アウローラ全体が揺れる。
潜水艦が揺れる理由は限られている。
当然だが、海の中で地震など有り得ない。
在るとすれば、艦内部の機器の不具合か、海底の岩石に接触したか。
『ギギィィ・・・』
もしくは、巨大な異形の生命体がアウローラに寄生しているかだった。
未だ揺れ続けているアウローラ。
謎の生物の事はブリッジからジル達の居る部屋へと報告された。
「サラマンディーネさん、これって・・・」
「ええ。恐らく、私達の世界にやって来た異形の者達と同じでしょう」
タスクの問いかけにサラマンディーネが頷く。
それはつまり、
「エンブリヲの仕業ってこと?」
アンジュの言葉にアルゼナルメンバーは驚く。
「どうして、私達の位置が分かったんだい!?」
「最初からバレていたのではないでしょうか?」
ジャスミンの言葉に対して空蝉丸。
「マナによってシステムが人間にアクセルできるのならば、同時に場所も特定する事も可能なのでは?」
この艦の中にはマナが使える人間が二人居る。アンジュの侍女のモモカと元監査管のエマだ。
彼女らがもしも艦の中でマナを使っていれば、逆探知するように場所がバレていても可笑しくない。
だが、問題は。
「なんだって、このタイミングで来たんだ!?」
「ヴィルキスだろ」
マギーの言葉にジルが断言した。
「我々がヴィルキスと合流できたと考えたんだろ」
確信があったのかどうかはわからないが、可能性の高いアウローラに攻撃を仕掛けに来たのだろう。
と、言う事は、
「私らは対した脅威とは思っていないから泳がせた訳かい・・・」
悔しげに呟くジャスミンの言葉はこの艦に乗艦している者全員の思いだろう。
「船を浮上させてください!!」
「バカな事を言うなっ、海上に出れば待ち構えられるに決まっている!!」
「このままでは海の藻屑になります!!」
サラマンディーネの言葉にジルは反論する。
だが、このままでは艦が沈む事を防ぐ事は出来ない。
「海上に出てもらえれば、外に待機させているプテラゴードンに引き剥がす事が可能でござる」
「・・・・どうやら他に道はなさそうだね」
「ジャスミン?」
「この部屋の音声はまだ流れているのかい?」
ジャスミンの問いかけにタスクは頷く。
すると、彼女は声を張りあげた。
「全員、聞こえるかい?聞いた通り、私らは襲撃されている」
彼女の言葉に恐らく艦内の全員が困惑するだろう。
「皆、思うことがあるだろうが、今は目の前の脅威を跳ね除けるのが重要だ」
彼女はそう前置きし、
「艦を海上に浮上させ、寄生している奴を引き剥がす。パラメイル隊は待ち構えているだろう敵の迎撃だ」
と、彼女は艦内の人間たちに呼びかける。
だが、
「従ってくれる人間が居るかしら?」
「しなければ生きられぬかも知れぬでごるからな」
サラマンディーネの言葉に空蝉丸が代わりに答える。
どんなに気が進まなくても、人は生きる為に避けることが出来ないことがあるものだから。
「私はモモカを助けてから一緒に機体で出るわ」
「アンジュ、一緒に行くって・・・!?」
アンジュの言葉にタスクは驚く。
だが、アンジュはそれを無視してサラマンディーネに視線を向ける。
その視線が言っていた。
―――彼女は信用できないと。
当然、その彼女は司令官であり、先ほど空蝉丸を撃ったジルだ。
「駄目だ。アンジュ、お前とヴィルキスはリベルタスの重要な駒―――」
それを裏付けるようにジルはアンジュの出撃を阻止しようとした。
そんな彼女にアンジュは怒りを覚えるのは当然の事で。
「アンタ、この状況でまだ言ってるわけ!?」
「リベルタスを成功させるまで、お前には生きていてもらわねばならんのだ!!」
「バカな事をっ、リベルタスは私が居ないと成功できないんでしょ!!それなのに私の意志は無視するの!?」
「道具に意思等いらん!!」
感情的に言い争いをする両者。
ジルは空蝉丸を撃った銃を向けて脅そうとし、アンジュは手持ちのナイフを引き抜いた。
そうしている間にもアウローラは異形の生物に押しつぶされそうになり、
それを回避しようと浮上していた。
そして、アウローラが浮上しようとする海上には、五機のラグナメイルが上空で待機していた。
その内の一機に乗っているサリアは、
「こんな所にいたのね、アンジュ。それにアレクトラ・・・・」
