クロスゴールド 雷鳴が奏でる輪舞   作:愛剣

27 / 27
ここから後編になります。



第二十六話

同時刻、ミスルギ宮殿内でゲートを開くことに完了した空蝉丸。

 

「首尾はどうでござる?」

 

「大丈夫です。ゲートの解放には成功。次々と仲間がこちら側に来ています」

 

リザーディアの言葉を聞いて作戦が最終段階に入った事を意味する。

 

(しかし・・・)

 

作戦が佳境に入ったからかもしれない。

だが、それを差し引いても言いようのない不安が空蝉丸の中に渦巻いていた。

 

「ここはもう大丈夫です」

 

すると、リザーディアが空蝉丸に言った。

 

「私は自力で戻ることが出来ます。なので、姫様を頼みます」

 

「うむ。心得た」

 

ザンダーサンダーを背に収め、宮殿の外へ走り出した。

 

(嫌な予感が強い。エンブリヲによるものではない。もっと大きな何かが・・・)

 

そして、外に出た時、その予感が正しい物だった。

 

 

 

 

★★★★★★★★★★★

 

 

 

 

空蝉丸の目の前には地獄のような光景が広がっていた。

 

「こ、これは・・・」

 

目の前には黒い体躯の大きなドラゴンがダークグリーンの光を放ちながら、他のドラゴンの体内から光を吸い出していた。

そして、その光を吸い出されたドラゴン達は地面へと落下していた。

 

「空蝉丸!!」

 

呆然としている空蝉丸の元に焔龍號に乗っているサラマンディーネが低空飛行で近づいた。

 

「サラ殿、これは一体・・・」

 

「分かんないわよ!!」

 

サラマンディーネの代わりにヴィルキスに乗るアンジュが答える。

 

「サラ子と一緒にアウラを助けたら、いきなり暴れだしたのよ!!」

 

「アレがアウラなのでござるか?」

 

「わかりません・・・」

 

呆然としたサラマンディーネが呟く。

 

「私が聞いたアウラの姿は純白の身体に金色の光を宿したはずです」

 

「純白って、アレの何処がよ、どす黒い色じゃない!!」

 

「それが分からないのです!!」

 

アンジュの言葉に声を荒げるサラマンディーネ。

自分でも本当にわからないのだ。自分たちの長年の悲願である救出が何処で歪んでしまったのか分からず戸惑うばかりだった。

 

「とにかく、何とか止めなければ」

 

それでも空蝉丸のやるべき事は変わらない。

 

「プテラゴードン!!」

 

自らの相棒を呼びよせる空蝉丸。

サラマンディーネは不安そうに空蝉丸を見る。

そんな彼女に空蝉丸は仮面の中で微笑みながら、

 

「やれるだけの事はやってみるでござる」

 

「はい。アウラの事を頼みます」

 

不安そうな彼女の表情に頷きながら空蝉丸、キョウリュウゴールドはプテラゴードンに乗り込んだ。

 

「カミナリ変形!!」

 

相棒のプテラゴードンを雷の巨人、プテライデンオウに変形させた。

そして、飛翔しているアウラと対峙する。

すると、アウラはプテライデンオウを視認するや、強烈な光の咆哮を上げる。

 

「ぐっ!!」

 

唯の咆哮にも関わらず、それだけでプテライデンオウはたたらを踏んでしまう。

それが隙となってアウラはプテライデンオウに突進して吹き飛ばした。

 

「ぬぁあああああああ!!」

 

何十年も囚われの身だったとは思えない程の力で吹き飛ばされたプテライデンオウは背後にあった建物に突っ込んで倒れ伏した。

 

「空蝉丸!!」

 

「サラ子!!」

 

アウラと空蝉丸が心配なサラマンディーネが近寄ろうとする。

しかし、アンジュがそれを止める。

 

「今、私たちがするべき事は、あの変態男を叩きのめして、アウラがああなった原因をはかせる事よ!!」

 

「・・・ええ、その通りですわ」

 

アンジュの言葉に頷いた。

彼女の言うとおりだった。

今の自分が出来るのはアウラの変化の原因を知る事だった。

ゆえに、サラマンディーネはアンジュと共にエンブリヲの元へ飛んだ。

 

 

 

★★★★★★★★★★★

 

 

