クロスゴールド 雷鳴が奏でる輪舞   作:愛剣

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獣電戦隊キョウリュウジャー!!
前回はキャンデリラとラッキューロからもたらされた情報によって待ち伏せの罠を回避する事が出来た空蝉丸とサラマンディーネ。
二人はアンジュとタスク、ヴィヴィアンの協力で彼らの世界、エンブリヲの世界を破壊することを目的とする“リベルタス”を計画する仲間たちと会い、
同盟を結ぶ為に罠を掻い潜り危険な世界に足を踏み入れるのだった。
そして、無事にアンジュ、ヴィヴィアンと同じ部隊だったヒルダとロザリー、そして、アンジュの侍女で親友のモモカと遭遇する事に成功した。
しかし、彼らにとってサラマンディーネは自分たちの拠点を破壊した当事者。
果たして、無事に同盟を結ぶ事が出来るのだろうか。



第十四話

 

 

 

 

あれからヒルダ達に案内されるまま空蝉丸とサラマンディーネはアンジュ達と共に彼らの潜水艇アウローラに搭乗するのだった。

そして、二人はアンジュたちと共にリベルタスの主要メンバーの集まる部屋に。

そこでアンジュとタスクに自分達がサラマンディーネの世界で見聞きした事を説明する事になった。

まずは彼らから説明した方が上手く進むとサラマンディーネと考えたからだ。

 

「平行宇宙ともう一つの地球、ドラゴン・・・いや、遺伝子改造した人間の世界か・・・」

 

アンジュの話を聞いた指揮官。

長い黒髪を後ろに纏め上げた目つきの鋭い所が特徴の右手が義手の女性、ジルは話を思考するためなのかタバコを取り出し咥える。

周りの者達もアンジュの話に驚きながらも、サラマンディーネが自分達の拠点アルゼナルを襲撃した者だと知って警戒から厳しい眼差しで睨むものが多い。

しかし、アンジュはその視線を止める様に言葉を紡いだ。

 

「サラ子・・・いえ、サラマンディーネ達は話が通じる相手よ。エンブリヲに付き従っている奴らよりも」

 

「だから、ドラゴンと手を結ぶべきだ、と言う心算かお前は?」

 

そこでタバコに火をつけながら何処か冷ややかな眼差しで問いかけたジル。

しかし、アンジュはその視線に構うことなく、

 

「ええ、その通りよ」

 

臆することなく肯定したアンジュの言葉にヒルダ達が驚きの声を漏らした。

そこへアンジュはサラマンディーネに視線を向けながら、

 

「彼女たちの目的はアウラの奪還。それが上手く行けば、供給されているマナは停止して全てのエネルギーは停止する、そう言ったわよね」

 

「ええ、そうです」

 

アンジュの問いかけにサラマンディーネは肯定し、侍女が出した紅茶を口に運ぶ。

交渉が上手く運ばなければ自分たちの命が危ないのに、こんな行動を取ることが出来る彼女の胆力に空蝉丸は感心した。

 

「アウラを救出する事が出来れば、必然的に特異点、貴女方の言葉で“シンギュラー”でしたか・・・。

そのゲートは開く事はありませんし、何より私たちも貴女方の世界に進攻する理由もなくなるのですから、貴女方と戦う必要はなくなります」

 

「私達とサラマンディーネ達の利害は一致している。なら、手を組んで協力するのが目的を達成する可能性が尤も高いと思うんだけど」

 

「敵の敵は味方って事かい・・・なるほど~」

 

と、アンジュの言葉に納得したのは、向こうのメンバーで最年長と思われる女性。

色の抜けた金髪を紺のバンダナのような布を巻いたジャスミンと呼ばれる女性だった。

しかし、彼女が納得した様子だったが、やはりそれに反発する者も当然いる。

その者たちを代表するように後ろに控えていたロザリーが声を荒げた。

 

「じょ、冗談だろ!!こいつ等はこれまで沢山の仲間を殺してきた化け物なんだぞ!!ドラゴンと協力なんて、有り得ないつうのっ!!」

 

「それに付いては謝罪します」

 

「え?」

 

声を荒げるロザリーに対してサラマンディーネは物静かに告げる。

 

「しかし、許しを請う心算はありません」

 

「な、なんだとっ!?」

 