得物を狙う豹のように、浮上しているアウローラが海上に顔を出す事を今か今かと待ち焦がれているのだった。
今の状況は誰の目から見ても危機的なものだ。
だが、そんな状況にも関わらず、今に殺し合わん雰囲気を出すジルとアンジュ。
そんな殺伐な空気になっている事すら艦内に放送されているにも関わらずにだ。
「いい加減にしないかいっ、アンタ達は!!」
その空気を引き裂くようにジャスミンが二人を一喝した。
ジャスミンの怒鳴り声に二人は肩が飛び上がるほど飛び上がった。
一瞬だけ動きを止める二人を確認してから、ジルを鋭い視線で見る。
「ジル、アンタがリベルタスを重要視している事は理解している。だがね、今は全員が生き残る事が重要だよ」
「ジャスミン・・・」
ジャスミンの視線に対して、恨めし気に彼女を睨むジル。
その間にアンジュは会議室を飛び出し、そのまま減圧室に向かう。
すぐ後に、タスクも彼女の後を追って部屋を飛び出した。
「ジル、アンタは少し頭を冷やしてな。指揮は私が取るよ」
「いや、私が・・・」
「今のアンタに任せる事は出来ないよ」
先ほどの会話が放送された以上、艦内は彼女への疑心が渦巻いているのは容易に想像できるからだろう。
当然、ジルもそれは理解できているが、忌々しい表情は浮かべる。
しかし、納得したと思ったジャスミンは目線でマギーに合図を送る。
ジャスミンの合図にマギーは頷いて、ジルを連れて部屋を出て行った。
その姿を見てからジャスミンは空蝉丸とサラマンディーネに視線を向けて、
「こんな事になって悪かったね」
「全くです」
ジャスミンの言葉に不機嫌そうに答えるサラマンディーネ。
司令官の独断とはいえ、こんな事になるとは思ってもいなかったからだ。
それはジャスミンたちも同じなのだろうが。
「こんな状況だ。話し合いも何もないが、お互いに今はこの状況を打開する為に協力し合わないかい?」
いきなり銃を撃っておいて何を言っているんだ、と激昂されても可笑しくない状況。
正直に言えば、サラマンディーネもそう怒鳴りたい気持ちがないことはない。
だが、それでも今は冷静にならねばと、自らを律していた。
「無論、拙者たちはその心算でござる」
そんな彼女を空蝉丸は代弁し、部屋から出て行く。
その後をサラマンディーネも続いた。
彼が通った道に血痕が線を引いている事に気が付くことなく。
「すまないね・・・」
タスクが仕掛けたマイクが拾えないほど小さなジャスミンの謝罪が部屋にこぼれるだけだった。
海面からは巨大な潜水艦、アウローラの姿が浮かび出ていた。
同時に、艦の上には三葉虫のような甲羅を持った巨大な生物が抱きつくようにアウローラに寄生していた。
その姿を確認したサリアは顔を顰めた。
『うわっ、キモッ』
通信機からクリスの声が流れる。
声には出さないがサリアも同感だった。
エンブリヲからは巨大な生物兵器とは聞いていたが、その見た目はかなり酷い。
だが、次の瞬間、通信機からエルシャの声で、
『あら、結構可愛いと思うけど?』
穏やかな声音で戦慄するような言葉が通信機から流れ、固まった。
『アンタ、マジッ?』
再びクリスの声。
サリアと同じく先ほどの言葉に信じられないようだった。
だが、これ以上は無駄話をしている暇はないと思ったサリア。
「敵艦の浮上は目の前よ。全機、戦闘準備!!」
『『『『YES、ナイトリーダー!!』』』』
今回の作戦では足並みを乱さないように、以前のように戦艦部隊は引き連れていない。
だから、邪魔するものはいないはずだった。
<GABURINCHO!!PTERAGORDON!!〉
自分たちがいる場所よりも上空からその電子音が聞こえてくるまでは。
「っ!?何・・・・」
状況を確認しようとサリアが頭上を確認使用とした時、上空からアンジュ達と一緒にシンギュラーから飛び出てきた機械のドラゴンが自分達へ急速に下降する姿がそこにあった。
「か、各機、回避!!」
大慌てで指示を飛ばすサリア。
自らも大急ぎでドラゴンの突撃を回避する。
その間をドラゴンは突っ切ると、真っ直ぐアウローラへと途轍もない速度のまま突撃する。
たとえ、まだ海面に出ていなくても、あんな速度で突っ込めば激突して粉々に砕けても可笑しくないものだ。
―――ドボォオン!!
