クロスゴールド 雷鳴が奏でる輪舞   作:愛剣

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第二部になります


第二十話

アウローラから出た空蝉丸はプテラゴードンを呼び出し、その背にヒルダ達のパラメイル三機とサラマンディーネの龍神器を乗せてミスルギ皇国へ飛来していた。

当初の作戦では空蝉丸達が囮となり、後からタスクがアンジュを助ける予定だったのだが。

 

「全く、これじゃ作戦が台無しじゃないか」

 

「まぁ、そう言うなよ。ロザリー」

 

悪態をつくロザリーをヒルダが宥める。

 

「ふふふ・・・・アンジュが大人しく捕まっている訳がないじゃないですか」

 

私は分かっていましたよ、とサラマンディーネは笑いながら「それにしても・・・」とヴィルキスのアンジュに視線を向けながら、

 

「一日かそこらで随分とみすぼらしくなられて、それに何だか臭いますわね。ねぇ、ミィ?」

 

「え?そういえば、ハッキリ臭うような・・・?」

 

『なっ!?』

 

「・・・いい性格しているな、アンタ」

 

「私は好きだけどね」

 

掴まっている間風呂など入れるはずないので、体臭を気にしていたアンジュをなじるようにサラマンディーネがなじれば、純粋なヴィヴィアンが同意する。

そんなサラマンディーネの性格にロザリーが引くが、ヒルダは賛同の笑みを浮かべる。

 

『あの、サラマンディーネ殿・・・。あまり長居は・・・』

 

「はい。分かっております」

 

そんな中でプテラゴードンの中にいる空蝉丸が居心地の悪そうに声をかけると、サラマンディーネは笑顔のままアンジュに向けて言葉を紡ぐ。

 

「アンジュは真っすぐ艦に向かってください。途中に待機しているパラメイルがいますから、彼らと合流を。我々が援護しますから」

 

『ええ。分かったわ』

 

サラマンディーネの言葉を聞いて、アンジュはヴィルキスを操りその場をその場を後にする。

その後をラグナメイル四機が追おうとするのを見、

 

「では、我々は彼らを。準備はよろしいですか、お嬢様方?」

 

「「なんでお前が仕切ってるんだよ!!」」

 

サラマンディーネの言葉にヒルダとロザリーが声を荒げる。

しかし、逆らうつもりは無いらしく、クリス達に向かおうとする。

 

「およ?ねぇ、皆!!アレ!!!??」

 

ヴィヴィアンが指さしながら声を上げる。

 

 

その方角にはサラマンディーネの世界を襲撃した虫のような怪人が無数に蠢くように飛んでいる。

そして、次の瞬間、虫たちは一個体に集合し巨大な生命体に変異を遂げた。

その数、十体。

 

「なっ、あんなのまで出てきやがった!!?」

 

「ビビるな、ロザリー。想定していた事だろ!!」

 

怯んでいるロザリーに、ヒルダが喝を入れる。

そう彼女らは心配する事は無い、そう考えながら空蝉丸は言葉を紡いだ。

 

『アレの相手は拙者が』

 

「私も手を貸します。ヒルダ殿たちはアンジュを」

 

「分かった。行くぞ、ロザリー、ヴィヴィアン!!」

 

サラマンディーネの言葉にヒルダは頷き、ロザリーとヴィヴィアンを連れて行く。

 

「ビームライフルのエネルギー残量に注意してください!!」

 

「了解!!!」

 

戦闘機形態になりながら飛び立つ三機を見送りながら、サラマンディーネは空蝉丸と共に十体の大型キメラに対峙した。

 

『行きますぞ、サラマンディーネ殿!!』

 

「はい!!」

 

『「カミツキ合体!!」』

 

瞬間、小意気なサンバの音色と共に、プテラゴードンが変形し、焔龍號も右手へ合体した。

 

「「完成!プテライデンオー・ヒート!!」

 

ミスルギ皇国の大地に降り立った、金色に焔の紋様を纏うプテライデンオーと十体のキメラが向き合った。

 

 

 

 

 

 

そして、ヒルダ達もアンジュを追いかけているラグナメイル部隊に追撃を仕掛けていた。

 

「クリス!!アンジュは貰っていくよ!!」

 

人型形態に変形しながらクリスに突っ込むヒルダ。

肉薄し剣を振り下ろすが、クリスも変形を遂げ剣を応戦する。

だが、その視線は冷ややかなものだった。

 

「アンジュの事は助けるんだ・・・」

 

「は・・・?」

 

「クリス?」

 

クリスの言葉にヒルダとロザリーは困惑する。

 

「私の事は・・・見捨てた癖に!!!」

 

「なっ!?」

 

「ヒルダ!!?」

 

激昂するクリスの猛攻にヒルダは吹き飛ばされた。

 

 

 

 

 

彼らの様子は離れた所で戦っていた空蝉丸とサラマンディーネにも見えていた。

 

「くっ、やはり状況は芳しくないでござる」

 

プテライデンオーの左手に備え付けられたプテラカッターでキメラの一体を斬りつけ倒す。

だが、アンジュを逃がすには彼らを援護する必要があった。

 

「空蝉丸、少し試したい事があるのですが・・・」

 