サラマンディーネの言葉に激昂し今にも飛びかかろうとするロザリー。

だが、サラマンディーネは静かに彼女に視線を向ける。

それだけで彼女に高圧的なプレッシャーを与え、「ひっ」と彼女を怯ませた。

 

「なぜならば、こちらも仲間を殺されています。いえ、殺されるだけでなく、こちら側の者達のエゴを満たす為に

ドラゴニウムの詰まった心臓を亡骸から抉り出され、破棄されてきたのですから。こちらが譲歩してお互い様、と言わせてもらうほかありません」

 

と、サラマンディーネの言葉に部屋の中が重たい沈黙に包まれた。

交渉しに来たのに喧嘩を売るような言葉を出すのは彼女らしくないと思った空蝉丸だが、

同時に先ほどのロザリーの言葉を聞いては仕方がないと言えなくも無い。

何せ、一緒にいるヴィヴィアンも彼女の言葉に機嫌を損なったのだから。

 

(しかし、これでは話が平行線で纏らない)

 

そう空蝉丸が考えとき、

 

「その通りだな」

 

先ほどから黙り込んでいた指揮官のジルが口を開いた。

 

「我々がお前たちを信じるなど不可能な事だ。同盟など組めるはずも無い」

 

そう吐き捨てるように言って立ち上がるジル。

 

「アウラだかなんだか知らんが、ドラゴン一匹を奴から奪ったぐらいでリベルタスが終わると思っているのか?

神様を気取っているエンブリヲを抹殺し、この世界を破壊する。それ以外にノーマが開放される術は無い」

 

そう言って、ジルはアンジュの方を向き厳しい言葉を投げかけようとするが、

 

「それは我々も同じです」

 

それよりも早くサラマンディーネが言葉を紡いだ。

 

「我が世界の民たちも貴女方を信じるに値しない、と思っている者がほとんどです」

 

「ちょ、ちょっとサラ子!?」

 

突然、喧嘩を吹っかけるサラマンディーネの言葉に驚くアンジュだが、

 

「アンジュ、私達の世界を救ってくれた貴女でさえも完全に信じる事が出来ないと言う者も居るのに彼女らと共に戦えると思いますか?」

 

「それは・・・」

 

サラマンディーネの紡いだ事実にアンジュは黙り込んでしまう。

だが、そこで疑問が生まれた。

 

「じゃあ、どうしてアンタ等はアタシ達と接触してきたんだい?」

 

と、それまで会話に入ってこなかったヒルダに比べれば少し薄い赤色の髪を持った白衣を身に纏った女性マギーが問いかけたのがそれだ。

その答えをサラマンディーネはすぐに口にした。

 

「同盟を結べない事はある程度予想していました」

 

ですので、

 

「私は貴女方と取引をしにきたのです」

 

「取引だと?」

 

サラマンディーネの言葉にジルの視線が鋭くなる。

ここに来て説明のために話してきたアンジュは置いてけぼりになるがお構い無しだ。

 

「私達の最初の目的は、捕らえられたスパイの奪還。同時に、そこに設置されているであろう特異点開放のための装置と施設の占拠」

 

「なるほどな。そこを進攻の足がかりにすると言うわけか。で、お前は我々にそれを手伝えと言いたいのだろうが、我々にどんな得があるのだ?」

 

全く話しにならないとでも言いたげなジル。

しかし、サラマンディーネは不敵な笑みを浮かべながら、

 

「アウラを奪還に成功した場合、我々が引き上げた後、貴女方がそこを拠点として使ってください。そうすれば、見返りとして我々は貴女方に食料や武器などの物資の支援、

それにご要望ならば戦力の提供もいたします」

 

その言葉に言葉を詰まらせたジルにサラマンディーネは更に言葉を畳み込んだ。

 

「貴女方がエンブリヲに宣戦布告をして世界を敵に回したという事は、弾薬などの物資を調達するのは困難なはず。

占拠に力を貸してくださるならば、それで戦う事は出来るはずでは?」

 

それに、

 

「我々と一緒に運び込んだ箱に入っているのはエンブリヲ側が使用しているビームライフルと同程度の性能の物が三丁入っています」

 

と、サラマンディーネの言葉にその場にいたメンバーから驚愕する反応が見られた。

その中で逸早く冷静になったジャスミンが口を開いた。

 

「ほう、随分と気前がいいじゃないか?」

 

