クロスゴールド 雷鳴が奏でる輪舞   作:愛剣

26 / 27
獣電戦隊キョウリュウジャー。
ついに、始まったエンブリヲに対する反逆、ラストリベルタス。
しかし、序盤は圧倒的な戦力を持っているエンブリヲに劣勢を強いられるアンジュ達同盟軍。
そこへ颯爽と現れたのはエンブリヲ側にスパイとして潜んでいたキャンデリラとラッキューロ。
そこから形勢を逆転し、今まさにサラマンディーネ達の悲願であるアウラの救出は目の前だ。

<今回、長くなってしまったので、二分割します>


第二十五話

 

 

 

 

 

大穴を突き進むサラマンディーネ。

この先に悲願のアウラがいることに彼女の心は自然と高鳴った。

そして、進んだ先で一際、大きな空間に出ると、目の前にいる大きなドラゴンの姿に歓喜の声を上げるサラマンディーネ。

 

「アウラ!!アウラなのですね!!」

 

そして、アウラを拘束しているように見えるエネルギーのフィールドに向けてビームライフルの銃口を向ける。

 

「今、助けます!!」

 

そう言って、引き金を引くサラマンディーネ。

しかし、何度かフィールドに撃ち込んだが、フィールドが砕けることは無かった。

その光景に苛立つサラマンディーネだが、更に彼女をイラつかせる事が起こった。

サラマンディーネが侵入し、攻撃をしたことで空間内の防衛システムのようなものが起動し、空間の壁から丸ノコhのような円盤兵器が飛び出してきたのだった。

そして、襲い掛かってくる警備システムにサラマンディーネは舌打ちをしながら迎撃を開始した。

 

「このっ、どきなさい!!」

 

向かってくる円盤兵器を迎撃しながらサラマンディーネはアウラの救出に頭を捻るのだった。

 

 

 

 

 

★★★★★★★★★★★★

 

 

 

 

 

その頃、アンジュ達を送り出したアウローラは必死にキメラ達の猛攻に耐えていた。

全てはリベルタスが完了した後、皆が帰る場所だからだ。

そのために船の護衛に残ったヴィヴィアンと新人の二人もアウローラの周囲で果敢にキメラを撃ち落とす。

だが、如何せん数が減らないのに加えて、アンジュ達が突入に向かったため迎撃を担当する人間が少なったため圧倒的に不利な状況となっていた。

アウローラのフィールドでの防御も何分も持たない。

そして、

 

「フィールド展開、限界です!!」

 

「フィールド消失します!!」

 

管制からの報告にジャスミンは苦虫を噛む。

だが、状況は好転することなく、呆気なくフィールドは消失してしまった。

その結果、アウローラにキメラが次々と取りつき、装甲を突き破って艦内に入り込もうとする。

 

「全員に銃を装備させて、入り込んできた敵の相手をさせな!!」

 

「はい!!」

 

艦内全体にジャスミンの声が響き、非戦闘員たちはそれぞれ銃を手にした。

その後、ジャスミンは思いつめた顔をするエルシャに目を向けた。

表情を見ればわかる。

この船に乗っている子供たちが心配なのだ。

 

「エルシャ。行ってやりな」

 

「えっ・・・はい!!」

 

戦闘が激烈して子供たちは全員医務室に移動させ、怪我人と共に守らせている。

それでも、彼女は他の者よりも戦闘に慣れている。

死ぬかもしれないが、彼女ができることはここよりもあるのだ。

だから、ジャスミンはブリッジを出ていくエルシャの後ろ姿を笑顔で送り出すのだった。

その顔の下に死なない願いを隠して。

 

 

 

そして、エルシャは医務室で怯えた子供たちを落ち着かせると、パイロットスーツに着替えてすぐに格納庫へ向かった。

 

「メイちゃん!!」

 

「あっ、エルシャ!!」

 

格納庫に入って黒髪をツインテールにした小柄な少女。

パラメイルの整備班長のメイに声を掛けた。

 

「今から出るけど、私の機体は準備できる!?」

 

「出来てるけど、どっちで出るの?」

 

「え?」

 

