クロスゴールド 雷鳴が奏でる輪舞   作:愛剣

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獣電戦隊キョウリュウジャー
アンジュの救出を成功させ、無人島に潜伏する空蝉丸たち。
しかし、エンブリヲの魔の手は執拗にアンジュの後を追っていた。
エンブリヲとの決戦、リベルタスが刻一刻と迫っていた。



第二十三話

エンブリヲとの決戦、アウラの奪還のため少しでも戦力を整えるためにサラマンディーネは空蝉丸と共にアンジュと共にノーマと同盟を結ぶために使者としてやってきた。

しかし、最初はノーマ側の指令であるジルお暴挙によって頓挫してしまい。

そして、現在はその事に怒ったサラマンディーネの副官であるナーガとカナメが辞めてくれ、と騒いでいた。

 

「「・・・・・・・・・・」」

 

「・・・そんな表情をしないでください、二人とも」

 

用意された部屋で説得を続けるサラマンディーネだが、副官二人は顔に大きく不服です、と書いていた。

 

「空蝉丸が撃たれるのが不服なのは私も同じです。ですが・・・」

 

「もちろん、その事に対しての怒りが大きいですが。どうして姫様はその事を我々に黙っておられたのですか!?」

 

「そうですよ、姫様!!」

 

サラマンディーネが自分たちに隠していたことを怒っているんですと伝える。

だが、サラマンディーネからすれば、それは仕方のないだろうと言いたい。

 

「だって、貴方たちに話したら、先に彼らと戦争をしようと言い出すでしょ?」

 

「「当然です!!!」」

 

何を当たり前なことを仰っているのですか、と言うかのように声を荒げる二人。

そんな彼女らにサラマンディーネはため息をついた。

 

「確かに、その件については私も憤りを感じています。しかし、使者として赴けば攻撃される事は覚悟の上でした。その事は出発前に話したはずでしょ」

 

そう指摘すれば、二人は黙り込んでしまった。

そこへ畳みかけるようにサラマンディーネは「それに・・・」と言葉を続けた。

 

「アンジュ達は関わっていません。元司令官殿の独断です。今は軟禁状態で、戦いが終われば、然るべく沙汰が下るはずです」

 

「信用できるのですか?」

 

「空蝉丸さんは納得してるんですか!?」

 

「もちろんです。司令官はアンジュがなりますから、彼女ならば良しなに対処してくれるはずです。空蝉丸も最善の事ならば構わないと言ってます」

 

そう言うと、二人は今度こそ黙ってしまう。

納得はしていないが、何とか理解してくれたと感じサラマンディーネは安堵した。

 

「では、この話は終わりです。アンジュ達と同盟を結びますよ」

 

「「・・・はい」」

 

不承不承に返事をするナーガとカナメ。

その事をサラマンディーネは咎めなかったが、ため息をついて部屋を出ようとする。

 

「さぁ、行きますよ。あまり空蝉丸を待たせてはいけませんから」

 

空蝉丸はタスクとアンジュと共に一緒にいる。

一緒になって二人を説得してくれていると言ってくれたのだが、二人は自分の臣下なので、断ったのだ。

面倒なことになるから黙っていたのだが、まさか決戦前にこんな事で躓いてしまうとは思わなかった。

 

(こんな事になるなら、あらかじめ説明して・・・・)

 

考えを改めようとして、サラマンディーネは首を横に振った。

どんな言葉を掛けようとしても、二人がすんなりと納得しないのは火を見るよりも明らかだった。

そう自分の頭の中で結論をつけて部屋を後にしようとした時、後を追おうとしたカナメから声を掛けられた。

 

「あの、姫様・・・」

 

「・・・まだ納得ができないのですか?」

 

「い、いえ、違います!!」

 

少し凄んで問いかけると、怯えながら慌てて否定するカナメ。

 

「ならば、何ですか?」

 

「えっと、その・・・」

 

「早く言え・・・」

 