早く援護に向かわなければ、と考えているとサラマンディーネが言葉をかけた。

何か考えがあるのでござるな、そう考え空蝉丸は頷く。

すると、微笑みながら口を開き、紡いだ。

 

星の歌を。

 

「~~~~♪♪」

 

サラマンディーネが歌えば、それに呼応してプテライデンオーの焔の紋様が赤く輝く。

そして、その両手を前に空間を歪ませる程のエネルギーが収束し、収斂時空砲とは比べ物にならない程のエネルギー派が放たれ、十体のキメラを飲み込み蒸発させてしまった。

 

 

「・・・・・・・」

 

その凄まじい威力に空蝉丸は呆然とする。

ギガントキョウリュウジンの“オールギガントフィニッシュ”程では威力は無いが脅威的な破壊力だった。

だが、今は立ち止まっている暇はない。

 

「これで援護に行きますぞ」

 

「はい!!」

 

アンジュの逃がすヒルダ達の手助けをするために行こうとプテライデンオーを動かそうとする。だが、

 

「ぬぁっ!?」

 

「きゃっ!?」

 

振り返った時、プテライデンオーの背中を何者かの攻撃が撃った。

見る、そこには新たな大型キメラの姿があった。

いや、それだけでは無い。

宮廷のある部分から小型のキメラの集団が絶えず飛び出し、次々と大型が形成されていた。

 

「・・・やはり、儘ならぬ状況でござるな」

 

「でも、引く気はありません」

 

「無論でござる」

 

またも十体の大型キメラが形成される。

だが、未だに小型は絶えず地上へと出てきている。

恐らく、アンジュを追っているのだ。

 

「エンブリヲ・・・っ」

 

悔し気に呟くサラマンディーネ。

流石に、この戦力差はまずい。

このままでは、アンジュは逃げ切れない。

ヒルダ達も全滅するかもしれない。

そんな焦燥感を感じているとその時だった。

 

空に赤紫の紫電が迸り、特異点が解放された。

 

「サラマンディーネ様!!」

 

「姫様、ご無事ですか!?」

 

「ナーガ!!カナメ!!」

 

そこを通って、ナーガとカナメが龍神器に乗って現れた。

その背後には十体の大型ドラゴンと、二十の小型ドラゴンを連れている。

恐らく、リザーディアが解放してくれたのだろう。

ならば、とサラマンディーネは素早く二人に指示を飛ばした。

 

「カナメ、ナーガ、この場を任せていいですか?」

 

「「はい!!」」

 

頼もしい返事を聞き、サラマンディーネはプテライデンオーから焔龍號を分離させ、そのままアンジュの元へ飛び立とうとする。

それを見て慌ててナーガが声を出した。

 

「空蝉丸殿も姫様と共に言ってください!!」

 

「ナーガ殿・・・承知仕った!!」

 

プテライデンオーの変形を解き、地上に降り立った空蝉丸はディノチェイサーを出現させる。

 

「プテラゴードンを置いていくでござる」

 

「はい、姫様を頼みます」

 

「うむ!!」

 

カナメの頼みに頷き、空蝉丸は大地を駆けた。

その後をサラマンディーネも追いかけながら、

 

「カナメ、貴女は兵と共にミィ達を援護しながら、リザーディアの回収をお願いします!!」

 

「はい!!」

 

「ナーガ、貴女は残りの兵を連れて、虫たちの出入り口から入って少し調べてください(もしも、アレ等が私の考えている通りなら)」

 

「分かりました!!」

 

「それから二人とも、無理はしてはなりませんよ。敵の兵力は我々の予想以上のようです。まずは情報を集め改めて策を練るのです」

 

「「はい!!」」

 

素早くサラマンディーネは指示を飛ばすと、二人の返事を聞いてから飛び出した。

その後、カナメとナーガは大型キメラを大型のドラゴンに任せ、サラマンディーネの指示に従った。

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、サラマンディーネ達からかなり離れた所まで飛んでいた。

 

「モモカ、追手は?」

 

「今の所は大丈夫です」

 

モモカの言葉を聞いて少し安堵するアンジュ。

だが、それも些細な間であった。

 

「アンジュリーゼ様!?」

 

「え?」

 

モモカの叫び声を聞き、背後を見れば無数の小型のキメラがアンジュの方へ迫っていた。

 

「なっ!?」

 

キメラの群れを目視し、アンジュの表情が強張る。

小型とはいえ、その大きさは人と同じぐらい。

その群れが一気にヴィルキスに乗るアンジュ達に突っ込んできた。

 

「きゃあああああああ!!!」

 

「アンジュリーゼ様!!!???」

 

突撃を受けて操作を誤ったアンジュはヴィルキスを真下にあった公園の湖に突っ込ませてしまった。

幸いにもアンジュとモモカに怪我はなかったが、ヴィルキスは湖に沈んでしまった。

だが、今のアンジュにはそれを引きかげる事が出来ない。

何故なら、

 

「疲れただろ、アンジュ?」

 

「っ!?」

 

湖から出たとき、アンジュの身体が強張った。

 

「・・・エンブリヲっ」

 

「駄目じゃないか、アンジュ。勝手に抜け出したりしたら、それとも―――」

 

 

―――お仕置きしてほしかったのかい?

