

 

 

「カミナリ変形!!」

 

 

 

閉じかけていた特異点から飛び出たプテラゴードン。

同時に上空でプテライデンオーへと変形をしていた。

 

―――さて、ここでクイズです!!

 

何故かヴィヴィアン風の声が幻聴のようにその場の者達の耳に響く。

 

―――プテライデンオーは全長51m、重量1900t。

―――そんな超巨大なロボが上空から海に飛び込めばどうなるでしょうか?

 

その正解は――――

 

プテライデンオーが着水した瞬間、衝撃により海は大きく波打ち、浮かんでいた戦艦は舵を取ることが出来ず、ぶつかり合わないようにするので精一杯。

同時に、大量の海水が上空に舞い上がり、嵐のように降り注いだ。

 

「くっ!?」

 

打ち付けられる海水によってサリアたちの視界は塞がれ、一瞬何も見えなくなる。

 

「行きますよっ、アンコ!!」

 

「アンジュよ!!」

 

この隙に逃げるつもりだと、誰もが思った。

しかし、この視界では何も出来なかった。

 

 

そして、それが止んだ時、その場には誰もいなくなっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それは作戦開始前夜。

祭りの後、アンジュたちと今回の作戦の話をしていたとき、空蝉丸はあることを打ち明けていた。

 

「まず初めにサラマンディーネ殿。拙者はサラマンディーネ殿に黙っていた事があります」

 

祭りの場から離れ、部屋の中で正座をする空蝉丸。

他に部屋にはサラマンディーネ、ナーガ、カナメ、アンジュ、タスク、それにヴィヴィアンがソファに座っていた。

 

「一体、何の事ですか、空蝉丸殿」

 

「拙者はサラマンディーネ殿に黙って向こう側に間諜を送っていたのです」

 

本当に申し訳ないと頭を下げる空蝉丸。

 

「空蝉丸殿!!貴殿は姫様を信じておられなかったのですか!!」

 

告白した瞬間、ナーガが憤慨しながら空蝉丸に詰め寄ろうとした。

しかし、それをサラマンディーネが手で制し、

 

「訳を話してもらえますか?」

 

「サラマンディーネ殿を信じていない訳ではないのです。しかし、どうしても他の者に調べてもらって欲しかったのでござる」

 

どうしても必要だった。

 

「慎重に行動したかったのでござる。敵は“人間”だったので」

 

「・・・そうですか」

 

空蝉丸の言葉でサラマンディーネは理解できた。

当然の事だ。

空蝉丸の力は人間を守るためのものだ。

こちら側についてくれたが、向こう側も人間であるの敵。

何も思わない方が可笑しいだろう。

 

「でも、誰が?」

 

「キャンデリラとラッキューロでござる」

 

カナメの問いかけに答えると、サラマンディーネは納得した。

以前会ったことがある二人。

いや、人ではないな。

 

「あの、誰のことですか?」

 

「拙者の諜報活動に長けた知り合いでござる」

 

タスクの疑問に空蝉丸が答える。

 

「ふ~ん。で、そいつらがどうしたのよ?」

 

アンジュが興味なさげに問いかける。

しかし、次の言葉に嫌でも興味を引く事になった。

 

「彼らの話ではこちら側の間諜を捕らえたと聞きました」

 

「リザーディアがっ!?」

 

驚愕から立ち上がるサラマンディーネ。

 

「キャンデリラからの情報によると、こちら側への最後の通信の後に捕らえられたようです」

 

「そ、そんな!?」

 

「それでは、まさか!?」

 

「明朝の作戦は待ち伏せされております」

 

空蝉丸の言葉に部屋の中に嫌な沈黙が流れた。

このまま作戦を実行すれば、全滅しなくても多大な被害を受けるのは目に見えていた。

 

「ナーガ、すぐに大巫女様に報告を。明日の決戦は延期を進言してください」

 

「分かりました」

 

それを理解したサラマンディーネが素早く考えを纏めながら指示を出す。

その中でカナメが控えめな表情で、

 

「しかし、姫様、リザーディアは?」

 

「もちろん、必ず救い出します」

 

「では、その役目を拙者にお任せいただけないでしょうか?」

 

その一言に一同の視線がもう一度空蝉丸に集まった。

 

「明日、予定通り特異点は開きます。拙者はそこを通って向こう側に行きます」

 

「そ、そんな、待ち伏せがされていると貴殿が言ったではないですかっ」

 