メイの言葉にエルシャはどういう意味なのか、しばらく考える。

だが、すぐに彼女が示す意味に気が付いた。

彼女の後ろには、自分がエンブリヲから奪うようにここに来たラグナメイル。

そして、その向こうには自分がアルゼナルで戦っていた機体がそこにはあった。

恐らく、誰も乗る人材がいないから、ずっと置いていたのだろう。

 

「それは・・・」

 

だが、どちらに乗るべきかエルシャは迷った。

戦力としてはラグナメイルの方が強力だが、先ほどエンブリヲによってキャンデリラ達が振り落とされるのを見れば、あの機体には何か仕掛けが施されているのかもしれない。

エンブリヲを裏切った自分が乗れば、それが発動する可能性は捨てきれない。

そんな時だった。

 

―――バギィン!!

 

と、アウローラの装甲を突き破ってキメラの一体が入り込んで来た。

 

「うわっ!?」

 

「メイちゃん!!」

 

顔だけしかまだ入っていないが、目の前にいるメイを敵と認識したのか、彼女に向けて大きく口を開き、攻撃を仕掛けようとした。

それを見て彼女を助けようと走り出す。

他の武器を持った整備員も彼女を助けようとするが間に合いそうにない。

 

「うっ・・・」

 

自分の死が避けられないと感じたメイは恐怖から目を閉じる。

だが、今にも攻撃を放とうとするキメラの側方から颯爽と何者かがかけた。

 

「指令!?」

 

その姿を見て驚きの声を上げるエルシャの目の前にこれまで更迭されていたジルが短刀を手にキメラの首に刃を突き刺していた。

 

―――ギィイイイイイイ!!

 

深々と刺さったはずなのに絶命せずもがくキメラに周囲の人達は臆してしまう。

 

「銃をよこせ!!」

 

「えっ、はい!!」

 

そんな彼女らを叱咤するようにジルが語気を荒げて命令を飛ばす。

それを聞いた一人の整備員がジルに銃を投げ渡す。

ジルは短刀をキメラに刺したまま離すと銃を掴み、キメラの口の中にねじ込むとそのまま引き金を引いた。

キメラの口の中で乱射しながらジルの銃が火を噴く。

そして、銃の中にある弾が全て撃ち終わって漸くキメラは絶命した。

 

「ケガはないか?」

 

「う、うん」

 

顔にかかった返り血を拭いながら、メイに問いかけるジル。

 

「すまなかったな。腑抜けた姿を見せて」

 

「ジル・・・」

 

微笑みを浮かべるジルにメイは呆然となる。

そこで気が付いたが、ジルの姿はエルシャと同じパイロットスーツだった。

昨日までの彼女は完全に意気消沈していた。

だが、今の彼女の眼には闘志のようなものが見て取れた。

 

「エルシャ、悪いがお前は向こうのパラメイルに乗ってくれ」

 

「え?」

 

「ラグナメイルには私が乗る」

 

「は、はい!!」

 

有無を言わさぬ雰囲気に頷くエルシャ。

そして、ジルはそのままラグナメイルに乗り込むと、ブリッジに連絡を入れる。

 

「ジャスミン、発進デッキを開けてくれ」

 

『行くのかい?』

 

「ああ、終わらせてくるよ。私が清算しなければならない全てを」

 

その言葉を聞いて、ジャスミンは微笑みを浮かべる。

そして、アウローラのハッチが開かれる。

その時、何処から聞きつけたのか知らないが、医務室にいるはずのマギーが駆け寄ってきた。

 

「私は!!」

 

その声に気が付いて、マギーの方を見るジル。

 

「まだアンタを許してないんだ!!」

 

睨みながら放つ彼女の言葉は当然のものだ。

付き合いの長い彼女に自分がしてきたことを考えれば、逆だったら間違いなく自分はブチ切れる。

だが、次の瞬間に彼女の表情がほんの少し柔らかくなると、

 

「だから、帰ってきたら愚痴に付き合いな」

 

その言葉にジルから笑みが零れた。

要約すれば、必ず帰って来い、そう彼女は自分に言ったのだ。

だから、ジルは微笑みながら頷き、

 

