クロスゴールド 雷鳴が奏でる輪舞   作:愛剣

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獣電戦隊キョウリュウザー
前回までは。
囚われの身となってしまったアンジュだったが、エンブリヲと痴情の縺れとなったサリアによって辛くも逃げ出すことに成功する。そして、救出に駆けつけたタスクと無事合流することが出来た。

しかし、執拗に追い回すエンブリヲの追跡に窮地に立たされるアンジュとタスク。

そんな彼らを救ったのは、なんと!!600年前、戦隊のリーダーだった桐生 ダイゴの父、桐生 ダンテツだった。

真の地球のメロディーを受け、地球に選ばれた王。

彼の奏でる笛の音は、地球のエネルギーであるマナに干渉しエンブリヲの支配を受けていたモモカを解放しする。
そして、タスクに№0トバスピノの獣電池を授ける時、タスクは11人目のキョウリュウジャーとなって覚醒すし、辛くも窮地を脱したアンジュとタスク。

しかし、ダンテツの言った“取り返しの付かない事態”とは何なのか、今後の彼らに何が起こるのだろうか・・・・







第二十一話

 

 

 

 

 

戦闘があったミスルギ皇国宮殿の敷地内。

アンジュを巡る戦闘によって西側の宮殿も、綺麗な庭を滅茶苦茶に破壊していた。アンジュが出て行った後のシェルターにエンブリヲが足を運んでいた。

 

「ア、アァアアアアアアアアアア!!?」

 

冷たい視線を向けるエンブリヲの足元では、制服を奪われたまま、下着すら身に着けない状態のサリアが床に苦しみ悶えていた。

 

「痛い・・・痛い・・・・」

 

背中を張り裂かんばかりに身を丸めながら、目元に涙を貯める。

 

「ア・・アァア・・・」

 

「何故、アンジュを逃がしただ?」

 

足元でもがき苦しむサリアに冷たい口調で問いかけるエンブリヲ。

だが、当のサリアはマナによって痛覚を操作され、床に素肌が触れる触覚を痛覚に変化させられた結果、僅かに触れる空気の流れすら痛みとして感じる体にされたため、全身を襲う痛みに答える事が出来るはずがない。

 

「嫉妬か?そんな下らない感情で私の邪魔をする愚かな女だったのか?サリア、君は?」

 

苛立ちを隠すことなく表情に出してサリアを罵る。

ドラゴニウムを大量に得る作戦が失敗してから自分の思い通りにならない事が多すぎる。そんな中でサリアが自分のお気に入りの女であるアンジュを逃がしたんのだ。

アンジュが気遣いで逃げられた様にしていたが、自分の邪魔をしたことには変わりないからだ。

 

「私の作る新たな世界には強く賢い女が必要だった。だから、君たちを選んだのだよ、サリア・・・」

 

「ア・・ガァアアアアアア!!」

 

サリアのツインテールに纏められた髪の片方を掴んで顔を上げさせると、それが痛みとなって彼女の身体を駆け巡り獣の咆哮のような悲鳴を上げる。

しかし、エンブリヲは気にした様子もなくサリアを見下しながら突き放すように言った。

 

「愚かな女に用はないんだよ」

 

「っ!?」

 

エンブリヲの言葉に一瞬身体の痛みが止まったかのように息を飲んだ。

そして、絶句しているサリアの髪をエンブリヲが離すと、彼女の身体は床に倒れこみ、その行動も痛みとして彼女の身体を駆け巡る。

エンブリヲは一瞬だけサリアに詰まらない視線を送ると、無表情のまま徐に指を弾いた。すると、サリアの身体の感覚が元通りになった。

 

「アンジュは必ず此処へ戻ってくるだろう。私を殺すために」

 

サリアに背を向けながら、目線だけを這いつくばっているサリアに向ける。

 

「君が本当に強く賢いならば、自分がやるべき事が何なのか分かっているね?」

 

「・・・ア、アンジュを捕らえて、屈服させます・・・」

 

「期待しているよ、私のサリア」

 

床に倒れこんだままのサリアの言葉にエンブリヲは漸く満足したのか口角を僅かに上げ、シェルターを後にするように歩き出した。

置き去りにされたサリアが悔し気に下唇を噛みしめている事になど見向きもしないで。

 

 

 

 

 