「ええ。ビームライフルの方は私と向こう側に残してきた後二人の機体に搭載する予備です。

ですが、我々の世界は幸か不幸か大戦の時の武器や弾薬が大量に保管された倉庫が多数あります」

 

我々はそう言った物を使う必要性が無かったのですが、何かの役に立つのではと保存状態は保たれている。

そうサラマンディーネの言葉を聞いたジャスミンは、「ふむ」と思考してから頷き、

 

「ジル、あたしは彼女らとの取引に賛成だよ」

 

「ジャスミン!?」

 

賛同の意を示した彼女に声を荒げるジル。

他のメンバーも、「何言ってるんだ、このババア」みたいな視線を向ける。

しかし、当人は気にした様子も無く、

 

「そうは言ってもジル。どんなに強がっても、あたし等の戦力が心もとない事は事実だろ?

物資にしても、アルゼナルから出るときに積める限り積んだだけで限りがあるしね」

 

「サリアたちが寝返ったし、世界をぶっ壊そうとするテロリストのあたし達に支援してくれる所なんてそう無いしね」

 

マギーも賛同する言葉を口にした。

その言葉を聞いて、その場のメンバーも何処か仕方ないみたいな空気になっていく。

だが、ジルだけが何処か悔しげに一瞬だけ見せるが、すぐにそれを収め、

 

「分かった。情報を精査した後、今後の事を通達する。以上だ」

 

そう言って部屋から出て行くジル。

その背後を空蝉丸は何故か気になり目で追ってしまうのだった。

隣にいるサラマンディーネが何処か不機嫌な目で見ているのに気付かないらしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

それから空蝉丸たちは食堂へ通された。

指揮官のジルが今後の事を判断するまで待機するように言われたからだ。

しかし、落ち着ける状況であるかどうかは別だが。

 

「銃を構えられていないのは救いでしたね」

 

「そうでござるな。こちらの武器も取り上げられていないでござるし」

 

サラマンディーネの言葉を肯定する空蝉丸。

致し方ないとはいえ、こちらを警戒するように睨む視線に辟易する二人。

アンジュもタスクもその事に苦笑するが。

彼らの視線の先には。

 

「お~、流石、モモカ飯!!不味いノーマ飯が懐かしいぜ!!」

 

部屋の中の空気など気にすることなくヴィヴィアンはモモカが作ったご飯を暢気に食べていた。

すると、マギーが彼女を調べるように体を触れる。

 

「本当にキャンリディーが無くてもドラゴンにならなくなったのかい?」

 

「うん、らしい」

 

「大した科学力だね、アンタの所の科学力は?」

 

「いえ、貴女の科学も大したものだと思いますよ」

 

感心するマギーと賞賛するサラマンディーネ。

 

「あっ、そういえば、サラサラさん達は羽と尻尾があるのに。私には何で無いの?」

 

「ばれるから切り落とした」

 

「うわッ、酷っ!?」

 

ヴィヴィアンの反応に険悪だった部屋の空気が僅かに和らいだ。

その中で何処か考え込んでいる空蝉丸の姿にタスクが気付いた。

 

「如何かしましたか、空蝉丸さん?」

 

「あの指揮官、ジル殿が・・・」

 

「気になるのですか?」

 

ジドッとした目で見るサラマンディーネに空蝉丸は何故か体を強張らせた。

 

「あの指揮官殿の後姿を眺めていましたものね」

 

「いや、少し彼女の言葉が気になっただけでござる。その・・・エンブリヲなる者に少々拘りすぎる気がして」

 

その事はサラマンディーネも感じていた。

彼女の言うリベルタスはアンジュ達のようなマナの使えない事を理由に差別される者達を解放することよりも

エンブリヲを抹殺する事を目的にしている事を主に置いているように思えた。

そんな事を考えていると、

 

「アレクトラ・・・いや、ジルは以前のリベルタスで仲間も、自らの右腕も失った。その原因となったエンブリヲに拘るのは仕方ないと思うよ」

 

「まぁ、それと差し引いても胡散臭い奴に見えるけどね」

 

「何かあったのでござるか?」

 

忌々しい事を思い出したように言うアンジュに空蝉丸が問いかけるが、

その問いかけに答えたのは彼女ではなく。

 

「同じ皇女様同士で同属嫌悪してるんだろ?」

 

「ヒルダ?」

 

