クロスゴールド 雷鳴が奏でる輪舞   作:愛剣

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第二十四話

アンジュとサラマンディーネが医務室へ向かっている途中、一足先に空蝉丸はタスクと共に医務室にいた。

会談の時に撃たれた傷を診てもらう為に来たのだ。

 

「これで大丈夫だよ。傷は完全に塞がったようだね」

 

肩の包帯を外し、傷の具合を確認するマギー。

彼女の言葉を聞いて、空蝉丸も、付き添いのタスクも安堵した。

 

「それにしても、治りが異常に早いね。戦闘にも参加しているのに」

 

銃創の患者はまず安静にしなければならないのに。

不思議そうにするマギー。

 

「よくこんな傷でエンブリヲと遭遇して無事だったね。アンタも、タスクも」

 

「拙者はただ夢中で戦っただけでござる」

 

「俺もギリギリだったよ」

 

感心するマギーに苦笑で二人に返した。

 

「もしも、空蝉丸さんの手助けや、ダンテツさんが助けに来てくれて、俺にこの力をくれなかったらアンジュを助け出すことは出来なかった」

 

そう言って、ガブリボルバーを取り出すタスク。

 

「それは拙者も同じでござる。まさか、エンブリヲがキメラという生物だけでなく、他の人間たちまで操るとは思わなかったでござる」

 

「まさか、マナを使って居場所を特定するだけじゃなくて、それで人間をコントロールする事まで出来るなんてな」

 

「そんな!!」

 

医務室のカーテンが突然開くと、中から眼鏡をかけた女性。

エンブリヲに操られていたエマという、アンジュ達、ノーマを監視する監察官だった女性だ。

だが、エンブリヲがアルゼナルを破棄すると同時に彼女も不要として処分されかけ、そのままアウローラに乗ったのだった。

その彼女が信じられないという顔をしていた。

 

「私たちが使っているマナがそんな事が出来るなんて・・・」

 

「そういう風に偽りの事実をマナによって与えられていたのだ」

 

愕然としているエマの隣に寝かされている女性。

サラマンディーネが送り込んだ間諜のリザーディアだった。

捕らわれている間に行われていた尋問とは言えない暴力の傷と脱水症状でここにすぐに運ばれたのだった。

 

「だが、ノーマはマナを破壊し、エンブリヲの塗り固めた偽りの世界を壊してしまう」

 

「だから、差別して、隔離された・・・・」

 

エマの言葉にリザーディアは無言でうなずく。

だが、空蝉丸達も黙り込んでしまう。

 

「それに、我々ドラゴンの声はマナに干渉して人間を狂わせる。ゆえに、ノーマでなければ我々と戦えなかったこともあるのだろうな」

 

「まるで、資源みたいな感じだな。私らノーマも、アンタらドラゴンも」

 

リザーディアの言葉を聞き、嫌悪感をあらわに言葉を吐き捨てるマギー。

エマも唇を震わせる。

 

「そんな、それなら私たちはただのお人形さんじゃない!!」

 

「全くフザケタ話よね」

 

そこで医務室の扉が開かれ、アンジュとサラマンディーネの二人が入ってきた。

 

「でも、こうも考えられるわよね。ノーマの私たちとサラ子たちドラゴンが手を組めば、エンブリヲに勝てるってことよね」

 

「気分はどうですか、リザーディア」

 

「サラマンディーネ様・・・」

 

二人が入ってきた瞬間に、表情を暗くしながらリザーディアが体を起こそうとする。

だが、サラマンディーネが手で制しながら、「そのままで構いませんよ」と微笑みながら止める。

 

「具合は大丈夫ですか?」

 

「・・・はい。申し訳ありません、サラマンディーネ様。任務に失敗し・・・」

 

「いえ、私たちこそ貴女一人に背負わせてしまって」

 

「それでも、成功させるべきでした。もう少しで皆が危険にさらされる所です。命をもって償わねば・・・」

 

「それは正しい選択ではありません」

 

穏やかな声音でいうサラマンディーネだが、目線は鋭くリザーディアを捕らえていた。

 

「もし、貴女の不手際から多くの仲間の命が奪われたのならば、貴女の命はもっと多くの仲間のために使わなければなりません。そんなことで命を無駄にするなど、無責任なのですから」

 

「全くその通りよね」

 

サラマンディーネの言葉にアンジュは頷く。

 

「これから一緒に気に入らない世界を作った神様に殴り込みに行くのよ。責任の取り方なんて終わってからにしましょう」

 

「ア、 アンジュリーゼ様・・・」

 

モモカからアンジュが自分に対して折り合いをつけたと聞いていたが、実際に自分に対する態度に困惑するリザーディア。

だが、それでも言わなければならない。自分を助けてくれたモモカとの約束もある。

そうして、口ごもりながらディザ―ディアが言葉を紡ごうとするが、

 

「言いたいことは後にして頂戴。これから一緒にエンブリヲを叩きのめすんだから」

 

「は、はい」

 

それを遮るようにアンジュは微笑むのだった。

結局、それからは終始リザーディアはサラマンディーネとアンジュに心を乱されるのだった。

また元監察官のエマは真実を知ったため、アンジュ達と共に戦うことを決意するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

それから空蝉丸とサラマンディーネは医務室を出て、アンジュ達と別れると艦内を散策するように歩いていた。

 