 

「っ!?」

 

人差し指を向けてトラウマとなっている仕草でアンジュの身体を怖がらせる。

 

「アンジュリーゼ様!?」

 

「え?」

 

モモカの悲鳴を聞き気がついた。

空は今も覆わんばかりのキメラが蠢いているのだ。

悲鳴の方を見れば、その中のキメラが地上に降りてアンジュに迫っていた。

 

「さぁ、城に戻るよ。私も手荒な真似はしたくない、素直に戻ってくれるね」

 

「嫌に決まってるでしょ、ゲス男!!」

 

「ふふふ・・・強情な花嫁だ。だが、私の妻となる女性がそんな言葉を使うものじゃないよ」

 

そう言って、芝居がかった仕草でキメラに命令を下そう著したとき、

 

「伏せてアンジュ!!」

 

聞こえて来た声に従って、アンジュはモモカと共に身を屈める。

その瞬間、エンブリヲに銃弾の雨が降り注いだ。

 

「タスク!?」

 

モービルに乗るタスクの姿を目視し、アンジュは本日最大の歓喜を上げた。

そして、タスクはアンジュに迫っているキメラをモービルで撥ね飛ばすと、空蝉丸から貰ったガブリボルバーの引き金を引き、キメラたちを撃ち倒した。

 

「アンジュ、遅くなってごめん!!」

 

モービルから降りながらガブリボルバーの引き金を引き続け、迫るキメラを撃ち倒し続ける。

 

「君たちはこれに乗って逃げてくれ。空はこいつ等が多いから低空飛行で飛ぶんだよ」

 

「タスクは?」

 

「俺は、こいつ等と―――」

 

二人をモービルに乗せ、タスクは首を横に向ける。

 

「アイツを食い止める」

 

視線の先には何食わぬ顔で先ほど殺したはずのエンブリヲがそこにいた。

こちらを嘲るように微笑みながら歩み寄ってくる。

 

「早くいくんだ」

 

「う、うん。気を付けて!!」

 

顔を強張らせるアンジュに向けて言葉を放つと、彼女は頷いてモービルを発進させた。

滑空するモービルをエンブリヲは微笑みながら見送ると、鋭い視線をタスクに向けた。

 

「私たちの繋がりを引き裂くつもりか?覚悟は出来ているんだろうな・・・」

 

繋がりがあるなら逃げたりしないだろ。

一体、何時誰とお前が繋がったんだ、と思いながらタスクも鋭い視線をエンブリヲへ向かった。

 

「それは俺の台詞だ。アンジュの騎士としてお前を許さない!!」

 

「アンジュの騎士?」

 

訝しげな表情を向けるエンブリヲ。

だが、先ほどアンジュが言った名前で、目の前にいる男の言葉の意味を理解した。

 

「そうか。貴様が・・・」

 

アンジュの心の支えとなっていた存在。

それを理解した時、エンブリヲの表情が加虐的な笑みに歪む。

 

「貴様がアンジュの心にのさばるウジ虫か。ならば、お前の存在そのものを消し去るまで・・・」

 

「消えるのはお前だ!!」

 

「っ!?」

 

エンブリヲの眉間に向けてガブリボルバーを放つタスク。

悲鳴も上げずにエンブリヲは崩れ落ちた。

だが、

 

「くっ・・・」

 

苦々しい表情でタスクが横を見れば、やはり無傷のエンブリヲが何食わぬ顔で立っている。

 

「サルには無駄だという事が理解できないのか?」

 

侮蔑するような感じで笑みを浮かべるエンブリヲ。

そして、タスクを指さしながら、「やれ」と短い命令を告げると、それを覆っていたキメラたちがタスクに向かって突撃してきた。

ガブリボルバーの連射速度ではとても対応できないかもしれない数。

それを目の当たりにしてタスクは身体が強張った。

出来ることは向かってくるキメラ一体一体の軌道を読んで回避するしかない。

そう考えて身構えたとき、

 

「斬!!!」

 

<ZANDARTHUNDER!!>

 

掛け声とともに放たれる雷の斬撃がタスクに向かうキメラたちを一掃した。

その直後、タスクの隣にキョウリュウゴールドとなった空蝉丸が降り立った。

 

「大丈夫でござるか、タスク殿?アンジュ殿はご無事で?」

 

「空蝉丸さん、俺は大丈夫です。アンジュは先に逃がしました」

 

タスクの言葉を聞いて安堵した空蝉丸。

 

「タスク殿、その者が・・・」

 

「はい。エンブリヲです」

 

「あの者が・・・」

 

自分たちの敵の姿を確認した空蝉丸はゆっくりとザンダーサンダーを構える。

だが、エンブリヲは突然現れた空蝉丸の姿に驚くよりも何処か納得した表情をしていた。

 

「なるほど、キメラたちを倒した戦士は貴様だったか」

 

「キメラ?」

 

「そう。私が作り出した意思を持たない都合の良い生命体さ。今の彼らの様に」

 

直後、周りの茂みからミスルギ皇国の人々がゆらりと出て来た。

 

「これは・・・」

 

ゆらりと幽鬼のように虚ろな瞳で不気味に歩く人々の姿に不審な目で見る空蝉丸。

 