「じゃあ、ナーガが言ってよ・・・」

 

「い、いやだよ・・・・」

 

「何なんですか。二人共、言いたいことがあるのならば、はっきり申しなさいっ」

 

「「は、はい!!」」

 

サラマンディーネが少し語気を強めて問いかけると、二人はオドオドしながら小声で話し合う。

そんな二人を見かねたサラマンディーネが更に強く問いかけると、二人はビクッと身体を直立させて、固唾を飲んでカナメが口を開いた。

 

「そ、その、姫様は何時から空蝉丸さんを呼び捨てになさっているのですか?」

 

「え・・・?」

 

カナメの問いかけにナーガも頷く。

だが、指摘されたサラマンディーネは何のことを言われたのか分からず固まる。

理解をするのに数秒だった。

 

「っ!?」

 

その数秒後にはサラマンディーネの顔は真っ赤に染め上がる。

二回目の会談でジルからの凶弾を庇ってくれた時、とっさに出てしまったものだが。

忙しくて自分はおろか、アンジュ達も気づけなかったことに気恥ずかしいものがあった。

 

「あの、サラマンディーネ様。空蝉丸殿とは契りを結ばれたのですか?」

 

「な、なにを言ってるんですかっ、ナーガ!?」

 

結婚の約束をしたのか、というナーガの追撃のような問いかけに今度はサラマンディーネの方が追い詰められてオドオドする。

そんな彼女にカナメとナーガは冷静に言葉を紡いだ。

 

「姫様。別に私たちはお相手が空蝉丸さんでも構わないと思っております」

 

「はい。私もサラマンディーネ様には空蝉丸殿以外いないと考えておりました」

 

「周囲の者の事はおまさせください。このカナメがしっかりと纏めますので」

 

「大巫女様への説明はこのナーガが行いますから」

 

「ふ、二人共何を言っているのですか!?」

 

勝手に話を進めようとする二人に待ったを掛けるサラマンディーネ。

確かに、異性として空蝉丸の事を意識している。

だが、契りは結んでいないばかりか、こちらを意識しているかわからないのだ。

 

「大丈夫ですよ、姫様」

 

そう説明したが、カナメが笑顔で言ってくる。

 

「呼び捨てにされている事に気が付いていないという事は、逆に姫様に好意を持っている事ですよ」

 

「そうですとも。空蝉丸殿は、この時代に来てからずっと甲斐甲斐しく面倒を見ていたサラマンディーネ様に好意を持たないはずがないではないですか」

 

「っ!?」

 

ヒートアップしてきた二人の言葉にサラマンディーネもその気になりそうだった。

しかし、ナーガの言葉を聞き、冷や水を浴びたかのように冷めあがってしまった。

 

「あ、あの姫様・・・」

 

「どうかなさったのですか?」

 

そんなサラマンディーネの雰囲気を察した二人は首を傾げながら、問いかける。

 

「本当にそう思いますか?」

 

「えっ、だって・・・」

 

「ナーガの言う通り、彼はこの時代の人間ではありません。いずれ、元の時代に戻るかもしれないのですよ」

 

「あっ、い、いや、それは・・・」

 

サラマンディーネの言葉に気が付いたナーガは何か別の事を言おうとするが、すでにサラマンディーネは悲し気な表情で部屋を出ていた。

 

明らかに肩を落としている彼女の姿に臣下の二人は何もいう事が出来ず、その後を追うことも出来ずにいると部屋の扉が自動で閉まる。

やってしまった、と後悔している二人を無視して。

 

 

 

 

 

部屋を出た後のサラマンディーネの足取りはとても重いものだった。

二人の言葉で気が付いたことは心の片隅に押し込んでいたことだ。

空蝉丸がこの時代の人間ではないことも、いつか帰らなければならないことはわかっていたこと。

しかし、それを自分の心の中に押し込めてしまっていた。

ずっと彼と一緒にいたい。

それが紛れもないサラマンディーネの想いだったからだ。

そして、先ほどの二人との会話でその葛藤を思い出してしまった。

 