 

エンブリヲは未だにタスクと相対していた。

だが、エンブリヲの姿を確認したサラマンディーネは、一直線に飛びかかった。

 

「エンブリヲ!!!」

 

憎悪の籠った声と共にラグナメイルに刃を振り下ろすサラマンディーネ。

 

「なっ!?」

 

「サ、サラマンディーネさん!?」

 

突然、現れたサラマンディーネに驚く二人。

そんな中、アンジュがタスクに向かって声を掛けた。

 

「タスク!!」

 

「アンジュ、無事だったんだね。でも、この状況は一体・・・」

 

「今はそんな事を言っている状況じゃないの。悪いけど、タスクはゴザル丸の援護に行ってあげて!!」

 

「わ、分かった!!気を付けてくれ」

 

状況を聞きたかったタスクだが、アンジュの剣幕に深刻な状況だとだけ分かり、そのまま空蝉丸の元に飛んだ。

 

「やぁ、アンジュ。私に会いに来てくれたんだね」

 

「ハッ、冗談じゃない!!」

 

エンブリヲの頓珍漢な言葉を鼻で笑うアンジュ。

 

「用があるのは私じゃないわ」

 

「あるのは私です」

 

「ほう、龍の姫か。何か用かな?」

 

「一体、アウラに何をしたのですか?」

 

「生憎、アウラの行動に私は関与していない。もしかすると、アウラも私の理念に賛同してくれたのだろうな」

 

「世迷いごとを!!」

 

エンブリヲの言葉に憤慨したサラマンディーネが更に攻撃を加える。

それをエンブリヲは余裕の笑みを浮かべながら受け止めた。

 

「何故そんな事が言える。アウラが吸収しているのはドラゴニウムだ。つまり、エネルギーを集めてくれているのだ」

 

「くっ」

 

エンブリヲの言う通りアウラが自分の同族から吸収しているいのはドラゴニウムだ。

魔の手から逃れたのに、これ以上ドラゴニウムを体内にため込む必要などないのに。

サラマンディーネもその事は理解しているからこそ、エンブリヲの勝ち誇った表情に苛立ちながらも、何も言えず悔しさを噛締めるしかないのだった。

 

 

 

 

 

★★★★★★★★★★

 

 

 

 

離れた所では辺り一帯にアウラの咆哮が響き渡る。

同時に咆哮と共に放たれるエネルギーがプテライデンオウにぶつけられ、周囲の建物まで倒壊させていた。

 

「ぬぉおおおおおおおおおおお!!」

 

しかし、空蝉丸も相手に負けない咆哮を上げながらプテライデンオウと共にアウラに接近する。

両手を交差させプテラカッターで衝撃を引き裂きながら接近し、正面から身体を抑え込もうとする。

 

「一先ず、じっとしていてもらう!!」

 

このまま暴れられると、周囲の被害がバカにならない。

ゆえに、必死にアウラの身体の両翼を捕まえて抑えこもうとする。

だが、翼を止めても後ろの尻尾がプテライデンオウを打つ。

 

「ぐっ・・・」

 

その一撃にプテライデンオウの身体がグラつき、抑える力が緩み密着していた態勢に隙間が出来てします。

 

(くっ、何のこれしき!!)

 

と、プテライデンオウは再びアウラとの距離を詰めようとする。

だが、前にアウラの口から黒い光が漏れだした。

 

「っ!?」

 

拙い、と思った時には遅かった。

先ほどの咆哮とは違い、ダークグリーンのエネルギーがビームの砲撃となってプテライデンオウに放たれる。

 

「ぬぁあああああああ!!」

 

エネルギーの放流を浴び、後ろへ後退させられるプテライデンオウ。

何とか踏みとどまり、アウラの方を見ると、アウラは更に追撃のブレスを放とうとしていた。

 

「くっ」

 

しかし、ダメージが残っているプテライデンオウの動きが鈍い。

今にも放たれそうなブレスに動くことが出来ない。

 

(もう一発、アレを受ける事は・・・)

 

もう一度、あのブレスを受ければ、変形が解けてプテラゴードンに戻りかねない。

だが、無情にもアウラからブレスが放たれた。

 

「ハッ!!」

 

しかし、着弾する寸前でキャンデリラがプテライデンオウの前に飛び出した。

 