「アレクトラ、発進する!!」

 

上部の開かれたハッチからジルはラグナメイルを飛ばした。

そして、アウローラから飛び出した瞬間、ラグナメイルを人型に変形させ、ビームライフルと実弾の銃を構え、周囲にいるキメラを撃ち落とした。

それによって一気にキメラを減らすのだった。

 

「指令、スゲェ・・・」

 

その光景に感嘆の声を上げるヴィヴィアン。

だが、そんな彼女の機体の後ろにキメラが爪を振り下ろそうとした。

 

「お姉さま、危ない!!」

 

「うぉ!?やべっ!!?」

 

声に反応するが、とても迎撃など間に合わない。

せめてダメージを最小限にしようと操作しようとするが、その爪がヴィヴィアンに振り下ろされる前にキメラから爆発が起こった。

見ると、別のパラメイルがアウローラから飛び出ていた。

 

「油断しないで、ヴィヴィちゃん!!」

 

「うぉ!!エルシャ!!!」

 

助けてくれた人物の姿に驚嘆の声を上げるヴィヴィアン。

 

ジルによってキメラの数が激減し、エルシャが加わった事で何とか持たせることが出来るかもしれない状況になった。

 

そして――――

 

 

 

 

★★★★★★★★★★★★

 

 

 

 

 

その頃、アウラの元に向かったサラマンディーネを追いかけようとするアンジュだが、その途中でサリアと交戦する妨害にあっていた。

それを突破しようとアンジュはヴィルキスの銃を放つが、サリアのラグナメイルのシールドに阻まれ効果をなさない。

 

「急いでいるのに、しつこいわね!!」

 

「だったら、とっとと落ちなさいよ!!地獄にね!!」

 

サリアはラグナメイルを操り、盾を前に突き出しながらヴィルキスに向けて剣を抜いて肉薄する。

対するアンジュも剣を持ち受け止めると、至近距離から銃の引き金を引いた。

だが、放たれたものは再び盾で防がれるが、エネルギーで押されラグナメイルとの距離が離される。

 

「嫌に決まっているでしょ!!」

 

「うるさい!!死になさい!!」

 

だが、それでもサリアはアンジュの命を奪う感触を感じたいのか執拗に剣で突貫する。

それを受け止めるのは簡単だが、このままではいつまでも先には進むことは出来ない、とアンジュが辟易していた時、ヴィルキスの間にサリアのとは別のラグナメイルが入り込んだ。

 

「なにっ!?」

 

突然の事に驚きの声を上げるサリア。

その一瞬の動揺を見逃さぬかのように、ラグナメイルは受け止めた剣をサリアのラグナメイルごと弾き飛ばした。

 

「エンブリヲの騎士と言うから、どれだけ成長したのかと思っていたが・・・」

 

「なっ!?」

 

目の前にいるラグナメイルから聞こえてきた声に、驚愕の表情を浮かべるサリア。

アンジュもまた後ろ姿のラグナメイルから聞こえるジルの声に驚いていると、コックピットからジルが出てきた。

 

「まだまだ全然ではないか。なぁ、サリア」

 

「ジル・・・」

 

姿を見せた彼女に憎悪を目に宿しながら、サリアも銃を手にしてまたラグナメイルから出る。

 

「今更、何の用なの?」

 

「別にお前に用はないさ」

 

だが、憎悪と共に銃口を向けられるにも関わらず、どうでも良いと言わんばかりに無視するジル。

その態度にサリアは更に憎悪が籠るが、

 

「古い男に会いに来たのさ」

 

「えっ?」

 

ジルから放たれた言葉の続きを聞き、一瞬呆気にとられた。

そんな彼女の態度にジルは勝ち誇った、挑発的な態度を取った。

 

「何だ、聞いていないのか。私もエンブリヲに同じように扱われた事を」

 

「・・・っ!?バカを言わないで・・・もう貴女の言葉は信じない!!それに私はエンブリヲ様を守る騎士。ダイヤモンドローズ騎士団の団長、サリアよ!!!あの方の元には行かせない!!!」

 

「ダイヤモンドローズね・・・」

 

苦笑を浮かべるジル。

 