こちらのテーブルに近づいてきて答えたヒルダに驚くアンジュ。

その表情にヒルダは苦笑を浮かべんながら、

 

「アレクトラ・マリア・フォン・レーベンヘルツ。アルゼナルを脱出してから司令が全部話してくれたんだよ」

 

「全部って?」

 

「全部だよ。自分の正体も、リベルタスの大儀、私達が自由になる為に倒すべき敵の事をな」

 

「あの女が?」

 

隣に座りながら話すヒルダの話を聞いて、怪訝そうな表情となるアンジュ。

 

「私達が居ない間、色々あったのね」

 

「暢気に言うが、こっちは心配したんだぞ」

 

アンジュの言葉にヒルダがジドッと見る。

 

「戦場からロストして、男とイチャイチャしながらシンギュラーの向こう側に行って、ドラゴンのお姫様を連れて来て、

ドラゴンと共闘しようなんて爆弾発言するとか!無茶苦茶だぜ、お前」

 

「ごめん、悪かったわヒルダ」

 

でも、

 

「サラ子達と手を組むのは最善だという事は本当よ」

 

真剣な眼差しでヒルダに訴えるアンジュ。

その事にヒルダは少し不機嫌になりながら、

 

「随分とそこのドラ姫様と仲良くなったじゃないか」

 

と拗ねた様子で言う彼女。

しかし、ドラ姫と呼ばれたサラマンディーネもまた不機嫌そうになり、

 

「ドラ姫とは私の事でしょうか?」

 

「ネーミングセンス無いわね、ヒルダ」

 

「お前が言うな、イタ姫!?」

 

呼び名が酷いと言い合うヒルダとアンジュ。

その様子にサラマンディーネは頭を手で抑えながら、

 

「こちらの世界の方は可笑しな渾名を付けるのが癖なのでしょうか」

 

「ちなみに、拙者は何と呼ぶのですか?」

 

「ござる丸!!」

 

「ざる男!!」

 

「ウッチーでお願いいたします!!!」

 

アンジュとヒルダの渾名のネーミングセンスに切実な声で頼む空蝉丸。

その様子に周囲から苦笑しながら見られていた。

 

「貴女達の方の色々あったんでしょ?」

 

「本当に色々合ったんだからなっ!?」

 

近くのカウンター席に座っていたロザリーがアンジュの言葉に噛み付く。

 

「アルゼナルは壊滅しやがるし、仲間は大勢殺されるし、クリス達は敵になってバカスカ撃ってきやがったし・・・」

 

悔しげに奥歯を噛み締めるロザリー。

クリスとはこちらの世界で遭遇したラグナメイルのパイロットだろう。

ロザリーの話からやはり他のラグナメイルのパイロットはアンジュ達の仲間なのだろう。

 

「どうしてサリアたちが敵になったのよ?」

 

不機嫌そうに顔を顰めながらアンジュ。

その言葉にロザリーの表情が怒りに歪む。

 

「知るかよっ。問答無用で撃ってきやがった・・・。もう友達でも何でもねぇ」

 

「しかし、友を裏切るなど、余程の理由があったはずでは?」

 

余計な事だと思いながらも空蝉丸は気になった事を問いかける。

その言葉を聞いて、ロザリーは更に噛み付こうとするが、

 

「まぁ、向こうからしたら私の方が先に裏切ったと思ってるんだろうけど」

 

「ヒルダ?」

 

彼女が牙を剥くよりも速くヒルダが後悔しているかのように溜息を付き、

 

「前に私とアンジュがアルゼナルから脱走して連れ戻されてからだけどな。その時からクリスの様子が可笑しかった」

 

「しかし、それも理由があったからでは?」

 

「ああ。今となってはバカな事をしたと思ってるよ。母親に会いたくて、クリスとロザリーには何も言わずにアルゼナルを飛び出して酷い目にあってさ」

 

そうヒルダが話すと、アンジュも嫌な事を思い出したように顔を俯かせる。

サラマンディーネからその経緯を聞かされた空蝉丸も自分の事のように憤りを感じた。

彼女は潜入させていた間諜からの情報だったが、アンジュが脱走したのは実の妹に助けを求められた事が原因だったらしい。

だが、それはアンジュを嵌めるための罠。

妹は政権を握った兄と共謀して、彼女を捕らえると民衆の前で罵りながら鞭で打ったらしい。

そして、その後に公開処刑されそうになった所をタスクに助けられたそうだ。

血の繋がった兄妹で何故このような事が出来るのか、聞かされた時の空蝉丸には全く理解できずただ憤りしか感じられなかった。

 