「ハァアアアア!!!」

 

そして、手に持っているキャハハルバートを回して飛んできていたブレスを防いだのだった。

 

「キャンデリラ!!」

 

「ウフフっ、他のドラゴンさん達がこっちに行ってくれって」

 

「そうか、かたじけない」

 

プテライデンオウが態勢を整えてキャンでリアの隣に立つ。

 

「しかし、一体どうすれば・・・」

 

キャンデリラと共に押さえつけたとしても、アウラが暴れている原因がわからない以上如何することも出来ない。

 

「何かにとりつかれているのかもしれないわ」

 

「何?」

 

すると、突然キャンデリラが言い出した。

 

「何故そんな事がわかるのでござる?」

 

「何でか分からないっすけど、あのドラゴンの中に何か良くない物が支配しているように見えるんっす」

 

「良くない・・・意思のようなものでござるか?」

 

「たぶんだけど、私とラッキューロにはそんな気がするの」

 

根拠のようなものはないのかもしれない。

だが、そう考えるのは正しいのかもしれない。

何故ならプテライデンオウが現れてからアウラは他のドラゴンのエネルギー吸収を行わず、こちらばかりを攻撃している。

唯の暴走ではなく、意思のようなものがあると考える事は十分にできる。

 

(まるで、拙者の様に・・・)

 

そこまで考えて空蝉丸は自分の手の中にある獣電池を見る。

 

「空蝉丸さん!!」

 

その時、パラメイルに乗るキョウリュウネイビー、タスクがプテライデンオウの近くを飛翔していた。

 

「タスク殿、これを!!」

 

「これって・・・」

 

プテライデンオウから獣電池をタスクに投げ渡す空蝉丸。

 

「策があります。二人の力が必要なのです」

 

「俺に出来る事なら何でもします!!」

 

「一体何をすれば良いの?」

 

空蝉丸の言葉に頷くタスクとキャンデリラ。

 

「なら、タスク殿はこの場で待機していてください。拙者とキャンデリラはアウラの動きを止めますぞ」

 

「分かりました」

 

「了解よ!!」

 

空蝉丸の指示と共にタスクはパラメイルで一先ずその場を離れる。

そして、プテライデンオウとキャンデリラは同時にアウラの元にかけた。

キャハハ、と笑いながらスキップを行うキャンデリラだったが、その笑い声を掻き消すように再びエネルギーの咆哮を放つ。

 

「ハッ!!」

 

それをキャンデリラはキャハハルバートで振り払い、その背後からプテライデンオウが跳躍してアウラを捕まえる。

再び翼と首を抑えるプテライデンオウ。

そんなプテライデンオウにアウラは尻尾を振るおうとするが、

 

「そうはさせないわ!!」

 

「させないっス!!」

 

キャンデリラがいつの間にか背後に回ってアウラの尻尾と反対の翼を抑える。

それでももがくように暴れるアウラ。

 

「キャンデリラ!!このままプテライデンオウと共にアウラを抑えてくれ!!」

 

「分かったわ!!」

 

「うんん・・・ハッ!!」

 

そして、空蝉丸はプテライデンオウに肉体を残して飛び出し、そのままタスクの元まで飛んだ。

 

「タスク殿!!」

 

「え?空蝉丸さん!?な、なんか、身体が薄くなっていませんか!?」

 

「今、拙者の身体とスピリットを分離させている」

 

「ぶ、分離!?」

 

空蝉丸の行ったことに対して驚愕するタスク。

一体、どうやってと聞きたげな、タスクの表情がマスク越しからもわかる。

 

「今は詳しい説明をしている時はござらぬ」

 

「は、はい。で、でも、俺はどうすれば・・・」

 

「拙者をその獣電池にブレイブインして、アウラに撃ち込んでください」

 

「なっ!?空蝉丸さんを、ですか!!」

 

「拙者がアウラの精神世界に入り込み、黒く染まった心を浄化させるでござる」

 

「で、でも、上手くいくんですか?」

 

「その心配は無用。必ず上手くいくでござる」

 

この方法は仲間たちが自分の闇の鎧を貫き、解き放ってくれた方法。

それを今度は自分が行うのだ。

上手くいかないはずがない。

 

「何より、これ以外に手立てがござらぬ」

 