「ラグナメイル・・・ラグナロクを連想させるのだから、普通ならば戦乙女ヴァルキリーを連想させる名前にすれば良いものを。何で、そんなセンスの疑われる名前にするかね」

 

「うっ、うるさい!!」

 

ジルの言葉に顔を真っ赤にして発砲するサリア。

幸いにも放たれた弾丸はジルに当たることなく、後方のラグナメイルの装甲に当たった。

 

「ジル!!」

 

それでも傍から見れば恐ろしい事態ゆえに、アンジュから声が漏れる。

しかし、当のジルは柳に風のような態度で全く気にせず。

むしろ、アンジュにいつまでここにいるのだ、と言う視線を向ける。

 

「どうした、アンジュ。早く行ったらどうだ?」

 

「え?」

 

「エンブリヲの元には行ってはならないが、アウラの元には行って構わないようだぞ」

 

「えっと、なるほどね」

 

ジルの言葉の真意に気が付いたアンジュはお言葉に甘えてと言って、ヴィルキスを戦闘機形態にして穴へ飛び立った。

 

「逃がさないわよ、アンジュ!!」

 

「おいおい、私の相手をしてくれるじゃないのか?」

 

それを見たサリアは慌ててラグナメイルで後を追おうとするが、ジルがそれを阻んだ。

 

「くっ、この!!?」

 

だが、サリアは好都合だと言いたげに矛先をジルに変えるのだった。

 

 

 

 

★★★★★★★★★★★★

 

 

 

 

離れた所では、サリアを突破して飛び立ったアンジュの姿を見て安堵しながらタスクは自らが操るパラメイルの銃口をエンブリヲのラグナメイルに向ける。

しかし、エンブリヲはその行為が無駄だと嘲笑った。

 

「全く理解に苦しむ。無駄な事などせず、潔く私が作り上げる理想郷の糧になる方が意義ある事だというのに」

 

「ふざけるな!!」

 

引き金を引きながら肉薄して刃を突き立てるタスク。

だが、エンブリヲはラグナメイルの肩に乗っかったまま余裕のある表情のままラグナメイルに刃を受け止めさせる。

 

「ふざけているのはお前と言う存在だ」

 

タスクを弾き飛ばし、ビームを放つ。

それを辛うじてタスクは回避した。

 

「私の花嫁の心に入り込む蛆虫めが。アンジュは私の作る新世界で、私の隣にいるべきなのだよ」

 

「生憎、アンジュはそんな事は望まない。彼女は俺たちのいる世界の中でいたい。それが彼女の望みだ!!」

 

「だからこそ、お前たちには消えてもらうのだ。現に、全員が死にかけているぞ」

 

エンブリヲの言うとおりだった。

 

 

 

周囲を見れば、サラマンディーネを行かせるためにラグナメイルの足止めを行っているカナメとナーガだが、性能上はほとんど変わらないが周りのキメラも一緒に攻めてくるため劣勢を強いられている。

 

 

 

他ではクリスと相対するヒルダとロザリーも二対一にも関わらず劣勢を強いられていた。

 

「クリス!!」

 

「ふん」

 

感情的に突っ込んでいくロザリーだが、対するクリスは冷ややかにいなす。

そこからロザリーを仕留めることは簡単な事だ。

幾度もそんなチャンスはあっただが、それが出来なかった。

 

「ロザリー!!」

 

クリスが反撃する絶妙のタイミングでヒルダが援護によってロザリーは落とされずに済んでいた。

しかし、それでもロザリーの戦い方が綱渡りなのは確かがった。

 

「熱くなり過ぎだ、バカっ!!」

 

その事を伝えようとするヒルダだが、ロザリーの耳には全く届かない。

 

「お前を殺さないとマリカの奴が浮かばれないんだよ!!」

 

死んでしまった後輩の事を思うあまり我武者羅に突っ込むロザリー。

その様子をクリスは冷ややかな視線で見ながら、苛立つ心情を抑えられないでいた。

アルゼナルが襲撃を受けた時、パラメイルで発進しようとしたクリスを凶弾に倒れてしまった。

死の淵に立たされ、助けを求めた彼女が目にしたのは自分を置いて飛び去ったヒルダとロザリーの姿だった。

その姿はクリスには彼女らが自分を見捨てたと考えたのだった。

そんな彼女にとってロザリーの言葉は、自分の事を蔑ろにしているように感じさせるものだった。

 