だが、ドラゴンは激突するギリギリのタイミングで状態を起こし、巨大だが短い足だけを海に突っ込んだ。
そして、鳥が魚を水から捕獲するように、アウローラに取り付いている生物を捕まえて上空に飛び去った。
一瞬のような出来事に脳内の処理が追いつかないサリアは呆然とした。
『サリアちゃん!!敵艦からアンジュちゃんと他のパラメイル隊が出てきたわ!!!』
エルシャの言葉に現実に引き戻される。
確かに彼女の言葉通り、いつの間にかアウローラは海上に浮上し、そこからパラメイル部隊とヴィルキス。
それにドラゴンが開発した機体も飛び出てきていた。
サリアはそれを見て指示を飛ばした。
「全機、パラメイル部隊と応戦。クリスとエルシャは私と一緒にアンジュを捕らえるわよ!!」
『YES、ナイトリーダー!!』
サリアの指示に他のラグナメイル達から返答が返り、戦いが始まった。
対して、アウローラから飛び出たパラメイル部隊とヴィルキス、焔龍號。さらに、タスクのモービルもあった。
ただヴィルキスにはアンジュの後ろに侍女のモモカの姿があった。
彼女と一緒に戦場に出るのは危険だと思っていたが、また司令官のジルに人質にされるのではと考えるとアウローラに残す事が恐ろしいと感じたからだ。
『本当に大丈夫なの、アンジュ。彼女は俺の方に乗せたほうが・・・』
『大丈夫、私に考えがあるの!!』
と、タスクの提案にアンジュ。
『アンジュ!!』
そこへ後ろから追ってきたヒルダが声を出す。
「ヒルダ、貴女も出てきたの?」
『ああ、他の連中も引き連れてな』
すると、彼女の機体の後ろからヴィヴィアンとロザリーの他に三機を引き連れていた。
正直、アウローラの中にいた戦力が全部出てくれた事が驚いていた。
ジルの言葉、アウローラの中にいるメンバー、彼女の事を信じている者は全員道具だと言っていたからだ。
その反応を察したのか、ヒルダが通信越しに分かる苦笑の反応で、
『まぁ、司令の言葉を聞いて迷っている奴は多いけどよ・・・』
と、ヒルダは背後を飛んでいるロザリーの方を見る。
恐らく、アウローラの中に残っているメンバーにもいるだろう。
だけど、とヒルダは言葉を続け、
『ジャスミンが言っていただろ。司令の事を一先ず置いといて、生き残る為に戦うしかないって』
ジルの事や、今後の事は後で考えると言うことだそうだ。
『そ、その前に、私らが死んだら・・・』
不安げな言葉を口にするロザリー。
そんな彼女にヒルダが、
『弱気になるなよ、ロザリー!!』
『ヒルダ・・・』
だけど・・・と未だに不安なロザリー。
そんな彼女にヒルダは更に言葉を重ねる。
『私らは死の第一中隊だぞ。弱気になるんじゃねぇよ』
『そうだ!そうだ!!』
ヒルダの言葉に鼓舞するようにヴィヴィアンが声を上げる。
その言葉のお陰か、もう弱気を言わなくなったロザリー。
しかし、不安が残っていた。
それは当然、残りの三人も。
『アンジュ・・・。ヒルダ殿とミィは大丈夫でしょうが・・・』
サラマンディーネもその事に気が付いているのか、アンジュだけに通信を飛ばす。
この先の不安を抱えたまま迷いのある戦士と共に戦場に出るのは危険だと。
アンジュもその事を分かっていた。
「ヒルダ・・・。アウローラが安全圏まで行く事が出来ると判断したら退避して」
『あ?いや、言いたい事は分かるけどよ。簡単に行かないだろ?』
「私とヴィルキスが殿を務めるわ」
『はぁ!?何言ってるんだ、おまえ!?』
囮になるというアンジュにヒルダが声を荒げた。
だが、アンジュは冷静に言葉を返した。
「サリア達の、いえ、エンブリヲの狙いも私とヴィルキスよ。だったら、私が囮になれば、全員が逃げる時間ぐらいは稼げるわ」
『だけど、お前!!』
「それにヴィルキスなら、跳んで逃げる事が出来るわ」
言っていることは理解できる。
非常に合理的なことだ。
だが、それを素直に納得できるとかと言えば、答えは否だ。
「じゃあ、そういう事で頼んだわよ!!」
『お、おい待てよ、アンジュ!!』
ヒルダの制止の言葉にアンジュは無理やり通信を切るように敵機に向かって突撃した。
「あ、の・・・自分勝手なイタ姫!!」
そんな彼女の行動に彼女が激昂するのは当然の反応な訳で。
彼女らのやり取りを見たサラマンディーネは苦笑とも微笑とも取れない笑みを浮かべて眺めていた。
だが、
―――ドゴォオオオオオオオオ!!