「私の方も最悪だったよ。会いたかった母親は私にそっくりな妹を私の代わりにして幸せに暮らしていたのさ。私を見た瞬間、その妹は化け物と罵り、

母親は自分が傷ついたのは私が生まれた所為だと責めてさ。私が連れて行かれそうになった時は必死に抵抗してくれたのに、薄情なものだよ」

 

と、自虐的に語るヒルダだが、それを聞いた空蝉丸は疑問に思ってしまった。

 

「・・・そんなに割り切れるものでござろうか?」

 

「はぁ?どういうことだよ?」

 

空蝉丸の疑問にヒルダだけでなく、周りの人間も怪訝な表情を向ける。

 

「・・・ヒルダ殿の話では、御母上は妹をヒルダ殿の代役として心の傷を埋めたのですな」

 

「・・・ああ、そうだよ」

 

空蝉丸の言葉に対してヒルダは不機嫌そうに頷く。

だが、空蝉丸にはだからこそ可笑しいように思えてならないのです。

たとえ、代役を立てて上手く忘れようとしても、似たような事を見聞きすれば傷は何度も開くはずだ。

それがヒルダの母親だけならば、まだしも他にも大勢の親が同じ思いをしているのならば、誰かが世の中を怨んでも可笑しくないと思うんだが。

 

「恐らく、それもマナによるものかもしれません」

 

空蝉丸が疑問を口にすれば、サラマンディーネが仮説を口にした。

 

「エンブリヲは潜在的にマナの使いえない人間に不の感情を植え付けている。もしも、それをマナによって上書きするように洗脳をしているのだとしたら・・・」

 

「そ、そんな事できるのっ!?」

 

「こちらの世界ではマナによって統合システムにアクセスする事もできるのなら、逆にシステムから個人に情報を与える事も可能でしょう。尤も、それも個人差があるでしょうけど」

 

そう言って、サラマンディーネはモモカを見た。

彼女はアンジュの事を想い、こんな場所にまで着いてきている。

他にも個人差があるからマナの使えない子供を隠している事もあったのだろう。

 

「それにだからこそ、エンブリヲは自分が支配できないマナの使えないも者を捨て駒のように扱ったのかもしれません」

 

「関係ねぇよ、そんな事」

 

「ヒルダ?」

 

サラマンディーネの話を聞いたヒルダが吐き捨てるように言う。

その表情にロザリーが心配そうにする。

 

「洗脳だろうがなんだろうが、そんな物に有耶無耶にされる程度の存在だったんだろうよ」

 

そう自虐的に話すヒルダ。

表情からは彼女の心情は良く分からない。

そんな険悪な空気の中で空蝉丸が話題を変えるように質問した。

 

「ところで、この艦の戦力はどのぐらいなのでござるか?」

 

革命を起こすのに果たしてどのぐらい戦えるものが居るのか、問いかける空蝉丸。

その問いに対してはアンジュも同感だったらしく。

 

「そういえば、戦えるのは貴女達だけよね」

 

「ん、そうだけど・・・」

 

質問に答えたロザリーにアンジュは少し意外そうな表情で、

 

「良く沈まなかったわね、この船」

 

「喧嘩売ってるのかっ、テメェは!!」

 

「いえ、アンジュの言うとおりでしょう」

 

激昂するロザリーだが、そこでサラマンディーネは冷静に口を開いた。

 

「まさかエンブリヲが他のラグナメイルを動かすパイロットを用意していたとは予期していませんでした。

正直、あのまま進攻作戦を悟られ、待ち伏せをされていれば被害は尋常な物ではなかったはずです」

 

そう言って、サラマンディーネはやはり何とか彼女らと協力関係を築かなければと思考を巡らす。

 

「貴女方が計画しているリベルタスもヴィルキスが戻らなければ、どうする事も出来なかったのではないでしょうか?」

 

「悔しいけど、ドラ姫様の言うとおりだよ。一応、急ごしらえに戦力は何とか整えたけどな」

 

と、サラマンディーネの言葉にヒルダは答えながら、食堂の隅を目配せする。

その視線の先には三人の少女たちがいた。

 