空蝉丸はこの時代の人間ではない。

 

それも紛れもない事実だ。

向こうの時代には空蝉丸の仲間が待っているかもしれない。

空蝉丸も仲間に会いたいかもしれない。

それだけ彼らの繋がりは強いはずだろう。

 

それを阻むのは自分の我儘なのかもしれない。

 

(それでも、私は・・・)

 

「サラマンディーネ殿」

 

「空蝉丸・・・殿」

 

「如何かなされましたか?」

 

深く思考していたため前方から歩いていた空蝉丸の姿に気が付けずぎこちない表情になる。

その表情に空蝉丸も不思議そうに問いかけた。

しかし、彼女自身の意地のような思いから、それを口にすることができず強がりのように微笑みを浮かべた。

 

「いえ、なんでもありませんわ」

 

「そうで、ござるか?」

 

「はい。何の問題はありませんわ」

 

決してそんなことは無いのに、自分の気持ちにも、空蝉丸にも嘘を付くことにチクりと胸に痛みが走る。

それに素直になれない自分にも腹が立った。

そして、素直に自分の思いを言って、彼を困らせることも、今の関係を壊してしまうのも怖いのだった。

 

そんな事になるぐらいならば、もう少しだけ今の関係のままで良い。

 

そう自分の心を納得させながらサラマンディーネは空蝉丸と歩くのだった。

 

 

 

 

そのころ、サラマンディーネの従者であるカナメとナーガは通路の角から二人の様子を眺めていた。

 

「どうしよう、ナーガ」

 

「ど、どうしようと言われても・・・」

 

気まずげにサラマンディーネの後ろ姿を眺めながら後悔をにじみだす二人。

 

「何やってるの、あんた達?」

 

明らかに落ち込んでいる主君を如何にして元気づければ良いのか分からず、悶々としている二人の背後から声を掛けられ飛び上がる。

慌てて振り返れば、アンジュとタスクが不思議そうな表情で二人を見ていたのだった。

 

 

 

 

 

 

それから暫くして、サラマンディーネと空蝉丸は同盟を正式に結び、決戦についての悪銭を立てるためにやってきていた。

集めらえたブリーフィングルームには二人の他に合流したカナメとナーガ。

それにアンジュとタスク、それにヒルダが集まっていた。

 

「それで、話が纏まったのよね」

 

チラリとサラマンディーネの後ろで控えているカナメとナーガの様子を覗いながら問いかける。

すると、サラマンディーネは微笑みながら答えた。

 

「ええ、大丈夫ですわ。これで、なんの障害もなく貴方たちと共に戦えますわ」

 

「そう。それは良かったわ」

 

「ところで、空蝉丸殿と一緒に元司令官殿に会いに行かれたとか」

 

「ええ。ジルからエンブリヲの殺し方を聞きにね」

 

「・・・素直に教えてもらえたのですか?」

 

こういっては何だが、ジルとアンジュはお互いに気に食わないと思いあっている感じがした。

その二人が密室で話し合っていた。

決して、穏やかな空間だったはずがない。

 

「それが驚いたことにあっさり教えてくれたわ」

 

本当に拍子抜けしてしまうぐらいにね。

肩透かしを食らったとため息をつくアンジュ。

 

「もっとも、締め上げてでも話させるつもりだったけどね」

 

むしろ、その方がよかったんだけど、と残念そうにアンジュが首を振ると引き攣った顔をする者や苦笑を浮かべる者がいた。

もっとも、引き攣っていたのはタスクと空蝉丸だけなのだが。

その中で一人だけ微笑んでいたサラマンディーネだけだった。

 

「それで、ジル元指令は何と言っていたのですか?」

 

「その事なんだけど、エンブリヲは死ぬたびに不確定領域の多重存在と入れ替わる。その事は知っているわよね」

 

「ええ、実際にこの目でいましたし」

 