近くの方から響いた轟音にサラマンディーネはそちらに視線を向ける。
「っ!?そんな・・・」
しかし、彼女の視線の先には信じられないものが広がっていた。
その光景にサラマンディーネが驚愕する少し前。
プテラゴードンがアウローラから三葉虫の形のキメラと呼ばれる生物兵器を引き剥がし、足で捕獲し上空を飛翔していた。
しかし、同じぐらい巨体な敵を捕まえたまま長い距離を跳ぶ事など出来るはずもなく。
プテラゴードンは近くの島にキメラを落とす事になった。
足から離され、重力にしたがって地表に向けて落下するキメラ。
翼のないそいつは背中から無人島に落下。
大量の砂煙を巻き上げて激突することになった。
しかし、甲殻類のような硬い殻を持ったキメラは、落下のダメージなどないかのように立ち上がる。
それも、六本もある鋭い鋲のような爪のついた足を四本地面に付きたて、体を起こして立ち上がって見せたのだ。
持ち上げられた上体には鋭い目のような物が二つ存在し、それが上空に留まるプテラゴードンを射抜きながら、少し下に開いた巨大な口のような穴で威嚇した。
それに対して、プテラゴードンの中で、変身しキョウリュウゴールドとなった空蝉丸。
「ぐっ・・・」
一瞬、何かを堪えるようにマスクの中の表情を歪ませながらも、キメラを正面から見据え、
「カ、カミナリ変形!!」
<PTERAIDENOH!!>
次の瞬間、空蝉丸の言葉に反応するようにプテラゴードンが雷の巨人へと変形を遂げた。
「完成、プテライデンオー!!」
そして、キメラと向かい合うように島へ降り立ったプテライデンオーは両腕に装備されたプテラカッターを構える。
「ギィガァアアア!!」
キメラは真っ直ぐにプテライデンオーへ突進していく。
それを避ける事が出来なかったプテライデンオーは後方へ吹き飛ばされる事となった。
―――ドゴォオオオオオオオオ!!
「ぬぁああああああああっ!?」
空蝉丸の呻き声と共に倒れたプテライデンオーは大量の砂煙を巻き上げる。
だが、空蝉丸はすぐにプテライデンオーを立ち上がらせる。
「はぁ!!」
更に、近づいて来たキメラに左手に装備されたプテラカッターを振るう。
だが、
―――ガギィン!!
甲高い音を響かせ、プテライデンオーが振るった刃をキメラは上体に残った二本の爪で防がれた。
「ぐぬっ・・・」
それだけで苦悶の表情を浮かべる空蝉丸。
それを知ってか知らずかチャンスを逃さぬようにキメラは巨大な口を広げ、そこから青白い光線をプテライデンオーへ放った。
「ギィイイイイイ!!」
「ぬぁあああああああああっ!!?」
再び、空蝉丸の悲鳴と共に大量の火花を上げて後ろへ後退するプテライデンオー。
明らかな劣勢を強いられていた。
その光景を離れた所で観察していたサラマンディーネは、自分の目が信じられないでいた。
プテライデンオーの圧倒的な力は先の戦いで目の当たりにしている。
とても苦戦を強いるような相手には見えないにも関わらず、これだけ追い詰められているなど信じられない事だったからだ。
しかし、彼女の疑問の答えはすぐに見つかる事になる。
後ろに下がらされたプテライデンオーが右の肩を庇うように抑えた光景を目の当たりにして。
「はっ!?」
瞬間、サラマンディーネの脳裏で全ての事が繋がった。
プテライデンオーのあの動きは中の空蝉丸をトレースしたもの。
つまり、空蝉丸が右肩を庇っているのだ。
―――あの時!!