「・・・わかりました」

 

空蝉丸の言葉に暫し思考してからタスクは覚悟を決めて頷く。

 

「だったら、俺もありったけの思いを込めます」

 

「よろしく頼みまする」

 

「行きます、空蝉丸さん。正義の魂、ブレイブイン!!」

 

獣電池に空蝉丸と自らのブレイブを込めるタスク。

そして、それをガブリボルバーに装填する。

 

〈GABURINCHO!PTERAGORDON!!〉

 

銃口をアウラに向けてガブリボルバーにブレイブが十分に込められるのを確認してから引き金を引き、スピリットの空蝉丸を放った。

 

「砕け散れ、邪悪な闇!!」

 

そのまま空蝉丸のスピリットはプテライデンオウとキャンデリラが抑えつけているアウラの中に吸い込まれるように入り込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

★★★★★★★★★★

 

 

 

真っ暗な光が全くない空間。

 

「ここがアウラの精神・・・」

 

ゆっくり辺りを見回しながら歩む空蝉丸。

しかし、その視線に見えるのは闇しか見えなかった。

だが、空蝉丸はこの空間の気配に覚えがあった。

 

「まるで、大地の闇のような・・・」

 

以前、倒したデーボス達の魂が集まる墓場。

戦いの中でそれが一度開いたことがある。

その時の邪悪な気配と同じ感じがする。

 

「だが、大地の闇はトリン達の手で破壊されたはず」

 

 

 

 

 

 

「フフフっ、その通りだ」

 

 

 

 

「っ!?」

 

誰に向かって言ったつもりはない言葉に返事があった。

だが、その声に空蝉丸は覚えがあった。いや、忘れるはずがない。

この重厚な滅びの声とも言える声の主を忘れることなど出来るはずがない。

 

「な、何故・・・」

 

「久しぶりだな・・・。キョウリュウジャー!!」

 

その声の主を目視した時、空蝉丸の表情は凍り付く。

次に紡がれた言葉と共に放たれた衝撃に空蝉丸はアウラの中から吹き飛ばされた。

 

「ぬぁあああああああああああ!!!」

 

空蝉丸の姿がなくなり、闇だけの空間の中で不気味な笑い声が響き渡る。

 

「もはや姿を隠す必要はないな・・・エネルギーも十分に手に入れた。丁度良いことに依代となる肉体がある。他の肉体も寄せ集めれば復活することが出来るだろう」

 

 

 

★★★★★★★★★★★★

 

 

 

その頃、アウラの中に空蝉丸が入った後、アウラは動きが止まり沈黙していた。

タスクはその様子を離れた所で、アウラに近づくキメラを撃ち落としながら見守っていた。

 

「タスク!!」

 

「タスク殿!!」

 

「アンジュ、サラマンディーネさん!!」

 

その時、自分に近づくキメラを撃ち落としながらヴィルキスと焔龍號が近寄ってきた。

 

「アウラはどうなったのですか?空蝉丸は!?」

 

「今、空蝉丸さんはアウラの中に入って原因を打ち消そうとしています」

 

「ちょっと、どうやってよ」

 

心配そうにするサラマンディーネに説明したいと思うタスクだったが、自分も詳しい事情をまだ説明されていないので大した事は説明できないでいた。

 

「なるほど、面白そうな事をしているようだね」

 

「エンブリヲ!!」

 

その時、アンジュ達を追ってきたエンブリヲが姿を見せた。

 

「本当にしつこい男ね!!」

 

「空蝉丸の邪魔はさせません!!」

 

敵意を向けながらエンブリヲと対峙する三機。

しかし、エンブリヲはまだ余裕を崩さない。

 

「心配することは無いよ、アンジュ。何やら面白い余興をしているようではないか。それが終わるまでは大人しくして置いて上げよう」

 

「くっ、バカにして!!」

 

エンブリヲの言葉を聞いて、憤慨するアンジュ。

だが、そんな怒りは一瞬で吹き飛ばされた。

 

アウラから途轍もないエネルギーの爆発が辺り一帯を吹き飛ばした。

 

「きゃああああああああああ!!!」

 

「アンラッキュゥウウウウウ!!」

 

その爆発を間近で受けたキャンデリラ達は建物を下敷きにしながら倒れ伏す。

 