「罠だと分かっているのに行かせられませんよっ」

 

空蝉丸の言葉にナーガとカナメが声を上げる。

 

「大丈夫でござる。特異点の向こう側に配備されているであろう包囲網はプテラゴードンで突破するでござる。それに、アンジュ殿たちは明朝帰られるはずでござろう?」

 

「え、ええ」

 

「ならば、拙者がアンジュ殿たちを仲間達の元へ送り届けます」

 

「そ、それはありがたいですが・・・・」

 

それは危険な目に自分たちも飛び込む事になるのだが。

 

「確かに、私達は向こうに帰りたい」

 

「で、でも危険だよ、アンジュ!?」

 

「何よ、タスク。帰りたくないの?」

 

「そ、そんな訳・・・」

 

「そうね。ここに居たら貴方はモテモテだものね」

 

「だから、違うって!!」

 

いつもの痴話喧嘩を始める二人。

そんな二人を止めるために空蝉丸は正座をしたまま声を上げた。

 

「まぁまぁ、落ち着いてくだされ。兎に角、アンジュ殿たちは拙者と共に向こう側に帰られるのでござるな?」

 

「ええ、そうよ」

 

と、アンジュはいつものように強引に頷いたので、隣にいたタスクは溜息をつき、いつものように諦めたように折れた。

 

「では、拙者が責任を持って仲間の元に送り届けまする」

 

その代わりという訳ではないのでござるが、と空蝉丸は前置きをし、

 

「拙者をアンジュ殿の指揮官に会わせてくださりませんか?」

 

「アレクトラにですか?」

 

「どうして、あの女に会いたいのよ」

 

空蝉丸の頼みに小首を傾げるタスクと、指揮官が嫌いなのか話題に上がって不機嫌そうなアンジュ。

 

「こちら側、ドラゴンたちと同盟を結べないか打診してもらうためでござる」

 

「はぁ!?」

 

空蝉丸の言葉にアンジュは素っ頓狂に声を上げた。

そして、同じく驚くナーガも声を上げる。

 

「何を言っているのですか、空蝉丸殿。この者の部隊と我々は殺し合っていたのですぞ!!」

 

同盟など結べるはずが無い、と声を上げるナーガ。

彼女の隣にいるカナメも同じ考えらしく、何故空蝉丸がそんな事を言っているのか分からない様子だ。

しかし、サラマンディーネは何も言わずに空蝉丸の言葉を聞いていた。

ゆえに、空蝉丸は言葉を続ける。

 

「それは、アンジュ殿たちがエンブリヲなる者の駒だった時の話でござろう」

 

「どういう事ですか、空蝉丸殿?」

 

今度はサラマンディーネが問いかける。

その表情は真剣なもので空蝉丸からもたらされる情報を真剣に吟味していた。

 

「情報によれば、アルゼナルと言うアンジュ殿のいた拠点は襲撃を受けた後、生き残った者達はエンブリヲなる者に反旗を翻したとの事。

またエンブリヲは新たに手駒を揃え、残党狩りをしているらしいのでござる」

 

「そんなっ!?」

 

その情報にアンジュは悲鳴のように声を上げた。

彼女が元の世界に帰りたいのは親友の安否が心配だからだ。

 

「モモカは、モモカは無事なの!?」

 

それゆえに、アンジュは空蝉丸の胸倉を掴み上げ問いただす。

だが、残念な事に空蝉丸にはその答えは持っていなかった。

 

「残念ながら、アンジュ殿の友に付いての詳しい情報はござりません。ただ、未だに撃ちあぐねているとの事でござるが」

 

「くっ、わかったわ」

 

その答えに一先ず落ち着いたアンジュは空蝉丸を離した。

しかし、これで是が非でも彼女は向こう側に帰らなければならなくなった。

 

「兎に角、今、アンジュ殿の仲間は支援も援軍も期待できない状況で逃亡生活を送っているはず。

交渉の余地はあるでしょ」

 

と、空蝉丸は自信を持って言う。

あくまで、可能性の話だが、決して無謀とはいえないものだろう。

だが、それでもナーガは反対した。

 

「バカなっ、例え、どんな理由があろうと、奴らと手を組むなど―――」

 

「分かりました。同盟を申し込みましょう」

 

「姫様!?」

 

反対意見を述べようとするナーガの言葉を遮ってサラマンディーネが言葉を紡ぐ。

その言葉にナーガとカナメは声を荒げた。

 