サラマンディーネが頷くのを確認してからアンジュが口を開く。

 

「それで、ジルから聞いたんだけど。ヴィルキスならエンブリヲの本体がいる不確定領域に渡ることができるらしいの」

 

「なるほど」

 

アンジュの言葉に納得するサラマンディーネ。

確かに、ヴィルキスはこの世界と自分たちの世界の間を渡った。

彼女の機体ならばそれは可能ということだろう。

そこで空蝉丸が思い出したように言った。

 

「そういえば、正確な位置は言ってませんでしたが、手掛かりもなく探し当てることは出来るのでござるか?」

 

「そうなのよね・・・気合で探せ、とでも言いたいのかしらね。あの女」

 

辟易としながら苦い表情を浮かべるアンジュ。

 

「もしかすれば、アウラならば手がかりを持っているかもしれません」

 

「え?」

 

サラマンディーネの言葉を聞き、一同が彼女の方を見る。

 

「エンブリヲの技術のすべてはドラゴニウム、マナによって管理されております」

 

「あっ、確か、この世界のマナって、アウラから放出されているんですよね」

 

気が付いた様にタスクが声を上げると、サラマンディーネは頷く。

 

「エンブリヲの力のほとんどはアウラを介して行われています。その中には当然、自らの肉体を転送も行っているはず」

 

「じゃあ、もしかすれば、アウラはエンブリヲが何処にいるのか知っているかもしれないってこと?」

 

「確実とは言えませんが、可能性はります」

 

自信なさげなサラマンディーネの言葉だったが、アンジュにはそれで十分だった。

 

「別に構わないわ。どのみち、アウラを助けないといけない事には先には進めないしね」

 

「つまり、またミスルギ皇国に突っ込むってのか・・・」

 

「まっ、こっちから打って出るしかないからな」

 

アンジュの言葉にげんなりとするロザリーの肩にヒルダが励ますように手をのせる。

 

「アウラがいる場所がミスルギ皇国にあるアケノミ柱の地下から移動できない以上、当然、エンブリオもそこから動かないはずだ」

 

「そして、恐らくエンブリヲの計画である次元融合の発生源もミスルギのはずです」

 

タスクの言葉の後に続くサラマンディーネの言葉に一同が気を引き締める。

 

「じゃあ、ミスルギ皇国へは明朝に侵攻を開始するわ」

 

「イエス、マム」

 

そして、アンジュが全員の顔を確認してから会議を閉めるように紡いだ言葉にヒルダたちノーマ側は答え、サラマンディーネ達は頷くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

それからアウローラでは艦内の人間が慌ただしく最終決戦の準備に取り掛かっていた。

唯一、準備をしていない、いや動けないのでいるのは独房内に拘束されているエルシャだけだった。

虚ろな目でベッドに座って壁を見つめるエルシャ。

死ぬつもりで、今度はエンブリヲを裏切ったにも関わらず生き残ってしまい愕然するエルシャ。

しかし、自ら命を絶つことは出来なかった。

いや、そのぐらいの覚悟があるのならば、アンジュに殺してもらおうとは最初から思わなかった。

ゆえに、今のエルシャは抜け殻の様になっていた。

 

「折角、命を拾ったというのに、これでは死んでいるのと変わりませんね」

 

「あなたは・・・」

 

そんな彼女に扉を開けて従者二人と共に入ってきたサラマンディーネが声をかけた。

エルシャには入ってきた人物が誰なのかわからなかったが、聞き覚えのある声に自分と戦っていた人物であることを悟る。

すると、エルシャは鋭い目でサラマンディーネを睨んだ。

しかし、サラマンディーネはその視線にも微笑みを浮かべる。

 

「どうして、私を助けたの?」

 

「死にたかったのですか?」

 

サラマンディーネが問いかけると、エルシャは鋭い視線を向けてくる。

しかし、サラマンディーネは微笑みを浮かべる。

 

「問うまでもないことでしたね」

 