「ぬぁあああああああああああ!!!」

 

プテライデンオウも一緒に吹き飛ばされながら、変形が解除されプテラゴードンに戻り、そのままキョウリュウゴールド、空蝉丸も外に投げ出された。

 

「空蝉丸!!」

 

それを見たサラマンディーネは急いで彼を焔龍號の腕で受け止め救い出すと、地上に着陸して彼の様子を確認した。

 

「大丈夫ですか!?一体何が、アウラはどうなったのですか?」

 

マスクの中の表情が全く読めないだけでなく、話そうともしない空蝉丸にサラマンディーネは不安になりながらアウラの方を見る。

しかし、その視線の先に彼女が不安に思った状態にはなかった。

 

「あ、あれは・・・」

 

エネルギーの放出が終わると、アウラの姿は彼女が言ったように白い体躯になっていたのだ。

それを見てサラマンディーネは歓喜した。

 

「う、上手くいったのですね、空蝉丸!!」

 

「いや、ダメでござった」

 

「え?」

 

しかし、空蝉丸の口から出てきたのは悔しさから絞り出すかのような言葉だった。

その言葉が紡がれると同時にアウラの巨体が力尽きたように地面に落下した。

 

「アウラ!!」

 

アウラの様子に驚きの声を上げるサラマンディーネ。

だが、それを遮るように空蝉丸の焦燥の声を上げる。

 

「今すぐこの場から離れてくだされ!!」

 

「空蝉丸?」

 

「どうしたの?」

 

空蝉丸の言葉にサラマンディーネと後から来たアンジュが唖然としている。

だが、状況は更に動き出していた。

アウラから離れたダークグリーンの塊が高速で移動したのだ。

向かった先はキャンデリラとラッキューロのいる場所に。

 

「え、何々?」

 

「何なんですか、コレ!?」

 

起き上がった時、ダークグリーンの塊はキャンデリラ達の周りを光の尾を書くように旋回すると、そのまま広がって二人を包もうとした。

 

「コ、コレって、もしかして・・・」

 

「ま、まさかですよね・・・・」

 

ダークグリーンの光に包まれながらキャンデリラとラッキューロは何となくだが、これがどんな存在なのか理解する。

理解して自分たちが逃れることが出来ないことを悟った。

 

「いやぁあああああああああああ!!!」

 

「うわぁあああああああああああ!!!」

 

「キャンデリラ!!ラッキューロ!!」

 

断末魔のような悲鳴を上げる二人だったが、それすらも飲み込むかのように光は卵型に二人を包んでしまった。

そして、卵型の巨大な物体は更に触手のようなものを高速で伸ばし、周囲にいるキメラ達を片っ端から飲み込み始めた。

 

「い、一体何が起こってるの!?」

 

「う、空蝉丸さん、これは・・・」

 

伸ばした触手を引き戻し、キメラ達を吸収する謎の存在。

不気味に佇み、生きているかのように脈打ちだす巨大な卵にアンジュもタスクも声を上げる。

 

「アンジュ!!」

 

「姫様!!これは一体・・・」

 

その時、敵がいなくなった事で来ることが出来たのだろう。

ヒルダとロザリー、ナーガとカナメ、ジル、それにエンブリヲに操作されたラグナメイルに乗せられたままのサリアとクリスがやってきた。

エンブリヲにとってもこれは不測の事態だったのだろう。一時休戦の様に周囲のメンバーが集まった。

離れた所にいるアウローラとドラゴン達も目の前の卵を静観していた。

だが、空蝉丸だけが声を荒げた。

 

「各々方、急いでこの場から離れてください!!」

 

「空蝉丸さん?」

 

「おいおい、一体・・・・」

 

タスクの後に、どうしたんだ、とヒルダが問いかけようとしたがその言葉が紡がれることは無かった。

脈打っていた巨大な卵が急激な速度で収縮していったのだ。

まるで、圧縮されるかの様に人ひとり分の大きさに小さくなる卵。

そして、卵の頂点から罅が入りだすのを見た瞬間、空蝉丸がガブリチェンジャーを向ける。

 

「させるか!!!」

 

<VAMOLA MUCHO>

 