シェルターを後にしたエンブリヲは無人の廊下を歩く。しかし、その歩みはいつもの芝居がかった自分に酔いしれる余裕の物ではなく、極めて乱暴なものだった。

新たな世界を創造する上である程度の困難は予想していたが、今まで自分の思い通りになっていたエンブリヲにとって、この状況は腹立たしくて仕方ないのだ。

 

「・・・エンブリヲさん」

 

そんなエンブリヲに悲壮な表情のエルシャが声をかける。しかし、自分の事で精一杯のエンブリヲには彼女の表情を察する余裕などできず、ぶっきら棒に言葉をかける。

だが、エルシャも必死だったため、エンブリヲの様子に気づいていなかった。

 

「・・・どうかしたのかい、エルシャ?」

 

「お願いです。どうかあの子達を助けてあげてください」

 

アンジュ争奪戦で、追跡を阻止してきたヒルダ達と、カナメが率いるドラゴンと戦闘していた。そして、彼らが撤退したため深追いはせず、帰還したエルシャが見たのは、特異点から現れた大型のドラゴンがキメラによって宮廷に倒れこむ姿だった。エンブリヲ幼稚園にいるはずの子供たちのいる場所に。

 

だから、エルシャは子供たちをエンブリヲにもう一度生き返らせてもらうために頼みに来たのだった。

しかし、エンブリヲは短い言葉でエルシャを突き放した。

 

「無理だな」

 

「え?」

 

「死骸すら見つかっていないのだろ?ならば、幾ら私でも死骸の無い物を生き返らせる事は出来ないよ」

 

「そんな・・・」

 

まるで、虫ケラの死の様に言葉を紡ぐエンブリヲに絶望するエルシャ。だが、エンブリヲは打ちひしがれているエルシャに追い打ちをかける言葉を放った。

 

「そもそも新しい世界は新たな人類のための世界だ。たとえ、生き返らせたとしても、あの娘たちを連れて行く事は出来ない」

 

「いや・・・」

 

「君は新たな人類の母になるのだ。あの娘たちの事は忘れると良い」

 

「いやぁあああああああ!!」

 

エンブリヲの言葉についに泣き崩れてしまうエルシャ。

 

「お願いです!!私の事はどうなっても構いませんから、あの子達を助けて!!あの子たちは私の全てなんです!!だから・・・」

 

エンブリヲに縋りつき懇願するエルシャ。その姿は母親を思わせるものだったが、機嫌の悪いエンブリヲには鬱陶しい物でしかない。

 

「・・・どいつもこいつも、何故こんなにも愚かしい娘ばかりなのだ」

 

「え?」

 

―――パァン!!とウンザリした様子でエンブリヲがエルシャの頬を引っぱたく。

それによって、身体から引きはがされたエルシャは信じられない目でエンブリヲを見た。その視線の先には非常に冷めた視線を向けるエンブリヲの姿があった。

 

「私は忙しのだ。そんな取るに足らん事に関わっている暇はないんだ」

 

そう言って、エンブリヲはエルシャには目もくれずに立ち去ろうとする。

 

「ちょっと待ってください・・・」

 

「何だね・・・?」

 

いい加減にしてくれ、とエルシャを睨みつけるエンブリヲ。

だが、エルシャも瞳から涙を漏らしながらも、確かな意思をもって言葉を紡いだ。

 

「教えてほしいことがあります」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、ミスルギ皇国から離れた海域の無人島群の近くに停泊していたアウローラに、アンジュに奪還に成功し帰還することが出来ていた。

しかし、全く犠牲がなかった訳ではなかった。

 

「申し訳ありません、サラマンディーネ様」

 

「私たちが至らぬばかりに何人も犠牲が・・・」

 

「いえ、皆。よくやってくれました」

 

アウローラ内の格納庫にてサラマンディーネを前に平伏しているナーガとカナメ。それに彼女らが連れて来た八人の兵士。特異点から応援に来てくれた兵士はカナメとナーガの他に二十人。それに大型のドラゴンが十体だ。だが、先の戦闘で残ったのはここにいる八人と大型ドラゴンが三体なのだ。

しかし、サラマンディーネは心を痛めながらも生き残った者たちを労うと、少し離れた所にいたヒルダが近づきながら声をかけた。

 

「ありがとうな、ドラ姫様。アンタ達が私たちを庇ってくれなければ、かなり悲惨な事になっていた」

 

「お気遣い感謝します。ですが、貴女方も無傷とは言えないのでは?」

 