死ぬためにここに来たのに当然だろう。

 

「どうして、死なせてくれなかったのっ!?」

 

「負けた貴女に何かを求める権利はありませんわ」

 

「っ!?」

 

いつもカナメ達に凄んでみると、エルシャは黙り込んでしまう。

何故か、後ろに控えているカナメとナーガも怯えているが、サラマンディーネは気にすることなく話を続けた。

 

「なら、情報を引き出すために拷問でもするのかしら?」

 

「そんな事はいたしませんわ」

 

心外です、言いながら微笑みを浮かべるサラマンディーネ。

そんな彼女の態度にエルシャがにらみつける。

 

「ただ、貴女に会いたいという方がいるのです」

 

「私に?」

 

誰だろうか、とエルシャは興味ないように装いながら首を傾げる。

一緒に戦ってきた仲間とはすでに会った。

文句を言いたかったのかもしれないが、自分の姿があまりにも惨めに見えたのか、眉を顰めて出て行ってしまったが。

彼らがもう一度会いに来たのだろうか、と考えたがそうは思えなかった。

では、一体誰が・・・と考えた時、

 

「エルシャママ!!」

 

「えっ?」

 

サラマンディーネが合図をすれば、扉に控えていたナーガが部屋の中に招く。

すると、勢いよく十人の少女たちがエルシャの元に駆け寄った。

 

「み、皆、如何してっ!?」

 

まるでお化けにでも見たような表情をするエルシャに少女たちは無邪気な顔をする。

その様子にサラマンディーネは微笑みながら言葉を紡いだ。

 

「可愛い子供たちを戦場に置いておくのは忍びないと、間諜の者が言うので、仲間の救出と共に連れ出したのです」

 

「そ、そんな・・・」

 

だが、ドラゴンの一団が連れていくのは、子供たちにとっては誘拐されると感じる行為なので、間諜の者が優しく眠らせてから大型ドラゴンの腕の中で運ばせたのだが。

間諜の言うとおりにしてよかった。

ドラゴンが飛び立った後、キメラと戦闘をしていたドラゴンがその場に堕ちたのだ。

もしも、遅れてしまえば、彼らは押しつぶされていただろう。

その事をサラマンディーネが説明すると、エルシャは心配そうに子供たちを見た。

 

「み、皆、大丈夫だったの?」

 

主に、眠らされている事を心配しての言葉だった。

だが、エルシャの言葉を裏切るように子供たちは笑顔だった。

 

「うん。起きたら、知らないところだったけど、ヴィヴィアンお姉ちゃんとウッチ―がいてくれたから」

 

「ウッチー?」

 

「うん!!楽しいダンスを教えてくれたの!!」

 

「それにカナメお姉ちゃんが“まんが”って本を見せてくれたの!!」

 

楽しそうに無人島での事を語る子供たち。

最初こそ、いきなり知らない場所に連れてこられて怯えていたが、顔を知っているヴィヴィアンと、子供好きで面倒見の良い空蝉丸が安心させた。

更に意外だったのが、カナメがラッキューロから借りた少女漫画を見せてあげたのもよかったのかもしれない。

 

そうして、子供たちが楽しくしていたことにエルシャは安心したようだった。

すると、入ってきた子供たちが不思議そうにサラマンディーネを見た。

 

「ねぇ、サラお姉ちゃん。何で、エルシャママは牢屋に入っているの?」

 

「ふふ、ちょっとした手違いですよ」

 

そう微笑みながら、サラマンディーネは牢のキーを取り出し、エルシャの牢を開けた。

 

「えっ?」

 

「さぁ、皆さん。お母さんを出してあげて、一緒に遊んであげてください」

 

突然、釈放された事に呆然とするエルシャだったが、子供たちが素直にサラマンディーネの言葉に従った。

 

「ちょ、ちょっと待って、皆!」

 

牢の中に入ってエルシャの手を握り連れ出そうとする子供たちを慌てて制止する。

戸惑いながらもエルシャはサラマンディーネを睨んだ。

 