「肩が治ってよかったですわ」

 

「ええ、決戦前に万全にできたのは幸いでござる」

 

それで、と空蝉丸は言葉を続ける。

 

「サラマンディーネ殿は大丈夫ですか?」

 

「はい?」

 

「アンジュ殿と入ってきたとき、気を落としているように感じたので」

 

その一言を聞いてサラマンディーネは驚いてしまう。

確かに、アンジュと話した後は気が落ち込んでいたが、それを隠すよう努めていたつもりだった。

 

「そ、そんなに分かりやすかったですか?」

 

「いえ、何となくそんな気がしただけで・・・」

 

「それなら、気のせいですわ。私は問題ありませんよ」

 

「そうでござるか?」

 

「はい」

 

気恥ずかしさか、他に何か理由があったのか自分でも分からず咄嗟に嘘を付いてしまったサラマンディーネ。

その嘘が後ろめたくて、

 

「それより知っていましたか、アウローラも、アウラも光という意味があるんですよ」

 

「そうなのですか?」

 

顔を見せたくなかったサラマンディーネは手を後ろで組み、悠々と速足で空蝉丸の前に出ると、少し露骨かなと思いながらも話をすり替えた。

 

「私たちにとってアウラは絶望の世界に現れた希望。アンジュ達にとっては暗闇に包まれた世界を打ち砕く光」

 

「なら、拙者の光はサラマンディーネ殿かもしれませぬな」

 

「えっ!?」

 

突然の空蝉丸の言葉を聞いてサラマンディーネは驚き、顔を赤くしながら振り返り彼を見た。

 

「拙者と出会った時の事を覚えておられますか?」

 

「ええ。瀕死の重傷を負って倒れていました」

 

「その時、拙者は暗闇の中におりました。死の淵だったのかもしれません。しかし、目が覚めた時、光が見えたのです。サラマンディーネ殿が治療していただけたから、拙者はこの場にいることが出来た。本当に感謝しています」

 

「本当にありがとうございます」

 

腰を九十度に折って頭を下げる空蝉丸。

その姿にサラマンディーネは顔を赤くする。

本当に素直な彼の気持ちを伝えてくれるのは彼の美点だ。

余りに率直に伝えるので、こちらが焦ってしまう。

 

「では、お礼をいただけますか?」

 

だが、こちらばかり振り回されるのはプライドの部位分が許せない。

だから、せめてこのぐらいは構わないだろう。

 

「しかし、拙者にお渡しできるものはございませんぞ」

 

「特に何がほしい物はありませんわ」

 

ただ、

 

「愛称のようなものをください」

 

「あ、愛称でござるか?」

 

「ミィのような奇抜なものを考えなくても構いませんから」

 

自分で言っていて矛盾を感じるサラマンディーネ。

さっきアンジュと話した時、自分は彼を遠くに遠ざけようとした。

なのに、今の自分は彼と距離を縮めようとしている。

目の前にいる彼は必死に自分の呼び名を考える姿も愛おしく感じる。

 

「すみません。サラ殿で構いませんか?」

 

「ふふっ、ええ、構いません。では、今後はそう呼んでいただけませんか?」

 

「わかりました。では、今後はそのように」

 

「はい。お願いします」

 

満足気に笑うサラマンディーネ。

アンジュの言う通り自分は馬鹿なのかもしれない。

簡単な愛称だが、自分はそれだけでこんなにも嬉しいのだから。

 

これでもしも、彼が戻ることになった時、自分は彼を送り出すことが出来るのか。

幸せな想いをしながら、心の端ではそんな不安が渦巻きながらサラマンディーネは戦いに挑むことになるのだった。

 

 

 

 

それから夜が明けた時間。

海の中にいるため、日差しは届かない。

だが、侵攻を開始する前に、パラメイル隊、龍神器隊、空蝉丸とタスクは集まっていた。

 

「じゃあ、作戦を説明するわよ」

 

ブリーフィングルームでまず発言したのはアンジュだった。

テーブルのモニターを映し出し、作戦の詳細を説明した。

 

「まず、アウローラは浮上し、アウラがいるアケノミハシラへ侵攻する。途中で、サリア達のダイヤモンドローズ部隊」

 

「何それ、ダサいんだけど」

 

「ネーミングはサリアよ。ネーミングセンスが最悪なのは出会った時は言ってあげないで上げて、これ以上は流石に可愛そうすぎるわ」

 

ヒルダの言葉にアンジュはジョークを交える。

周囲から苦笑が出たのを確認しながら作戦の説明を再開させた。

 

「それに、キメラという生物兵器とエンブリヲが妨害するはず。私たちはアウローラの進路を塞ぐそれらの障害を取り除く。アウローラはそのまま侵攻し、アケノミハシラを射程に収め、柱の破壊とアウラまでの道を作る。後は、そこから侵入してアウラを救出。大まかにいえば、こんなところかしら」

 

「簡単に言うけどな、向こうの戦力分かっているのかよ!!サリア達だけでも厄介なのに、あの化け物の数は半端じゃないってのに!!」

 

と、アンジュの言った作戦にロザリーが吠える。

だが、彼女の指摘の通り、戦力差がかけ離れすぎている状況で正面突破の作戦は無謀に感じるだろう。

 