そう礼を述べるヒルダだが、彼女の後ろには泣き崩れる者の姿があり、被害を被った事は明らかだが、ジルの後任の司令官としての礼節として言っている事を理解した。

ヒルダも背後を一瞥してバツの悪い表情となる。

 

「ああ。幸い、私らの機体の損傷は見た目以上深刻じゃないが。劣勢の私らを見て、助けに飛び出した新人のマリカがクリスに撃墜されちまった」

 

「・・・大丈夫なのですか?」

 

「他の新人どもは御覧の有様。私もだけど、ロザリーもかなり参ってやがる」

 

「そうですか・・・」

 

辛い気持ちを押し殺している様子がひしひしと伝わり、サラマンディーネも目を伏せる。

 

「ところで、アンジュは如何したんだ?一緒じゃないみたいだけど」

 

ずっと気になっていた事を問いかけるヒルダ。最後に戻ってきたのが、サラマンディーネ一人なのだから当然だろう。

 

「アンジュはタスク殿と共に近くの島の一つに隠れてもらいました」

 

「どうして!?」

 

「エンブリヲが今一番求めているのはアンジュです。確かに、分断すると危険が増しますが、今の私たちにはエンブリヲからの襲撃を退けるだけ事が可能ですか?」

 

「それは・・・」

 

サラマンディーネの指摘に言葉を詰まらせるヒルダ。サラマンディーネの言う通り、今傷ついた自分たちが襲われるのは好ましい物ではない。

そのことを理解しているヒルダにサラマンディーネは更に言葉を紡ぐ。

 

「この艦にはまだマナの使える人間がいたはずです。監察官殿でしたか・・・彼女からエンブリヲにはこの艦の位置は筒抜けのはずです」

 

「アンジュがいなければ、襲われない保証はあるのか?」

 

「あの者はとても傲慢な男です。恐らく、欲しいもの以外には興味を示さないでしょう。彼の優先順位は我々よりもアンジュなのですから」

 

「それはアンタ印象だろ?」

 

ヒルダの言葉にカナメとナーガが何か言いたそうにする。だが、サラマンディーネはそれを手で抑えるように指示した。

 

「確かに、そうですが。我々には態勢を整える時間が必要のはずです」

 

「・・・・・・」

 

サラマンディーネの指摘に黙り込んでしまうヒルダ。そこへ更に追い打ちの様に言葉をかける。

 

「アンジュの方にはタスク殿と空蝉丸が護衛としています。それに共にいる侍女はマナの呪縛から解放されているので、エンブリヲに位置を知られる事はありません」

 

「・・・・・・」

 

その言葉にヒルダは今度こそグゥの音も出ず、ため息をついてしまった。

 

「・・・一応、司令の後任に私が選ばれたけど、ドラ姫様を見てると、やっぱり私には荷が重いと感じちまうよ」

 

「いえいえ、よくやっておられると思いますよ」

 

「・・・慰めは要らねぇよ。もうアンジュに押し付けるつもりだから」

 

やれやれ、と首を振るヒルダ。彼女の言葉に自分の主が褒められたためカナメとナーガは機嫌を良くするが、サラマンディーネは格納庫の周囲を見回した。

ノーマの民も自分たちもかなり疲労していた。だが、自分たちには悲しんでいる暇すらない。

その事をヒルダも理解しているらしく、艦内の開いている部屋に通されると、今後の話をすることとなった。

部屋の中には、ヒルダの他にロザリーとヴィヴィアン、それにジャスミンの姿があった。

 

「それで、医務室に運ばれて行った御宅らのスパイが言っていたんだが、二つの地球を融合させようとしてるのは本当なのか?」

 

「ええ。二つの世界が融合すれば、全ての者がその余波によって破壊されることになります」

 

先にカナメと共に戻ったリザーディアから聞いたのだろう。サラマンディーネが頷くと、ヒルダは焦燥する。

 

「クソっ、急がないとヤベェんじゃないのか?」

 

「いえ、それは大丈夫かと。二つの世界の融合には膨大なエネルギー、マナが必要のはずです。それを得るための先の作戦は失敗したので」

 

「それが揃うまでは大丈夫ってことか」

 

そこでヒルダが安堵した様に息を付いた。そんな様子の彼女にサラマンディーネは真剣な眼差しを向けて言葉を紡いだ。

 

「司令官殿、我々アウラの民は貴女方に改めて同盟を求めます」

 

「えっ!?」

 