「どういうつもりなの?」

 

「別に大した意味はありませんわ。もう、貴女に我々と戦う理由はない、とアンジュも判断したのです」

 

「だからって、釈放するの?」

 

「まさか、もう一度我らに銃を向けるお積りですか?それとも、エンブリヲの元に戻りますか、子供たちを連れて?」

 

人の悪い顔をしながらサラマンディーネが問いかける。

当然だが、エルシャには答えることができない。

エンブリヲが子供たちを助けたのは、自分を駒にするため。それに戻ったとしても、自分を受け入れるとは思えない。

もし、自分を受け入れてくれても、エンブリヲには子供たちの命になど虫けらほどの興味しかない。

 

「エンブリヲの計画が完遂すれば、その子たちに生きる事は出来ない。それは貴女にもわかっているはず」

 

「・・・なら、貴女は、貴方たちは私に戦力として加わってほしいというの?」

 

警戒するようにエルシャが様子を覗うと、サラマンディーネは微笑みながら、

 

「それを決めるのは貴女ですわ」

 

「え?」

 

「一応、貴女がエンブリヲに騙され、自害しようとしたことは伝わっています。だからと言って、許さない者もおりますが、大半の者は一緒に戦ってほしいと言っているそうです」

 

人当たりの良いエルシャに対して、寛大な者が多かった。

むしろ、エルシャを騙したエンブリヲに憤りを感じる物が多いことにサラマンディーネ達は驚いた。

だが、これまで殺しあっていたサラマンディーネ達ドラゴンと折り合いをつけた際、エルシャの事も共に戦うことで許そうとしているのかもしれない。

 

「しかし、私とアンジュはそうは考えません」

 

「どうして?」

 

「私もアンジュも、自分の意思で決めてほしいのです。この戦いは私の自由を勝ち取るための戦いです。それぞれの義をもって臨んでもらいたいのです」

 

そういって、サラマンディーネは呆然とするエルシャに背を向けて出ていくのだった。

 

監房室を出てサラマンディーネはやりきってため息をついた。

 

「お疲れさま」

 

外で待っていたアンジュがサラマンディーネをねぎらった。

その言葉を聞いて、サラマンディーネは微笑み返した。

すると、アンジュは言葉を続け、

 

「ちょっと、話したいから良いかしら?」

 

「・・・ええ、構いませんわ」

 

アンジュの言葉に首を傾げながら、サラマンディーネは彼女の後をついていった。

その背を見届けるカナメとナーガが縋るようにアンジュを見ているのだった。

 

 

 

 

それから、サラマンディーネはアンジュに連れられて回廊を歩いていた。

 

「エルシャの事、ありがとうね。それで様子はどうだった?」

 

「子供たちが生きていることを知って、目に力が戻っていました。あれならば死にたいとは思わないと思います」

 

「そう。よかった」

 

サラマンディーネの言葉を聞き、アンジュは安堵した。

だが、それから二人はしばらく無言で歩くが、言いづらそうにアンジュが口を開く。

 

「それで、貴女はどうなのよ?」

 

「如何とは?」

 

アンジュの問いかけに対して、サラマンディーネは質問の意図が分からず首を傾げた。

 

「だから・・・、ああ、もう!」

 

どのように話をしたものか、と考えるアンジュ。

だが、途中で面倒になった。

 

「だから!ゴザル丸と何があったのかって聞いてるの!?」

 

「え!?」

 

やけくその様に言葉を紡いだアンジュの言葉に呆気に取られるサラマンディーネ。

そんな彼女の顔とヤケクソに言ったため恥ずかしさからアンジュは顔を赤くしながら言葉を補足した。

 

「貴女の取り巻きの二人から聞いたのよ。ゴザル丸の事で貴女が落ち込んでるって」

 

「心配してくださってるの?」

 

「・・・決戦前だからよ」

 