「何を言っているんですか、姫様!!」

 

「そうですよ。最近まで私達はアンジュさんの仲間と殺し合っていたんですよ。そんな中に空蝉丸さんを一人で送るなんて、危険すぎます」

 

分かっています、とサラマンディーネはカナメの言葉に頷き、

 

「だから、私も一緒に赴きます」

 

「「はぁっ!!?」」

 

微笑みながら紡いだサラマンディーネの言葉に二人は慌てふためく。

 

「そ、そんなの駄目に決まっているじゃないですか!!」

 

「姫様の身も危険です!!」

 

しかし、サラマンディーネは、何故ですか?と問いだしそうな表情で、

 

「同盟を結ぶべく使者なのですよ。それ相応の地位の者が赴くのが礼儀ではないですか?」

 

「で、では、我ら二人も共に!!」

 

「それは駄目です。二人にはこの場に残って決戦の準備を整えてもらわなくては」

 

それでも反論しようとするナーガを無視して、サラマンディーネは「それに・・・」とアンジュに微笑みかけ、

 

「アンジュ達とこれ以上戦わないで済むのならば、これは負うべきリスクですわ」

 

「サラ子・・・」

 

サラマンディーネの言葉に感銘したようにアンジュも彼女に微笑みかける。

そこで、さて、とサラマンディーネは立ち上がりながら、

 

「これから明朝までに大急ぎで大巫女様たちを説得しなければなりませんね」

 

そう言って、空蝉丸にも笑みを向けるサラマンディーネに彼もまた説得を協力するために立ち上がった。

そこで先ほどから黙り込んでいたヴィヴィアンが、

 

「じゃあ、ウッチー達も私達と一緒に向こうに行くの?」

 

「え、私達とって・・・」

 

「まさか、ヴィヴィアン」

 

彼女の発言に一同は何度目になるかの衝撃を受けた。

だが、彼女はそんな事を気にするような様子も無く、

 

「うん。私もアンジュと一緒に帰るよ」

 

「で、でも、貴女はお母さんと折角再会できたのに・・・」

 

「うん。お母さんとはもう話したんだ。そしたら、『あなたの信じる道を進みなさい』て許してくれたんだ」

 

「そうなんだ」

 

「それにお母さんが何時でも帰って来なさいって、だから、その時はサリアたち皆を私の家に招待するんだ」

 

「そう」

 

ポジティブに語るヴィヴィアンの言葉にアンジュは安心したように微笑んだ。

しかし、空蝉丸はヴィヴィアンの言葉に気になる事があった。

 

「あの、アンジュ殿。サリアとはアンジュ殿たちの仲間なのでござるか?」

 

「ええ、そうよ。知ってるの?」

 

「実は、先ほど言ったエンブリヲの新しい手駒の中にその者の名があったのでござる」

 

「えっ?」

 

その一言にアンジュの頭は真っ白になった。

 

 

 

 

 

 

それからアンジュは空蝉丸から更に話を聞いた。

それによればサリアだけではなく、エルシャとクリス、その他二人がエンブリヲの乗っているラグナメイルのパイロットだそうだ。

その事にアンジュは信じられなかった。

別に特別に中が良かった訳ではないが、一緒にドラゴンと戦った仲間。

アンジュは協調性を持たなかったが。

その中の三人がエンブリヲに寝返ったなど信じられなかったのだ。

だが、冷静になっていけば、沸々と怒りが湧き上がっていき、

 

「気が付いた時には開放された特異点に突っ込んで、仲間だった者の一人を蹴り飛ばしたと言うことですか?」

 

「悪かったわよ・・・」

 

苦言を述べるサラマンディーネにアンジュは両膝を抱え込んで小さくなっていた。

本来ならば、サラマンディーネの世界に現れた怪人たちを囮として先に通した後、空蝉丸がプテラゴードンで部隊に隙を作らせ、

その間に強行突破する先線だったのだが、感情的になったアンジュは空蝉丸の準備が整っていないまま飛び出してしまったのだった。

 

「まぁ、過ぎた事でござる。皆無事だったのでござるから、勘弁して差し上げてくだされ」

 

と、空蝉丸が彼女たちに近寄った。

あれからアンジュとサラマンディーネの機体をプテライデンオーで回収した空蝉丸はそのまま、カミナリ変形を解除してプテラゴードンで離脱した。

そして、ある島に到着したのだ。

アンジュたちがサラマンディーネ達と戦争をしていた拠点、アルゼナルに。

 