サラマンディーネの提案に驚き声を漏らすヒルダ。後ろに控えていたナーガとカナメも驚いている。と言うよりも、二人は同盟を結んでいると思っていただけに戸惑っている感じだった。その理由をサラマンディーネは説明するかどうか迷うが、今は捨ておくことにする。

 

「先ほどの戦闘での被害を考えれば、特異点を開放して援軍を呼んでも尋常ではない被害を被るかもしれません。万が一にも、失敗すればエンブリヲに膨大なマナを与える事になりかねません。成功率を上げるために協力してほしいのです」

 

「私らにとっては願ってもない事だけど。あんな事をしておいて、私らと同盟を結んでくれるのかい?」

 

「・・・大義を果たすためです。私個人の思いよりも、重要な事なのです」

 

戸惑うヒルダにサラマンディーネは正直な気持ちを口にする。同じく聞いていたナーガとカナメも首を傾げている。その様子に、説明すると面倒な事が起こるので、やはり暫くは黙っている事にするのだった。

 

「・・・わかった。ただ返事はアンジュにさせたいから、待ってくれるか?」

 

「ええ、構いませんわ」

 

本当にヒルダはアンジュに司令官を押し付けるつもりらしい。

 

 

―――その時、艦内のけたたましい警告音が鳴り響いた。

 

 

 

 

 

 

アウローラの頭上には警告音が鳴り響いた原因がそこにいた。

 

「やっと見つけた」

 

ラグナメイルに乗るエルシャの姿があった。

エンブリヲから子供たちの蘇生を拒絶された後、エルシャは何とかアウローラの位置をエンブリヲから聞き出した。彼の本音を聞き出したエルシャは自分がただ利用されている事に気が付いたのだ。

彼が述べた、平和な世界も、平等な暮らしも、何もかも。子供たちを生き返らせたのも自分を利用させる口実だったのだろう。

それが理解できた以上、もうエンブリヲに協力することはできない。

だが、だからと言って、アンジュたちの元に戻ることもできない。

利用されていたとはいえ、自分は彼らに引き金を引いた。今更、彼らと共にエンブリヲと戦うのは虫が良すぎる。

 

「ごめんね・・・皆、本当に・・・」

 

悲痛な面持ちで涙を流したエルシャだが、次の瞬間、覚悟に満ちた表情をアウローラに向ける。

 

『聞こえてる、アンジュちゃん!!一対一で勝負をしましょう!!』

 

声高らかにエルシャは宣言するのだった。

 

 

 

 

 

アウローラの頭上に動かないエルシャの様子はブリッジでも確認された。サラマンディーネの言葉だけを信じて、襲撃が無いと高を括っていた訳ではないが、ラグナメイルの登場にその場にいたメンバーは驚きを隠せずにいた。

しかし、それ以上に分からないのが、エルシャの態度であった。

こちらに攻撃を仕掛ける訳でもなく、アンジュとの一騎打ちを求めてきたのだ。しかも、周囲をレイダーで確認させたが、エルシャ以外の反応は見当たらず、罠の可能性も低く感じられた。

 

「一体、何を考えてるんだ、エルシャの奴?」

 

「さぁな、私にも分からないよ」

 

困惑するロザリーの問いに、ヒルダも首を傾げている。エルシャの目的は不明だが、無視することなど論外だ。

 

「でも、アンジュいないけど、どうするんだ?」

 

アンジュは付近の無人島のどれかに隠れているため、現在アウローラにはいないためどうするのか陽気な口調で問うヴィヴィアン。

事実を伝えてもエルシャは当然の様に帰ってはくれないだろう。それならば、

 

「でしたら、私が代わりに出ましょうか?」

 

「「姫様!?」」

 

サラマンディーネの言葉にブリッジ内が騒然となる。特に護衛のナーガとカナメが慌てた様子で声を荒げた。

 

「危険です、姫様!!」

 

「そうですよ。何故、サラマンディーネ様が態々出られるのですか!!」

 

「相手がラグナメイルである以上、一対一で戦えるのは私たちの機体だけではないですか」

「ですが、何も姫様が出られることはないではないですか!!」

 

「確かに、その通りだ」

 

納得のいく説明をサラマンディーネはしたつもりだったが、ナーガ達はそれで引き下がらず、更には神妙な顔でヒルダが彼らの言葉に頷いた。

 