「マナを扱うことのできる人間は皆私の支配下にある」

 

こちらに向かう人間の一人が言う。

だが、それは彼の意思ではない。

その隣に浮かんでいるマナのモニターに映るエンブリヲが話しているようだ。

だから、戦闘が始まっているにも関わらず、町が騒がしくならないのはそう要素もあるのだろう。

 

「アンジュの元にいる侍女も私の支配下に落すこともできる。果たして、この人間たちまで傷つける事ができるかな」

 

「くっ、卑怯な・・・」

 

流石に操られている人間に刃を向ける事に迷う空蝉丸。

しかも、人間だけでなく、キメラも一緒になってこちらに迫ってくる。

人を殺さぬように手加減した攻撃では、キメラを倒す事は出来ない。

人を避けて本気でキメラだけを狙おうにも、エンブリヲが操って上手くいかないだろう。

 

「ラァアアアアアアアアアア!!!!」

 

空蝉丸が対策を練っている時、上空から咆哮が放たれる。

その咆哮はエンブリヲに操られた者のマナを見出し、入り込んだエンブリヲの意思を砕き、気絶させた。

 

「サラマンディーネ殿!?」

 

空蝉丸が顔を向けると、龍神器に乗るサラマンディーネが微笑みを浮かべると、そのまま空蝉丸達の元に飛び降り着地した。

そして、エンブリヲを鋭い視線で睨んだ。

 

「エンブリヲ・・・」

 

「フン、ドラゴンの姫か」

 

鬱陶し気にサラマンディーネを見るエンブリヲだが。

サラマンディーネの方は憎悪のような目でエンブリヲを見る。

 

「・・・よくも、我々の同胞たちを・・・」

 

「サラマンディーネ殿?」

 

「ふふふ・・・なるほど。その様子では理解したようだな。キメラの生成法を・・・」

 

「くっ」

 

勝ち誇ったよう表情を作るエンブリヲにサラマンディーネは明確な殺意を向ける。

 

「如何なさったのでござる、サラマンディーネ殿?」

 

「サラマンディーネさん?」

 

「・・・先ほど、キメラと呼ばれる生物が出て来た所を調査したナーガから報告を受けました」

 

訝し気に問いかける空蝉丸とタスクの言葉にサラマンディーネは忌々しげに口を開いた。

 

「我々の世界に侵略しに来たキメラの身体をドクターに調べてもらいました結果と同じでした。アレは・・・私たちの同胞の身体を使って作られた生物です」

 

「感謝してほしいぐらいだな」

 

サラマンディーネの言葉を切って、エンブリヲが言葉を紡いだ。

 

「ドラゴニウムを取った後の生ゴミを再利用しただけではないか」

 

「生ゴミですって・・・」

 

エンブリヲの言葉にサラマンディーネは腰の刀を抜き、今にも飛び掛からんばかりに睨む。

同じく、空蝉丸とタスクも嫌悪する。

しかし、エンブリヲは変わらず優越感のある笑みを浮かべながら、

 

「それにキメラの材料はドラゴンの死骸だけでない。ノーマを生んだ親や私に不都合な人間も合成している」

 

そして、「あぁ・・・」と思い出したように、

 

「そういえば、旧世界のテロリストの真似ごとをするサル共も合成したかな」

 

「なっ!?」

 

エンブリヲの言葉に驚くタスク。

エンブリヲの言うサル共というのは間違いなくタスクの仲間だろう。

 

「何を怒っているんだ?さっきも言ったが、何の役にも立たないゴミを価値ある物に変えているんだから。もっとも、アレ等のすでに君たちが倒したかもしれないがな」

 

「き、貴様!!!」

 

「タスク殿!!」

 

エンブリヲの言葉に激昂し飛び掛かろうとするタスクを空蝉丸が手で制す。

 

「タスク殿の気持ちは痛いほどわかります。しかし、タスク殿の役目はアンジュ殿を守る事。それを果たすことが、仲間の思いに答える事が出来るはず」

 

「空蝉丸さん・・・」

 

「ブレイブイン!!」

 

<GABURINCHO!!DEINOCHASER!!〉

 

ガブリチェンジャーに獣電池を装填し、ディノチェイサーを出現させる空蝉丸。

 

「これに乗ってアンジュ殿を追ってくだされ」

 

「でも・・・」

 

「この場は私と空蝉丸が引き受けます。ですので、タスク殿はアンジュをお願いします」

 

この場に二人を残すことを心配するタスクにサラマンディーネが言う。

その言葉を聞いて漸くタスクは決心したように頷き、ディノチェイサーに跨る。

 

「わかりました。ありがとうございます!!この場はお任せします!!」

 

タスクの言葉に空蝉丸とサラマンディーネが頷くのを確認してから、ディノチェイサーを発進させた。

それをエンブリヲは止めなかったが、辟易とした表情を浮かべる。

 

「やれやれ、全く理解できないな。何故、こんな無駄な事に命を懸けるのか」

 

「無駄な事ですか?」

 

「その通りさ。人間は邪悪で愚かな種族だ。そのまま突き進めれば、自らを滅ぼしてしまう程の劣等種。そんな生物は私のような統率者が正しく導いてやらなければならない。それを分かろうとしない旧世界の野蛮なサルに力を貸すなど無意味だと思わないかね」