「そんなの死んだ奴が悪いんじゃないか!!」

 

「なっ、お前!!」

 

「弱いから虐げられて利用されてバカを見るんだ!!弱い奴と一緒にいたから死んだんじゃないか!!」

 

「クリス・・・」

 

「つまり、アンタが悪いんじゃないか!!」

 

そう吼えてクリスはヒルダとロザリーに攻撃した。

 

 

 

別の場所ではアンジュを送り出したジルがサリアの猛攻に圧倒されていた。

振り下ろされるサリアからの剣を受け止めるジル。

しかし、勢いは完全にサリアの方にあった。

上段から振り下ろした剣を受け止めているため、ジルのラグナメイルは無防備に近い腹部をサリアのラグナメイルが蹴りを入れる。

後方に吹き飛ばされるラグナメイルの中でジルは苦悶の表情を浮かべながらも挑発的に笑う。

 

「くっ、・・・ふん、やるじゃないか!!私の後をついて来てばかりだったお嬢ちゃんが強くなったもんだ!!」

 

「このっ!!バカにして!!」

 

「褒めているつもりなんだがなっ!!」

 

連射するサリアのラグナメイルを周囲の建物を利用しながら回避させるジル。

だが、それでもかなり追い詰められていた。

 

「それだけ強くなったのに、どうしてまだ私の後を追う!!」

 

「何を言って・・・」

 

「私もお前と同じであの男に心酔していた。その所為で全てを失ったがな」

 

「馬鹿を言わないで!!」

 

自嘲気味に語るジルの言葉を振り払うように剣を振りぬき、語気を強めて拒絶するサリア。

 

「エンブリヲ様は私に全てを与えてくれた。ラグナメイルと言う強さを、騎士の紋章と言う誇りを、愛を、全てね!!」

 

愛、その言葉を聞き、ジルは鼻で彼女を笑った。

 

「目を覚ましな!!それはお前を利用するための餌でしかない」

 

牽制に銃の引き金を引きながら距離を取るジル。

 

「あの男は誰も愛さない。利用できる内は可愛がっているだけだ」

 

「黙れ!!」

 

だが、サリアはシールドでそれらを払いながら、ジルのラグナメイルに接近する。

 

「言ったでしょ、もう貴女の言葉は信じないって。ずっと利用してきたのは貴女なのに、今更何を言っているのよ!!」

 

そして、怒りを込めて剣をジルのラグナメイルに振り下ろす。

それが相手の剣に受け止められてようとお構いなく何度も心のままに剣を振り下ろすのだった。

 

「私には何もなかった!!皇女でもない、歌も知らない、指輪だって持っていない。どんなに頑張ってもヴィルキスにも、貴女にも選ばれなかった!!」

 

怒りと悔しさを吐き出すサリアの目に涙が浮かぶ。

通信機越しの言葉だが、彼女の叫びは確かにジルを動揺させるものだった。

誰よりも自分が分かっているのだ。

自分がやっている事がサリアを苦しめ、それを無視し捨て置いてきた事がどれだけ酷いことなのか。

それは自分が最も憎んでいる男と同じ行為だという事を。

 

「そんな私をエンブリヲ様が選んでくれた!!だから、貴女なんかもういらないのよ!!」

 

最後の拒絶の言葉と共に、サリアはジルのラグナメイルの腕を斬り飛ばしたのだった。

 

 

 

 

アウローラの方の状況は思わしくなかった。

大型のキメラは巨大化したキャンデリラが次々と倒してくれている。

艦の守りはエルシャが加わってくれても、キメラの数が多すぎた。

パラメイル達の包囲網も、アウローラの弾幕を掻い潜ったキメラが艦体に穴をあけるとエンジンを破壊していた。

その結果、飛行困難となったアウローラはあえななくミスルギの海に着水していた。

見ると他の武装も使用できない。

 

 

 