「ドラ姫様の申し出はこっちとしてはありがてぇ。私らのパラメイルじゃラグナメイルの相手は正直荷が重い。だけど、これはあたし達(ノーマ)の問題だ。あたし等でケリを着ける」

 

そう言って、ヒルダはロザリー達を連れて出撃の準備をするように指示を飛ばそうとする。ヒルダの言ったことは正論だろう。しかし、サラマンディーネにも言い分があった。

 

「いいえ、同盟を結べば、我々と貴女方の立場は同等です。完全に同盟を結んだ訳ではありませんが、貴女方の問題は我々の問題でもあります」

 

そう言って黙り込むヒルダと視線を向かい合わせるサラマンディーネ。

すると、その場の様子を見ていたジャスミンが口を開いた。

 

「アンタのいう事は分かるけど、どうして私らの代わりにアンタが出ようとしてくれてるんだい?」

 

「その通りだね。向こうが言っている一騎打ちなんて古臭い事もアタシ等が受ける必要はないからな」

 

当然の疑問を口にされた後、ヒルダも当然の事を言った。

パラマイルはラグナメイルの劣化版のように劣っているが、相手は一体。複数で戦えば、勝つことが出来るだろう。

 

「ですが、全員で出ても決して無傷で済むはずがないのでは?」

 

「確かに、そうだが・・・」

 

「周囲にはほかに敵影はいないようですが、貴女方が消耗した処に何らかの方法で増援を送られれば如何するんですか?」

 

「それは・・・」

 

「傷ついた貴女方三人を私たち三人で庇いながら撤退をするよりも、私一人で戦って残りの全員は何があっても対応できるように待機してくれる方が得策では?」

 

「し、しかし、それならば姫様ではなく、私かカナメが出ても良いではないですか!?」

 

サラマンディーネの指摘にヒルダ達は黙り込んでしまうが、代わりにナーガが声を上げる。

 

「それだと何かあった時、貴女方のどちらかが私を止めるでしょ?」

 

「当然です!!」

 

少し過保護な自分の護衛の言葉に苦笑を浮かべるサラマンディーネ。そんな二人をサラマンディーネはいつもの様に封殺し、更に言葉を続けた。

 

「それにアンジュがいたら、私たちが何を言おうと一人で飛び出したと思いますし」

 

「それは・・・そうかもしれないが」

 

古臭い一騎打ちの誘いを挑発だと感じて、「上等よ!!」と飛び出していく様子が目に浮かぶ一同。

 

「それに私も、一騎打ちを申し入れる方に少し興味があるんです」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それからサラマンディーネは更に止めようとする面々を封殺して、戦闘機形態の焔龍號に乗りアウローラを飛び出し駆けた。そして、エルシャの乗る戦闘機形態のラグナメイル、“レイジア”と同じ高度に上昇した。

 

「お待たせして申し訳ありません」

 

『貴女は・・・?アンジュちゃんは如何したの?』

 

ラグナメイルやパラメイルと違い、龍神器は戦闘機形態でもコックピットが剥き出しではないためサラマンディーネの姿は相手に見えない。そのため、通信機越しにサラマンディーネが話しかければ、エルシャは当然の問いかけをする。

 

「申し訳ありませんが、アンジュは今留守にしております。ですので、代わりに私がお相手いたしますわ。貴女達、ノーマの民が戦わされていた竜の一族、近衛中将のサラマンディーネです」

 

いまいち状況が理解できていなかったエルシャに丁寧に自己紹介をする。すると、エルシャは少し目を伏せ、すぐに鋭い視線を向けた。

 

「そう。別に構わないわ」

 

「ありがとうございます。では、そちらも名乗って――――」

 

「今更、誰が相手でも構わない!!」

 

相手の態度に少し違和感を覚えたサラマンディーネはもう少し相手の事を知ろうと言葉を交わそうとするが、エルシャは先ほどの不審な態度を肯定する様に言葉の途中に焔龍號へ突撃していた。

 

「無作法な事を・・・」

 

一騎打ちにも関わらず名乗りも上げずに斬りかかってきた事に憤慨するサラマンディーネ。

焔龍號へ向かって着ながら戦闘機形態から人型形態に変形を遂げ、装備されている剣でこちらに斬りかかってくる相手を僅かに機体を横にズラしてやり過ごす。

 

「名前ぐらいは教えてくれても良いではないですか?」

 

「はぁああああ!!」

 