「一応、向こうに気付いてもらえるように信号を出したから、気付いてくれたら、来てくれるはずです」

 

「そうですか」

 

時刻はすでに日が完全に沈んだ夜。

焚き木を囲んで五人は座り込んでいた。

焚き木の周りに釣った魚を枝に刺して焼いていたのでヴィヴィアンが頬張っている。

 

「それにしても、改めて見ると酷い有様だね」

 

「確かに、ここに降り立つ時、島の全体を見ましたが酷いものでござるな」

 

襲撃を受けて拠点は完全に廃墟と化していた。

軽く見回ってみたが、そこは全くのもぬけの殻となっていた。

 

「使い物にならなくて、この拠点を捨てたのでしょうね」

 

「・・・言っとくけど、アルゼナルに一番デカイ穴を開けたのは貴女だからね」

 

「・・・そうでしたわね」

 

ジドッとサラマンディーネを睨むアンジュ。

その視線にサラマンディーネは居心地が悪そうに視線を反らした。

と、そこでサラマンディーネとヴィヴィアンが何かに気が付いて海の方を見た。

 

「どうかしたんですか?」

 

暢気に問いかけるタスクだが、空蝉丸は念のためザンダーサンダーに手を掛けた。

二人はドラゴンで普通の人間よりは野生の勘が働く。

その二人が何かに反応したのだ。何かが居るのだろう。

 

そして、その勘は的中した。

 

海の中から青白い光りが人魂のように出てくるとその後に三つの黒い人影がこちらに向かって歩いてきた。

それを見たタスクも漸く銃を取り出す。

だが、その表情は引き攣っている。

更に、隣に居たアンジュも不気味な三人組に怯えてしまっていた。

対して、空蝉丸とサラマンディーネは警戒心を強めながら、ザンダーサンダーと護身用の刀を引き抜いた。

しかし、人影は足を止めることなく、こちらに向かってくる。

 

「あ・・あ・・・」

 

その中の一人から少女のようなか細い声が聞こえてきた。

それにタスクは冷や汗を来ながら、

 

「お、お化け、幽霊?海坊主?」

 

「幽霊ならば、足は無いはずです」

 

「海坊主はプテライデンオー並にデカイはずでござる」

 

恐怖に震えるタスクの言葉にサラマンディーネと共に否定する空蝉丸。

むしろ、海坊主を何故知っているのか、疑問に思ってしまうほどだ。

それは兎も角として、謎の人影がもう少しでこちらに手が届く距離に迫ってきた。

怯えきったアンジュは悲鳴を上げながらタスクに抱きついた。

 

「アンジュリーゼ様!!」

 

「え?」

 

人影の一人がアンジュの事を呼ぶと彼女は急に冷静になって彼らを見た。

すると、その人物は顔を覆っていたマスクを外した。

そこには女の子の顔が出てき、その顔を見てアンジュは驚いた。

 

「モ、モモカ?」

 

「アンジュリーゼ様!!」

 

モモカと呼ばれた少女は歓喜した様子で涙を浮かべながらアンジュに抱きつく。

それをアンジュも抱きしめ返すと、残りの二人を見た。

 

「うぉ!?皆だ!?」

 

ヴィヴィアンも二人の姿を見て声を上げる。

 

「うわっ!?ドラゴン女!!?」

 

すると、その内の一人、マスクを取ったオレンジ色の髪の女がヴィヴィアンを見て怯える。

その反応に空蝉丸が小首を傾げていると、もう一人の鮮やかな紅い髪の女がアンジュの元に走り寄った。

 

「本当に、アンジュなのか?」

 

「もちろんよ、ヒルダ」

 

ヒルダと呼んだ女に笑いかけるアンジュ。

すると、彼女も嬉しげに笑う。

だが、次の瞬間、後ろにいる空蝉丸たち三人を見て、

 

「それで、コイツら誰だよ」

 

警戒しながら三人を鋭い眼差しで睨むのだった。

 

 

 

 




あとがき

漸く完成しました。
出来るだけ速く更新するといったのに果たせずに申し訳ありません。


今回は少し空蝉丸を賢く書きすぎた感があるのですがどうでしょう・・・
戦国時代に活躍していたのなら、少しぐらい戦略的なことが出来てもいいですよね・・・
もう少しキャンデリラたちの見せ場を書きたかったのですが、次の機会にさせてもらいます・・・

今回はここまでです。
また見てくれたら嬉しいです。






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