見回せば、どこも絶体絶命の状況だった。

その状況を理解したタスクをエンブリヲは嘲笑った。

 

「流石のサルにも理解できたのではないのか。君たちには明日など来ないという事が」

 

「いや、そんなことは無い。アンジュと約束したんだ。世界を守るって、皆で帰るって。空蝉丸さんから貰ったこの銃にも誓ったんだ!!」

 

銃と剣を手にエンブリヲに向かって攻撃をするタスク。

そんな彼の行動を今度は呆れた視線を向けながら、冷静に攻撃を受け流す。

 

「まさか、ここまでバカだったとはな。そんな事は不可能だというのに」

 

「それはどうかな?」

 

次の瞬間、状況は一転した。

 

 

 

戦場全体を影が真っ黒に染めた。

その様子に戦闘に巻き込まれた市民たちは上空を見上げた時、更に恐ろしい生物の姿が出現し、彼らのパニックは加速させた。

 

(空蝉丸さんが上手くやったんだ)

 

作戦通りならば、サラマンディーネとアンジュがアウラの元までたどり着いた時、シンギャラーを開く予定だった。

この状況でドラゴンたちがシンギュラーから降ってくるという事は作戦が上手く進行していることを意味する。

 

 

 

そして、エンジンをやられ海に着水し、エンジンの復旧作業を行っているアウローラに通信が入った。

 

『偽りの民・・・いや、ノーマの民たちよ。聞こえているか』

 

幼い少女、アウラの民の導く大巫女から通信が入った。

 

『我々、アウラの民はこれより貴艦らの援護する』

 

その言葉と共に大型ドラゴンがアウローラの近くに降り立つや、襲いかかって来るキメラ達から守ってくれる。

更に大量に転移してきたドラゴン達が龍神器、パラメイルだけでなく、大型キメラを相手するキャンデリラにも援護を得られていた。

 

「形勢は逆転したな、エンブリヲ」

 

「・・・・ふっ、本当にそうかな?」

 

増援が来てくれた御かげで形勢を押し返すことが出来たことに勝ち誇ったようにタスクが言う。

その一言にエンブリヲは一瞬不快感を示すが、すぐにいつもの余裕のある笑みを浮かべる。

 

「次元融合を行うエネルギーをお前たちが持ってきてくれたようなものじゃないか」

 

当初の計画とは違うが、好都合だというエンブリヲ。

 

「その前にお前を倒せば良いだけだ!!」

 

一直線にエンブリヲのラグナメイルに突撃させるタスク。

 

「果たして、出来るかな?」

 

不敵な笑みを浮かべて突撃してきたタスクのパラメイルを回避するエンブリヲ。そして、回避された事で機体を反転させようと無防備なタスクのパラメイルに銃口を向ける。

しかし、その引き金を引かれる前に、その背後を大型ドラゴンが牙をむいて突撃していた。

唯でさえ、恐ろしい表情のドラゴンの顔が怒りと憎悪によって更に恐ろしい物になる。

こちら側に来る前に事前にエンブリヲの戦力についての情報を貰っていたのだろう。

そして、エンブリヲの操るラグナメイルの情報もあるからか、他のドラゴン達もエンブリヲに向けって飛翔してきている。

このままでは自分もただでは済まないと考えたタスクはラグナメイルから距離を取った。

そのままドラゴン達にエンブリヲのラグナメイルは食い千切られる。

その光景がタスクの脳裏に浮かぶ。

 

「エンブリヲ様!!!」

 

「エンブリヲ君!!」

 

サリアとクリス達から悲鳴が響き渡る。

だが、エンブリヲは相変わらず笑みを絶やさず、自分に向かってくるドラゴン達を虫けらのような目で見る。

そして、エンブリヲは向かってくるドラゴンに手を向ける。

 

「エンブリヲ、一体何を・・・?」

 

その行動にタスクは不思議に思っていると、ドラゴンの前に他のラグナメイルが転移された。

 

「あれは、キャンデリラが乗っていたラグナメイル!!」

 

そして、無人のラグナメイルが身代わりとしてドラゴンの牙の餌食となる。

その隙にエンブリヲはラグナメイルを銜えているドラゴンに銃口を向け、ラグナメイルごとドラゴンの頭を撃ちぬき絶命させた。

 