「だけど、この作戦以外に勝てる見込みはないわ。戦力差が離れている状況で長期戦は避けなければならない以上、一点突破するほかない」

 

「なぁ、シンギュラーを開けばドラゴンが援軍に来てくれるんじゃないのか?」

 

サラマンディーネを見ながらヒルダが指摘する。

すると、彼女も微笑みながら頷く。

 

「はい。現在、我々の世界でも戦力を編成しています。ゲートが開くのを待っています」

 

「つまり、シンギュラーを開けば、大量のドラゴンが私らに味方してくれるってことだな」

 

不敵な笑みを浮かべるヒルダ。

そこでサラマンディーネは頷きながら、空蝉丸とリザーディアを見る。

 

「ゲートを開くシステムの場所はリザーディアが知っています。当然、警戒し警備を厳重にしている可能性があるので空蝉丸に護衛として向かっていただきます」

 

「しかし、壊されている可能性はないかい?」

 

それまで静観していたジャスミンの言葉に、サラマンディーネは首を横に振った。

 

「間諜からの情報から破壊はしていないそうです。その代り、護衛の者をそろえていると」

 

「エンブリヲからしても、我々アウラの民を引き込むのは次元融合に必要なエネルギーを得るチャンスでもありますからね。簡単には破壊できないでしょう」

 

ただ、それ故に、

 

「エネルギーを必要とするエンブリヲに我々を呼び込むリスクは高いです」

 

「正論だね」

 

サラマンディーネの言葉に頷くジャスミン。

 

「ですので、ゲートを開くのはアケノミハシラ破壊後に行うべきでしょう。それから迅速にアウラを救出する」

 

「サラマン・・・サラ殿の合図と共にリザーディア殿とゲートを開く手はずになっています」

 

いつも通りに呼ぼうとした時、鋭い視線を感じて呼び方を変える空蝉丸。

だが、不安のあるロザリーの声に周囲は疑問に思わなかった。

 

「それじゃあ、それまでは私らだけで戦うってのかよ!!もしも、デカ物が出てきたらどうするだよ」

 

「確かに、それは厳しいね」

 

ジャスミンが頷く。

もしも、大型のキメラが現れた場合、プテライデンオウがいないのは厳しいだろう。

 

「それについては、大丈夫でござる。プテラゴードンを置いて行くでござるし、手は他にも討ってありまする」

 

しっかりと対策をしているという空蝉丸。

その後に続いてナーガも口を開いた。

 

「キメラを生成する機器は潜入する際、我々が破壊いたしました。残存している勢力がどれぐらいなのかはわかりませんが。これ以上、増えることは無いと思います」

 

と、胸を張るナーガ。

その事を聞いて、一同から安堵した空気が流れる。

 

「じゃあ、他に質問はないかしら。ないなら、もうすぐミスルギ皇国に入るらしいから」

 

アンジュが面々を見回すと、他のメンバーから声が上がらなかった。

 

「なら、総員配置に付きなさい。これより作戦を開始する」

 

『YES,マム!!』

 

 

 

 

それからアウラローラ内の集合したアンジュ達はそれぞれの機体に乗っていた。

海に潜って移動しているアウローラは予定通り、ミスルギへ航行し目の前にはエンブリヲが用意した戦艦部隊が展開していた。

このまま行けば、後僅かで接触することがブリッジのオペレーターから伝えられた。

それを聞いてアンジュは総員に向けて言葉を紡ぐ。

 

「総司令官のアンジュよ。私たちはこれよりミスルギに侵攻。アケノミハシラ内に侵入し、敵の親玉、エンブリヲの力の源にされているアウラを救出する」

 

アウローラ内に響き渡るアンジュの声。

艦内にいる全員がスピーカーから流れるアンジュの声に集中する。

 

「反社会的な化け物として差別されてきた私たちノーマと、私たちと戦うことになっていたドラゴンたちアウラの民。私たちと共に戦ってくれる人たちと、古の民。それに態々、過去から私たちに加勢してくれる伝説の戦士」

 

伝説の戦士と呼ばれ、モービルにディザ―ディアと共に乗っている空蝉丸は自分の事だと気が付く。

だが、なんだか気恥ずかしさから顔を少しそらせてしまう。

すると、近く待機していた焔龍號に乗りながら微笑みを向けるサラマンディーネと目が合う。

その視線から苦笑を浮かべて、更に逃げるように視線をそらせると、今度は母親の形見のパラメイル、アーキュラスに乗るタスクの姿があった。

その視線にタスクは親指を立てて合図する。

合図を見て空蝉丸は笑みを浮かべながら、正面を見た。

すると、アンジュが言葉を続けた。

 

「迫害してきた奴らの言うとおりになるのは癪だけど。やってやろうじゃない、世界を壊してやりましょう!!生きるために!自由を勝ち取るために戦いましょう!!作戦名は『ラスト・リベルタス』。神様だろうが、何だろうが!!殺して、皆で勝ち取るわよ!!!」

 

『おぉおおおおおおお!!』

 

アンジュの言葉に呼応するように、アウローラの全ての区画から声が上がるのだった。

 

 

 

 

 

同じ頃、牢屋から出されたエルシャもまた子供たちと同じ部屋でアンジュの音場を聞いていた。

 

「エルシャママ、如何したの?」

 