咆哮と共にプテラゴードンを模様したエネルギーが放たれる。

それが寸分の狂いもなく卵に討ち、目の前を爆炎で覆った。

いきなりの空蝉丸の行動に周囲が驚きの表情を浮かべる。

 

「くっ」

 

だが、空蝉丸からはマスクから悔し気な声が漏れだした。

そして、煙の先に何か大きな人影に似たシルエットが見えてきた。

 

「おい、あれは何だ・・・」

 

ゆっくりとこちらに歩み寄って来る存在に、ロザリーが不安げな声を漏らす。

その反応は正しいものだ、と空蝉丸は感じた。

アレを前に恐怖しない人間などいるはずがない。

 

(だが、何故・・・・)

 

奥歯を噛締めながら、ザンダーサンダーを握りしめて空蝉丸はその存在に切先を向ける。

 

「何故、貴様がここにいる!!蝶絶神、デーボス!!!」

 

「フフフっ」

 

空蝉丸の悲痛な叫びに、煙から出てきた存在は不敵な笑いを浮かべながら歩みを止める。

明らかになった全貌は人の形こそしているが人間の物とは程遠い物だった。

ステッキを持ったダークグリーンの巨漢に、蝶のような、魔法使いのような姿。

そして、圧倒的な威圧感と絶望感を与える存在。

デーボスと呼ばれた事にサラマンディーネは気が付いた。

 

「デーボスって、まさか!?」

 

「アレを知ってるの、サラ子?」

 

「はい。あれは600年前我々の世界を滅ぼそうとした存在。当時、ありとあらゆる星を滅ぼしてきた宇宙の災厄」

 

「なんか、ヤバそうな奴だな」

 

デーボスの気配に物怖じしながら、絞り出すヒルダ。

いや、ヒルダだけではない。

周りの者たち、エンブリヲですらデーボスの存在に冷や汗を出した。

その中でカナメが心配そうに口を開く。

 

「ラッキュー君とキャンデリラはどうなったんですか」

 

「恐らく、あの者たちはデーボスの細胞によって生まれた存在。あの者たちの身体や周りの者たちを寄せ集めて復活したのでござろう」

 

「ですが、デーボスは600年前に空蝉丸殿たちが倒されたのでは!?」

 

ナーガの言葉に空蝉丸は頷く。

 

「その通り。あの戦いでキング殿はお前に最後の一撃を放ち倒されたはず。それなのに何故・・・」

 

「良かろう。教えやる」

 

困惑する空蝉丸達にデーボスは不敵に笑いながら、何故自分が滅ぶことがなかったのか説明した。

 

「確かに、我はあの戦いで、お前たちキョウリュウジャーのリーダー、桐生ダイゴによって肉体を氷結城ごと砕かれた」

 

「ならば、何故・・・」

 

「肉体は確かに死んだ。しかし、我の魂は完全に消滅させるまでではなかった。だが、魂にも重大なダメージを受けた我はそのまま消滅してもおかしくなかった。そんな我を救ったのは、エンドルフが集めた人間たちの怨みだ」

 

「何だと!?」

 

「お前たちに敗れ、大地の闇も破壊され復活も叶わなくなった我は思念体となりお前たちに気づかれぬよう怨みを蓄えていた。そして、戦いから約100年ほどの月日を費やし、お前たちが寿命を全うする頃、我の思念は地球全体を覆うほどのものとなった」

 

それからデーボスは行動を開始したのだった。

獣電竜に気づかれることなく、長い時間をかけて地球を破壊する計画を発動したのだ。

 

「思念体となり地球を覆った我は地球全土に向けて、悪のメロディーを流したのだ」

 

だが、言ったそばでデーボスは自嘲気味に笑った。

 

「いや、違うな。悪のメロディーと言うには余りに小さな波動。負の波動と言う方がいいだろう。だが、その負の波動は100年かけて蓄積させた我の怨みだ。確実に地球の人間たちを、獣電竜どもを蝕んだ」

 

「っ!?」

 

まさか、と空蝉丸はデーボスの言葉で気が付いた。

以前、自分がスピリットベースで見つけた氷漬けにされていた獣電竜たち。

 

「まさか、徐々にデーボスの波動を受け、弱らされていたというのか・・・」

 

「その通り。中々、苦労させられたがな。あいつ等に気が付かぬように本当に微小な波動をおくり続け、抵抗力を奪ってから凍結させるのは骨が折れた」

 