照れ隠しの様にそっぽを向くアンジュにサラマンディーネは嬉しそうに微笑みを浮かべた。

その反応にアンジュが癇癪を起すのは当然なことで。

 

「それで、ゴザル丸とは如何なのよ?」

 

「如何とは?」

 

「好きなんでしょ、彼の事が。発信機を渡すほどに」

 

「そんな事まで・・・」

 

あのお喋りな二人は―――

自分を心配して、対等な関係であるアンジュに相談したのだろうが、如何してやろうか。

 

「それで、彼には告白しないの?」

 

「・・・・・・」

 

自分は思いを伝えて余裕ができたのだろう。

アンジュの態度に今度はサラマンディーネの方が不機嫌になる。

 

「もしかして、生きた時代が違うから一緒にはいられないと考えているの?それとも、決戦が終わった瞬間、ゴザル丸が元の時代に帰っていくかもしれないのが心配なの?」

 

そうアンジュが指摘すると、サラマンディーネは黙り込んでしまう。

問いの答えにはそれで十分だろう、と思ったアンジュは言葉を畳みかけた。

 

「でも、確実じゃないんでしょ。元の時代に戻るとは限らないし、ゴザル丸が帰ろうが戻るとは限らないでしょ」

 

「・・・もし、私が戻ってほしいと言ったら?」

 

「はっ!?」

 

サラマンディーネの言葉にアンジュは驚き声を上げる。

 

「何でそんな事を言う必要があるのよっ」

 

信じられない物を見る目でサラマンディーネに問いかけるアンジュ。

 

「過去を変えることが出来るかもしれないから」

 

「まさか、そんな理由で・・・」

 

馬鹿げていると言いたげなアンジュに対して、自分でも同じように思ってしまう。

だが、それでも。

 

「以前、言いましたよね。何故、私たちが自らの遺伝子を弄ったのか」

 

「それは、地球の汚染を取り除くためよね」

 

そこまで言って、アンジュは気が付いた様に顔を上げる。

すると、アンジュの目の前に微笑みを浮かべるサラマンディーネの顔があった。

だが、その表情は何処か悲痛を隠しているように思えた。

 

「未来の世界が知っている彼が過去に戻れば、地球は救われるかもしれない。エンブリヲの支配世界も変わるかもしれない」

 

「そんなの・・・。救われないかもしれないし、変わらないかもしれない。今が変わったら、私たちはどうなるの。今が変わるなら、私たちが戦う意味がないじゃない」

 

「歴史の補正力というのもありま・・・」

 

「そんなの関係ないじゃない。問題なのは貴女の気持ちでしょ。使命とか、地球救済も大事かもしれない。貴女は本当に良いの?」

 

アンジュの言葉にサラマンディーネは何も答えない。

それは彼女の中に答えが出ている事だろう。

黙り込んでいる彼女にアンジュは手で顔を抑える。

 

「貴女も相当な馬鹿ね」

 

「自覚はしてますので、幾分かマシだと思いますよ」

 

「馬鹿な事には変わりないわよ」

 

苦笑を浮かべるサラマンディーネに、アンジュはやはり納得できないのだった。

 

「ところで、私たちは何処に向かっているのですか?」

 

「医務室よ。何だかんだで、貴女も私もまだディザに話していないでしょ」

 

「ああ、そうでしたわね」

 

あからさまに話題を切り替えたサラマンディーネだが、アンジュは呆れながらも共に医務室の方へと向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 




あとがき
お久しぶりです。

更新が遅くなってしまい、本当に申し訳ありません。
本当の予定なら、キャンデリラ達を登場させる所まで書きたかったのですが少し短くなってしまいました。

前回はアンジュとタスクの中を取り持ったので、今度はサラマンディーネの心情を主に書いてみました。
二人の今後はもう少しまとめさせていただくとして。
戦闘がなくて物足りないかもしれませんが、なるべく早く続きを更新できるように頑張りますので、よろしくお願いします。
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