放送を聞いてから黙り込んでしまっているエルシャを心配して声を掛ける子供たち。

そんな彼らにエルシャは微笑みを浮かべながら、

 

「いいえ、大丈夫よ。ママも行かないといけないから。皆はここでじっと待ててね」

 

「何処に行くの?」

 

「皆の未来を作りに行くのよ」

 

そう言って、エルシャはブリッジへと向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

エルシャがブリッジに到着し、席に着いてすぐにエンブリヲの用意した戦艦部隊から魚雷が発射された事を管制官から告げられる。

 

「敵艦より魚雷、来ます!!」

 

「冷却魚雷発射!!」

 

アウローラの舵を取っているジャスミンが指示を出す。

その指示に従ってブリッジからアウローラの発射管から魚雷が放たれる。

放たれた魚雷は海中をまっすぐ進むと、アウローラの魚雷は爆発し海水を氷結させる。

それが盾となって向かってきた魚雷を防いだ。

 

「アウローラ、浮上させるよ!!」

 

その隙にジャスミンは舵をきりアウローラを浮上させる。

それと同時にアウローラ上部のミサイルの発射台を開ける。

 

「戦艦部隊にミサイル全弾発射!!」

 

「了解!!」

 

ジャスミンの指示で発射されるミサイル。

戦艦部隊に標準通り的中させ、一時的だが沈黙させることに成功する。

更に、アウローラの後方で距離を取ってついて来ていた大型ドラゴンの三体もそれぞれブレスを放ち、船を沈めていった。

 

「まもなく、ミスルギエリア沿岸」

 

「全システムを飛行モードに移行。機関出力80%」

 

「YES、マム!!」

 

エンブリヲの第一陣を突破したと同時に、アウローラは離水して上空を飛んでミスルギに侵攻を開始した。

だが、その先にあるアケノミハシラからアウローラの進行を遮るように小型のキメラの群れが出てきた。

 

「アンジュ出てきたぞ!!!」

 

「ハッチ開け、パラメイル隊発進する!!」

 

ヒルダの言葉と共にアウローラのハッチは開き、アンジュが乗るパラメイルが発進する。

サラマンディーネ達、龍神器と生き残った八体の小型のドラゴンも共に発進しキメラたちを攻撃しながら、アケノミハシラへの進行を再開する。

 

「キメラたちの融合を阻止してください。龍神器ぐらいの大きさや巨大化する前なら堕すことは簡単です!!」

 

「了解。全機、聞こえたわね。集団で集まっている奴らから攻撃しなさい!!融合が完了する前に全部叩き落しなさい!!」

 

『YES、マム!!』

 

サラマンディーネの指示を聞き、命令を下すアンジュ。

その命令に周りのメンバーは中型や大型に融合しようとするキメラに攻撃をする。

弾丸とビームがキメラを堕す中、リザーディアをモービルに乗せた空蝉丸がアウローラから飛び出すと、低空飛行で宮殿の方へ向かう。

 

パラメイルとキメラの戦闘域も低く、地上にいる人々よりも高い位置で移動していた。

モービルから地上を見れば、突然の戦争に知らされていなかったミスルギに住む人々は大混乱していた。

 

「やはり、避難はされていなかったのですな」

 

「次元融合を行う上で、彼らはもはや無用な存在だからな」

 

空蝉丸の言葉に、リザーディアも不機嫌に言葉を紡ぐ。

下ではマナの使える人間たちが車などを使って逃げようと混雑している。

 

「このまま宮殿に向かってくれ、早くこの戦いを終わらせるために」

 

「うむ。心得た」

 

リザーディアの言葉を聞き、空蝉丸も決意し、モービルの速度を上げるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

上空では、アンジュ達がアウローラの進路を塞ぐキメラを撃ち落としながらアケノミハシラへと向かう。

ビームライフルを支給されたヒルダ、ロザリー、ヴィヴィアンも多くのキメラを撃ち落とす。

新人として生き残った二人のパイロットも必死に彼らに食らいつくように実弾を連射させる。

その時、飛び交うキメラの間を縫うようにビームの一閃がアウローラに直撃する。

だが、飛行の際に展開させていたフィールドによって、艦へのダメージは最小限に収めることが出来た。

だが、攻撃を受けたアウローラには艦内全体に振動が響く。

 

「何事だい!?」

 

「アウローラ正面に敵影があります」

 

ジャスミンの問いかけにブリッジから返事と共にモニターに映像が移される。

アケノミハシラの前に五機のラグナメイルの姿があった。

それもラグナメイルの内一気の肩にはエンブリヲが存在していた。

 

「エンブリヲ・・・」

 

モニターに映る宿敵の姿に苦い表情をするジャスミン。

 

「冷線砲の発射準備を急ぎな!!」

 

「了解!!」

 

エルシャが返事をすると共にアウローラは慌ただしく主砲のエネルギーチャージが行われる。

そんな彼らの様子を嘲笑うエンブリヲ。

 

「よく来てくれたね、アンジュ。歓迎するよ!!」

 

そう言って、エンブリヲはゆっくりで指を持ち上げて鳴らす。

いつもの芝居がかった仕草にアウローラから映像を見ていた者も、戦場で直に見ていた者はイラつきを感じるが。

次の瞬間、周囲のビル群が倒壊し、全員がそんなことを思う余裕などなくなった。

 