「き、貴様!!」

 

「他の仲間の子孫たちもそうだった。お前たちの子孫が私の存在に気が付かれるのは厄介だった。だから、人間たちにも負のメロディーを浴びせ続け、人類の大半の者を長い年月をかけて狂暴になるように仕向けたのだからな。自らの手で地球を破壊させる戦争を起こさせるまでに」

 

「なっ、そんな・・・」

 

「では、世界崩壊の戦争を仕向けたのは・・・」

 

空蝉丸だけでなく、サラマンディーネもデーボスの言葉の意味に気が付く。

だが、デーボスはそれを嘲笑う。

 

「生憎、その事に怒りの矛先を向けないでもらおう。確かに、そうなるように仕向けたのは我だが、実行したのは当時の人間どもの弱く汚い心が招いたことだ」

 

「ふざけるな!!」

 

「人の心を歪めたのは貴方ではないですか!!」

 

デーボスの言葉に憤慨する空蝉丸とサラマンディーネ。

他のメンバーも怒りはある。

だが、それ以上に肉体が消えてなお、世界を破壊しようとしたデーボスの怨念に戦慄していた。

 

「しかし、結果は思わしいものではなかった。地球を破壊する事は出来たが、人類を絶滅させるほどではなかった」

 

声音に残念感を滲ませるデーボス。

自らが直接手を下せば、撃ち漏らしなどないという事だろう。

 

「だが、それでも我には好都合な事が起こった。地球を捨てた人類が他の星へと向かうことだ」

 

思念体となったデーボスは地球から離れる事が出来ない。

だから、地球を逃げ出そうとする船に今度は取りついた。

全ては自らの使命を全うするため。

 

「そして、そこで更に良い物を拾った。人間を新しく作ろうとする者に」

 

「私の事か、それは・・・」

 

デーボスの言葉に反応したエンブリヲが口を開く。

不愉快そうにデーボスを睨む彼を周りのメンバーも見た。

 

「まさか、私を利用していたつもりなのか。肉体のない怨霊ごときが何をした!!精々マナを供給するアウラに寄生していただけではないか!!」

 

「フハハハハハ!!!」

 

エンブリヲの言葉を聞いて声を上げて笑い出すデーボス。

完全にエンブリヲをバカにした態度だったが、その理由はすぐに紡がれた。

 

「何故、人間の貴様に命を作り、空間を自由に行き来する事が出来たと思う」

 

「何っ?」

 

「全て我が陰で操っていたからではないか」

 

「なっ!?」

 

「でなければ、お前ごとき存在が神の真似事など出来るはずがないではないか」

 

そう言って、愕然としているエンブリヲを見下すデーボス。

ここまで聞いて分かったのは、サラマンディーネの敵も、アンジュ達の敵も全てデーボスが陰で操っていたことになった。

 

「だが、何故そんな周りくどいことを・・・」

 

「決まっている。知りたかったからだ」

 

空蝉丸の疑問にデーボスは訳もないとばかりに答える。

 

「我はお前たちキョウリュウジャーに敗れた。その理由が何なのか、学ぶために一から人間を作らせた」

 

もっと学ばなければ、学ばなければ自分が滅ぼされてしまう。

二度も敗れて、デーボスは更に強くなるためにエンブリヲに人間を作らせた。

 

「しかし、そいつの作った人間はただの人形だった。我の知りたい事を学ぶことは出来なかった。それでも、面白いシステムの御かげで効率的に人間どもの感情を手に入れる事が出来たがな」

 

マナによって何不自由ない環境によって、「喜び」「楽しみ」を。

ノーマと言う異端を生んでしまった事で、「悲しみ」「怒り」「怨み」を。

そして、アウラに取りつく事で効率的に感情とドラゴニウムと言う万能エネルギーを吸収する。

 

「貴様はよくやった。我を効率的に復活させる場を作る事はくれたのだからな。見返りとして、世界の支配者として気分良く過ごせたのだから、よかったではないか」

 

「くっ・・・ふざけるな!!この世界は私が作ったのだ!!お前ではない!!」

 

デーボスの言葉に表情を崩し、激怒するエンブリヲ。

そして、ラグナメイルで収斂時空砲を放った。

 