 

「思わんでござる」

 

エンブリヲの言葉に空蝉丸は自信をもって答える。

その答えにサラマンディーネも同意する。

 

「お主の言う通り。確かに、人間には悪い面はござる。だが、全ての人間がそうではなかった。必ず良い面を持つ人間もいた。なれど、そういう面を消したのはお主が行ったマナによる精神支配ではないか!!」

 

人が生まれ、年を重ねる毎に道徳心などが成長する。

だが、マナが人の精神に干渉するのならば、その成長する道徳心は全てエンブリヲに都合の良い物になるのが通り。

つまり、何故ノーマが悪なのか、という考える力を奪う事。

自分で考え、自分の意思のないのに何故人が発展できるのだろうか。

それを奪ったのは、他でもないエンブリヲだ。

 

そう空蝉丸が責めるが、エンブリヲは笑みを浮かべたまま、

 

「確かに、マナを使った人の管理は上手くいかなかった」

 

だから、

 

「それを踏まえれ、次は上手く作るとするさ」

 

「次とは、どういう意味です?」

 

「ふふふ、君の世界とこの世界を一つにする」

 

「なっ!?」

 

エンブリヲの言葉にサラマンディーネが絶句する。

 

「アウラとマナを使い、二つの異なる地球を一つに合成し、新たな世界を。いや、真の理想郷を作るのさ」

 

「そんな事をすれば、どちらの世界の人類も滅んでしまいますわ!!」

 

「その通り。だが、その結果、世界は綺麗に生まれ変わる。その理想郷に私が完璧な新たな人類を作り上げるのさ。アンジュと共に・・・」

 

狂った様に自らに酔いしれながら語るエンブリヲ。

だが、

 

「ふざけるなっ!!!?」

 

空蝉丸の恫喝が周囲一帯に響き渡る。

余りの怒りにキョウリュウスーツが帯電し、紫電が迸る。

 

「この世界を上辺だけを薄っぺら嘘で塗り固めたにしておいて何を言う!!お主が言った世界は理想郷などではない!!お主の都合が良い箱庭ではないか!!!」

 

今、ハッキリと空蝉丸には分かった。

この男は世界を背負うような器などではないという事が。

 

「よく聴け、エンブリヲ!!真の指導者が行うべきこと、それは自分が導く民を慈しむ心を持つことだ!!」

 

「慈しむだと?」

 

「そうだ!!強い者も、弱い者も、善人だろうと、悪人だろうと、指導者は全ての民を我が子の様に包み込む存在でなければならい!!お主の言ったどうしようもない者だろうと、親の様にその者を叱り、その者の短所を正し、長所を伸ばしてやる、それが指導者だ!!だが、お主はマナと言う力を使い、人間の長所も短所も潰した。人間を理解していないお主が統率者を名乗るなど、おこがましいにも程がある!!!!!」

 

戦国時代で優れた主君に仕えたゆえの恫喝だった。

その言葉は人の上に立つ立場のサラマンディーネにも深く響いた。

しかし、エンブリヲは自分の考えをただ否定しただけど捉え、

 

「下らん・・・・慈しむ心だと?全くもって下らない!!!所詮は、サルを庇う愚かな存在。私の崇高な考えなど理解できるはずがない!!」

 

「人はサルではござらん・・・・何より、命の尊さを理解しようともしないお主に、人を悪く言う資格などない!!!!」

 

そして、空蝉丸はザンダーサンダーをエンブリヲへ向ける。

 

「お主の身勝手な計画など、拙者たちが必ず食い止める!!!」

 

空蝉丸の宣言と共に、サラマンディーネも自らの手にある刀を強く握りしめた。

そんな彼らをエンブリヲは鼻で笑いながら、

 

「私の計画をお前たちごときに止められるものか」

 

言いながら、エンブリヲはスーツの背広からアンティークなデザインのピストルを取り出す。

観賞用のような実戦に不向きな金色の銃だったが、武器であることに変わりないため空蝉丸もサラマンディーネも警戒する。

 

「あいにく私は忙しいのだ。君たち如きに構ってはいられないのだよ」

 

「なっ!?」

 

そう言って、エンブリヲは自らの米神を撃ち抜いた。

 

「いけません!!」

 

慌てた様子でエンブリヲに駆け寄るサラマンディーネ。

しかし、そこには倒れてなければ可笑しいエンブリヲの身体が存在していなかった。

 

「やられました。アンジュの元に向かって・・・・」

 

「サラマンディーネ殿!!?」

 

「はっ!?」

 

自分たちの失態に悔しさから表情を歪ませたサラマンディーネだが、空蝉丸の声によって気が付いた。

だが、遅い。

自分の方へ向かってキメラの一体がナイフのような爪を突き立てようとしている事に気が付くのが遅れた。

回避が間に合うタイミングではなかった。

空蝉丸もサラマンディーネを助けようとするが、やはり間に合わない。

 

「くっ・・・」

 

覚悟を決めて身構えるサラマンディーネ。

だが、その刃はサラマンディーネの肌に触れることはなかった。

 