憤慨しながらも微笑みを浮かべて自分の心情を隠すサラマンディーネだが、エルシャは機体を振り返らせて今度はビーム兵器を放つ。

 

「本当に乱雑ですね・・・」

 

辟易としながらブースターを噴かせ機体の上体を上げてビームの上を滑空するように飛ぶ。

そして、焔龍號を人型形態に変形させながら機体を肉薄させ、レイジアよりも高い位置から頭部に蹴りを食らわせた。

 

「礼儀のなってない者にはお仕置きが必要でしょうかっ?」

 

「きゃっ!?」

 

機体が大きく仰け反りバランスを崩しながらレイジアが墜落する。それをエルシャは慌ててブリップを握り機体のバランスを整える。

 

「くっ・・・」

 

「どうしました?猛々しく一騎打ちを申し入れておいて、この程度ですか?」

 

「舐めないで!!」

 

上空から挑発的な笑みを浮かべながらサラマンディーネが言葉を落とすと、エルシャが激昂しながらブースターを噴かせて再び突撃させる。

剣を持ったまま突撃してくるレイジアに、焔龍號の剣を横ぶりにぶつけつつ、それを支点として反動をつけ背後へ回る。

 

「こっちですよ」

 

「このっ!?」

 

すれ違い様に更に挑発すると、推進力を与えていたブースターを弱めて空中に佇むと、機体を反転させようとする。だが、機体を振り返らせた時には、サラマンディーネの焔龍號が銃を振り上げていた。

 

「隙ありです」

 

完全に避けられないタイミングでレイジアを打っ叩くと、先ほどよりも勢いよく海面へと墜落していく。だが、今度も海面に落ちるギリギリの所で逃れた。

その様子をサラマンディーネは微笑みながら見おろしていたが、もしもエルシャが彼女の顔を見れば勝ち誇り見くだしていると感じただろう。

 

そう思わせる程、サラマンディーネはエルシャを圧倒していた。

 

 

 

 

その様子をアウローラで待機しながら見ていたヒルダ達も感じていた。

 

「うわっ!?サラサラさん強っ!?」

 

「サラマンディーネ様だ!!」

 

驚嘆するヴィヴィアンだが、名前が違うとナーガが叱咤する。カナメも同意するように厳しい視線を向けるが、ヴィヴィアンには効果がないだろうな、とアルゼナルでの様子を知るメンバーは思うのだった。

 

「でも、スゲェよ。エルシャを圧倒してるなんて。なぁ、ヒルダ」

 

「確かに、ラグナメイルを相手に相当なものだけど・・・」

 

ロザリーの言葉に頷きながらもヒルダは首を傾げた。

 

「なんか、様子が可笑しくないか?」

 

「可笑しいって、どこがだよ?」

 

「確実に当てられる状況だったのに、剣じゃなくて銃を使っただろ。使い方も、叩くんじゃなくて撃っていれば、もしくは剣を振れば勝負はついていただろ」

 

「あっ」

 

ヒルダの指摘に納得したように声を漏らすロザリー。他のメンバーも言われてみればと感じるのだった。そこへヴィヴィアンも気になっている事を口にした。

 

「でも、エルシャも何か変だぞ」

 

「お前も、そう感じるか?」

 

アルゼナルにいる頃、人懐っこい性格で誰とでも打ち解けようとする性格のヴィヴィアンだが、その中でも特にエルシャとは仲が良かったのだろう。ヒルダと同じく違和感を持っていた。

 

「なぁ、ロザリー。エルシャはあんな風に強引に敵に突っ込むような奴だったか?」

 

「えっ、いや・・・そんな事は無かったと思うけど。そう言われれば、何か戦い方があのイタ姫と同じような・・・」

 

「同じだよ。アイツがアルゼナルに来たばかりで、二回目の出撃の時に似ているよ」

 

ロザリーの言葉を補足する様に言葉を吐き捨て、モニターを睨むヒルダ。そこにはまたも猛スピードで突撃するエルシャのレイジアと、それを再び回避して殴打によって叩き落とすサラマンディーネの焔龍號の姿があった。

 

 

 

 

 

 

 

 

『一体、どういうつもりなの・・・・』

 

「何のことですか?」

 

数度の攻防の後、海面近くでレイジアを滞空させてエルシャが見上げる様にサラマンディーネに声をかけた。

 

『惚けないで頂戴。さっきから同じように私を海に向けて叩き落とすだけで、堕とそうとしれないじゃない』

 