「な、なんだ!?」

 

全員の思いを代弁するようにロザリーが叫ぶ。

倒壊するビルの周囲にいた人々も大慌てで逃げまどっていたが、巻き上がった砂煙に写る巨影を見ると更に恐怖が大きくなった。

 

「マジかよ・・・」

 

「予め融合していたのを隠していたようですね」

 

倒壊するビル群から大型のキメラが二体、中型のキメラが十以上出てきた事にヒルダはウンザリし、サラマンディーネは冷静に判断する。

 

「上等じゃない」

 

そこで闘志を燃やしたアンジュの声が響いた。

 

「アウローラはアケノミハシラに進路をそのままに。サラ子、あのデカ物の相手はドラゴンにさせて!!」

 

「ええ!!」

 

アンジュの指示を聞き、すぐにサラマンディーネは大型のドラゴンを倒壊したビルから出てきたキメラたちに向かわせた。

 

「残りはアウローラと共に敵の迎撃!!」

 

『YES、マム!!』

 

アンジュの鼓舞にアウローラのメンバーは士気を高める。

だが、キメラの色が白から赤に変わった瞬間、中型のキメラが一瞬でアンジュの乗るヴィルキスの目の前まで一気に突撃してきた。

 

「なっ!?はやっ・・・!?」

 

振り下ろされるキメラの爪をアンジュは辛うじて剣で受け止めた。

 

「アンジュ!?」

 

「姫様、来ます!!」

 

「っ!?」

 

驚きの声を上げるサラマンディーネだが、カナメの声を聞きと自分の元にもキメラが向かっていた。

そんな様子を見ながらエンブリヲは薄ら笑いを浮かべている。

 

「これまで君たちは悉く撃ち落としてきたのでね。特別仕様に改良させてもらったよ」

 

赤い中型のキメラは高速でアウローラの周りに群がりだす。

パラメイル達は必死に迎撃しようとする。

だが、数が多いのに加えて赤いキメラの性能が高いため、先ほどの様にキメラを落とすことが出来なくなった。

特に新人パラメイルパイロットは赤いキメラと戦えるはずもない。

それがわかっているために先輩たちは彼女の援護をしようとするが、パラメイルにはビームライフルを装備していてもラグナメイルクラスの機動力のあるキメラに苦戦する。

 

「あちらも圧されています、姫様!!!」

 

ナーガの言葉を聞き、プテラゴードン達の方を見ると大型のキメラに圧倒されている光景が目に入った。

赤い大型は二体だけだが、一体は何とかプテラゴードンが抑えてくれているものの、もう一体の方は三体のドラゴンが相手をしていたにも関わらず、すでに大型ドラゴンが一体やられ、他の二体も倒される直前だった。

 

「こっちも拙いぞ!アンジュ!!」

 

赤い中型から新人を守るために戦うヒルダが叫ぶ。

 

「も、申し訳ありません。お姉さま!!」

 

「気にするな!!後輩を守るのは先輩の務めだ!!」

 

不甲斐ない自分を悔やむ新人の言葉に、ロザリーが強がりの言葉を放つ。

しかし、当たり前だが赤いキメラによって、通常のキメラが堕ちる比率は下がっている。

そうなれば、撃ち落とせないキメラがどんどん融合していくのは当然の事だった。

大型と中型がどんどん増えていく。

戦況はどんどん不利になっていた。

 

「冷線砲の発射はまだかい!!」

 

「充填率80%。まだ時間がかかります!!」

 

「くっ」

 

仮にエネルギーの充填が完了しても、大型と中型の大量の包囲網では砲撃がアケノミハシラに届かない。

その事実に、ジャスミンは苦虫をかむ。

 

「くそっ、アレが撃てたら良いのに・・・」

 

収斂時空砲を使えば、何とかなるかもしれないと感じるアンジュ。

しかし、それを撃つことが出来る機体に乗るアンジュとサラマンディーネにはそれぞれ赤い中型が三体ずつあてがわれている。

とても収斂時空砲を撃つ隙などない。

 

その様子にエンブリヲはいつもの薄ら笑いを浮かべ、

 

「あの船も君の拠り所なのかな。アンジュ」

 

―――ならば、沈んでもらわねば困るな。

 

そう言って、薄ら笑いを浮かべながらゆっくりと目を閉じる仕草をし、声を発した。

気分はオペラ歌手のつもりだろうか、イラつくほど気取った態度であった。

 

「うたえ~♪うたえ~♪いぃま、二つの願いを・・・」

 

エンブリヲの歌声が辺りに響き渡る。

 

「この歌はっ!?」

 

「エンブリヲっ!?」

 

聞こえてきた歌声に焦るサラマンディーネとアンジュ。

エンブリヲのラグナメイルを見ると、自分たちの機体と同じように胸部から収斂時空砲を放つ砲身が展開されアウローラを狙っていた。

 

「狙いはアウローラかっ」

 

船のモニターにも映る映像を見たジャスミンは大きく舵を取って回避行動をする。

もっとも、そんな事で回避できないことが分かっているエンブリヲは悠々と歌を紡ぐ。

 

「どうするのよっ、サラ子。こいつらが邪魔で迎撃が出来ないわよ!!」

 

「・・・上手くやってくださいよ」

 