「ノンナ、マリカ、メアリー。あの三人が格上げされた新米のライダーたち」

 

そう言って、ヒルダが紹介すると三人は立ち上がって会釈をする。

すると、ロザリーが何処か誇らしげに、

 

「まだまだひよっこだけど、このあたしがみっちり鍛えたお陰で何とか戦力になるぐらいに―――」

 

だが、自慢げに話す彼女の横を駆け抜け、三人はヴィヴィアンの方へ。

 

「あの!お会いできて光栄です!!」

 

「え?あたし?」

 

その中の一人の感動するように話しかけられ困惑するヴィヴィアン。

しかし、三人はそれを気にした様子もなく、

 

「第一中隊のエース、ヴィヴィアンお姉さまですよね!!」

 

「ずっと憧れていました!!」

 

「大ファンです!!」

 

と、ヴィヴィアンの事を絶賛する三人。

その様子に気を良くしたヴィヴィアンは笑顔を向けながら、

 

「そっかそっか、良し!食べ終わったら一緒にキョウリュウ体操を踊ろう!!」

 

と、ノリノリで後輩たちに自分のお気に入りのダンスを教えるヴィヴィアン。

 

「ちょっとあんた等!!私にはそんな事一言もなかったぞ!!」

 

対して、あえなく教え子を取られたロザリーは悔しげだった。

その様子にアンジュは呆れながらもヒルダに向かって問いかける。

 

「それでヒルダはリベルタスに参加するの?」

 

「それって司令について行くのかって話か?」

 

そんなの選択肢なんてないだろ、と苦笑しながら、ロザリーの方をヒルダが向けば、彼女も同じ考えらしい。

 

「まぁ、確かにガチ過ぎて引くしけど・・・」

 

「貴女にあの人の何が分かるのよ~~!」

 

苦笑しながら言うヒルダの言葉に反応するように、備え付けのキッチンから新たな人物の声が響いた。

見るとキッチンから酒瓶を持った女性がゾンビのように這い出てきた。

 

「か、監査官!?」

 

手に持った酒瓶をそのままラッパ飲みする女性の姿にアンジュが驚き声を上げる。

アンジュの様子にサラマンディーネが不思議そうに問いかけた。

 

「どなたですか?」

 

「アルゼナルの監査官。アルゼナルの問題を上の人間に報告するのが仕事よ」

 

「今はただのエマさんよ~~」

 

呂律の回らない口調で話すエマと呼ばれた女性。

かなりの量の酒を飲んでいるらしく酒臭い臭いを漂わせながら千鳥足でフラフラだった。

 

「何があったの、あの人・・・」

 

「この艦に乗られてからずっとお酒を飲まれているんです」

 

と、モモカがアンジュに説明すると、

 

「しょ~がないでしょ!!私殺されかけたのよ!同じ人間に・・・同じ人間なのに~~」

 

その言葉で空蝉丸は何となくだが理解できた。

恐らく、彼女の常識が破綻され、その結果酒浸りになったという道筋なのだろう。

 

「だけど、あの人は・・・あの人だけよ、この世界で信じられるのは!!そうよね、ペロリーナ~!!」

 

と、ぬいぐるみを抱きしめるエマ。

そんな彼女に軍医のマギーが呆れながら近寄り、

 

「はいはい、分かったから、それぐらいにしておきな」

 

そう言って彼女はエマを食堂から連れ出すのだった。

 

「中々凄い方でござったな」

 

「いやいや、空蝉丸さんの方が酒癖悪かったですよ」

 

と、感想を言う空蝉丸にタスクが突っ込んだ。

その時、

 

「でも、監査官の言う通りなんだよな」

 

ロザリーが口を開き、そちらの方に意識が向く。

 

「あたし等にとって、信じられるのは司令だけだからな、この世界で」

 

そんな事を切実に言うロザリー。

その言葉は何故か耳に残って仕方ないのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく

 

 




あとがき

今回はここまでにさせてもらいます。
自分の仮説や書きたいことを書いていたら思った以上に長くなったので
ここまでで一度区切ります。

でも、確実にキョウリュウ体操はアンジュの世界に感染を広げる事が出来ています。
このまま行けば・・・

次回は少し荒れるかも知れません。
それを考えれば今から不安なのですが、次回も見てもらえれば幸いです。
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