「それは貴女も同じではないですか?」

 

エルシャの指摘の通り、サラマンディーネは突撃してくるレイジアを銃や脚部で叩き落とすだけだった。だが、サラマンディーネが同じ事を繰り返している事は、裏を返せば、エルシャも同じような突撃をしている事になる。

 

「銃で牽制することもなく、ただ闇雲に突撃する。そんなお粗末な戦い方をする貴女に闘志を疑われる筋合いはありませんわ」

 

『・・・・・・・』

 

サラマンディーネの言葉に黙り込んでしまうエルシャ。彼女の態度にサラマンディーネは相手の心情を推察するのだった。

 

「私に言わせてもらえれば、貴女の方がこちらを堕とす気が無いように感じるのですが?」

 

『・・・・・・・』

 

黙り込んでいるエルシャにサラマンディーネが問いかけるが返事が返ってこない。そこでサラマンディーネは自分の推察が正しい事を悟った。

 

「まさかとは思いますが・・・・貴女、死ぬつもりでここに来たのではないですか?」

 

『っ!?』

 

サラマンディーネの言葉が正しいのか、息を詰まらせるエルシャ。

 

「何故、そのような事をするのですか?エンブリヲの命令ではないのでしょ。あの男が、自分の女を死なせるためにラグナメイルを墓標にするとは思いませんから」

 

エンブリヲの計画を成就させるには、膨大なマナと、それを放出させるラウラ、更に制御するためにラグナメイル全機が必要な状況で暴挙を働くとは思えない。そう推理したサラマンディーネの言葉にエルシャは頷いた。

 

『ええ、その通りよ。エンブリヲさん・・・彼はこのことを知らないわ・・・』

 

「その表情から考えて、エンブリヲと何かがありましたか?」

 

『ええ、彼に嘘を付かれたのよ』

 

悲痛な表情を通信機から見てエルシャの心がエンブリヲから離れた事を察するサラマンディーネ。そして、その通りらしくエルシャは顔を俯かせながら、独白を始めた。

 

『全部、嘘だった。あの子達が笑って暮らせる世界を作ってくれると思ったのに・・・。死んだあの子達を生き返らせてくれたのは、そのためだと信じていたのに・・・。全ては私を利用させるためにやった事だった。私を利用するために、あの子達の生死は弄ばれた。あの子達は私の全てだったのに!!!』

 

「・・・・だから、アンジュに自分を殺させようとしたのですか?自分も子供たちの元に行くために」

 

『そうよ』

 

サラマンディーネの言葉に涙を流しながら頷くエルシャ。だが、サラマンディーネは詰まらなそうな視線でエルシャを見くだした。

 

「下らないですね」

 

『え?』

 

「アンジュでも同じことを言うと思いますわ。今の貴女の姿を見れば、怒るはずですよ」

 

『・・・・どういう意味』

 

侮蔑の言葉を口にするサラマンディーネに、エルシャは怒気を露にする。だが、サラマンディーネは気にせず言葉を続けた。

 

「だって、そうじゃないですか。騙されて全てが終わったから死ぬ。そんな身勝手に巻き込まれるこちらは迷惑ですわ」

 

『何ですって・・・』

 

「アンジュは貴女方を助けようとしていたのですよ。少なくとも、あの時点ではまだ貴女に多少の仲間意識があったのに、貴女は彼女に仲間を殺した後悔と心の傷を負わせるのを身勝手と言わずになんと呼べば良いのですか?」

 

『黙って・・・』

 

「あんな目にあったアンジュが助けようとしていたのに当の貴女は全てを簡単に諦めて死に逃げる弱い女。そんな弱い女を私の友が思っていたなんて、バカにしているのでか?」

 

『黙って!!!』

 

サラマンディーネの言葉をこれ以上聞きたく無いとエルシャはブースターを噴かせ、焔龍號へビームを発砲させながらレイジアを突撃させる。

 

「やっと顔が出ましたわね」

 

相手が突撃して来ているにも関わらず、微笑みを浮かべながら焔龍號を操作しビームを回避しながら、接近するレイジアの振り下ろされる剣を受け止める。すると、サラマンディーネは表情を挑発的なものに変える。

 

「その程度ですか?本当に弱いですわね。貴女のような人に愛されて、その子供たちも可哀そうですわね」

 

『う、うわあああああああああああああああああ!!!』

 