「消え失せるがいぃいいいいいいいいいいいい!!!!!!!」

 

エンブリヲの怒りが放たれたのでは、と思わせる激しいエネルギーの放流。

しかし、デーボスは冷ややかな視線でそれを見ていた。

 

「ふん、愚かな」

 

短く言葉を紡ぐと共に向かってくるエネルギーに対して片方の手を翳すと、そのまま収斂時空砲を受け止めたのだ。

 

「なっ!?」

 

「噓でしょ!アレを片手で止めるなんて!!」

 

信じられないとその光景を見るサラマンディーネとアンジュ。

彼らも使っている切り札の攻撃だ。

決して、片腕で受け止められるような攻撃ではないにも関わらず、デーボスをなんてこともないとばかりに、片方の手で止めているのだ。

 

「ハッ!!」

 

そして、腕を振り収斂時空砲を振り払って見せたのだ。

流石に、予想外過ぎたのか呆然とするエンブリヲ。

そんな彼にデーボスはつまらなそうに言葉を紡いだ。

 

「無駄だ。我は最強の戦闘生命体。星々を破壊しつくしてきた存在だ。それがたった一つの星を破壊し尽せなかった玩具で如何こう出来ると思ったのか?」

 

「あ、あぁぁ・・・・」

 

その言葉を聞いて、漸くエンブリヲは自分がどんな存在を相手にしているのか理解した。

恐怖で身体が硬直するエンブリヲにデーボスは笑みを浮かべる。

 

「さて、もはや貴様に用はない。ここまで来るのに疲れただろう。ゆっくりと休むと良い」

 

そう言って、デーボスはエンブリヲのラグナメイルに手を翳した。

その瞬間、黒い球体がラグナメイルごとエンブリヲを包みこんだ。

 

「なっ!?」

 

強力な重力場を持つ球体の中に閉じ込められたラグナメイルは、中心部に向けって機体を潰されながら圧縮されていく。

 

「だ、だが、これで私が死ぬことは・・・」

 

ない、そう自信を持って言おうとしたエンブリヲだったが、その僅かな希望をデーボスは潰していた。

 

「我がどれだけ貴様と共にいたと思っているのだ。すでに、貴様の本体のいる次元も我の支配下だ」

 

「え?そ、そんな!!」

 

その言葉と共にエンブリヲの肉体が蝕む様に消滅していく。

ジワジワと自分の肉体が消されていくことにエンブリヲの表情が恐怖で引き攣った。

 

「や、やめろ!!やめてくれ!!助けて!!!」

 

「ふん、神が命乞いとは無様なものだ」

 

必死に命乞いするエンブリヲだが、デーボスは無慈悲にやめることは無い。

いや、デーボスにとってエンブリヲはただ自分の復活に使っていた駒の一つ。

もう持っても意味のない駒に愛着など元よりないのだ。

しかし、それでも死にたくないエンブリヲは必死に手足をバタつかせてもがいた。

 

「い、嫌だ、嫌だ!!死にたくない!!!助けてくれ、アンジュ!!」

 

そして、必死に伸ばしたのは、近くにいたアンジュだった。

しかし、彼女は余りの事態に呆然として動こうとしない。

だから、エンブリヲはなりふり構わず助けを求めた。

 

「頼む!!サリア!!アレクトラ!!!愛している!!!」

 

散々、弄んだにも関わらず、声を荒げて求めるエンブリヲ。

当然、彼の手を握る存在などいるはずもなく。

 

「だ、誰でもいい・・・・誰でも良いから、早く私を助け――――」

 

言葉はそこで途切れ、エンブリヲはラグナメイルと共に完全に消滅した。

 

これが神を気取った道化の最後。

 

そして、道化が消え、残ったのは・・・

 

「さて、絶望の時だ」

 

絶望の神だった。

 

 

 

 

 

 




あとがき

あけましておめでとうございます。
新年初投稿になります。
更新が遅くなって、本当にすみませんでした。

今回は長くなってしまったので二つに区切りました。
自分でもここまで長くなるとは思いませんでした。

ここで漸く書きたかったデーボス復活によるエンブリヲの退場、いかがだったでしょうか。

あと二つ書きたい事があるので、それが書けたら完結できるはずなので最後までお付き合いして頂ければ幸いです。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。