こちらも同じものを放って相殺させようと提案するアンジュだが、目の前にいる赤いキメラが邪魔で悠長に歌を口ずさむ暇などない。

対して、サラマンディーネは祈るかのように息を飲んだ。

そして、エンブリヲのラグナメイルの砲身からエネルギーが迸り、収斂時空砲の発射準備が完了し、発射されそうになる。

 

だが、発射直前に別の歌が辺りに響き渡った。

 

「ホ~ロ♪ホ~ロ♪ホロボレロ~♪」

 

その歌声が、エンブリヲの歌声を打ち消し、

 

「ホ~ロ♪ホ~ロ♪ホロビレバ~♪」

 

それに連鎖するように収斂時空砲のエネルギーが霧散した。

その現象に驚きの声を上げるエンブリヲ。

収斂時空砲の歌が阻害されたこともそうだが、それを行ったのが、

 

「一体、何の真似だ・・・」

 

屈辱で表情を歪ませながらエンブリヲは問いただした。

自分のラグナメイルの近くに佇んでいる部下に乗せたラグナメイルを。

アンジュ達も飛行携帯となったラグナメイルに佇むパイロットを見た。

 

「君の望みは皆の笑顔が目的だと言っていたが・・・ここにきて私を裏切るだと!!」

 

激昂して声を荒げるエンブリヲ。

この時点で理由はわからないが、彼女が情報を流していた裏切り者だという事がはっきりした。

 

「一体いつからだ!!何時からあの者たちと接触していたのだ!!」

 

「何時から?そうね・・・」

 

エンブリヲの言葉を聞いて、口元に指を当てて考える仕草をする。

それから「ウフフっ」と笑いながら、

 

「600年前からかしら」

 

そう言って、クルと一回転すると彼女の身体が桃色に発光し、人の姿から異形の者へと変化した。

人型ではあるが明らかにハートを模様した怪人の姿へと。

その姿を見てエンブリヲ側も、アンジュ達ノーマも目を見張った。

だが、サラマンディーネ達は安堵の表情を浮かべる。

 

「首尾よく進めて下さったのですね、キャンデリラ殿」

 

「流石ですね」

 

「ええ。ラッキューロがしっかりとやっていたわ」

 

サラマンディーネとナーガが褒めると、キャンデリラは笑顔の表情に笑みを上乗せしながら功労者が自分でない事を明かす。

すると、キャンデリラの身体に引っ付いていた小さな存在が後ろに飛び出して、それが大きくなる。

そして、キャンデリラの後ろに着ぐるみのような見るからに怪人には見えない愉快な存在が現れた。

 

「えへへっ、初めて見た時危ないな~って思ったんで、何か対策をしないとなぁと思ったら、音は同波長の音をぶつければ打ち消すことが出来るって思い出したんっすよ」

 

「ラッキュー君、凄い!!」

 

「あははっ、漫画で見た知識なんですがね~」

 

ラッキューロの働きに感激するカナメ。

それに気をよくして笑いを漏らすラキューロ。

 

 

ここで説明しよう。

 

空蝉丸と別れて、サラマンディーネ達がアルゼナルを襲撃に行く際、隠密に付いて行った二人。

そして、サラマンディーネ達が撤退後もアルゼナルに潜んで情報の収集を行っていたのだ。

しかし、その後はすぐにアルゼナルがエンブリヲの手先に襲撃を受けることになったのだ。

その中でアルゼナルに潜入してパラメイル乗りの捕獲する部隊が目標の捕獲の際、抵抗され装備していた手榴弾が爆発してしまう現場に遭遇した。

残念なことにパイロットは部隊の者と共に重傷を負い助けることが出来なかった。

その代わりというわけではないが、事切れる寸前の彼女からパラメイルの操縦法などを一緒に姿もコピーして、エンブリヲの元に潜り込んでいたのだキャンデリラ。

さらに、彼女がラグナメイルについて調べている間、ラッキューロは自らの身体を小さくさせるシュクシュクボールを使いミニマム状態となって情報収集をしていたのだった。

 

「という訳で、今まで情報をキョウリュウゴールドに流していたのよ」

 

笑いながら語るキャンデリラに感心するサラマンディーネ達アウラの民。

まさか彼女らの言っていたスパイが人間とは違うとは思わなかったアンジュとタスク。

そして、最も身近に裏切り者がいるとは気が付かずにいたことに憤るエンブリヲと他のラグナメイルのパイロット達。

 

「この、クソっ!!」

 

「よくもエンブリヲ様を裏切ったな!!」

 

激昂してキャンデリラの機体に飛びかかるクリスとサリア。

 

「いや~、こわ~い!!」

 

「逃げましょうよ、キャンデリラ様!!」

 

全然怖がっていない態度の二人はラグナメイルをアウローラに向けて飛ばせる。

逃げようとする彼らを他の三機は追いかけるが、エンブリヲは手で制した。

そして、エンブリヲはキャンデリラを、彼女の乗るラグナメイルを睨んでゆっくりと手を弾き鳴らす。

次の瞬間、彼女の操るラグナメイルが揺れた。

 

「ちょ、ちょっとキャンデリラ様!!ちゃんと操縦してくださいよ!!」

 

「あははっ!!コントロールが効かなくなっているの!!」

 

「そ、そんな~」

 