挑発を聞いて、我を忘れたエルシャはブースターを限界まで噴かせて、焔龍號を押し切ろうとする。だが、我を忘れた相手など簡単にいなすことが出来る。

サラマンディーネは焔龍號を少し後ろに引けば、勢い余ったレイジアは上体が逆さまになる前のめりになる。エルシャが慌ててブースターの出力を落とそうとするが、それよりも早くサラマンディーネが焔龍號を操作しレイジアを捕まえると、一気にブースターの出力を上げて海へと降下する。

 

『い、一体、何をするつもり!!?』

 

「少し海水浴でも如何ですか?」

 

エルシャが戸惑う中、レイジアを捕まえた焔龍號はそのまま海に着水し、そのまま二機は海の中を潜った。

 

『な、何をするつもり!!?えっ!?』

 

「ふふふ、アンジュから聞きました」

 

サラマンディーネの行動の理由が分からず戸惑うエルシャだが、機体の間から海水がコクピットに浸水してきた事に驚く。そんな彼女の反応をサラマンディーネは楽し気に笑う。

 

「以前、司令官のヒルダ殿にヴィルキスを細工されて海に落ちた事があるそうですね」

 

その間も海水が入り込んでいるラグナメイルの中で慌てふためくエルシャには聞こえるはずがないが、サラマンディーネは言葉を続けた。

 

「その時、今の貴女の様に海水が入り込んで大変だったそうですよ。まぁ、私たちの龍神器はラグナメイルと同じく水中には不向きですが、コックピットが密閉されているので、損傷がない限り浸水しないのですよ」

 

そこまで言った所で、レイジアのコックピット内は海水で満たされていた。最初の内はもがいていたエルシャだったが、自分が何のためにここに来たのか思い出したように生きることを諦めた。

 

(・・・溺死は酷い死に方だって聞いたことがあるけど)

 

だが、丁度いい。自分みたいな、何もない浅くてチョロイ女にはお似合いの死に方だろう・・・・

 

そこでエルシャは意識を失うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「姫様!!!?」

 

「サラマンディーネ様!!どこですか!!!」

 

海上では、焔龍號とレイジアが海に飛び込んだ瞬間、飛び出したナーガとカナメが必死に呼びかけ捜索していた。

その後に続いて、ヒルダ達パラメイル隊も二機が着水していた地点を旋回しながら飛んでいた。

エルシャが独断でこちらに向かって来た事が分かったので、一先ずは一安心したヒルダ。すると、自分の飛んでいる下で大きな影が現れるのを発見した。

 

「おいっ、皆!!こっちだ!!」

 

ヒルダが声を上げると全員がその場に集まる。そして、海上からレイジアとそれを抱えた焔龍號が姿を現せた。

 

「急いで引き上げてください!!まだ助かります!!」

 

「「姫様!!」」

 

無事な姿を見て歓喜するナーガとカナメ。

 

その後、引き上げられたラグナメイルの中から拘束されたエルシャがストレッチャーで運ばれる。その様子をサラマンディーネは護衛の二人に心配されながら見守った。

 

「本当に後悔しているのならば、生きて償う事を考えるべきなのですよ。それに・・・」

 

「ご苦労さま、ドラ姫様」

 

悲し気に身を来るサラマンディーネにヒルダが労いの言葉を投げかけた。

 

「本当に凄いな、アンタは」

 

「いえいえ、それほどでも。ラグナメイル一機、無事に鹵獲する事に成功しました」

 

感心するヒルダに、サラマンディーネは冗談めかしく敬礼しながら微笑んで報告するのだった。

 

 

 

 

 








あとがき

漸く完成させることが出来ました。
感想を読んでいて思いついた伏線の話に時間をかけてしまい申し訳ないです。

少し原作の機体の戦闘を書きたかったのもあるのですが・・・

原作と違い、自分の筋書き通りに物事が進まず苛立つエンブリヲ。
その結果、サリアへのお仕置きが原作以上に厳しい物になってしまいました。

サリアはそんなに嫌いなキャラじゃないのですが・・・(胸は無いけど・・・)


最後の方はお酒を飲みながら書いたので誤字脱字、更には文章が可笑しくなっているかもしれません・・・
今も、少し酔っています・・・
読みにくかったら申し訳ないです・・・
文章の構成などは試行錯誤の途中なので、読みにくければ教えてください。

次回も少し遅くなるかもしれませんが、待っていてくれれば幸いです・・・


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