「こうなっては仕方がない」

 

そう呟くと、エンブリヲは再び自分に向かってくるドラゴン達に手を翳す。

すると、今度は別の場所で戦っていたラグナメイル達がドラゴン達の前に転移された。

 

「え?」

 

しかし、残りのラグナメイルは有人。つまり、サリアとクリス達が乗っている機体だ。

突然、転移されたことに驚き、動きが止まってしまうサリア達。

それが決定的な隙となった。

エンブリヲに向けられた牙がサリア達に向けられる。

 

「「クリス!!」」

 

「サリア!!」

 

今度はヒルダ、ロザリー、ジルから悲鳴が上がる。

辛うじてサリアとクリスは回避する事が出来たが、残り一人は間に合わなかった。

 

「い、いやぁあああああ!!エ、エンブリヲ様!!助けて!!!」

 

「ああ、大丈夫だ」

 

「エンブリヲ様・・・」

 

ドラゴンに嚙みつかれたラグナメイルから助けを求める声にエンブリヲは微笑みを浮かべる。

その言葉に安堵するが、

 

「今、楽にしてあげよう」

 

「え?」

 

エンブリヲの銃口からビームが放たれ、ラグナメイルごとドラゴンを撃ちぬいた。

その光景にタスクは戦慄する。

 

「な、仲間ごと攻撃を・・・」

 

「エ、エンブリヲ様・・・」

 

「どうして・・・」

 

サリアとクリス達もエンブリヲの行動に呆然となり、操縦桿のコントロールが止まってしまう。

だが、突然彼女たちのラグナメイルが動き出した。

 

「え!?コントロールが!!」

 

「どうして!!?」

 

ラグナメイルが彼女たちの手からコントロールが離れて、ドラゴンを撃ち続ける。

何が何なのか分からない彼女たちにエンブリヲは笑みを浮かべる。

 

「君たちの命は私の物なのだろう。ならば、命を懸けて私をまもってくれたまえ」

 

要するに、ここで死んでくれとエンブリヲを言った。

その言葉に絶句するサリアとクリス。

 

「エ、エンブリヲ様・・・」

 

「そ、そんな、また利用された・・・」

 

絶望のあまり操縦桿を離してしまう二人。

そんな二人のラグナメイルに近づこうとする機体があった。

 

「クリス!!」

 

「危ないぞ!!ロザリー!!」

 

無意識にクリスを助けようとするロザリー。

しかし、すでにクリスは戦意を喪失しているにもかかわらず、ラグナメイルのみが一人でに周囲に乱射しているため不用意に近づくことは危険なためヒルダが彼女を止める。

しかし、そんな中で、ラグナメイルの無差別攻撃やドラゴンの突進を縫うように回避しながらサリアのラグナメイルに接近する機体があった。

 

「サリア!!」

 

「ア、アレクトラ・・・」

 

自らの機体をサリアにぶつけてドラゴンの包囲網を抜けようとするジル。

 

「これで分かっただろ。これがエンブリヲの本性さ!!」

 

未だにエンブリヲがコントロールしているラグナメイルを必死に押さえつけようとするジル。

だが、ドラゴンには敵二機がくっついているようにしか見えず、ジルの機体もラグナメイルのため見分けなどつくはずがなく一緒に攻撃しようとした。

 

「あれは・・・アレクトラか?」

 

更にエンブリヲもこの時漸くジルが戦場に来ていることに気が付くのだった。

しかし、今のジルにはドラゴンもエンブリヲも眼中になかった。

 

「いい加減に目を覚ましな、サリア!!私の様に全てを失う前に・・・」

 

「いや、まだ全てではないだろ。アレクトラ」

 

「っ!?」

 

サリアに向かって必死に呼びかけていたジルにいつの間にかエンブリヲが話しかける。

 

「エンブリヲ・・・」

 

「古い女が今更何をしているのかね、アレクトラ」

 

「お前に奪われてばかりなのが癪なのでな。少しでも奪い返しに来たのさ」

 

「なるほど」

 