サラマンディーネの脳裏に先ほどの会議室でジルが放った凶弾が空蝉丸の肩に当たったビジョンが再生される。
それもサラマンディーネを庇った結果受けた傷だ。
思えば、銃弾はまだ彼の肩に残ったまま取り出せる状況でもなかったし、空蝉丸は気力でそれを悟らせぬほどの態度を取っていた。
だが、やせ我慢である事に代わりはない以上、限度がある。
「戦える体のはずがない・・・・」
『サラ子!!』
「アンジュ!?」
島の方の戦闘に気を取られているとアンジュが通信を飛ばしてきた。
『ここは良いから、言ってあげなさい!!』
「で、ですが・・・!!」
こちらも五機のラグナメイル相手に余裕などない。
手土産に持ってきたビームライフルもまだ装備されていないのだ。
だが、アンジュは強くサラマンディーネに言葉を放った。
『良いから、行きなさい!!そんな状態でいられても邪魔なだけよ!!』
「っ!?」
『アンジュの言うとおりだよ!!』
「ヒルダ殿!!」
アンジュの言葉に賛同するようにヒルダも声を上げる。
『生憎、私らとドラ姫様で連携を取ることが出来ないんだ。居ようが居まいがそんなに代わらないよ』
明らかな強がりであることは明白だ。
だが、彼女の言うように、ヒルダとミィ意外はジル同様にサラマンディーネに不信感を持っている。
それでも戦線を離脱して良い状況ではないんだが。
『アイツは貴女の騎士なんでしょ!!だったら、貴女もアイツの力になってあげなさいよ!!』
「っ!?」
アンジュのその言葉にサラマンディーネは決心した。
「皆さん、ありがとう!!」
自らの機体を戦闘機形態に変形さえ、プテライデンオーの元へと向かう。
その背後を一機のラグナメイルが狙うが、
「おっと、サラサラさんの邪魔はさせないのだ!!」
「ありがとう、ミィ」
ミィの機体が弾幕を張り、それを防いだ。
それを確認にしたサラマンディーネはもう一度礼を述べるのだった。
一目散に空蝉丸の元へと向かうサラマンディーネ。
彼女の機体ではあの巨体に効く兵器は収斂時空砲ぐらいで、援護らしい援護をする事が出来るか不安がある。
だが、それでも彼の元に向かわずには居られない。
足手まといになるかもしれないが、それでもじっと見守る事は出来ない。
なぜならば、彼が傷ついたのはサラマンディーネの落ち度だからだ。
自分が未熟な結果、空蝉丸は撃たれた。
彼自身は、自分が未熟だからだ、と答えるだろう。
自分はサラマンディーネの騎士、ゆえに守るのが当然だと、言ってくれるだろう。
だが、それを納得する事など、出来ない。
空蝉丸が自分を守ろうとするように。
同様に、自分も空蝉丸を守りたいのだ。
力になりたいのだ。
「だから、お願い焔龍號。力を貸して・・・」
その言葉に、いや願いに答えるかのように彼女の額の石が光りだした。
「え?」
突然の現象に驚き、呆然となるサラマンディーネ。
しかし、石は彼女の額で輝きを増すと、光だけが石から離れ、それは彼女の手の中へと収まった。
「これは・・・」
手を広げて確認すると、そこには細い円柱型の物体があった。
「まさか・・・獣電池?」
そうそれは空蝉丸が見せてくれた恐竜たちの魂が込められた電池にそっくりだった。
真っ赤な熱い焔のような電池。
それを見てサラマンディーネの顔が綻んだ。
「ありがとう、焔龍號。お前も一緒に戦いたいのですね」
その問いかけを肯定するように電池はキラリと輝きを放つ。
そして、サラマンディーネは顔を引き締めた。
その目の前には、撃たれた肩の痛みを堪えながらも果敢に敵と対峙する空蝉丸の姿があった。
「空蝉丸殿!!」
プテライデンオーの頭上付近でサラマンディーネが叫ぶ。
「サラマンディーネ殿?」
この状況で一体何をと困惑する空蝉丸。
しかし、彼女の視線は真っ直ぐと捕らえていた。
「戦いましょう、共に!!」