―――グォン!!と言う空気が震える轟音と共に、

 

「ギガっ!?」

 

おぞましい悲鳴のような声がサラマンディーネの耳に届く。

その後、何かが鈍い音を立てて地面にバウンドし、

 

「あなたは・・・・」

 

「え?」

 

困惑する空蝉丸の声にサラマンディーネは呆然と目を開けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、皆のお陰で先に進むことが出来たアンジュは、キメラ達を振り切り、低空飛行を止めて、漸く海岸が見える所まで来ていた。

 

「見て、モモカ!海よ!!!」

 

もう少しで逃げ切れるという事にアンジュは表情を明るくさせた。

だが、

 

「も、モモカっ?」

 

突然モモカが操縦グリップを握るアンジュの手へ自らの手を伸ばし、モービルをどんどん降下させていく。

 

「ど、どうしたの、モモカ!?」

 

明らかに様子の可笑しい事に驚くアンジュだが、すぐにモモカが操られている事に気が付く。

そして、このまま降下していき、着陸するであろうポイントを見ると、

 

「っ!?」

 

顔が引きつり、息を飲んだ。

着陸する地点にはテーブルで紅茶を楽しむエンブリヲの姿があったからだ。

 

 

 

 

 

「怒った顔も中々そそられるよ、アンジュ」

 

モービルが着陸し、アンジュが自らの前に立つと、優雅な仕草で立ち上がりながら微笑みを浮かべるエンブリヲ。

だが、その表情が一瞬、

 

「何故、私を拒絶するのだい?」

 

「あぐっ・・・」

 

表情を憤怒に変えながら、アンジュの背後にテレポートの様に回り込み、彼女の腕を掴み背中に回した。

苦痛の表情をアンジュが浮かべるが、お構いなしにエンブリヲは問いかける。

 

「あの男が原因か?」

 

「うぅぅ・・・」

 

「やめろ!!」

 

苦しさで答える事の出来ないアンジュの元にディノチェイサーを操るタスクが駆けつける。

鋭い視線をエンブリヲに向けるが、相手は全く怯まない。

 

「アンジュを返せ!!」

 

「フン!!」

 

それどころか、タスクの言葉を笑いながら、顎でエンブリヲが合図を送ると、

 

「モモカ!?」

 

アンジュの侍女であるはずのモモカが何時の間にか剣を手にしてタスクに襲い掛かった。

すぐに、エンブリヲに操られている事を理解したタスクだが、モモカを傷つける訳にはいかず、斬りかかる剣をナイフで受け止めることしか出来なかった。

 

 

「彼女の身体能力を限界まで高めた!!身の程知らずの愚かな男の末路を見ているがいい!!」

 

そうエンブリヲは、押さえつけているアンジュに言う。

その言葉通り、モモカの動きは常人のものと呼べるものではなかった。

 

「やめて、モモカ!!」

 

「無駄だよ、創造主の命令には抗えないのだから」

 

悲痛な声で叫ぶアンジュにエンブリヲは勝ち誇った声で言う。

違うと否定するアンジュの瞳に涙が溜まっているのを見ながら、タスクは悔しさで表情を歪ませた。

 

 

 

本当に悔しのだ。

 

アウローラを出発する前、飛び出そうとするアレクトラを空蝉丸達と共に捕まえ、医務室で彼女から以上を聞いていた。

 

リベルタスの際、アレクトラだった彼女はエンブリヲに捕まった。

そして、エンブリヲに誇りも、使命も、純潔も、全てを奪って人形にした。

身も心も奪い、全てをエンブリヲへの愛と快楽に変えられた。

そして、そんな彼女を助けるために、タスクの仲間は全員が命を落とした。自分の親も含めて。

それが自分の所為だと思っているアレクトラはリベルタスを、いやエンブリヲを殺すことに執念を燃やしていたのだ。

それが仲間の弔いになると信じて。

 

だが、一番悪いのは誰だ?

 

アレクトラをそこまで追い詰めたのは誰だ?

 

両親を、仲間たちを殺し、その亡骸すら弄んだのは誰だ?

 

答えは言うまでもない。

 

エンブリヲなのだ。

 

奴が諸悪の根源なのだ。

 

 

それが分かっているのにタスクには何もできなかった。

最も悪い男が自分の目の前にいる。

それも自分の愛する女性を捕まえ、今度は彼女にその毒牙を浴びせようとしている。

それなのに自分にはどうすることもできない。

そのことにタスクは胸が張り裂けそうになった。

 

「くそっ・・・・」

 

そんな思いが零れ落ち、心が折れそうになった・・・・

その時、

 

――――諦めるな

 

「え・・・?」

 