ギャグの様な反応をする二人。

そんな二人に呆然としていたアンジュとタスクは何とも言えない表情をする。

 

「な、何なの、アレ」

 

「す、凄いのか、そうじゃない分からないね」

 

「まぁ、それがあの方達の味のようなものですから」

 

「いや、そんなこと言っている場合じゃねぇぞ」

 

微笑みを浮かべるサラマンディーネだが、ヒルダの声を聞いてみる。

すると、ラグナメイルから真っ逆さまに落下するキャンデリラとラッキューロの姿があった。

 

「やっぱり、アンラッキュー!!!」

 

「大丈夫、大丈夫、キープスマイリングよ!!」

 

落下しているにも関わらずお気楽な態度を崩さない二人。

しかし、それは強がりだとサリアは感じていた。

 

「エンブリヲ様を裏切るからそうなるのよ」

 

そう落下する二人を蔑んだ目で見下すサリア。

しかし、それがすぐに驚愕で歪むこととなるのだが。

 

「こんなのどうするんですか!!」

 

「大丈夫よ、ラッキューロ。スクスクジョイロの中に復元水はまだあったわよね」

 

「えっ?ああっ!!あります!!えっと・・・」

 

キャンデリラの言葉に思い出したようにラッキューロはカバンの中を探し、カボチャ型のジョイロを取り出した。

 

「はい!!スクスクジョイロ!!中の復元水は一人分しか残ったなかったんっすけどね」

 

「じゃあ、思いっきりかけて頂戴!!」

 

「了解っす!!」

 

キャンデリラの指示を受けて復元水をジョイロでかけるラッキューロ。

次の瞬間、キャンデリラの身体が巨大化した。

 

「ほら、大丈夫だったでしょ!!」

 

「ほんと、ラッキューだったっすね」

 

巨大化したキャンデリラの肩の上で笑顔を浮かべるラッキューロ。

だが、周りのメンバーはあまりの出来事に驚愕した。

キャンデリラと面識のあるサラマンディーネ達でさえ驚いていた。

そんな彼らを笑い、もっとも嘲笑っているつもりはないが、

 

「さぁ、行くわよ~~~、止めて見なさい!!」

 

そう言って、キャンデリラはハート型の大鎌、キャハハルバートを手に大型のキメラに突進した。

 

「そぉれ!!」

 

軽い掛け声と共に通り過ぎざまにキャハハルバートの刃をキメラに振るうキャンデリラ。

その一撃は掛け声に比べて非常に重いため大型のキメラは一撃の元に迎撃された。

 

「スゲェな・・・」

 

「やっぱり凄い方々だったのですよ」

 

「もしかして、サラ子も疑っていたの?」

 

感心するヒルダとサラマンディーネ。

だが、サラマンディーネの言葉を聞いて、二人がただのギャグキャラだと思っていたのか聞いてくるアンジュ。

だが、サラマンディーネはその言葉に答えず。

 

「さぁ、我々も負けてはいられませんわ。砲撃の準備は整ったのですか?」

 

「ああ。大丈夫だよ」

 

誤魔化しの問いかけをするサラマンディーネの言葉にジャスミンが自信満々に答える。

そして、アウローラの艦の頭をアケノミハシラへと向ける。

 

「N式冷線破壊砲、発射!!」

 

「N式冷線破壊砲、撃ちます!!」

 

ジャスミンの指示を受けて、トリガーを握るエルシャが砲撃を発射させた。

その砲撃は強力な冷凍ビームとなって真っすぐアケノミハシラへと向かい、柱を完全に凍結させた。

凍結されたアケノミハシラは常温の影響もあり、ひび割れが一気に全体に広がり、アケノミハシラを倒壊させた。

その後に残ったのは地下へと続く大きな穴が開いていた。

 

「アレがそうなのね」

 

「ええ、アウラへと続く道。空蝉丸とリザーディアへ連絡を!!」

 

「はっ」

 

アンジュの言葉にサラマンディーネが頷くと、すぐにナーガに指示を飛ばした。

その後、アンジュはアケノミハシラ跡の大穴を睨み。

 

「全機、我に続け!!」

 

『YES、マム!!』

 

パラメイル部隊は隊列を組んでアケノミハシラ内への侵入を行う。

その内、ヴィヴィアンと新人の二人はアウローラの護衛に残され、残りは赤いキメラを迎撃してアンジュの後に続く。

その間もキャンデリラも次々に大型のキメラを倒し、赤い大型の相手をしていた。

突入するならば、確かに今しかない。

 

 

 

 

 

 

 

その頃、空蝉丸はキョウリュウゴールドとして宮殿に入っていた。

 

「戦況はどうなっているでござる!!」

 

警備用に配備された赤い小型をザンダーサンダーで斬り伏せながら同行したリザーディアに問いかける。

 

「今、ナーガ殿から連絡がありました。アケノミハシラの破壊に成功して、アウラへと続くメインシャフトへの侵入を開始しました」

 

「では・・・」

 

「ええ。これからゲートを開きます。それまで護衛を頼みます」

 

「心得た!!」

 

機器の前にいるリザーディアに頼みを聞き、改めてザンダーサンダーを握りしめるのだった。

そして、目の前に迫ってきた赤い小型たちを睨みつけるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

対して、エンブリヲは向かってきたアンジュ達に薄ら笑いを浮かべた。

多少の予想外なことはあったが、この程度の事で自分の計画が揺らぐことは無いと思っているのだった。

 