冷や汗を流しながら軽口を出し、必死に強がるジル。

そんな彼女にエンブリヲは再び銃口を向けた。

 

「しかし、私はまだ君から全ては奪っていないだろ」

 

「何?」

 

再び同じ事を口にしながら銃口をサリアとジルに向けるエンブリヲ。

 

「まだ君の命は奪っていないのだから」

 

「ちっ」

 

「さよなら、アレクトラ」

 

言葉と共にエンブリヲはジルのラグナメイルに向かって引き金を引こうとする。

 

「させるか!!」

 

<VAMOLA MUCHO>

 

「獣電ブレイブフィニッシュ!!」

 

「何!?」

 

しかし、ラグナメイルの引き金が引かれるよりも早くキョウリュウネイビーに変身したタスクの一撃がエンブリヲのラグナメイルの右半分を頭部撃ち抜いたのだった。

放たれたエネルギー弾によってエンブリヲのラグナメイルの右目側が破損し、カメラが露出する損傷を当てえるのだった。

そして、戦闘機形態のパラメイルでそのままラグナメイルに突進するのだった。

 

「くっ、何処まで私の邪魔をするのだ!!」

 

「最近、気が付いたんだけど、お前を邪魔するのが楽しいと自分でも感じるよ!!」

 

戦闘機の推進力を前回のままラグナメイルを抑え込むように飛ばしながら、タスクはそのままガブリボルバーをエンブリヲに放つ。

 

「ちっ、本当に野蛮な男だな、貴様は!!」

 

「お前が不愉快になるなら、これ程の栄誉はないね」

 

そう言って、エンブリヲをサリア達から引きはがすタスク。

すると、エンブリヲを追って他のドラゴン達もついてきた。

 

「今のうちに二人を!!」

 

エンブリヲの近くはドラゴンが群がるため二人を救助は困難ゆえの行動だった。

その真意に気が付いたジル達はサリアとクリスを助けようと向かう。

 

だが、タスクがエンブリヲを引き剝がした時、アケノミハシラ跡の大穴からダークグリーンの光の柱が立った。

 

 

 

 

★★★★★★★★★★★★★★★★

 

 

 

その少し時を遡る。

 

 

 

アケノミハシラの地下内部に入り込んだサラマンディーネはアウラを救出しようとするが、

防衛システムの円盤兵器に阻まれていた。

 

「邪魔を、するな!!」

 

次々と円盤兵器を破壊していくが、多方面から続々と飛び出していく円盤兵器に手を焼いていた。

その時、上空から別のビームが円盤兵器を破壊する。

 

「っ!?アンジュ!!」

 

見上げると自分が通った通路からヴィルキスが、アンジュが入ってきた。

 

「こんな玩具に何やっているのよ!!」

 

「遅いですわ!アンジュ!!?」

 

「え!?」

 

焔龍號と背中を合わせるようにヴィルキスを滞空させると、喝を入れるようにサラマンディーネに言葉を投げかける。

だが、すぐにサラマンディーネの方から文句が飛び出て驚かされた。

 

「玩具の相手は任せますわ」

 

「ちょっと、アレを使うつもり!!」

 

アンジュに援護をさせて、自らは少し高い所へ飛翔した。

その理由は、サラマンディーネとアンジュの機体に装備されている最強の兵器を使おうとするのだろう。

 

「それ以外にアウラを救う方法がありません」

 

「アウラごと吹き飛ばさない?」

 

「三割引で撃ちますから、ご安心を」

 

「じゃあ、やっちゃいなさい!!」

 

微笑みながら言うサラマンディーネの言葉に、アンジュも頷く。

アンジュから援護を得られたサラマンディーネは空中に佇むと永遠語りの歌を紡いだ。

 

「♪~~~♪~~~」

 

その歌が紡がれるにつれてサラマンディーネの額の宝玉が光出し、焔龍號の機体が金色に輝きだす。

そして、収斂時空砲のエネルギーチャージが完了し、それをアウラの檻に放たれるのだった。

 

 

 

そして、檻が破壊された時、ダークグリーンの光の柱が天を突いた。

 

 

 

 




前編はここまでです。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。