重厚な強い意志の伴った男の声がタスクの耳に届いた。

その直後、

 

~~~~♪♪

 

不思議な笛の音が当たり一帯に響き渡った。

 

「この音色は一体・・・?」

 

「アァアアアア!!!?」

 

不思議そうにタスクが周りを見渡していると、突然、モモカが頭を押さえて苦しみだした。

 

「モモカ!!?一体、何をしたの!?」

 

「何だ・・・一体何が起こっている・・・」

 

苦しむモモカの様子にアンジュが悲痛な叫びをあげエンブリヲを睨む。

しかし、エンブリヲもこの状況に困惑していた。

そして、次の瞬間、

 

―――パァリン!!とモモカを操っているマナの光が砕け散り、彼女は崩れ落ちた。

 

「あっ!?」

 

慌てて受け止めたタスクが表情を覗き込めば、モモカは穏やかな息遣いで気を失っていた。

良かった、とタスクが思っている中、エンブリヲは信じられない様子で事の成り行きを見ていた。

ありえない事だった。

支配を一時的に外される事はある。

だが、

 

「ありえない・・・」

 

今のモモカの状態は完全にエンブリヲの支配から逸脱され、マナの繋がりを断たれていたのだ。

つまり、彼女はマナが使えないノーマとなったのだ。

 

「一体何が・・・」

 

エンブリヲが困惑で慄いていると、

 

――――コツ!コツ!コツ!

 

「っ!?」

 

不思議な音色と共にこちらに近づく足音に気が付いた。

慌ててアンジュを放り投げ、背後を振るいかえる。

 

「きゃっ!?」

 

「アンジュ!?」

 

だが、焦燥に駆られてもアンジュが逃げないように、キメラ複数呼び出し、内二体に彼女を押さえつける。

これで安心したエンブリヲは自分に近づいている者を確認した。

 

「何者だ?」

 

短く問いかける言葉。

それを投げつけた人物は男だった。

白い衣に身を包み、オカリナのような不思議な笛を吹いていた。

だが、男はエンブリヲに問いかけられると、笛を口から離す。

そして、何も言わず、真っすぐエンブリヲを見据えた。

男の態度に腹を立てたエンブリヲは無下にされた屈辱から表情を歪ませ、

 

「貴様、一体、何をした・・・」

 

今度は怒気を含んで問いかける。

しかし、その問いにも男は答えず。代わりに、短く言葉を紡いだ。

 

「歯を、食い縛れ!!」

 

「何・・・?」

 

「今から俺はお前を、殴る!!」

 

男の言葉に眉を顰めるエンブリヲ。

だが、すぐにその表情は嘲るものに変わる。

 

「私を、殴る?フン、何者かは知らないが、ただの人間が私を殴るなど、出来る訳が・・・」

 

エンブリヲの言葉をそこで途切れた。

 

「はっ!!」

 

「がっ!?」

 

気合いと共に突き出された男の拳から凄まじい衝撃波が発生し、それがエンブリヲの頬を打った。

首を捻じ切らんばかり捻り、憎らしい顔の頬が衝撃で波打ちながら暫く空中に殴り飛ばされ、無様に倒れるエンブリヲ。

その様子に、成り行きを見守っていたアンジュとタスクは呆然とする。

 

「あ、貴方は一体・・・」

 

正気に戻って、エンブリヲを殴り飛ばした男が自分を見ている事に驚き問いかけるタスク。

すると、男は微笑んだ。

 

「俺の名は、桐生 ダンテツ。空蝉丸の嘗ての仲間だ」

 

「う、空蝉丸さんの・・・仲間?」

 

驚くことが多すぎて、状況が飲み込めないタスク。

そんな彼にダンテツは威厳のある声で言った。

 

「話は後だ。今はこれを使え!!」

 

言葉と共に投げ渡された物をキャッチするタスク。

キャッチした手の中の物を見ると、そこには見覚えのある円柱形の物があった。

 

「これって・・・」

 

0と書かれた獣電池だった。

確か、空蝉丸から見せてもらった物の中にあった。

 

「それにブレイブを込めて、チェンジだ!!」

 

―――そんな事いきなり言われても、といつものタスクならいたかもしれない。

だが、何故か今はそんな事は思わなかった。

考えるよりも先に体が動いた。

 

「ブレイブイン!!」

 

そして、ガブリボルバーに獣電池を装填し、恐竜の頭の口を閉じさせる。

 

<GABURINCHO!! TOBASPINO!!>

 

「キョウリュウチェンジ!!」

 

掛け声と共にシリンダーを回転させると、当たり一帯に陽気なサンバの音楽が響き渡る。

その音楽がタスクの中で溢れんばかりのエネルギーを生み出し、自然と身体を躍らせる。

そして、

 

「ファイヤー!」

 

発生と共にガブリボルバーの引き金を引くと、銃口からスピノサウルスを模ったキョウリュウスピリットがタスクの身体を回り包みキョウリュウスーツを形成し、次の瞬間、ネイビー色のスーツに身を包んだタスクが現れた。

 

「旋律の勇者!!キョウリュウネイビー!!」

 

その姿を間近で見ていたアンジュは呆然としたまま固まった。

だが、獣電池を渡したダンテツはよくやった、と頷いている。

タスクも未だに何が起こっているのか分からないが、今しなければならない事は分かっていた。

 

「うぉおおおおおおお!!」

 

鍔が恐竜の頭部を模した形状となっている剣、ガブカリバーを取り出しながら、アンジュを捕まえている二体を切り裂くタスク。

一体、一振り斬りつけただけでキメラは倒されアンジュは解放された。

 