「諸君、迎撃を」

 

「「YES、マスター!!」」

 

残ったクリスともう一人のパイロット、それにパイロットがいないにも関わらず何故か動いているラグナメイルがアンジュ達の方へ向かう。

 

「サリア、分かっているね」

 

「はい。エンブリヲ様」

 

一足遅れてサリアも自らのラグナメイルでアンジュの元へ駆ける。

 

 

 

 

 

そして、上空からアウラの元に向かおうとするサラマンディーネ、ナーガ、カナメの元に二機のラグナメイルが接近していた。

 

「姫様!!ここは我々が!!」

 

「姫様はアウラを!!」

 

「ええ」

 

接近していたラグナメイルの内の一体はエンブリヲが遠隔操作のようなものをしているのか気になるが。

サラマンディーネは臣下の二人に二機の相手を任せ、メインシャフトへと急ぐ。

 

 

 

 

同じく、低空飛行で飛んでいたヒルダとロザリーの前にはクリスが立ちはだかっていた。

 

「アンタたち、また来たの。無駄な事が好きなのね」

 

そう馬鹿にした言葉と共にビームライフルの引き金を引くクリス。

 

「クリス!!」

 

彼女の姿を目視したロザリーは放たれたビームを避けて、機体を人型に変形させながら剣を手に、ラグナメイルに肉薄する。

 

「お前だけは私が!!」

 

「何よ、熱くなって。うざい」

 

それを悠々と受け止めるクリス。

 

「ロザリー!!」

それを見てヒルダは援護しようとクリスに標準を合わせるが、少し迷った。

このまま撃って本当に良いのだろうかと。

この状況化でも、ヒルダにはどちらも大切な存在なのだから。

 

 

 

ヒルダが迷っている頃、アンジュとタスクも一直線にメインシャフトに向かおうとしていた。

だが、その目の前に、

 

「おかえり、アンジュ」

 

「エンブリヲっ」

 

ラグナメイルの両手を広げて抱きしめる準備のような体制で待ち構えていたエンブリヲの姿をアンジュは射殺さんばかりに睨みつける。

しかし、エンブリヲはアンジュの気持ちなど気にした様子もなく笑みを浮かべて、

 

「やはり、私たちは再開する運命だったのだ」

 

「何処までも自分に酔いしれている言葉だな!!」

 

そう叫びながら、タスクは自分が操るパラメイルを人型に変え、エンブリヲに刃を振り下ろす。

 

「タスク!!」

 

「行け、アンジュ!!」

 

振り下ろした刃は意図も簡単に受け止められるが、タスクにはそれで構わなかった。

彼の目的はエンブリヲの足止めなのだから。

アンジュもそれが分かっているのか頷き、

 

「分かったわ。絶対、死なないでね!!」

 

「アンジュの騎士は不死身さ!!」

 

アンジュが通り過ぎたのを確認してからエンブリヲから刃を弾かれ、距離を取る。

 

「また貴様か・・・いい加減しつこいぞ」

 

「お前にだけは言われたくない!!」

 

そして、もう一度突撃をしながら銃を連射させるのだった。

 

 

 

そうして、エンブリヲをやり過ごしたアンジュはそのままメインシャフトを目の前に迫り、

 

「サラ子!!」

 

先に穴の中に潜ろうとしているサラマンディーネと合流を果たそうとする。

だが、その行く手をビームが阻んだ。

 

「なっ!?」

 

「待っていたわ。アンジュ」

 

「サリア・・・」

 

アンジュの行く手を塞ぐように立ちはだかるサリア。

ここに来て、また邪魔しに来た彼女にアンジュは舌打ちをした。

 

「こっちは急いでいるのよ、邪魔しないでよね」

 

「ねぇ、アンジュ。新しい世界ってどんな世界だと思う」

 

「はぁ?」

 

文句を言ったにも関わらず、全く関係なさそうな事を話すサリアに呆れた声を出したアンジュ。

しかし、サリアは言葉を続ける。

 

「それはね。邪魔な貴女が、いない世界よ!!」

 

「はっ!!だったら、なおさら邪魔するわよ!!」

 

狂気の様に向かってくるサリアの言葉を花で笑いながらアンジュは迎え撃つのだった。

 

 

 

 

 

そうして、戦いは更に混沌とした物になっていくのだった。

 

 

だが、果たして気づいている者はいるのだろうか。

この先に誰も予想しえない脅威が待っているのを。

 

 

 

 

 

 

 




あとがき
更新が大変遅れてしまい申し訳ありません。
一か月以上も相手しまい本当にすみません。
更に本当ならもう少し話を進めるはずだったのに、少し長いかな、とここで一度区切りました。
本当なら、もう完結するはずなのに、何故か長くなって思うように進まない。
それでも必ず書き上げたいので頑張らせていただきます。


今回の話も書きたかったシーン。
キャンデリラ、ラッキューロ再登場の回。
カオスとエンドルフに厄介な、危険な存在と言わせたキャンデリラの魅力をしっかりと表現できたらいいのですが。
少し駆け足になってしまいました。

次回も皆さまに納得していただけるか分かりませんが、二人の花道を用意しておりますので、楽しみにしていただけたら幸いです。
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