獣電池を手にサラマンディーネ。
二人の間には距離と機体の外壁があり、互いの姿は正確には見えなかった。
だが、空蝉丸にはサラマンディーネが何を考えているのか、何をしようとしているのかが分かった。
「うん!!」
そして、それが上手く行くと、直感したように頷く。
サラマンディーネもまた空蝉丸の姿が見えたかのように頷き返し、
「お願い、私の願いに答えて!!ブレイブ、イン!!」
獣電地にブレイブを込め、それをプテライデンオーに放り投げた。
投げられた電池はプテライデンオーに向かいながら、巨大化し、胸のプテラゴードンの口へと装填された。
<GABURINCHO!! BETELGEUSE(ベテルギウス)!!>
「「カミツキ合体!!」」
その瞬間、先ほどの劣勢を吹き飛ばすような陽気な音楽が響き渡り、焔龍號が今までに見せた事のない形態へと変形をする。
巨大な右手へと。
そして、プテライデンオーの右の肘から下が分離すると、その部分に右手となった焔龍號がくっ付き、合体が完了した。
瞬間、金色だったプテライデンオーの体に焔のような赤い紋様が浮かび上がり、新たなプテライデンオーの姿が光臨するのだった。
そして、コックピットの空蝉丸の隣にサラマンディーネの姿が転送された。
「サラマンディーネ殿・・・」
空蝉丸が彼女に視線を向けると彼女は微笑みながら頷く。
「共に戦いましょう、空蝉丸殿」
「はい。もちろんでござる!!」
彼女との絆によって生まれた新たなカミツキ合体のお陰か、先ほどまでの痛みが軽く感じる。
力が湧いてくる事を空蝉丸は感じながら、彼女と共にキメラのほうを向いた。
「「完成!プテライデンオー・ヒート!!」
装備された右手はビームライフルが装備されていた。
だが、変わった事に気が付いていないかのようにキメラは巨大な口を開き光線を放った。
「ふん!!」
しかし、それはサイドステップで回避した。
「ハァ!!」
サラマンディーネの気合と共に右腕のビームライフルを放った。
その攻撃は一直線に直撃した。
「そこだ!!」
怯んだ瞬間、好機と見た空蝉丸。
そのままプテライデンオーは距離を詰めて、左手の刃で一閃した。
「ギィ・・・」
完全に決まった刃。
そして、振り返りながら、力を込めながら右の手を引く。
その手には巨大な剣が握られていた。
背中を向けるキメラは硬い甲羅があるのだが、
「隙あり!!」
サラマンディーネの言葉と共に剣を突き立てる。
すると、甲羅を貫き、キメラを串刺しにした。
「決めるでござるよ!!」
「はい!!」
剣を引き抜きながら、バックステップで距離を取る。
そして、止めを決める。
「「プテライデンオー・ヒート!!ブレイブ・フィニッシュ!!!」」
瞬間、胸のプテラゴードンの口から雷が放たれる。
それを浴びたキメラは感電し、動きを止める。
そして、右手に剣を握りながら、ビームライフルのエネルギーが刃に集中し、ヒートブレードのように真っ赤に熱せられた刃が伸びた。
「斬!!」
「成敗!!!」
そのまま右手を振るい伸びた刃でキメラを真っ二つにし、キメラを爆散させたのだった。
あとがき
遅くなってすみません。
今回は少し不安です。
大丈夫ですよね・・・
サラマンディーネの機体もラグナメイルと同じだし・・・
ラグナメイルは搭乗者の想いに答える機体だから、サラマンディーネの力になりたいという想いに答えてカミツキ合体できたという事で。
それで駄目なら、ラグナメイルには獣電竜を研究した技術を使っていると言う設定を作ればいいですよね・・・
本当は獣電池の音声も、火の女神の名前にしたかったのですが良いのが見つからなかったので、
パズドラに出てくる焔の機械龍の名前にしました。
何か妙案があったら教えてください。
・ ・・・こんな感じで感想が荒れないか、心配なのですが・・・・
次回も読んでくれたら幸いです。