「アンジュ、大丈夫かい?」

 

「ええ。タスクよね?」

 

「ああ、俺だよ」

 

トバスピノンを模様したヘルメットで顔が分からず困惑するアンジュに、タスクは優しい声音で頷く。

そして、

 

「アンジュ、モモカの所に行ってくれ」

 

「う、うん」

 

アンジュを守るように背を向け、自分は未だに残っているキメラと対峙する。

彼らは、元は人間だ。

だが、あんな姿のままにはしては置けない。

 

「はぁああああ!!」

 

そんな思いからタスクはキメラに向かってガブリカリバ―を振るう。

 

「ギガっ!?」

 

一体を斬り倒し、更に別の奴に振るおうとする。

だが、

 

「ギィ・・・」

 

「ギギィ・・・」

 

上段から振り下ろしたタスクの剣を二体のキメラの爪が受け止める。

その隙に背後から別のキメラが突進してくるが、

 

「フン!!」

 

フォルスターのガブリボルバーを引き抜き、背後のキメラに放つタスク。

そのキメラが倒れると、今度は剣を受け止めた二体に蹴りを浴びせた。

 

「でりぁ!!」

 

その蹴りによって、二体は後ろに飛ばされ、残りのキメラと一塊になった。

タスクはガブカリバ―をしまうと、一本の獣電池を取り出す。

 

「ブレイブイン!!」

 

<GABURINCHO!! TOBASPINO!!>

 

そして、ガブリボルバーに装填すると、シリンダーを回し、キメラ達に狙いをつけ、

 

<VAMOLA MUCHO>

 

「獣電ブレイブフィニッシュ!!」

 

ガブリボルバーの引き金を引くと、銃口から強力なトバスピノンのエネルギーが放たれ、キメラ達を一掃した。

その光景に今度こそ開いた口が塞がらず、呆然とするアンジュ。

そんな中、

 

「これは、一体どういうことだ・・・・」

 

「エンブリヲ!?」

 

「まだ意識が!!」

 

目の前の光景に忌々しげにタスクを睨むエンブリヲの姿に驚くタスクとアンジュ。

タスクはエンブリヲに向けてガブリボルバーを向けようとする。

 

「待てっ」

 

だが、その行動はいつの間にか近づいていたダンテツの手によって制される。

一体、何故、とタスクが思っていると。

 

「今は退け」

 

威厳のある声でアンジュに視線を向けるダンテツ。

彼の言う通り、今回の目的はアンジュを救出することだ。

これ以上戦う必要はないのだ。

 

「この場は俺が引き受ける。お前は彼女らを連れて行け!!」

 

「・・・・・」

 

ダンテツの言葉に呆然とするタスク。

だが、ダンテツの瞳に宿る強い意志のような物を感じ、この人は信じて大丈夫だと、本能に近い部分で感じた。

 

「はい。お願いします!!」

 

ダンテツに頭を下げ、アンジュの元に駆けだそうとするタスク。

 

「そのまま真っすぐ進め」

 

「え?」

 

走りながら背中にダンテツの言葉が飛び込んでくる。

 

「愛する者と共に進むのだ、新たな強き竜の者よ!!」

 

「はい!!」

 

言葉の意味は分からなかったが、何となく心で理解したタスクは一目散にアンジュの元に駆けつけると、アンジュとモモカを抱え、モービルに乗り込みその場を後にした。

その後ろ姿を優しく見守るダンテル。

だが、そんな彼に、

 

「貴様・・・よくもアンジュを逃がしたな」

 

エンブリヲが憎悪の籠った目でダンテツを睨んでいた。

だが、対して、ダンテツは落胆した様子だった。

 

「やはり、もはや殴られた程度では目が覚めんか・・・」

 

「?どういう意味だ・・・?」

 

「早く目を覚まさねば、取り返しのつかない事になるぞ」

 

「訳の分からない戯言を・・・取り返しの付かない事をしたのは貴様だ!!私からアンジュをあの男に奪わせる手伝いをしてただで済むと思うなよ!!!」

 

完全に取り乱しているエンブリヲ。

そんな彼にダンテツはもはや話す言葉は無いとばかりに、おもむろに右の拳を上げる。

 

「奥義・・・・」

 

ゆっくりと拳で円を描けば、拳に太陽のような輝きとエネルギーが込められる。

その光景に流石のエンブリヲも表情が強張るが、すでに遅い。

 

「空烈パンチ!!」

 

直後、目を開けられない程の光と衝撃波が当たり一帯を包むのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




更新が遅くなって本当に申し訳ありません。
正直、自分もここまで長くなるとは思いもしませんでした。
エンブリヲの台詞を考えていると、本当に意欲がなくなり、心が折れそうでした・・・

・・・言い訳を言ってすみません。

しかし、今回は自分が書きたかった事が掛けて結構書くことが出来ました。

空蝉丸とエンブリヲの対峙

タスクが11人目のキョウリュウジャーに覚醒

そして、一番書きたかったのが、オヤジによるブリ男殿への鉄拳制裁。

エンブリヲの台詞を考えながら、このシーンを書くことを渇望していました。
・・・エンブリヲの顔面を思いっきり無様に殴りたいと思ったのが自分だけでないと思いたい・・・

一先ず、今回の更新はここまでです。
もう少しで完成出来ると思いますので、もうしばらくお付き合いくださると幸いです



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